原子力発電のリスク

今回の福島第1原子力発電所の危機に関しては、国民すべてが文字通り固唾をのんでいるところですが、関係者の懸命の努力にも拘らず、刻々と新たな被害の進行が進んでいます。
次々と出てくる新たな展開によくもまあこんなに次々と問題が起きるものだと思うと同時に、関係者が背後の国民・国家のために自らの危険を顧みず献身的努力を続けてくれていることに敬意を表さずにはいられません。
私個人のことでこのような事態に巻き込まれた場合を想像すると、これほど次々と不具合が発生すると「もう駄目じゃないか」とくじけてしまいそうな感じですが、彼ら関係者は背後にいる多くの国民生命・安全の危機・国土の荒廃がかかっているので、そんなことは言ってられない意気込みで出来ることは何でもしようとする姿勢で頑張ってくれているのだと思います。
今回の大地震については地震による揺れ自体の被害は原発に限らず民家でも大したことがない・・今ではどこでも耐震構造になっているので、よほど古い家は別として地震だけで家が壊れるようなことは殆どないようですが、今回の大被害は津波の被害によるものが中心です。
原発の場合も何重もの安全対策は地震による揺れに対してのみ用意していて、津波被害を全く想定していなかったことが今回の大事故発生の要因です。
後からの批判は簡単ですから言い難いことですが、海の近くに設置していてしかもこの数十年ちょっとした地震のたびに津波があるかないかなど気象庁がしょっ中放送していたのにですから、原発の方で津波被害を全く想定していなかったとすれば、理解不能な楽観主義の集団だったと言えます。
海に近ければ津波被害は避けられないかと言うとそうではありません。
我が国は海に接近している山が多いのでいくらでも高台がありますが、高台に設置すると冷却用海水の取水能力・・例えば30メートルも揚力するには大変な機器やパイプが必要で、これの破損のリスクがあります。
地盤全体を高くするよりは原子力機器の周辺を高さ30メートルほど厚さ10メートルほどの頑丈なコンクリートの塀で囲っておくのが一番コストのかからない方法です。
(周辺では・あるいは激甚被害のあったであった三陸地方でも)普通のビルでも窓が破れているくらいでビル自体が津波で倒壊していません)
この方法の場合津波以外の想定外のリスクがあった場合、同じ場所にあるので一緒に被害を受けることは今回と同じです。
想定外(何があるか分らないことが起きるのがリスク管理であるとすれば)の被害を避けるには、バックアップ体制の工夫が必要です。
同じ場所にいくつ補完機器をおいていても、想定外の現象に対する同時被害を避けられないので少なくとも環境の違うところ・・高低差を設けたり、地盤の違うところに設置する外、即応出来る程度の30〜40km前後の距離を置いてバックアップ機器を用意しておけば今回のような事故に即応出来た筈です。
その場合、道路寸断にも備えて、いくつものルートも用意してく必要があるでしょう。
話によれば、事故の基本・始まりは自家発電機器が冠水してしまって使えなくなったことですが、臨時に持って来た機器では電源やパイプの繋ぎ方などうまく合わなかった大変な作業だともっともらしく言うのですが、(現場の努力に関しては多とするのですが・・)始めから予備機器を用意しておけばそうした問題も前もって解決しておけた・・つなぎ口を一定にしてカチット差し込めば終わるようにしておけるのです。
そもそも自家発電電力の場合、遠くに設置しておいても電線さえ繋げば良いのですから、大規模な機器の輸送すら不要で大したコストではありません。
思いつきに過ぎませんので実施には詳細な詰めがいるとしても、それほどコストのかかることではないにも拘らず、準備がなかったのはこうした発想・議論が全くなかったと言うことでしょう。
「備えあれば憂いなし」・・の格言の通りですし、この逆に「備えなければ大慌て」となるのは当然です。
大慌てで一生懸命やっている姿をみると、頭が下がる・・尊いように見えますが、それは現場の人たちがよく頑張っている・・尊いだけで計画立案すべき首脳陣の責任発想の貧弱責任は大きいのではないでしょうか?
原子力のようにひとたびことが起きると国家の存亡に拘るような大事故になるのですから、こうした意見が仮にあれば無視されなかった筈です。
予備の機器を環境の違うところに何種類か用意しておく気持ち・・意見がこれまで全く起きなかったのかも、不思議です。
私がいろんな委員会に行って思うのは、いつも金太郎あめみたいな決まりきった意見を言う人が幅を利かしていて、議論はその精密化の方向が多いのです。
私のような変わった意見を言うと変な顔をして受け入れて貰えない・・雑駁すぎるからでもありますが・・・ことです。
決まりきった誰でも受け入れるような意見を言う人ばかり集まって、その精密化・・・これが日本人の得意とするところです・・を10人〜15人集まって議論しているのは、言うならば下位の技術屋集団に過ぎません。
こういう委員会が多すぎるから、津波被害を考える必要がないのかの質問すら誰からも出ない結果になっていたのではないでしょうか。
いろんな委員会の人材構成を変えて風変わりな人も入れるようにして行かないと、日本はいろんな方面で対応出来なくなってしまう・・国家の基本的な運営を発想の豊かな他国の人材に委ねて下請けしか出来ないことになりませんか?
芸術家もそうですが岡本太郎のような人材が少なく、精密化の腕を競っているような芸術家が多すぎませんか?

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC