稼働停止/廃炉の影響1(反対運動の論理)

蓮舫氏の国会質問〜フェイクニュースなどが挟まりましたが、原子力発電稼働停止や廃止と地域経済の影響に戻ります。
http://blogos.com/article/93288
記事
宇佐美典也
2014年08月27日 20:35
原発が止まった原発の街「柏崎」の現状
先日とある人のご案内で久しぶりに柏崎に行ってきました。柏崎刈羽原発を見学に行った後に諸々観光地ご案内して、帰ってきたのですが、彼の地の厳しい現状を改めて感じました。
まずは柏崎市の現状についてなのですが、近年なかなか厳しい状況が続いておりまして、1995年の10.1万人をピークに人口は減り続けており2014年7月現在では87928人となっております。タダでさえ苦境が会ったところに柏崎刈羽原発の稼働停止も重なり、人口減少のペースがやや加速しています。では柏崎の産業が原発に依存しているかというと決してそうでは無く、ブルボン(菓子)やリケン(自動車部品)といった全国ブランドの会社が今でも柏崎で活躍しています。原発は稼働してしまうと基本的にはスタンドアローンで稼働し続けるので、直接の恩恵を受けているのは実際に雇用されている職員や、地元の建設・メンテナンスメーカーなど一部に限られています。
柏崎における原発の恩恵の多くは間接的なもので <①原発立地 ➡②立地対策交付金、使用済核燃料税、固定資産税、法人市民税などの税収増 ➡③市民に還元>という具合になっています。
では柏崎の税収のいかほどが原発がらみなのかということで同市の平成26年度の予算を見てみますと、歳入の484億円のうち、原発関連交付金が26.0億円、使用済核燃料税が5.7億円、その他市の固定資産税90億円の内の2/3程度(50億〜60億円程度)は東電からのもの思われ、総計で毎年合計で80億円〜90億円程度と思われます。
そう考えると市税156億円の内の約半分、歳入484億円のうちの約15%弱が原発からの収入ということになります。こうみると「原発無しでも柏崎はやっていける」というのは市の財務面では無茶な主張ではありますが、市民の生活面では十分可能な話なのかもしれません。
実際一般の柏崎の市民の方が「原発再稼働に必死」と感じたことはありません。
なお固定資産税は「原発がいつか稼働する見込み」である限りは、赤字でも当面は入ってくるので柏崎刈羽原発の地震・津波対策が進んだ結果固定資産税は皮肉にも近年は増収しています。本来ならこれにプラスα(5億円〜10億円)の法人市民税が入ることになるわけですが、累損が膨らんだ東電からは当面法人税は期待できないため、短期的には柏崎市に取って原発が稼働しようがしまいが税収は変わらないということになりますが、やはり長期的には稼働してもらわないと100億円近い税収減に見舞われることになります。」
上記記事は当面の税収だけを問題にしていて、労働者がいなくなることによる市内業者の売上減や住民税その他の税収減を書いていません。
原発関連労働者がどれだけいるかですが、原発の場合それがある限り稼働してもしなくともそれほどの差がないようにも見えます。
再稼働に反対しているだけならば、固定資産税等は無くならない上に、維持管理用の労働力投入がなくなりません。
原発の運転自体がほぼ自動操業で多くは計器類の監視業務中心・・稼働停止中も維持管理労力は必要ですから労働者の激減もありません。
一般的製造業の場合仮に全自動化していても製造中には原材料の搬入・製品・廃棄物搬出等の動きがありますが、原発の場合ウランの搬入搬出がしょっちゅう必要がない上に製品は送電線によるので、一般製造業のように生産休止か否かによる活動量の差異は殆どありません。
結果的に一旦稼働してまった原発工場の場合、工場がある限り操業してもしていなくとも地元に落ちる金がほぼ同じ=企業にとって稼働してもしなくともランニングコストがあまり変わらないとなれば、稼働停止だけ続けば地元経済にはほとんどマイナス効果がない・・蛇の生殺しのようで電力業界が維持管理コストとばかりかかって疲弊する一方です。
「稼働に同意してほしいならばもっと好条件を出せ」というヤクザみたいな政治手法が可能になっています。
被害救済と言えば聞こえがいいですが、一種の被害者ビジネス・・ゴネ得(いう表現自体も頭から否定的な表現という批判があるかと思いますが)に徹するとその帳尻は電力料金に反映します。
結果的に電力会社が全部倒産しても良いと言えない結果、回り回って国民全部の負担になります。
廃止に決まっても完全廃止までに数十年かかり、その間に廃止に向けた新規労働力投入が増えて逆に活気が出る(福島原発では事故前よりも多くの労働量が投入されている)ので10〜20年は「地域経済・税収には関係がない」しかも反原発運動をしている方が自治体懐柔のため、あのてこの手の好条件提案を期待でき、政府投資を獲得しやすいという戦略でエゴを煽るポピュリズムが地域政治の世界を制しているのでしょう。
「釣った魚に餌をやらないのはあたり前」という論理で中国が進出企業いじめするのと同じ手法です。
一般製造業の場合には、あまりひどい要求をされれば投資資金を無駄にしても撤退する道がありますが、原発の場合今の技術では「稼働反対ならばすぐに撤退します」と言えない・相手の足元を見た卑劣なやり方です。
廃止を決めたら数年で解体撤去出来て跡形もなくなるような技術革新が進めば、先行投資を捨てる覚悟さえ出来ればいいので、原発立地自治体の無茶な主張はその限度内で治ります。
中国による先進国からの進出企業への(知財解放せよ技術移転せよ等の)一見無茶な要求は、世界企業に撤退決意させない限度内で行われていることになります。
16年の新潟知事選は以下の通りです。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/101700460/
2016年10月18日(火)
任期満了に伴う新潟県知事選は10月16日投開票され、無所属で新人の米山隆一氏(共産、自由、社民推薦)が前長岡市長の森民夫氏(自民、公明推薦)らを破り、初当選を果たした。
 東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が主要争点になったうえ、選挙戦の途中から実質的に与野党対決の構図となっていた。」
新潟県民にとってはすぐに撤退されると困るが、稼働停止だけならば地域経済に与える影響が運転中と殆ど変わらないから加津反対を主張する政治家に票が集まる構図です。
電力会社側から見れば稼働停止が続けば、停止中のコストが稼働中とほとんど変わらないで収入だけゼロですから、現地自治体の(「あれをやれこれをやれ」受入れないと同意しないという)無理難題でも受け容れるしかなくなります。
この結果現地では、現地要望を受け容れるための各種大規模補強工事が花盛り・・結果的に特需景気に沸いていることになります。
沖縄県民が基地反対の大義?によって反対運動が過激化する一方になってきたのは、
「いくら過激な主張をしてもアメリカ軍が撤退出来る訳がない」という思惑で反対運動をしてきた結果→冷戦終結に伴い米軍がフィリピンから完全撤退し、日本でも沖縄基地縮小→グアムへの集約化の方向が出てきたので一時大人しくなっていた印象でした。
2010年頃からこれを引き止めるために?北朝鮮が活発化し、中国による沖縄諸島全体への侵略意図を前提にした尖閣諸島に対する攻勢をかけ始めたことによって、今度は日本政府(日本人全体)が沖縄基地縮小どころではない状態・逆に防衛力強化必須化に追い込まれたことによって、俄然反対運動が勢いを持ってきた印象です。

世界の原子力発電状況1

この辺でメデイアによる洗脳目的のムード報道ではなく、原子力発電に関する事実としての世界の趨勢を見ておきましょう。
世界の原子力発電に対する趨勢は以下の通りです。
http://blogos.com/article/231650/
記事
石川和男
2017年06月29日 11:13
世界全体の原子力 〜 低下傾向が近年反転し、4年連続増加・
World Nuclear Association が今月28日付けで公表した “World Nuclear Performance Report 2017” によると、2011年から2012年にかけて著しく落ち込んだ原子力発電電力量〔Figure 1.〕と原子力発電設備容量〔Figure 2.〕は、2012年以降4年連続で増加傾向となった。
2016年には、9GWeを超える新しい原子力発電所が稼働を開始し、過去25年以上で年間最大の増加率だった。」
メデイアによって「原発廃止縮小が世界の流れ」というイメージが刷り込まれていますが、データで見ると違っていることがわかります。
蓮舫民進党執行部は、いくら早く全廃しても「配置転換や手厚い一時金支給などの補償のある正規雇用の労組には関係がない」まさか連合が反対しないだろうというと言う乱暴な見通し?で、地域世論無視の意見を発表してしまったのではないでしょうか?
ただしこのあとで書いていきますが、もっと詳しく見れば稼働停止や廃止決定しても地元経済は10年単位で見れば(全国民の犠牲によって)もっと潤うようですから、廃止や稼働反対運動はごね得で損をする国民との一体感破壊に働きます。
災害等で本当に困っている人を助けるのは納得ですが、「ごね得」のようになると負担させられるその他国民との一体感が破壊されていきます。
蓮舫氏の・国民分断につながるエゴ主張を日本のための全国民的ビジョンで正気の連合が受け入れなかったと見るべきでしょう。
ところで全国で多数展開している原発の急速な廃止となれば、配置転換や自然減もそうはうまくいかないので大多数は一時金での解雇になるしかない上に、「地域経済への影響」が半端ではありません。
地域経済というと地域限定のような響きですが、急速全廃となればほぼ全国一斉になる・・一箇所ではないので配置転換すべき受けザラがないので日本全体としての急激な雇用吸収ができない→社会問題が起きてきます。
ちなみに原発の全国立地を見ると以下の通りです。
日本全国の原発
2012010101.jpg

地域経済だけではなく、代替エネルギー開発の工程・・見通し策定すらできないのに稼働停止や廃止だけ先行すると、日本経済全体が立ち行かなくなるばかりか市民生活にもモロに影響が出ます。
その点を蓮舫氏はどう考えてどのように国民に説明するつもりだったのでしょうか?
政党代表が国会で政府に質問する以上は、どのような立ち位置があって、その主張があって、そのために政府に質問してその矛盾等を質問するという流れ・・政府に質問する前に自分の立ち位置を明らかにすべきだったでしょう。
森友・加計学園問題の追及もそうでしたが、民進党が予算審議を止めてまで続ける質問で国政のために何を言いたいのかさっぱりわからなかったのが、メデイアによる安倍政権の支持率下落・日本政府弱体化の目論見は奏功しているのに対抗勢力であるべき民進党支持率が低下してしまった原因です。

独仏の原子力政策と環境条件2

http://www.de-info.net/kiso/atomdata03.html
ドイツのエネルギー関係データ
ドイツの電力輸出入
「柔軟性の低い大型発電所
需要の変動に対応し、再生可能エネルギーによる供給の変動を補完するのは従来型発電であるが、恒常的な需要、いわゆるベースロードをカバーする原子力発電や褐炭・石炭発電は常に一定量の発電を続け、容易に出力を落とせない。
いったん落とせば再稼働のためのウオーミングアップに膨大なコストがかかるからだ。とくに、国産の褐炭による発電は競争力が強く、高水準の発電が続いている。これに対して、臨機応変の稼働が可能なガス発電はコスト的に採算が合わず、設備の増強は進んでいない。
外国に引き取ってもらうことも
この結果、電力供給が国内需要を上回る状態が続いている。電力利用の効率化や景気の不振で需要が低下傾向にあるのも要因だ。
このため、電力取引所における価格は低下をたどっており、2015年はメガワットアワーあたり31.6ユーロとヨーロッパでも2番目に低いレベルにある。そのため、オランダなど価格水準が高い国や供給力が弱い国は有利な価格で調達することができる。
昨日紹介したところによると、最も電力料金の高いドイツが輸出超過国になっているカラクリには、上記事情・・過剰生産(不採算による差額を政府による高額買取制度で))を物ともせずにどんどん再生エネルギー生産をして、その分を市場相場で成り行きによって輸出していることによるようです。
いわば国内需要を超えた過剰生産させて余剰分を輸出に回させる・・その差額損失を政府が持つ(高額買取制度)のですから、中国が国有企業に採算無視の過剰鉄鋼生産させて国際市場にダンピング輸出させる・・企業赤字は国が面倒を見ているダンピング輸出と同じ構図ではないでしょうか?
ドイツでは原子力発電縮小が続いてもうまく行っているという日本の報道そのものはそのとおり・虚偽ではありませんが、近隣国疲弊政策とセットになっている点を合わせて報道すべきでしょう。
その上ドイツはもともと原子力に頼らずとも豊富な褐炭等の国内資源でかなり間に合っていたことを無視できません。
褐炭で間に合ってはいるものの先端技術であり将来の核兵器転用技術を確保しておきたい思惑から原子力にちょっと頭を突っ込んでおこうとしていただけだったから、原子力の将来性がないと分かれば危険を冒してまで研究開発する必要がない・「今後は再生エネルギーだ」と方向を極端に切り替えた単純性のように見えます。
韓国のように戦後はアメリカが覇者とならばアメリカ一辺倒(いきなりキリスト教徒が増えます)、今後は中国となれば、中国一辺倒という乱暴な政治です・・とあっさりと縮小方向へ舵を切ったように見えます。
日本同様の無資源国フランスでは電力用資源の輸入代金負担が大変ですから、日本の事故後でもやはり原子力の方がいいかという点では事故直後でさえ賛否が揺れていたようです。
揺れながら時間をかけて(得心を得て)方向を修正して行く方が社会の安定性があるように見えます。
以下は前オランド政権誕生ころ・約5年前?・・民主党政権が討論型世論調査を実施した時期とだいたい合っている・・かなり古い論文ですが、それでも以下の通りです。
http://www.chuden.co.jp/resource/corporate/catalog_05_ba_vol6_07.pdfによるとドイツの赤字輸出の構造は以下のとおりです。
「東京電力福島第一原子力発電所の事故から1年経った2012年5月に実施されたフランス大統領選挙では、原子力推進路線を維持することの妥当性を主張する保守政党のサルコジ氏と「減原発」を主張する社会党のオランド氏が争うことになった。
決選投票にもつれ込んだ結果オランド氏が僅差でサルコジ氏を破って大統領に選出されたが、これで原子力政策が抜本的に転換するわけではなさそうだ・・さらに、オランド大統領は原子力政策審議会に先立つ9月14日に、フェッセンハイム原子力発電所を閉鎖する条件として「立地地域の電力供給が保証され、発電所跡地の再転換や雇用が確保される」ことが前提であると述べている。
このような情勢を踏まえると、オランド大統領の在任中に従来からの原子力政策が大きく転換する可能性は低い。
では、フランス国民の原子力に対する意識は変わったのか。環境・持続可能開発・エネルギー省は12年8月に「フランス人とエネルギー」と題するフランスの原子力発電に関する世論調査を発表した。
この調査では「フランスの電源構成の4分の3を原子力が占めていることは、全ての点を考慮して、どちらかと言えば利益か、不都合か」という設問形式となっており、福島原発事故直後の11年7月には、「どちらかと言えば不都合」を選ぶ割合が50%に急上昇したものの、12年1月には再び「どちらかと言えば利益」を選択する割合が47%に上昇した。ここ10年間は「どちらかと言えば利益」とする割合は40%後半から50%前半で推移しており、福島第一原子力発電所事故の心理的な影響は一時的であったことがうかがえる・・・」
国益との兼ね合いで反原発のオランド政権でさえ実務に着くと大幅縮小をできなかったことが紹介されています。
ただしドイツの再生エネルギーの安値攻勢によって電力輸入国に転じた経緯はどう論文の続きによれば、以下の通りです。
「ドイツの脱原発と再エネ増加による影響
「前述の通り、フランスは原子力開発を積極的に進めた結果、英国、ドイツ、イタリアといった周辺国に国際連系線を介して余剰電力を大量に輸出する国となった。しかしながら、ドイツやスペインで風力発電設備等の自然変動電源が大量導入されるようになった00年代以降、国際的な電力輸出入の状況は変わりつつある。
例えば、ドイツの固定価格買取制度では系統運用者が再生可能エネルギーを全量買い取って、電力取引所に安い価格であっても成り行きで売却する。
その結果、需要が少ない夜間・休日には大量の余剰電力がドイツから周辺国に流れ込むことがある。このような場合、フランスでは火力発電に加えて原子力発電までが出力低下運転を行い、周辺国からの再生可能エネルギー電力をフランス国内で消費している。このため、周辺国への輸出電力量は年々減少している状況であった・・・」
上記を日本に当てはめれば、大手電力相場の2倍(分かりよい数字にしているだけで実際に2倍ではありません)の高価格で太陽光電力などを買いとっている場合に、その差額負担を電力会社だけではなく、消費者に求める問題が起きてきていますが、高価格で買い取った電力をドイツは電力会社や国民の電気料金に反映せずに・・日本と違い国際送電網が発達しているので・・市況のまま・・上記例で言えば、買取価格の半額で国外に売っている仕組みです。
「市況で売却する」といえば正常価格のようで聞こえがいいですが、ドイツが成り行きで大量に売れば市況自体が下がります・・中国の鉄鋼ダンピング輸出だって市場相場で売っているのですが、寝さgrウィおものとsメイズに売り込めば正常な市場価格が下がって行きますので世界が困っているのと同じです。
市場原理制度は適正コストまで下がるとそれ以下の売りがなくなる・・短期的には倒産寸での資金欲しさのバッタ売りがあってもそれは続かないのでそのうちに適正相場で落ち着く仕組みです。
中国のようにいくらでも国家資本で補助して際限のない低価格・コスト以下の販売競争を挑んでくると正常企業の方が資金負けしてしまいます。
だからこそ世界中で中国の鉄鋼製品赤字輸出を問題視してきたのです。
これが各国国内法・・独禁法で規制している不当廉売禁止の法原理です。

独仏の原子力政策と環境条件1

まずは、日本同様に電力資源の大方を輸入に頼っているフランスがどうしているかを見て行きましょう。
http://blogos.com/article/208920
記事
石川和男
2017年02月06日 06:55
先月17日のIEA(国際エネルギー機関)の発表では、
「フランスは、IEA加盟国の中でも低炭素エネルギー構成を実現している先進国。2015年でのエネルギー全体に占める化石燃料比率は47%に過ぎないが、エネルギー全体に占める原子力比率は46%(資料1)、電力分野での原子力比率は78%(資料2、資料3)となっている。」
「2015年までの電気料金の推移(資料8)を見ると、①電力自由化が始まった2000年頃を境として、各国とも電気料金は上昇傾向にあることや、イギリス・フランス・ドイツで比較すると、②産業向け電気料金ではドイツが突出して最も高く、③家庭向け電気料金ではドイツが最も高くなっていることがわかる。」
「電力量当たりのCO2排出量の推移(資料10)やGDP当たりの化石燃料由来CO2排出量の推移(資料11)を見ると、原子力大国フランスが常に低位安定であることがわかる。
日本で2011年以降に上昇しているのは、2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の影響で日本国内の原子力発電が、一部では再稼働し始めているものの、実質的にほぼ全面停止状態に置かれているからである。」
上記を見るとフランスでは今でも原発依存度が78%もあり、原発比率の低いドイツでは電気コストが高くなっていることがわかります。
ところが、安いはずのフランスが電力輸入国でありドイツが輸出超過になっているのですから分かりにくいのは、西欧のほとんどが加入している送電線共通システムによって、電力の市場売買が成立している結果によると思われます。
http://www.renewable-ei.org/column_g/column_20150907.php
ドイツなしには成り立たないフランスの電力
2015年9月7日 林佑志 在独コンサル会社 欧州環境政策調査員
「ドイツの再エネが拡大し、脱原発も順調に進んでいると聞けば必ず出てくるのが「でもドイツはフランスの電力を輸入しており、原発の電力を使っているではないか」という反論だ。
フランスとの関係を見る前にドイツだけを見れば、物理的な電力フローではドイツは35.7TWhの輸出超過であり 、発電容量もピーク時をゆうに上回る設備を抱えており、あえてフランスから電力を輸入する必要はない。」
フランスの高圧送電系統の運営会社RTEが公表しているデータでは、実際の商業取引ベースで見た場合、2014年にはフランスはドイツから13.2TWhの電力を輸入している一方、輸出はわずかに7.3TWhであり、純粋な電力輸入国となっている ⅲ 。」
http://www.de-info.net/kiso/atomdata16.html
ドイツのエネルギー関係データ
ドイツにおける2015年の褐炭
産出量は約1億7,800万トンで、中国を上回り、世界第1位である。
産出量の約90%が国内の発電および地域暖房に消費される。それ以外は産業内自家消費およびブリケットに加工して販売される
巨大な掘削機で採掘された褐炭はそのまま近接する大型発電所に送られ、微粉化されて高効率の発電がおこなわれる。
褐炭による発電量は1,550億KWhで、全体の約23%を占める(2015年)。CO2排出量が多いこともあって、削減される方向にある。」
「ドイツのエネルギー資源 - 自給率、輸入依存度、輸入先
「ドイツのエネルギー自給率は原子力をゼロとしても約30%で、比較的高い。
一次エネルギー消費の12%を占める褐炭および11%余りを占める再生可能エネルギーが100%国内産であるほか、石炭や天然ガスも国内産が10%を超える。」

下の2つのグラフのうち、上はそれぞれの国との国境を通過した物理的電力量、下はそれぞれの国との間の商業的取引量である。
  データ出所:連邦統計庁貿易統計(GENESIS ON LINE)、速報値

 

5. 追 記
ドイツではエネルギー転換に伴ってさまざま問題も生じている。しかし、それらの問題は長期的な目標を達成していく過程でのことである。目標とは輸入燃料に依存しない、確実で安定したエネルギー供給、安全で安心、環境にやさしいエネルギー供給であり、ドイツを世界で最もエネルギー効率の高い、豊かな国のひとつとすることである(エネルギー・コンセプト)。再生可能エネルギーへの転換に伴うさまざまな問題を克服するために、発電、蓄電、エネルギー効率、環境などの面で技術開発やノーハウ蓄積が進められているが、それは将来にわたってドイツの国際競争力の維持・拡大にも寄与していくとみられている。(参考:「エネルギー転換に関するドイツ産業界の基本的考え方」)

上記の通り、ドイツと日本とではエネルギー資源・・基礎的体力条件が違うのですから、日本の場合、輸入代金の急拡大にどう備える事が可能かの研究・議論の蓄積先行が不可欠です。
ちなみにドイツは総合的に見て電力輸出超の国らしいです。
日本のように1国閉鎖電力社会の場合、最大需要期が(夜間電力も休日も同じ)ほぼ同時的ですから、設備を最大需要に合わせるしかないのですが、西欧諸国では送電網が行き渡っているのでドイツは冬に暖房用需要期が最大であるのに対し、夏は電力不需要期・・南欧諸国は最大需要期になっているなど、欧州の電力相互供給体制は合理化されているようです。
ただ、ドイツの電力が国際競争力があるのか?というとそうではなくてドイツは自国資源である褐炭などの自国資源利用中心のために、(一旦止めると再稼働に膨大なエネルギーが必要)需給に合わせて稼働率調整できない無理があるから、不需要期に赤字輸出している事が原因らしいです。
http://blogos.com/article/208920
記事
石川和男
2017年02月06日 06:55
に戻ります。
「2015年までの電気料金の推移(資料8)を見ると、①電力自由化が始まった2000年頃を境として、各国とも電気料金は上昇傾向にあることや、イギリス・フランス・ドイツで比較すると、②産業向け電気料金ではドイツが突出して最も高く、③家庭向け電気料金ではドイツが最も高くなっていることがわかる。」
電気料金の高いドイツからの電力輸出がなぜ多く・輸出超になるのでしょうか?
これには一種のダンピング輸出のカラクリがあるようです。

原発再稼働の是非と原子力政策1

現在政治家が優柔不断で決断力がなくて誤摩化しているのか、重要なので機が熟すのをじっくり見定めているのかの違いは、経済政策のように瞬時に決めて行くべき緊急性があるかどうかによります。
原発の新設をどうするかは国家意思が決まらないうちは手を着けなければ良いことですが、福島原発事故当時稼働中の原発をどうするかは緊急の課題です。
そこでもっとも津波に弱いと思われていた御前崎・浜岡原発は即時停止方向に決めた他は通常どおり運転し、その間新たな規制基準を作成して、定時点検による休止後新たな基準で再開の是非を決めると言う方式がとられています。
ところで、新設とは違い既存施設を再稼働するかどうかは、燃料棒の違いによっては実はそれほど緊急に国論を決めなければならないことではありません。
MOX燃料棒の場合には、再稼働しないで、今の施設のままで放置しておいて(廃炉すると決めても冷却しないで放置すると燃料棒がすぐに危険になる・・冷却不要・・危険でなくなるまでには何年もかかるようですし・・)、その間に津波で冠水・電源喪失すれば、稼働中と似たような被害が起きる点は同じです。
電源喪失の危険性・・大地震の確率はよく分らないとしても、稼働中ではない使用済み燃料棒も電源喪失して冷却し続けられなくなると大変なことになる危険性は同じです・・。
このために福島原発事故の場合、大騒ぎして全国から高所(高層ビル)放水用の消防車を動員したりして高所に保管中の燃料プールへの注水作業に必死になっていたことを想起すれば良いでしょう。
(ニュースでは東京都の石原都知事の発言だけでしたが、千葉市の最新式消防車も出動した・・その費用を請求中と震災後大分経った頃に聞いたことがあります)
燃料棒の違いによっては冷却する必要がないらしいのですが、その違い・・どこの原発ではどう言う燃料棒を使っているのかが報道だけではよく分りません。
MOX燃料棒使用原発の場合、「再稼働しなくとも、プールで冷やし続ける必要のある使用済み燃料棒の危険と再稼働したトキの危険性との違いが何か」と言う点にあるように思われます。
新設するかどうかの議論は、何の危険もないところに危険物を設置するのですから危険性が「あるかないか」ですから、大きな違いがあります。
(「50歩100歩」と言う言葉がありますが「ゼロと5〜10」の倍率は50歩100歩の比ではありません)
だからこそ、新設して行くどうかの基本方針を決めるには、国民意思が揺れ続けているのですが、その前に既存設備をどうするかの議論が決まった(この間にいろんな議論が煮詰まって来るでしょうからその)後に、じっくり決めれば良いことかも知れません。
この辺は歴史の長い我が国の優れたところで、慌てふためいてさしたる議論もしないで、直ぐに原発ゼロを決めてしまうドイツ等とは民族レベルが違います。
革新系文化人はドイツの英断を賞讃する傾向がありますが、自分自身じっくり考える能力がないから乱暴な決定を英断として賞讃する意見になるのでしょうか。
福島原発事故当時を思い出してみると、ドイツは事故直後慌てふためいて東京の大使館を閉鎖して大阪へ移転していました。
私は当時ドイツ銀行に対する投資信託もどきの遺産相続の関係で解約手続中でドイツ大使館にドイツの裁判制度関係の照会をしようとしたら、東京の大使館が閉鎖されてみんな大阪に逃げている・・窓口が大阪になっているのに、驚いたことがあります。
日本中が大地震に遭遇して大変な心労の最中に、このようなことしたら日本人がどう受け取るかの配慮が全くないのです。
国家を代表して来ている以上は、東京都民が移転しても国家代表として踏みとどまるくらいの気概が必要ですが、率先して東京を引き払って,日本を貶める急先鋒(韓国以上の露骨な動きに日本人は驚きました)をやってしまいました。
メルケル氏は震災後約4年経過後日本初訪問しても被災地へ足を運ぼうともせずに、岡田氏と慰安婦問題を話し合って日本批判したと報道されています。
何ら下準備もなしに鳩山総理が、イキナリ大幅なCO2削減を国際公約したり沖縄の基地移設問題で根拠・下準備なしに「最低でも県外へ」と主張していたのですが実際には、何も実現出来なかったことがあります。
この無責任発言が未だに我が国にとって沖縄基地移転問題解決にとって大きな負の遺産としてのしかかっているのは周知のとおりです。

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