精神障害と同意入院原則の実態

本人の同意不要の医療保護入院の要件は保護義務者の同意が原則でしたが、本人が保護義務者=同意したものに対する不信感を持つようになるので保護義務者が同意するのを渋る・・負担が大きいので数年?数年前に家族等の同意があれば良いと変更されたようです。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
第三節 医療保護入院等
(医療保護入院)
第三十三条 精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
一 指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの
二 第三十四条第一項の規定により移送された者
2 前項の「家族等」とは、当該精神障害者の配偶者、親権を行う者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者を除く。

5〜6年前に担当した事件では、本人が受診を嫌がるので母親(といっても80才すぎの人でした)が、毎朝お味噌汁をつける習慣にして薬を混ぜる工夫をしてきたが、最近信用しなくなったのか外で食べると言いだしてコンビニで買ってきて自分の部屋で食べるようになって困っていたという話がありました。
要するに親子の信頼感がなくなると服薬ができなくなって、ついに大事件になったようです。(弁護士にくる事件は刑事事件〜医療観察法対象になった場合です)
経験上の印象でしかないですが、統合失調症など薬でのごまかし?が効かず医師管理の入院中の患者でも中高年齢化して悪化する人が一定率いるようです。
早期発見しても進行を止められない一定率のガン患者がいるように、もともと統合失調症や発達障害あるいは認知障害と病名や型の分類こそ進んだものの、いずれもそうなる原因がわかっていない=対症療法・興奮抑制剤程度?しかない以上は、当然のことかもしれません。
今回の新型コロナウイルス蔓延に対する隔離強制同様に、原因不明だからこそ社会防衛思想による隔離・・収容が基本になってきた歴史とも言えます。
伝染病予防法に関するウイキペデイアの記事です。

伝染病予防法は、伝染病の予防及び伝染病患者に対する適正な医療の普及を図ることによつて、伝染病が個人的にも社会的にも害を及ぼすことを防止し、もつて公共の福祉を増進することを目的として制定された法律である。
1998年(平成10年)10月2日に感染症法が制定されたことにより、1999年(平成11年)4月1日に廃止された。その内容は現在、感染症法へ引き継がれている。
コレラ、赤痢(疫痢を含む)、腸チフス、パラチフス、痘瘡、発疹チフス、猩紅熱、ジフテリア、流行性脳脊髄膜炎およびペストの10種の急性伝染病の予防に関して規定される(いわゆる十種伝染病)。
ただしこの10種以外の予防を必要と認められる伝染病が発生した場合、内務大臣の指定によって本法が適用できる。
本法によって市町村は伝染病院または隔離病舎設立の義務を課せられる。
附則として伝染病予防法施行規則があって、伝染病発生の通報および届出、清潔方法、消毒方法、患者死体および物件の処置法、交通遮断および隔離の手続その他が規定される。

平成十年法律第百十四号
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

引用省略しますが、感染者や同居家族に対する就業制限等の強制力がありますが、今回のような濃厚接触者というだけでまだ検査していない灰色の人に対する強制措置がありません。
武漢から政府チャーター機での帰国者が診断拒否して自宅に帰るのを阻止できなかったなどすべて要請しかできないのが難点です。
小学校等の一斉休校も政府の要請でしかない状態です。
まして強制隔離→人権侵害が関係するので該当感染症の列挙は例示でなく限定列挙主義のようですから、前例のない新型感染症(未知の感染症出現ですので当然列挙されていない)には適用不可能のような(ざっと読んだ限りの)印象では、全て国民や企業にお願いするしかない建て付けのようです。
新型犯罪が増えてから後追い的に法制定される取り締まり形式・罪刑法定主義の思想は・・社会構造転換が徐々に進みそれに連れて新型犯罪が徐々に広がる社会を前提にしているのですが、新型ウイルスが発生すると超短期間に爆発的に患者が広がる現在型感染症には、後追い型立法では間に合いません。
と思っていましたが、今回は以下の通り、迅速に指定感染症になっていたようです。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202001/564039.html?ref=RL2

政府、2019-nCoV感染症を指定感染症に指定
武漢在住の邦人帰国にチャーター機派遣も準備
政府は1月28日、新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症を感染症法上の「指定感染症」と検疫法上の「検疫感染症」に指定する政令を閣議決定した。これにより、2019-nCoV感染症の国内まん延を阻止するために、強制入院や就業制限、さらには入国者への検査指示などが可能となる。施行は2月7日。

迅速指定は困難なので平成24年に新型インフルエンザ特別措置法ができたのかな?と思っていましたが、上記のようにすぐ指定していますので実は私の誤解でした。

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