精神障害判断(エピソード重視リスク)2

社会防衛の話題からコロナウイルス対策に長く入っていましたが、この辺で5月21日以来書いてきたコロナ対策第一幕の総括を(再度緊急事態宣言があった場合やその時の話題の都合で触れることが合あるかもしれませんが)一旦終了します。
March 8, 2020 12:00 am「精神障害判断(エピソード重視リスク)1」の続き・・精神障害と隔離に戻ります。
精神病関係は伝染性疾患ではないのですが、・・「自傷他害の恐れ」という社会防衛思想が前面に出る点で人権侵害と隣り合わせになる点が違います。
これまでの受任事件(障碍者が傷害事件等を起こすのは入院していない在宅の場合が普通)では20年ほど前までには親が70台以上になり子供が40台での事件が多かったのですが、最近(と言ってもこの4〜5年医療観察法事件をやっていません)では80台前後の親に4〜50台の息子というパターンが増えてきた印象です。
経験的印象では統合失調症系の事件は服薬その他の病状管理が行き届かなくなる場合が中心の印象ですが、発達障害等は(人間関係の障害ですので)子供の年齢上昇に比例して家庭内暴力が多くなります。
父親に体力があって抑え込める時期には暴発控え目だった息子が、体力逆転してくると親の威厳だけで管理しきれなくなるのと息子の病状が高年齢化に比例して悪くなる相乗効果かもしれませんが、対外事件に発展して表沙汰になる(弁護士として知るのは氷山の一角)ことが多いようです。
昨年元農水次官が発達障害の息子を自分の手にかけた事件は、高年齢化による将来不安の境界年齢で「自分に体力あるうち・・」にという決断が背を押したものと思われます。
横にそれましたが、親の自助努力・責任感に頼る「保護義務者の同意」という制度に無理が来たので、保護義務者制度ををなくして家族の同意と広げたようですが、今後子供の兄弟が減る一方ですのでこれもすぐに破綻するでしょう。
ところで、本人以外の状況説明に頼る点では救急車出動の場合も付近にいた人の直前状況説明と、客観状況判断、脈や呼吸状態把握し瞬時の判断をしますし、交通事故等事件性の場合、受傷箇所特定など状況説明が重要な端緒です。
精神障害の場合医療申し込みは本人名義で行うものの実は関係者同行・関係者に連れてこられる(受け身であることが多い)点が救急患者と似ていますが、救急患者の場合、第三者の説明だけでなくバイタルデータに決定的意味があるのですが、精神障害の場合、本当にあったかどうか検証余地のない10〜20年前からのエピソードに頼る比重の高い点が大違いです。
20年3月7日の日経新聞朝刊1面には、全国の介護度認定のばらつきを大きなテーマにした記事が出ています。
客観データのない過去の生活状況説明に頼る弊害(客観性欠如の問題)が出ているというべきでしょう。
以下介護認定の実務の紹介は10年ほど前まで後見人等選任申し立て事件や、民事事件の争点・・契約当時の高齢者がどの程度の判断力を有していたかの必要があって介護認定表を参考にしていたころの私個人の経験ですので今はかなり変わっているかもしれませんのでそのつもりでお読みください。
最近では禁治産宣告制度から被後見制度に変わった結果によるのか、高齢化進展により後見制度活用が急膨張してきた結果?後見人選任申立用の診断書様式が簡易になって、精神科専門医でないかかりつけ医に行ってもすぐに、いわゆる長谷川式簡易テスト程度で(付き添って行った妻や娘などから日頃の様子を参考に聞く程度?)すぐに診断書を作ってくれるようです。
(これはこの1年〜2年半ほどの間における複数事件の経験です)
現行民法の制度は被後見人等の能力制限が目的ではなく被後見人等の身上看護や財産保護等に主眼が置かれるようになった制度目的の変更が影響しているのでしょう。
以上の次第で、今では介護認定データを見る機会が減っていますので様式もだいぶ変わっているかもしれませんので、そのつもりでお読みください。
介護認定表では日常行動として自分で何ができるか、時々どういう忘れものがあるか道に迷ったことがあるかちょっとした買い物ができるかなどのチェック表があって介護している近親者等からの日常生活の聞き取り中心で認定している実態があります。
調査担当者が調査事案ごとに実際に買い物について行く実験やお風呂やトイレに入ってもらう?似たような再実験をするのは時間、コスト的に無理でしょう。
親族や介護事業者等からの聞き取りやチェック項目記載結果を総合して医師を中心とする認定会議で介護度を決めているので、大げさにいう人と控え見に言う人との個性差や、利にさとい地域差が大きく出る仕組みだからこそ、政府も地域差が気になって、3月7日に紹介したような都道府県別の認定格差表(その関心で事前データ集計など行い)を公表したのでしょう。
7日の新聞の結果を見ても都道府県別健康保険利用・医療費データとほぼ同じような傾向が出ているような印象を受けました。
医療保険では濫診濫療問題が古くからありますが、受診のためには仕事を休むデメリットや、それなりに痛い思いをする他、無職高齢者の場合家族に送迎してもらうなど負担がある外1〜3割負担などの自費支出が発生します。
経済デメリットが全くないので合理的チェックが働かないのが、生活保護者利用の乱診乱療問題です。
介護関連制度は保険適用外のサービスが介護度のレベルアップになれば自費負担が減る一方でなんらの負担も増えない関係ですから、医療の濫診濫療よりブレーキが効きにくくなる傾向があります。
より高度な介護支援を保険適用にしてほしいという利害では、家族にとってオーバー表現に走るのは合理的行動でしょうが、制度本来の介護必要度の認定と、介護認定が一人歩きして人権侵害に連動する危険という面では割り引いた謙抑的認定が必要ですが、厳し目に割り引いて認定するとこんなに大変なのに介護度が2〜3なのか?あるいは要支援のママなのか?という不満が出ます。
利害対立者の一方が目の前にいない・保険赤字負担する国民は抽象的存在でしかなく直接応援してくれないので、目前の強い声に押されがちになるようなイメージです。
認定される本人も家族に家計負担かけない方が気楽なので、「そんなことくらいできるよ!と反論しないでうなづいて済ます傾向があります。
施設入所者あるいはデイサービス利用者の介護度ランク上げも同様で介護事業者にとっては、保険適用外サービスで顧客に対する自費負担・費用請求額アップよりは介護保険適用サービスになって自費負担が1〜2割になった方が営業的に楽です。
医師や、医薬品業界が、新薬等について保険適用を求める利害団体になるのと同じでしょう。
認定を受ける高齢者もこれが将来自分に対する人権侵害に使われる「万1」の可能性など気にしませんので、問診あるいは調査担当者に対して親族に経済負担をかけない方向へ協力する傾向が高まります。

精神障害と同意入院原則の実態

本人の同意不要の医療保護入院の要件は保護義務者の同意が原則でしたが、本人が保護義務者=同意したものに対する不信感を持つようになるので保護義務者が同意するのを渋る・・負担が大きいので数年?数年前に家族等の同意があれば良いと変更されたようです。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
第三節 医療保護入院等
(医療保護入院)
第三十三条 精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。
一 指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第二十条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの
二 第三十四条第一項の規定により移送された者
2 前項の「家族等」とは、当該精神障害者の配偶者、親権を行う者、扶養義務者及び後見人又は保佐人をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者を除く。

5〜6年前に担当した事件では、本人が受診を嫌がるので母親(といっても80才すぎの人でした)が、毎朝お味噌汁をつける習慣にして薬を混ぜる工夫をしてきたが、最近信用しなくなったのか外で食べると言いだしてコンビニで買ってきて自分の部屋で食べるようになって困っていたという話がありました。
要するに親子の信頼感がなくなると服薬ができなくなって、ついに大事件になったようです。(弁護士にくる事件は刑事事件〜医療観察法対象になった場合です)
経験上の印象でしかないですが、統合失調症など薬でのごまかし?が効かず医師管理の入院中の患者でも中高年齢化して悪化する人が一定率いるようです。
早期発見しても進行を止められない一定率のガン患者がいるように、もともと統合失調症や発達障害あるいは認知障害と病名や型の分類こそ進んだものの、いずれもそうなる原因がわかっていない=対症療法・興奮抑制剤程度?しかない以上は、当然のことかもしれません。
今回の新型コロナウイルス蔓延に対する隔離強制同様に、原因不明だからこそ社会防衛思想による隔離・・収容が基本になってきた歴史とも言えます。
伝染病予防法に関するウイキペデイアの記事です。

伝染病予防法は、伝染病の予防及び伝染病患者に対する適正な医療の普及を図ることによつて、伝染病が個人的にも社会的にも害を及ぼすことを防止し、もつて公共の福祉を増進することを目的として制定された法律である。
1998年(平成10年)10月2日に感染症法が制定されたことにより、1999年(平成11年)4月1日に廃止された。その内容は現在、感染症法へ引き継がれている。
コレラ、赤痢(疫痢を含む)、腸チフス、パラチフス、痘瘡、発疹チフス、猩紅熱、ジフテリア、流行性脳脊髄膜炎およびペストの10種の急性伝染病の予防に関して規定される(いわゆる十種伝染病)。
ただしこの10種以外の予防を必要と認められる伝染病が発生した場合、内務大臣の指定によって本法が適用できる。
本法によって市町村は伝染病院または隔離病舎設立の義務を課せられる。
附則として伝染病予防法施行規則があって、伝染病発生の通報および届出、清潔方法、消毒方法、患者死体および物件の処置法、交通遮断および隔離の手続その他が規定される。

平成十年法律第百十四号
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

引用省略しますが、感染者や同居家族に対する就業制限等の強制力がありますが、今回のような濃厚接触者というだけでまだ検査していない灰色の人に対する強制措置がありません。
武漢から政府チャーター機での帰国者が診断拒否して自宅に帰るのを阻止できなかったなどすべて要請しかできないのが難点です。
小学校等の一斉休校も政府の要請でしかない状態です。
まして強制隔離→人権侵害が関係するので該当感染症の列挙は例示でなく限定列挙主義のようですから、前例のない新型感染症(未知の感染症出現ですので当然列挙されていない)には適用不可能のような(ざっと読んだ限りの)印象では、全て国民や企業にお願いするしかない建て付けのようです。
新型犯罪が増えてから後追い的に法制定される取り締まり形式・罪刑法定主義の思想は・・社会構造転換が徐々に進みそれに連れて新型犯罪が徐々に広がる社会を前提にしているのですが、新型ウイルスが発生すると超短期間に爆発的に患者が広がる現在型感染症には、後追い型立法では間に合いません。
と思っていましたが、今回は以下の通り、迅速に指定感染症になっていたようです。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202001/564039.html?ref=RL2

政府、2019-nCoV感染症を指定感染症に指定
武漢在住の邦人帰国にチャーター機派遣も準備
政府は1月28日、新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症を感染症法上の「指定感染症」と検疫法上の「検疫感染症」に指定する政令を閣議決定した。これにより、2019-nCoV感染症の国内まん延を阻止するために、強制入院や就業制限、さらには入国者への検査指示などが可能となる。施行は2月7日。

迅速指定は困難なので平成24年に新型インフルエンザ特別措置法ができたのかな?と思っていましたが、上記のようにすぐ指定していますので実は私の誤解でした。

精神障害判断(エピソード重視リスク)1

精神病以外の病気の場合、診断や手術ミスかの認定には医師単独で完結しない多くの関与者作成の手術直前の時系列に従った客観データ・体温や脈拍、血圧・血液検査の結果数値や画像の外検体自体が残っていることが多いのですが、精神病の認定や隔離入院判断の場合客観補強データとしては利害関係者のエピソード供述しかなく、診断にあたって、本当に過去にそう言うエピソードがあったかの関心で医師が補強証拠を検討しているように見えません。
一般医療の現場で考えれば、「昨日何時ころからどこそこが痛み始めて今朝我慢できなくなってきました」という説明が嘘かどうかで検証している暇がないし痛くてきている本人の説明を疑う必要もないのでどこそこが「痛い」という説明を信じてその説明に応じた診察(触診や検査)を始めるしかないのが現実ですからそれで良いのでしょう。
精神障害による強制入院のうち措置入院の場合、文字通り強制収容(人権侵害の最たるもの)ですのでいわゆる自傷他害の要件該当性判断が必須で、多くは具体的近隣相手の暴力行為があって警察通報に始まる事件が中心ですので、エピソード自体の客観性が事実上保障されていますし、障害があることにより自傷他害の恐れの認定に際し指定医2名の判断が必要なので判断自体の客観性もある程度担保されています。
問題は入院の大多数を占める同意や保護入院です。
まず措置入院制度を紹介しておきます。
これだけ始まりが厳重な制度設計でも一旦強制入院させたら永久入院で良いのではなく、実務上数ヶ月経過での再審査が必要になっています。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)
第五章 医療及び保護
第一節 任意入院
第二十条 精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。
第二十九条 都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。
2 前項の場合において都道府県知事がその者を入院させるには、その指定する二人以上の指定医の診察を経て、その者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めることについて、各指定医の診察の結果が一致した場合でなければならない。
3 都道府県知事は、第一項の規定による措置を採る場合においては、当該精神障害者に対し、当該入院措置を採る旨、第三十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせなければならない。
4 国等の設置した精神科病院及び指定病院の管理者は、病床(病院の一部について第十九条の八の指定を受けている指定病院にあつてはその指定に係る病床)に既に第一項又は次条第一項の規定により入院をさせた者がいるため余裕がない場合のほかは、第一項の精神障害者を入院させなければならない。
第二十九条の二 都道府県知事は、前条第一項の要件に該当すると認められる精神障害者又はその疑いのある者について、急速を要し、第二十七条、第二十八条及び前条の規定による手続を採ることができない場合において、その指定する指定医をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは、その者を前条第一項に規定する精神科病院又は指定病院に入院させることができる。
2 都道府県知事は、前項の措置をとつたときは、すみやかに、その者につき、前条第一項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。
3 第一項の規定による入院の期間は、七十二時間を超えることができない
第二十九条の四 都道府県知事は、第二十九条第一項の規定により入院した者(以下「措置入院者」という。)が、入院を継続しなくてもその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められるに至つたときは、直ちに、その者を退院させなければならない。この場合においては、都道府県知事は、あらかじめ、その者を入院させている精神科病院又は指定病院の管理者の意見を聞くものとする。

ガイドラインでは概ね3ヶ月に一回この判断のための診察をするようになっているようです。
医療観察法の事件で医師と面談した時に聞いたのかいつ聞いたか不明ですが、自傷他害の恐れは興奮状態のものなので、興奮を鎮める薬投与(が発達しているの)ですぐ興奮は治るので3ヶ月もたってまだ恐れがあるというのは一般的に無理があるが服薬をやめるとすぐ再発する可能性がある・・問題は退院後も服薬指導に応じるかどうかが重要とのことでした。
医療観察法による強制入院の場合、退院後の強制通院制度もあるので素人的には完全体制のような印象でしたが、同意という名の任意や準任意入院の場合、服薬を嫌がる人の場合、どうして良いかの制度問題があるというイメージでした。
違法収容されていると主張して治療に不満がある場合、退院できれば服薬指導に応じないのが普通ですので、これが悩みの種でもあるようです。
無罪主張で判決が有罪認定になった場合、犯罪を冒した反省の情がないことを理由に刑が重くなるのと似た関係です。
実数で言えば、本当の人権侵害事件は万に一つあるかないかで本当に精神障害があるのに病状を自覚しない患者の方が多いのでしょうが、(自覚していても入院生活に不満な場合も多いでしょう・狭い空間に拘束されて気持ちの良い人はいません)だからと言って、患者とはそういうものだと決めつけるのも危険です。
20条で同意入院原則が書かれていますが、実際に自分から進んで入院したい人が少ない前提で医療保護入院という制度が用意されています。
従来保護義務者同意でしたが最近家族一人の同意でも良くなり、これも身寄りのない者などの例外も揃っています。

社会変化=価値観・ルール変化1

社会の仕組みが変われば文化も変わります。
旧文化=価値観に染まったあるいは旧支配層から籠絡された清盛の息子重盛が清盛の新機軸に反発したものの夭逝した結果、旧支配層は内部浸透を諦めてカウンター勢力の源氏を盛り立てて再興させ平家打倒に成功しました。
源氏が勝って見ると旧勢力の期待した旧体制への復帰にならず却って武士の時代への流れが強まり、鎌倉幕府というはっきりした別組織まで出来上がってしまいました。
当時朝廷直属国軍皆無の時代でしたから、平家打倒には武士や僧兵の力が必須であったのですから、武士団や僧兵を朝廷の味方につける必要がありました。
後からかんがえると各地武士団の平家に対する不満は、武士代表であるべき平家一族が、貴族化・公達化してしまった・地下人の期待にそう行動をしなくなったことが反平家勢力盛り返しの基本であったと言われ、旧支配層から見れば平家一族の振る舞いが旧支配層のしきたり・文化を破り新秩序への移行をはらんでいることに対する危機感を基礎にして反平家機運を盛りたてていたのですから反平家の理由が相反していたことになります。
実力組織の一翼を担う僧兵は寺社権益代表ですから旧体制・公卿権益もさらに古層に位置する・・叡山の僧兵撃退に清盛の父忠盛が活躍して後白河院の覚えめでたくなっていく経緯があるように・・ものです。
宗教組織は、世俗の争いから一歩引いている・・直接当事者にならない関係で・・南都焼討や信長の叡山焼き討ちなどもあり、戦国末期には実力組織は完全消滅しましたが・・源平の争乱〜明治維新〜対米敗戦を経た今でも一定の教団を維持しています。
旧政治打倒に成功した場合の政権運営の特徴ですが、一般的には急進的改革を進めるの無理があるので一般的に新旧妥協政策が政権樹立後の運営方法になりますがせっかく革命的動乱に参加したものにとっては、これでは裏切り行為と思い不満です。
平家も「薩摩守忠度都落ち」で知られるように、旧支配層の文化秩序にも参加して和歌を詠み、旧文化に迎合しながらも、一歩一歩武士の地位向上に努力していたと見るべきでしょう。
政治というものは「言い分が100%通るものでないのが原則です」から、武士と貴族層は荘園支配の実利でずっと対立していたのですが、(この対立は実力でとったもの勝ち・中央の裁定ができなくなった戦国時代に入るまで続きます)対貴族の紛争裁定に不満な人はいつもいます。
不満な方・負けた方は貴族寄りだと不満を持つし、貴族の方も負けた時には武士に有利な裁定が多くなったという不満を持ちます。
これが武士層から見れば貴族におもねて貴族化した生活態度は鼻持ちならないとなるし、貴族からすれば「地下人の分際でけしからん」となるのでしょう。
特に八条院領が急速に広がった平安末期では、清盛でさえも後白河法皇の権勢には正面から歯向いにくかったので八条院関連では、武士層の主張が通り難くなっていた不満が蓄積していた可能性があります。
八条院に関するウイキペデイアの本日現在の記述です。

暲子内親王(しょうし/あきこないしんのう、保延3年4月8日(1137年4月29日) – 建暦元年6月26日(1211年8月6日))は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての皇族。初めて后位を経ずに女院となり、八条院(はちじょういん)と号した[1]
・・・彼女自身には特別な政治力は無かったとする説もある[4]。その後も異母兄である後白河法皇の院政を影から支えており、平清盛でさえも彼女の動向を無視することは出来なかった。
八条院の政治閨閥?関係は以下の通りです。

後白河院の異腹の妹・八条院翮子(あきこ)内親王は、美福門院を母として鳥羽天皇の第五皇女として生まれた。彼女は夭折した近衛天皇の後継女帝にとも考えられたほど鳥羽法皇から寵愛され、両親亡き後は二人が残した広大な荘園と近臣の大半を相続し、時の政権から一定の距離を置きながらも、摂関家・源氏・平氏の何れもが無視できない独自の存在感を発揮した。

八条院の経済力は「八条院」に関するウイキペデイアによると以下の通りで、平安時代どころか、後醍醐天皇〜南北朝時代までの政治活動の屋台骨となっていたことがわかります。
政治といっても経済基盤がないと何も出来ません。
上記引用の続きです

・・所領は八条院→春華門院昇子内親王→順徳天皇→後高倉院→安嘉門院→亀山院→後宇多院→昭慶門院憙子内親王→後醍醐天皇に伝わり大覚寺統の主要な経済基盤となった。

源平合戦は革命直後で言えば、革命精神そのままの実現を求めて不満を持つ勢力と反革命・王党派の合体した革命政権打倒運動であり、今で言えば、左右両極支持による現政権打倒運動であったことになります。
新政権打倒に成功して具体的政治に踏み出すと元々の方向性が違うので、文字通り血を血で洗う抗争となる(クロムウエル独裁やジャコバン恐怖政治〜ロシア革命後の抗争など)のが普通です。
日本では新政権発足後の血なまぐさい抗争は起きませんが、それでも民主党政権は方向性の違う集団であったことが(野合と言われ)政権の寿命を縮めました。
朝廷は平家打倒を画策したものの鎌倉府成立により、朝廷権威は逆に低下しましたが、文化による影響力行使・・内部籠絡・・貴族社会価値観浸透を試みたのが、(平家を公達化して骨抜きにしたように)三代実朝の文化的籠絡・取り込みであり、これを拒絶したのが尼将軍政子の(我が子を殺してでもせっかく獲得した武家政権を守ろうとした)英断でしょう。
実朝暗殺は1219年ですから、鎌倉幕府成立後わずか20年あまりのことです。
内部浸透戦略に失敗した朝廷側は、そのわずか2年後の1221年外部から反鎌倉不平武士団を組織して「承久の変」を起こしますが、これは清盛政権を内部から切り崩す重盛籠絡作戦失敗後のカウンター勢力を煽る焼き直しだったことになります。
承久の変(1221年)では、カウンター勢力の棟梁(スター)がいないので二度目の反革命が失敗し、蒙古襲来後の三度目の正直では、(蒙古襲来で活躍した武士の広範な不満を背景にしていた結果騒乱が大きくなり)再び源氏の貴種足利氏担ぎ出しに成功したので、建武の新政となりましたが、政権が始まってみると不満武士に応えることができず、時代錯誤性・貴族有利裁定(広大な八条院領はなお存続していて後醍醐天皇の財政基盤になっていたなど)が命とりで、結局短期間で崩壊しました。
ちなみに「観応の擾乱」の主役・直義の政治も、どちらかというと武士に不利な裁定が多かった(教養が邪魔して?思想が古かったようです)ので短命に終わりました。
応仁の乱以降足利将軍家自体衰微すると、公卿経営荘園の管理料納付争いなど裁く機関すらなくなり、足腰になる公卿の収入源が途絶えると天皇家の収入もなくなります。

言論政治活動の自由 2(テロ計画も自由か?1)

内乱罪などを処罰する規程を我が国の刑法で明記していても、これを憲法違反という主張を聞いたことがありません。
このことは、国家権力を民主的手続き外で転覆することが許されないという思想の現れです。
民主的とは民意・国民意思によるという意味ですから、国民外の意思によって内乱に限らず、個々の法律であれ、国家のあり方や国家形態を変えようとするのは実質的違法です。
国民の自由意思を尊重するとは、国外の意思によって国民を一定方向へ誘導する自由ではあり得ません。
騙されたり強迫されて表示した意思表示は、真意と違うことを理由に取り消せることが民法に書いてありますが、医師と亜gkせんsく自由な表現や自由な行動とは、古代ローマ法の時代から自分が自由に考えた結果による意思です。
民法

(錯誤)
第九五条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
(詐欺又は強迫)
第九六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

外国のための意見であるのに、国民のための意見であるかのように国民を騙す行為は、実質的意味の国民主権主義違反です。
このために国外意思の影響力を遮断するために、政治資金規制法では外国人等からの寄付を禁止しています。
1月23日現在のウイキペデイアからです。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BF%E6%B2%BB%E8%B3%87%E9%87%91%E8%A6%8F%E6%AD%A3%E6%B3%95

外国人からの寄付の禁止
「政治資金規正法第二十二条の五により、外国人、外国法人、主たる構成員が外国人若しくは外国法人その他の組織からの政治活動に関する寄付を禁止されている。しかし、2006年の改正で規制緩和された。会社法124条1項に規定する基準日が1年以内にあった株式会社は、その基準日に外国人または外国法人が過半数の株式を保有する会社だけが規制される。このときにも規制を受けない例外が設けられている。2011年には、韓国人から献金を受けたことについて国会で追及された前原誠司外務大臣が辞職する事件が起きている。」

政治資金規正法は、形式的に見ればお金さえ貰わなければ外国政府の手先になっても良いかのようですが、資金規制法の本質は、お金さえもらわなければ外国の手先になって政治活動しても良いという意味ではなく規制対象にしないというだけです。
日本国が損をしても良い・外国のために意見を言い政治行動するのは困るが、その規制方法がないので、さしあたりお金をもらっていると怪しまれても仕方ない・・しかし怪しいだけですから処罰が緩くするという国民合意のもとで、規制できる限度で規制したに過ぎない・・という法精神の表れと見るべきでしょう。
証明方法が未発達なのに思想を処罰すると自白強要になりかねない・ひいては人権侵害の害が大きい・・証拠方法未発達を前提に近代法では思想を直接処罰しないことにした背景原理です。
これが防犯カメラ電磁記録その他客観性のある証明方法が出てくると元は完全犯罪であったものが、そうでは無くなります。
パク大統領の国政秘密を友人に送信していた事件では、友人が海外転居のために受送信記録をパソコンから消去した上で、パソコンのハードを廃棄しようとしたので、それを入手した政敵関係者?が復元を試みて成功したところから始まったものです。
この頃は意思表示の多くはデータ通信で行われるので内容が記録に残るようになっていますから、共謀段階で多くの記録が残るので自白に頼る時代ではなくなっています。
内心の思想にとどまらず(秘密結社内で)外部表出した記録が残る時代です。
たまたま事務所で大分県教員選考試験で、基準に達しない受験生に対する加点が行われた結果の合格処分取り消し事件の高裁判例を読んでいると、受験記録は廃棄されてしまっていても不正加点するためにパソコン処理した記録が残っていたので、これが信用できるので、選考基準に達していなかったことが認定できるという事実認定が行われていました。
「共謀だけで犯罪にして処罰するのは近代法の法理に反する」といって満足している人は、近代法で「思想が処罰されない」のは証拠上無理があったので除外していたに過ぎない点を無視して、「どんな思想を語らっても構わない」テロ計画支援ソフトを流布させも実行に関係なければいいという原理主義に飛躍させているのです。
殺人の醍醐味やその他社会破壊計画を宣伝して、これを広めても具体的事件の実行に参画していなければ良いという意味ではなく、社会破壊計画はそれ自体社会に対する背信行為です。
特に最近のテロは瞬時に大量殺傷が可能ですから、実行に着手するまで取り締まれないのでは社会防衛には限界があります。
近代では証拠の種類がほとんどなかった・仲間の密告や自白しかなかったので冤罪等を防ぐために不処罰が人権擁護上で重要だったのです。
しかもいろんな思想の間で何が良い思想かどうかの判定が恣意的になるリスクもありました。
今や上記の通り、証拠方法が飛躍的に拡大している上に政府の気に入らなない思想だけ処罰するリスクがないように、一定の既存犯罪行為の中で一定の法定刑以上の重大犯罪の共謀だけ処罰すると言うのですから、元々の近代法思想の射程範囲内というべきです。
反対論者の頭の中が近代科学技術段階で止まっている人の集まりかというとそうではないでしょう。
証拠収集が容易になるシステム発達にいつも反対(・・例えば九州弁連の防犯カメラ設置反対論者を招いた集会を開催していることを紹介しました・・最近の著名事件ではCPS機能を利用した窃盗集団に対する捜査が違法であるという最高裁判例が出ましたが・・)してきたことを見ると、(科学技術発達によって、従来基準では証拠不十分ですれすれ無罪になりそうな事案が「証拠あり」になってしまうのが困るのを「プライバシー侵害」等を理由に反対している(私の人権意識不足の批判があるでしょうが)イメージです。
昭和30年代から共謀共同正犯論の発達があっても、命じられた部下が兄貴分の指示を暴露しない限り証拠がないという考えでした・鉄砲玉として末端配下を使うやり方が有効)が、それでもたまに裏切る部下がいるので、共犯者の自白の証拠能力というテーマで長い間法曹界では争われてきました。
この隘路を打開するために暴力団組織の命令ステムを前提にした(配下組員が親分から命じられたと言う自白がなくとも)共謀認定する実務運用がこの20年くらい前から進んでいました。
選挙法関連では、政治家本人が知らなかったでは許されない連座性が早くから採用されています。
連座制は、共犯認定が困難・・「一定の関係があれば、責任を持つ」のは(知らぬわけがないが)「知らぬ」と口裏を合わされるとどうにもならない・実質不正がまかり通るので、こういう場合には「証拠がなくとも共犯認定します」と言得ないので、連座責任と言い換えているだけですから、本質的には証拠認定の困難性に由来するものです。
この延長での共謀罪法案提出ですから、実はこの法律では証拠認定の必要性が変わらないので、捜査機関の証拠収集能力(科学技術の発達)のアップがない限り実際には法ができても運用実績が挙がらないはず。
連座制のように事実認定なしに実質的に共犯とみなしてしまうのとは異なり、証拠が必要とされる点では近代法理・犯罪の認定は証拠によるという近代法の法理に反していません。
法律が出来ても証拠がない限り検挙もできませんから意味がないのですが、今は多様な証拠が生まれつつあることに応じた法律になった・・それだけに「免れて恥なき徒」にとっては一歩進んだ脅威になるのでしょう。

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