原発事故と今後の見通し3

日本の場合は、地球の自転の関係で大陸からの西風(冬は北西、夏は南西)が中心で、たまに台風が発生すると例外的に南から吹き付けるくらいが基本的な風向きですから、(真西風の場合100%太平洋に流れます)真北や北東の風は滅多にないので、(あっても1日中強い風が吹く訳でもありません)福島県の西や南方面は基本的には被害があまりない印象ですし、関東方面に来る確率が低いことが分ります。
北風が年に10数回あるいは北東の風が年に10数回あったくらいでは、(寒い北風の強い日には風にさらされて長い時間外で立っている人は少ないでしょう)「3レム」単位の差では何の問題もないことが明らかです。
ところでいつか頑張りきれない時・・破綻が来るとしても無駄な抵抗だからと言って即時廃炉した場合と日本政府判断のように出来るだけ引き延ばすことの是非をここで考えてみます。
何時の時点で破綻がきても結果としての被害総額が同じ場合を想定すると,地震直後の大混乱中にイキナリ80kmまで避難を命じると市民生活に及ぼす影響が甚大でしかも大混乱するでしょうから、先ずは3km〜10kmから初めて徐々に拡大して30kmまでの屋内退避・避難命令にして様子を見たのは妥当な政治判断のような気がします。
ましてアメリカ大使館の勧告でも,これが仮に1年間の総量であるとするならば,Ⅰ〜2ヶ月後にゆっくり避難しても間に合います。
そもそも長引いて結局駄目になった場合と即時廃炉の場合との被害差がもしも同じならば国民が徐々に覚悟をして行くべき時間があった方が良いに決まっています。
地震発生直後でインフラの復旧出来ない即時(たとえば3日以内に)に80kmまでの緊急避難命令を出した場合と、3km単位から徐々に拡大して行った政府判断は・・仮に今後最悪に近づいた時点で今の30kmから80kmに追加命令を出すのと比較すれば、国民の混乱・被害が最小限に出来た功績が大きいと思われます。
12日経過した今でさえアメリカ大使館の想定しているような大規模な放射能汚染が始まっていないのですが、今になるとかなり時間が経過しているので周辺のインフラも復旧していて避難するにも(道路が使えるし)即時避難に比べれば比較にならないほど楽です。
そのうえ、震災時の第一次避難者がイキナリ遠くへ避難するのは大変ですので、普通は徒歩圏内プラスアルファが・・地元小学校の体育館等が原則です。
時間の経過で車移動が可能になって新潟や埼玉等関東等への遠距離再避難が続いていますので、域内人口が徐々に減少していることと、30km超付近の人も怖いので徐々に自主的避難をし始めているので、時間稼ぎをしているうちに心その他の準備が整いしかも緊急避難対象者が減ってくるメリットが大きいと思われます。
日米の見解に差があって事態が複雑になっているのですが、アメリカの姿勢は、電力系統が駄目になった時点で、一定時間内に廃炉処分をして行くべきだと言う割り切った考えだったのでしょうし、日本は出来るだけ頑張ってみたいと言う違いのようです。
アメリカに言わせれば、同型の機種が世界にゴマンとあって、・・シュミレーションがゴマンと出来上がっているので、こうなったら一刻も早く手仕舞いすれば被害が少なくて済むと言うことでしょうし、日本の場合、対アメリカ戦で負けるのが分っていても原爆が落ちるまで竹槍戦法で最後まで戦ってきたことからも分るように最後まで死力を尽くしたい国民性です。
初期段階でアメリカが即時廃炉を前提に協力申し出があったことに対し、(詳しい内容は分りません)管政権がこれを断ったようですが、上記の政治判断の妥当性と最後まで頑張り抜きたいメンタリティから日本人としては管政権の判断を理解出来る人が多いでしょう。
メンタリテイは別として、この判断の妥当性の有無は、長引かせて廃炉するのと即時廃炉とで被害(放射能関連)の出方にどういう違いがあるか、あったかにかかってきます。
独裁国家でもないのに、報道管制でもあるかのように国内マスコミ報道では、アメリカの提案内容がまるで紹介されていないのが気がかりです。
どう言う提案があって、どういう理由で管政権が断ったと言う報道・・議論が普通あるべきですが、今回まるでないのが不自然と言えば不自然です。
よほど政権に不都合な真実があって公開討論されたくないからでしょうか?
ここ数日来、CNNやBBCのライヴ報道をネットで見ようとしたらいきなりノンエリアとなって繋がらなくなったとも言います。
これが長期化すると多くの人が気づき始めて問題になってくるでしょう。
まさか中国のように通信妨害を政府がしているとは思えませんが・・しているとしたら、この非常時が終わった時点で大変な議論になるべきでしょう・。
永久に通信妨害し続けられないので直ぐに露見する筈です。
どうしてマスコミがまるで報道しないのか、質問すらしないのかが疑問ですが、アメリカの提案では、急速冷却が出来る資材(ホーサン)と装置があって、それを利用すれば直ぐ冷却出来て、そこにチェルノブイリのようにコンクリ固めの作業にはいれたと言うものらしいです。
アメリカ方式の場合は建屋の爆発も起きないで終わったので、今のような放射能漏れ事態は起きようがなかったと言うことらしいのです。
もしもそうだとすれば、これをどういう根拠で管政権が即座に断って、海水で冷やす方針を取ったのか不明ですが、公開の議論が封じられているので、素人には不明です。
どうせ廃棄するしかないものなら簡略な方法の方がリスクが少ないのですが、管政権では廃棄しないで延命出来ると事態を誤って読んだから断ったとすれば、その根拠の合理性がこの後で問われるでしょう。
あるいはアメリカ方式の方が、被害が大きいと読んだのでしょうか?
仮に同じ被害と推定した場合、(アメリカ式の場合も同じく即時に大きな被害を出すとした場合、)避難を長引かせて各種準備した方が良いことになります。
ともかく結果が同じなら頑張れるところまでは頑張ってみようとする姿勢は、蒙古襲来当時に彼我の戦力差で勝ち目がないと分っていても頑張り、第二次世界大戦末期に最後まで竹槍戦法や特攻隊が頑張ったのと同じです。
先の大戦でも日本はもう駄目だと言って海外へ逃げた人がいなかったし、今回も日本を逃げ出す人はいないでしょう。
仮に最悪事態が起きた時の放射の被害が,アメリカ方式でも同じだったとしても、直ぐにコンクリで固めるのに比べて海水をじゃぶじゃぶと放水すると同じ量だけ海に流れていることになって、その海域の海が汚染される問題だけ被害が大きくなるとも言えますが、放水した海水の行方を詳しくは知りません
・・燃料プールに入った水は蒸発して行くだけで海に放流することがないのかもしれませんし・・。
今後周辺海水汚染が大問題になって来たときに,誰がこんな無茶な対応を決めたのだと言う議論が起きてくるでしょう。
もしも最初から急速冷却していれば大爆発が起きなかったとすれば,管政権の判断誤りが今回の大事故を引き起こしたことになる・・人災であったとしても、ここまで来た以上はともかく死力を尽くして頑張るしかないのは確かです。
責任問題はその後のこととして、当面はマスコミも黙っているのでしょうか?

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