インフルエンザ特措法と私権制限2

無自覚で周囲に大量感染させると取り返しがつかないので「人の集まりは当面自粛してください」という要請に対し、自分は元気だしどこで遊ぼうと、勉強しようと自由だという利己主義でいいのでしょうか?
社会生活は自分だけ良ければ良いというものでないのと同じで、地域社会も地域エゴでなく国家社会全体の利益を総合判断すべきです。
マイナスの総合判断は程度問題ですが、国家規模の非常事態認定がある場合(今回はまだ非常事態宣言していないのかな?)4〜5キロ四方程度の狭い地域の利害・・・自治体首長の総合判断に委ねるべきではない・そういう価値判断は全国規模に政治責任を持つ中央政府が決めるべきことではないでしょうか。
要請は強制でないので応じなくとも法令違反ではないので罰則などあるはずもないのですが、罰則の箇所を見ると主に物流業者に対する保管命令等違反に対する処罰のようです。
本来緊急事態ではその場の命令権者を決めて指揮に従わない者には裁判なしの一時的拘束や強制権限を与えるべきです。
これが戒厳令制度の思想ですが、我が国にはこの例外規定をタブー視していることが新型インフルエンザ等の非常事態が起きても政府が迅速に対応できない・・意味不明の法律になっている背景でしょう。

新型インフルエンザ等対策特別措置法
(物資の売渡しの要請等)
第五十五条 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態措置の実施に必要な物資(医薬品、食品その他の政令で定める物資に限る。)であって生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送を業とする者が取り扱うもの(以下「特定物資」という。)について、その所有者に対し、当該特定物資の売渡しを要請することができる。
2 特定物資の所有者が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施するため特に必要があると認めるときに限り、当該特定物資を収用することができる。
3 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施するに当たり、特定物資を確保するため緊急の必要があると認めるときは、当該特定物資の生産、集荷、販売、配給、保管又は輸送を業とする者に対し、その取り扱う特定物資の保管を命ずることができる。
第七章 罰則
第七十六条 第五十五条第三項の規定による特定都道府県知事の命令又は同条第四項の規定による指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長の命令に従わず、特定物資を隠匿し、損壊し、廃棄し、又は搬出した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第七十七条 第七十二条第一項若しくは第二項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
第七十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

非常時に必要な直接強制権を用意していない・・何となく遠くから騒いでいるだけのような法律に見えます。
指示に応じない時の手段→有無を言わせない直接強制力・・例えばイベント会場の閉鎖その他の強制力が用意されていないようです。
応じないで指示にまで進んだ企業名を公表するなどの規定がありますが、個人名は公表できません。
公表の書きぶりを見ると、懲罰としての公表でなく、政府指示の妥当性を国民批判に晒す目的のような書き方です。
インフルエンザ特措法非常時に必要な直接強制権を用意していない・・何となく遠くから騒いでいるだけのような法律に見えます。
指示に応じない時の手段→有無を言わせない直接強制力・・例えばイベント会場の閉鎖その他の強制力が用意されていないようです。
要請に応じないで指示にまで進んだ企業名を公表するなどの規定がありますが、個人名は公表できません。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC