マインドコントロール1(人口ボーナス論の誤り1

政府や学者(マスコミ)は現在の不都合・・バブル崩壊後の経済停滞の原因を何もかも少子化に求めて、そこに責任を押し付けて責任転嫁すれば済むと考えているのでしょうか?
誰が考え出したのかこうした考えはここ約20年間マスコミのマインドコントロールによって、何らの検証もないままに少子化が諸悪の根源的考え方が普遍的になっています。
政権が変わっても「少子化を何とかしなくては・・」と言う考えに疑問をもつ人が滅多にいなくなり・・仮にいても「そんなことに税を使うのはおかしいのではないか」と発言できる勇気のある政治家はいない状態です。
最近流行の人口ボーナスやオーナス論は、少子化マイナス論の延長・応用編ですが、これもおかしな議論です。
人口さえあれば成長出来るならば、ずっと昔から巨大な人口を抱える中国やインドでは成長していた筈です・・。
歴史的にみると大き過ぎる人口は社会の重荷になることの方が多かったでしょう。
大分前に書きましたが、地球温暖化(この議論自体インチキだというのが私の年来の意見ですが・・仮に正しいとしてもの話です)や資源問題も原発廃止問題(節電のお願い)も人口が半分〜3分の1になれば簡単に解決します。
技術革新等で(新興国で言えば急激に最新技術が導入されるとその国にとっては急激な技術革新があったのと同じ結果になります・・)労働需要が急激に伸びた場合、それまでの余剰労働力(先進国に比べた大幅な低賃金労働力)が伸びシロになるに過ぎません。
急激な技術革新(即ち現状の高賃金での新たな雇用創出)の期待出来ない先進国や停滞している国(従来のインドや中国/インドネシア等の外、現在でもアフリカ諸国)で余剰労働力・失業者や無業者候補を次々と出産して大量に抱え込んでいても何の意味もありません。
人口ボーナス論によれば不景気になれば人口を増やせば良いことになります。
第二次世界大戦の遠因は明治初期からの人口増政策のツケが回って満州進出で解決を図らざるを得なかった事によると11/12/06「人口政策と第2次大戦9(棄民政策・・満州進出)1(「おしん」の社会的背景2)」前後で書きましたが、人口ボーナス論が正しければ、昭和恐慌による過剰人口を放置して国内で困窮していれば景気が上向いたことになります。
(確かに戦争にはならなかったでしょうが・・・過剰人口・大量失業者を抱えてさえいれば景気が良くなったとは思えません。)
景気回復はあらたな需要・技術革新によって生じるのであって、人口増加政策が景気対策に何の意味もないのは事実に照らして明らかです。
欧州危機の震源地であるギリシャやスペインだって失業者が一杯いる・・すなわち人口ボーナス(余剰労働力)があっても、経済成長出来ている訳ではありません。
労働者を吸収出来る産業装置の有無にかかわらない人口ボーナス論が正しければ、失業者が一杯いる国・失業者が増えれば増えるほど・経済危機国になると同時に、みんな高成長・好景気国でなければならなくなる論理矛盾が生じます。
雇用需要があるのに人口が足りないとその制約で成長が阻害されますが、経済停滞・失業増の時期に人口増加論を何故するのか疑問です。
ドンドン売れているのに在庫が足りずに売れ損なうのは困りますが、現在の出産増奨励策は売れなくなって在庫が溜まる一方(経済停滞状態)のときに、以前ドンドン売れたときの成功体験を思い出して増産産さえすれば売れると増産を命じているようなものです。
経済停滞(売れ行き不振)の原因が少子化(在庫不足)にあるのではなく、停滞している(売れない)から出産=生産抑制・少子化は正しい選択です。
マスコミは自己が吹聴するまちがった論理を基礎的思考方法として国民をマインドコントロールすることによって自己の意見を前提事実化してしまう傾向があり、マスコミ迎合のいろんな学者が無批判にこれを前提にした議論を始めます。
前提化されてしまった思考経路自体に反論したり疑問を呈するとそれだけで「変わり者」としてレッテルを貼られる(自由な言論が封殺される)し、マスコミでは相手されない・・干されてしまう雰囲気です。
今では殆どの学者が人口ボーナス・オーナス論を前提にいろんな論説を書いています。
中国の人口ボーナス期が2010年に終わったからもう駄目だなどと論じる人が多くいます。
しかし、中国経済停滞の始まりは民度のレベルが今の到達した人件費程度しかないならば停滞するでしょうし、もう少し高度な技術を身につけられればもう少し成長するというのが正確で、人口次第ではありません。
(現在中国は急速に伸びた子供の学力が40点程度に達したようなもので今後更に、60〜70点と上がって行く能力がなければ一定の段階で足踏みになります)
彼らの使いこなせる機械レベル・・能力の限界に遭遇したときに停滞するのであって、人口減が停滞の原因ではありません。

過剰労働力2と少子化

失業者は求職中ですから、言わば元気な無業者・病人で言えば発熱する体力のある初期の病人であって、無業者や非正規雇用者は、長期失業・・多数回面接で落ちて自信をなくして求職活動する元気をなくしている状態で親の家に寄生したり、生活保護受給者になっている状態と比喩的に言えるでしょう。
怠け者と言って非難するのはたやすいですが、何回も就職面接に落ちたり、何回就職・転職してもうまく行かなかった人にとっては、世間に出る勇気・気力をなくすのは当然です。
元気をなくしている重症者こそ正面から調査研究して何とかする必要があります。
精神科医の治療等は対象療法に過ぎず、鬱・不眠になる原因除去・社会生活力の回復・・受け皿の整備こそが基本的解決策です。
ちなみに、失業者という中間的概念で議論すると国ごとにどこまでを失業者と言うかの定義も違うし、国際比較がデタラメになり勝ちです。
どこの国でも失業率を低く見せるために、いろいろ工作していることが知られています。
失業率に関する国際基準があって、それが厳格に守られているとしても、日本のような暖かい家族の受け皿のある国・・大卒後何時までも親の家に居候出来る我が国と中国のように大卒後就職がないと地下室で起居するしかなく蟻族になってしまう国とでは、国情がまるで違います。
アメリカも親子の縁はさっぱりしていて高卒以降の庶民は親の家を出て、奨学金をもらって自分で大学に行くと噂に聞いていましたが、大分前のマスコミ報道ですのでインチキっぽいところもあり真実は分りません。
最近でアメリカも裕福な家庭ではいつまでも親が面倒を見ている傾向が増えて来たとも聞いています。
我が国の親は子供はいくつになっても(40〜50才になっても)子供として愛情を注ぎますので、就職活動して見込みがなかったり職場でうまく行かないことがあると親の家に居候したままになる傾向が高いので、失業率統計だけでは社会の実像が見えません。
親が死亡しても届けないで年金をそのまま受給している事例が数年前に問題になりましたが、このように高齢化してもなお親のスネをかじっている人が結構います。
失業・無業問題はこのシリーズのテーマではないので後に回すとして失業者・・無業者の増大(労働力過剰)が身近にあって、国民は自衛のために少子化の選択をしているのですが、少子化の効果(労働者減)が出るには3〜40年かかるので労働需要の急速な減少に間に合わないことが、現在人の鬱屈・社会補償費増大の大きな原因です。
少子化は社会停滞の原因ではなく、社会変化に適応した結果・後追い現象ですから、少子化に何故進んでいるかの原因を論じないで、少子化進行自体を非難したり(古くは女子大生亡国論がありました)助成金で逆行させようとするのは時代錯誤・・現実無視ですので底辺層ばかり子沢山になってしまい、うまく行く訳がありません。
(「女子が教養を持つと少子化するからけしからん」という立場からすれば、彼らは底辺層の拡大を望んでいるので貧乏人の子沢山は望むところかな?)


次世代の生き方5(過剰労働力2)

 話を戻しますと、失業増大は先に新興国との競争→海外移転が始まったことから、国内で失業や非正規雇用・失業者・無業者が増えているのであって、(何年か前の新聞報道では製造業従事者減少は570万人とも言われていました)労働者不足を理由に企業が海外展開しているならば、失業者等が増える訳がないでしょう。
子供でも分るような現実・論理構造を30日に紹介した東大教授がすり替えていて、(彼に限らずこの種のエコノミストの意見はしょっ中マスコミに出てきます)これがマスコミの主流的意見になっているのですから、マスコミの偏頗な世論誘導姿勢は半端ではありません。
社会実態を無視して、これを逆に評価している意見が氾濫していると国の進路について国民が誤って判断してしまうリスクが増えてしまいます。
ところで失業者の増加を論ずるとしても、失業統計に出ない膨大な無業者あるいは親の家に寄生している半無業者等を視野に入れて議論しないと実際の解決にはなりません。
我が国は世界一のお金持ち国になっているのですが、このことは取りも直さず親世代が世界一の金持ちであり金融資産に比例した不動産その他資産家であると言えます。
都市住民2〜3世の有利さに関してFebruary 5, 2011「都市住民内格差7」前後のテーマで連載しましたが、我が国では親世代にゆとりのある若者が多いことの外に我が国では貧富に拘らずもともと成人しても親の家から出て行かない同居者・パラサイトシングルが多いので、職安に通わない無業者あるいは週に2〜3時間しか仕事のない人などがかなりいます・・。
仕事がなくて困っている人という意味では、
失業者の多くは一定期間で諦めて無業者〜非正規雇用になって行く連鎖ですので、失業したばかりでまだ希望を持って元気に求職活動中・・職安に通っている人よりも事態は深刻です。
失業者よりも深刻な事態に陥っている彼らを論じないで、氷山の一角に過ぎない失業率の統計だけで議論しても、社会問題を解決出来ません。
この厳しい現実を知っている女性が子供を産みたがらないのは正しい選択だと思いますし、生まれてしまったら、生まれた次世代は新しい時代に適応して行くしかないのですから、ここを議論しておく・・従来型の製造業その他の仕事は減って行くのは明らかだとすれば、従来とは違った方向への進路変更・・粋・洒落など、どの方向に行くかの議論をしておく必要があります。
この辺の議論を意識的に無視して、少子化こそが衰退の原因だという結果と原因を逆にした前提から議論をしても生産的ではありません。
裸の王様の寓話同様にマスコミでは、実態に反した前提から議論を始める主張一色ですが、(マスコミの気に入った研究発表しか出来ない現実があるから仕方がないのですが)現実無視の議論では何の解決にもならないでしょう。
ところで、7月31日に失業率の統計数字を掲載しましたが、1980〜90年代と現在を比較すると失業率だけみても約2倍になっていますが、これは、ちょうどそのころから海外展開が始まったことと軌を一にしていることからも海外展開がその原因だったことが明らかです。
また少子化による15歳以上人口減は、失業率増加に遅れて生じていることからも少子化が海外展開の原因であるなどはあり得ない妄言です。
これに1980〜90年ころまで殆どなかった非正規雇用や無業者の数字をプラスすれば海外展開が始まったことによってマトモな仕事がなくて困るようになった人数は巨大な数字になっている筈です。
ここ何年も高止まりしている自殺者数や精神系患者数の増加、生活保護所帯の増加等に対する諸問題についても仕事のないストレス実態を直視しない限り解決にはなりません。

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