自衛隊の任務(自衛隊法1)

 
昨日は不勉強のまま自衛隊の不甲斐なさについて印象を中心に書いてしまいました。
今日は少し反省して、泥縄式ですが、そもそも自衛隊の任務を知らなかったし、私だけではなく知らない方も多いと思いますので、ここで条文を見て勉強しておきましょう。
第3条記載の通り法律上の主たる任務は侵略=外敵撃退であって、動物や機械設備の故障や細菌の侵略を予定していないでしょうから、人間だけを相手にする前提の組織にしているようです。
自衛隊員は人間相手なら死んでもかまわない・・といって勇敢に戦える(と言う意識があると信じていますが・・・)が、放射能や機械相手では士気が高まらない原因がここにあります。
自衛隊法83条の3で原子力災害出動が規定されていますが、第3条記載の任務には書かれていないのに出動が出来ると言う奇妙な法システムです。
要請があっても「出来る」と言うだけで出動しなければならないとはなっていません。
出動しても違法ではないと言う消極的意味があるだけで(任務規定にないことですから)派遣した時に何をするかも書いていないのです。
戦前の軍に対する反感から自衛隊に対する不信感ばかりが先に立って、出来ないことを強調する精神で法全体が出来ていて、ところどころ出動を解禁するするような法律形式で、するべき任務・義務の書いていない法律です。
派遣「出来る」としか書いていないこの法形式から見ると、要請によって出動した以上は自衛隊が何をしても良い・・軍の行動を制限出来ないと言う万能だった戦前の軍をイメージしているようです。
出動出来るチャンスばかりに目を向けずに、派遣要請があったときには以下の事項に限りすることが出来、しなければならないと言う具体的な権利義務条項の整備が必要です。
要請に対して派遣した後は、何をするかはそのときの自衛隊の気分次第・・国民世論に反したことは出来ないだろう式のあやふやな法律では困ります。
56条では、怖いから嫌だと言うわがままが許されないことになっていますが、83条の出動では主役ではなく「支援」となっているので、言われたらやる程度の応援ですから、主役としての責任感も湧きにくいし、士気が高まらない恐れがあります。
そうとすれば、自衛隊が片手間仕事をするのではなく原子力の防災を主目的として命がけで戦う機関・組織・・昨日も書きましたが、任務目的別の独立の組織が必要な時代がきているのでしょう。
海軍、陸軍、空軍と別分野が出来て来たように原子力被害は侵略に匹敵する大被害ですから、命がけで守るべき対原子力隊ないし災害防災隊と言う分野があっても良い筈です。
(仮称)災害防災隊になれば当然するべき任務も特定されるし「何をしても良いし、しなくとも自衛隊の勝手」と言う今の法律とは大分違ってきます。
自衛隊のように実力を持って行動すべき存在に関しては、するべき範囲を明確にした法律が必要です。

自衛隊法
(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)

(自衛隊の任務)
第三条  自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
2  自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一  我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二  国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3  陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。
(職務遂行の義務)
第五十六条  隊員は、法令に従い、誠実にその職務を遂行するものとし、職務上の危険若しくは責任を回避し、又は上官の許可を受けないで職務を離れてはならない。
(上官の命令に服従する義務)
第五十七条  隊員は、その職務の遂行に当つては、上官の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
(災害派遣)
第八十三条  都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。
2  防衛大臣又はその指定する者は、前項の要請があり、事態やむを得ないと認める場合には、部隊等を救援のため派遣することができる。ただし、天災地変その他の災害に際し、その事態に照らし特に緊急を要し、前項の要請を待ついとまがないと認められるときは、同項の要請を待たないで、部隊等を派遣することができる。
3  庁舎、営舎その他の防衛省の施設又はこれらの近傍に火災その他の災害が発生した場合においては、部隊等の長は、部隊等を派遣することができる。
4  第一項の要請の手続は、政令で定める。
5  第一項から第三項までの規定は、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第二条第四項 に規定する武力攻撃災害及び同法第百八十三条 において準用する同法第十四条第一項 に規定する緊急対処事態における災害については、適用しない。
(地震防災派遣)
第八十三条の二  防衛大臣は、大規模地震対策特別措置法 (昭和五十三年法律第七十三号)第十一条第一項 に規定する地震災害警戒本部長から同法第十三条第二項 の規定による要請があつた場合には、部隊等を支援のため派遣することができる。
(原子力災害派遣)
第八十三条の三  防衛大臣は、原子力災害対策特別措置法 (平成十一年法律第百五十六号)第十七条第一項 に規定する原子力災害対策本部長から同法第二十条第四項 の規定による要請があつた場合には、部隊等を支援のため派遣することができる。

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