最低レベル競争の有用性(入会資格)1

上から10〜20段階の国民がいた場合、暴動の主役になる階層は最低とその次レベルの人が中心でその他の階層の人は実は冷めているのが普通です。
最低レベル者はどこの国にも一定数いますし、殆どの国では最低辺レベルは似たようなものですから、その中の更に質の悪いのが政府の煽動や大災害等何かチャンスがあるとこの機会に乗じて暴動略奪が起きるのが普通です。
学校ならば、一定レベル以上でないと入学を認めなければいいし、企業でも会員制組織でも一定レベル以上を採用・入会資格(事後的には欠格事由)にすれば良いので最低レベルの底上げが簡単です。
話が変わりますが、若手弁護士の就職難対策として若手会員の入会金や会費等の負担を軽くする動きが盛んですが、入会資格基準を引き下げるのは単に可哀想という次元を越えています。
会員になるための最低資格である資格試験合格と会員資格とは本質的に違います。
新入会員特典は会費を払うのすら困るような弁護士・・一定レベル以下でも、仲間と認める入会資格レベルの引き下げの意味を持っています。
せっかく試験に合格したのに就職もできないために弁護士資格を得られないのは可哀想だという意見は尤もですが、既存会員が病気等で臨時に困っているなら相互扶助のレベルですが、就職し損なっている人で会費を払うのが困難でも会員になれる=弁護士業を出来るようにすることは、(オンザジョブトレーニング不能効果もあって)入会資格レベルを引き下げることに他なりません。
結果的に弁護士レベルの引き下げ誘導となるので、相互扶助とは本質が違うのではないでしょうか?
資格試験に合格しただけでは、もしも採用されればその仕事をする資格があるというだけです。
調理師・理髪師免許でも、あるいは国民は一定年齢になれば国会議員や総理になれる資格があるだけであって、採用され、あるいは当選しなければその職に付けないのが、全てに共通する原理です。
これまで資格試験である司法試験合格基準が厳しくて採用試験とほぼ同じだったので、資格取得と職業能力の違いが明白でなかったのですが、大量合格化・資格試験のレベルを引き下げて行く以上は、職業能力・会員資格のハードルをより厳格化するべきであって逆に引き下げるのは大問題ではないでしょうか?
合格者増に併せて入会資格を引き下げて行くのでは、弁護士の信用維持にとって将来大変なことになり兼ねません。
この心配から今後倫理教育に精出すのが日弁連の方針ですが、「お金を使い込むのが行けない」という教育をいくらしても(お金を使い込んだらいけないくらい教育を受けなくとも誰でも知ってます)経済力が引き合わないと不祥事が起き易くなるのは火を見るより明らかです。
(経済力が指標になる点は・・未就職者は結局能力が低いのではないかと言う後記代議士の見方が表している外に、その後の訓練を受ける機会が少ないことから余計に実力差がつきます)
劣化した弁護士資格付与を認めると将来弁護士の信用がガタ落ちになるリスクを抱えてしまいます。
品格維持はお金・経済力だけが基準ではないと言う反論があるでしょうが、試験合格者に対してそれ以上再試験をするのも困難ですので、客の大金を預かることの多い弁護士業には一定の品格維持のためにする一定の経済力維持が必須の要件のように思われます。
昨年末の衆議院選挙に当選した弁護士から、政策秘書にいい人がいないかと聞かれたときに「いくらでも就職出来ない修習修了者がいるんじゃないの?」と言うと彼は、「いやあ先生、就職出来ないのはそれだけのことがありますよ・・使い物になる訳がないでしょう・・」と言われてしまいました。
お金の多寡と人格・能力は違うという形式論が幅を利かしていますが、法律用語として、「信用とは経済力」のことであると02/03/09「政府・公共団体の破綻2」その他で以前紹介したことがあります。
お金がないのはいろんな事情があるでしょうが、(タマタマ病気で能力発揮出来ないとしても、そのときには臨時ですが能力がないことになります・・)結果として実力の総合結果である点は同じですから、就職出来ない・・会費を払うのが大変という人に弁護士資格を優遇して与える必要があるかは考えものです。

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