マインドコントロール4(財政赤字→増税論)

財政赤字の累積による将来の経済破綻を心配するならば、金融負債だけではなくプラス資産とのバランスをみないと分らないし、仮に100歩譲って単年度単位でみても国際収支黒字の範囲内の支出ならば何の危険もありません。
財政赤字はバランスシートの一部分・負債部門に過ぎず、そこだけでは何の経済指標にもならないことを2012/04/19「国債残高の危機水準3(個人金融資産1)」や2012/07/15「マスコミによる「世論誘導の害2(不毛な財政赤字論1)」等で書いてきました。
大手企業の金融負債が50億円どころか100〜1000億円以上あっても、それ以上の資産(定期預金や有価証券・工場施設その他)があれば何の問題もないことは明らかですから、こんな理屈は誰でも分るでしょう。
負債の絶対額だけを取り出して危険だと言い出したら、大手企業は新規工場新設用資金捻出のための社債発行が出来なくなります。
マスコミを覆う財政赤字=金融負債が今にも国家の破綻が来るような論説は、バランスシートの一部だけを取り出して騒ぎ立てているから、議論が間違った方向へ行っているのです。
比喩的に言えば1億円の資産のある人の借金が1000万円から1200万円に増えても、何の問題もありません・・。
勿論年収にも関係がありません。
1億円で売れる商品を8000万円の借金で仕入れる場合、その人の年収がいくらでも関係がないでしょう。
「次世代に借金を残すのか」のマスコミの大合唱も親世代がそれ以上にプラス金融資産その他の資産を持っていることを書きません・・。
マスコミはプラス資産を故意に論じないで不安を煽っていることも2012/07/22/「国際収支と財政赤字1(国債の外国人保有比率2)」以下に書きました。
国債を保有しているのが100%国民であるならば、その債券(プラス部分)も次世代に相続されるから次世代が損することはないので、国民が何%保有しているかが当面重要です。
当面という意味は、仮に現在の国内保有比率95%が低下して行って8〜7割あるいは3割しか保有しない事態が来た場合、2〜3割あるいは7割の負債を次世代に残すことになりますが、その代わり国民が国債以上の資産(外債保有もあるでしょうし国内証券等の保有もあるでしょう)を有していれば問題がないこともそのコラムで書きました。
結局は個人金融資産と国債発行残高との差し引きになりますが、現在の国債発行残高が1000兆円前後になっていて国民個人金融資産が1500兆円と言われていますので、金融資産だけでみてもプラスの相続となり何の問題もありません。
まして国民は金融資産以外に多様な資産を持っています。
(上記のように自宅等の不動産も次世代に残します)
例えば不動産時価x万円でこれに対して対応するローン残があったりなかったりするのですが、(ローン債務だけみれば負債の相続ですが、自宅がそれ以上の価値であればプラスです)この差引プラス財産もあります。
もしもマスコミ(あるいはマスコミの推奨するエコノミスト)が本当に日本経済の将来を憂うるならば、資産全体を情報公開してバランス上大変な事態になっているかどうか論じるべきです。
ところがこうした考慮要素を一切捨象して負債の大きさだけを強調して「大変だ」という議論しているのは、政治を特定・・増税方向へ引っ張りたい不純な動機があるとみるべきでしょう。
バランスシートが公表されてそれを検討した結果、もしもマイナスになって来ると日本経済はギリシャ同様に大変なことになります。
しかし、大震災の影響でここ約1年間貿易赤字になっているのですが、それでも総合収支では黒字を保っている(対外債券が多いので利子配当等の収入が大きい)状態です。
総合収支=経常収支と国全体のバランスシートは同じですから、国際収支が黒字である限り(収入以上の支出をしていないと言うことですから)国のバランスシートが単年度でも赤字になることは論理上あり得ません。
仮に今後10〜20年経過で単年度で総合収支赤字に陥った場合、赤字が5年や10年続いてもこれまでの膨大な蓄積があるので、簡単には国家財政トータルの赤字にはなりません。
(過去約4〜50年間の経常収支黒字合計を使い尽くすまでは、トータル赤字にはならないということです)
膨大な資産家が労働収入がなくて5〜10年以上だけで利子配当で生活しているようなものです。

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