次世代と年金赤字4

我々世代の人はみんな知っていますが、結婚した頃には高度成長期=高金利時代でしたので信託銀行に5年預けると1、5倍、10年でちょうど2倍になって満期が来る時代が続いていました。
巨人長島選手の最盛期のころに、奥様がしっかりしていていて直ぐに信託銀行に預けてしまうという噂がニュースになっていた時代です。
30年も40年も年金を支払って来て受け取る時期が来たら、掛けた額と同額・・元金しか返って来ないのが正しい(2倍も受け取るのが狡い・・)と政府や学者が言うならば、今後掛け続ける人が殆どいなくなるでしょう・・元金以下なら自分で貯蓄している方が自由度があって良いに決まっています。
マスコミを通じて学者は高齢者は掛けた額の2倍も受け取るのが不当だと宣伝していますが、我々世代から言えば約40年もかけて来て2倍程度しか受け取れないのでは「予定より大幅に少ない・・話が違うじゃない!」と言いたいくらいです。
高金利時代が終わって20年もたつ(と言っても今70代の人にとっては低金利になったのは最後の50歳くらいから60歳までの10年くらいしかありません)のである程度仕方がないか?と損をしたつもりの人の方が多いのではないでしょうか?
年金は個人の貯蓄とは違い助け合いだという反論が直ぐに飛んできそうですが、助け合いとは言え物事はあまりにも大きな損する話ではおかしいのです。
生命保険とは違い(掛け金全額返らない代わりに何かあれば自分も掛けた何倍もの保険金をもらえる相互性があります。)年金は困っても規定額以上くれる訳ではないのですから、生命保険や火災保険と同視する議論は間違いです。
年金は相互扶助的要素を持っていますが、生保や交通事故の保険等とは違い画一的金額の長期分割払いが特徴ですから、掛け金合計以下になる可能性のある制度設計自体に無理があります。
世代間扶養説は掛け金以上の給付が保障されないことを基礎としているのでこれを予め説明したら誰も掛けなくなる・・・・制度としてあり得ない設計ですから、責任を逃れるために考え出した後付けの誤摩化し説に外なりません。
何人かの個人責任追及を免れるために、世代間扶養などと言う壮大な嘘を始めたことによって制度自体の信用をなくしてしまい、年金制度を無茶苦茶にしてしまった責任が重いと言うべきです。
嘘の上塗りをしていると、より悪い結果が生じるものです。
年金は飽くまで国を通してやっている積み立てに過ぎませんから、元金に相当な運用益をプラス・・積み立て合計期間運用益をプラスするのが本質です。
この運用ミスを誤摩化そうとしているから、年金問題をいつまでも解決出来ないのです。
民間で言えば保険金を掛けた以上は後の加入者が少ないからと言う理由でイザとなれば保険金を払わくても良いのでは、契約する人がいないでしょうし、掛け金以上に払わないと言えば、だれも払う気にならないでしょう。
こんな馬鹿な主張・説明を政府やマスコミ、経済学者がしていて、誰も反対しないから成功していると思っているのでしょうが、その代わり国民の静かな反抗・・年金支払者が減ってしまうのです。
政府は強制出来るので契約ではないとしても、国民が納得しない制度設計を一生懸命にマスコミ等が宣伝していても、制度自体が成り立ちませんから、強制出来るとは言っても契約(同意)の原理を無視した制度自体あり得ないことです。
信長の時代でも今でも同じで政治というのは民意(法律さえ出来れば強制出来ると思う頭のいい人がいるのでしょうが、法が実行出来るには国民の納得が必要です)に反したことをやれば結果的に失敗します。
運営責任を誤摩化すために世代間扶養(・・結果的に掛け金分の支払い保証をやめる)などと言い出したから、年金不信が火を噴いて来ました。
自分の賭けたお金の合計以上払ってもらえる期待が出来ないとすれば、掛け金を払う気持ちにならない人が多くなるのは当然です。

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