原発事故と今後の見通し4(情報開示1)

原発事故が起きてしまった以上は当面挙国一致で頑張るしかないとは言え、小出しの希望的な政府発表ばかりが続いているのに反して実態は悪化の一途です。
既に農産物に高濃度の放射能汚染が次々と明るみに出,しかも原発から40キロ圏の大槌町では自然界の1630倍ものセシュームが土壌から検出され,東京では水道水からヨウ素が出たと言います。
土壌汚染が長引き、広がれば半永久的に農作物は作れなくなる土地になってしまうリスクがあります。
一時的な汚染なのか,これからも継続的に汚染が広がり続けるのかが分らず不気味な状態です。
この先、最悪の事態になってもっと広範囲に土壌汚染が広がり,しかも継続的になると栃木、群馬方面の土壌・・水源地から出てくる利根川水系の水道水は,半永久的に飲めなくなった場合,東京圏は壊滅です。
膨大な海水の連日放水_・・垂れ流しが続いている海域の汚染は当然の筈ですから,既に周辺海域の水産物は測定さえすればほぼ壊滅ではないでしょうか?
国内データを秘匿していても海外では日本海域の魚介類の輸入禁止に動いています。
消防等による大規模な放水体制の続行にも拘らず毎日のようなあちこちの原発何号機から黒煙あるいは焦げで茶色の煙が立ち上ったりしています。
この煙が自然に収まったりしているのも不思議ですが,さしあたり順次電源復興が緒につき始めている面もあり,他方で上記のような悪い結果がいろいろで出て来てるので,今の状態が良い方に向かっているのか悪い方に向かっているかすら分りません。
国民が安心出来るようにするには,「冷静な対応」を呼び掛けるだけではなく,きめ細かな情報公開が必要ですが,ことが重大すぎたからか、当初から政府の歯切れが悪い・・あえて小出しにしている傾向があって、全体像が見えにくいことが残念です。
アメリカの提案がどのようなものであったのか・・これが外交機密とは思えませんが,どうして公開しないのでしょうか?
全体像をどうしようとしているのか明らかではなく,何の見通しもなく出たとこ勝負で最善を尽くしているような印象ですから、海外の立場では危険きわまりないと言う印象になっているのでしょう。
ドイツその他の西洋諸国では大使館さえ大阪へ避難したりしています。
これを過剰避難と言うべきか否かですが、日本政府の情報公開不足が国際的な不信感を助長していることは確かでしょう。
情報公開とは政府の都合の良い説明のことではなく,原発周辺に多数設置した機器のデータそのものの具体的な数値を淡々とネットで手軽に(自動的に)入手出来るように公開するべきです。
更に政府が採用している手順を説明し、これを実行すればどうなる予定か,その予定が不確定で5種類あったとしたらそれぞれの結果予測としてAの場合にはこう対応するBの場合にはこう対応するCの場合には・・・と説明して、専門家の批判を仰ぐべきです。
公開されたきめ細かな数値や、していることの正確な説明さえあれば,それを基に専門家による多様な解説や予測が可能です。
政府の予測・説明は、そのデータ解析による解説の一つでしかない立場に戻すべきです。
何kmまでの退避命令を出すべきかは政治判断ですが、その他の客観的事実については官房長官が連日数回も記者会見する必要がない筈です。
日本中が政府発表に一喜一憂する現状自体が、(しかも不都合なことが起きた結果の釈明中心ではげんなりします)客観的数値の未公表・秘匿体質・・政府によるデータ独占の弊害を証明しています。
官房長官が頑張っていることは評価しますが、現状公開は事務的に先ずやるべきことであって,事務発表すべきことを政治家に委ねているのは,政治判断でゆがめる・潤色を意味していますから,本来筋違いの感じです。
データ公開が不十分な結果,当事者の国民が正確な実情を知ることが出来ず,実害を大して受けない海外の人の方が正確な情報が入手出来て詳しいのでは、自由な世論を形成出来ない後進国・独裁国家並みです。
これでは実態の分らない海外の人が日本から逃げ出し,日本製品の輸入制限に動くのは当然です。

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