為替相場と国力

2月20日に書いたように国内総生産が微増中で、13年前に比べて円のドル評価が2倍になったということは、ドルに換算すれば、この13年間で日本は約2倍以上の高成長をしていたことになります。
2011年12月15日に紹介した98年のGDPは489兆8207億円ですから、(12年のGDPはまだ出ませんが、)仮に11年のGDPでみても539.8807億円ですから、この間円表示では110%増になっているに過ぎませんが、ドル比較ですと2、2倍になる勘定です。
日本は、日本叩きを恐れて本来の実力表示を隠して、小さく見せかけていたことが分ります。
さすがに20年も経過すると隠していた日本の実力・・しこしこと儲けていたこと・・迂回輸出で儲けていることが分ってきて、実力相応の円高の洗礼(実力どおりの評価)を受けるようになったのが、11年頃の為替相場・円高というところでしょうか?
むしろドルやユーロは張り子のトラだったことがリーマンショックやギリシャ危機で露呈しました。
勿論モノゴトには勢いがあって行き過ぎ(欧州危機にうろたえた投資家が緊急避難的に日本円に買い替えたことによる実力以上の円高)もありますから、どの辺の相場が良いかは直ぐには誰も分りません。
株式相場がリーマンショック以降仮に2割下がっていても(日経平均1万円前後から12年には8000円台に下がっていました)ドル表示が2割上がっていれば結局は同じですから、実は円表示だけを見て損をしたとがっかりする話ではありません。
国内通貨は、世界規模でみれば、量販店などのポイントやデパートなどの商品券のようなものでしかないとすれば、貰ってるポイントや商品券と通貨や商品との交換比率がいきなり2割上がれば、各自の持っている商品券やポイントの表示も2割下がってしまっても経済的には同じです。
保有していた株式時価が2割減でもその株式を換金したお金で海外では従来通りのものやサービスを買えます。
まして値下がりする株式などを持っていない人(円高に適応して一定の成長が出来ていた企業・・コマツなど結構あります・・)にとっては、持っていた円紙幣や預金はそのままで、突然2割増の値打ちになったのですから、笑いが止まらない筈ではありませんか?
このコラムは上記のとおり11年秋ころの原稿を基調にしたものですが、その後為替相場と日経平均が大きく変わっていますので、参考までに13年2月20日22時現在ニューヨーク相場で検討しておきましょう。
原発事故後の原油等輸入拡大→貿易赤字定着傾向によって昨年末頃から急激に円が下がり始めていて、2013年2月20日22時のニューヨーク為替相場では1ドル93円台後半で、東証日経平均株価終値は11468円でした。
日経平均株価が11年暮れころの8000円台から1万1400円台に上がって1、37倍ですが、この間に円が77円から93円後半=0、82倍強に下がっています。
原発事故による痛手によって、日本経済の対外評価がその分沈んでいると見るべきでしょう。
円の値下がりは本来的に見れば喜ぶべきことではなく、国力評価が低くなることで悲しむべきことですが、他方で実力以上に高評価されると所謂「官打ち」と同じで却って大打撃を受けます。
20年ほど前までは高齢者が安い給与で良いから働きたいといっても、雇う方が「そんなに安くお願いするのでは失礼なので出来ない」と言って採用を断る傾向がありましたが、似たような話です。
能力もないの一流高校に入学して授業について行けないで、うつ病になるよりは1ランク下の学校に転校した方が良い場合があります。
最近は中高齢者の再就職に対しても遠慮なく、非正規雇用化・低賃金化が進んでいる・・中高年者もプライドを捨てて働くしかなくなっていますが、その分合理化されたと言うべきでしょうか?
国力の低評価化=日本人を安く見られることは悲しいものの、「そんな贅沢は言ってられない」日本人の働きを安く見られても良いから職場確保が望ましいと言うスタンス・・円安主張論者は実力相応の評価にしてくれた方が仕事が多くなると言う謙虚な人・・現実論者と言えます。

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