貿易赤字解消策(保護政策の功罪)3

最近では中国の部品製造能力が上がり単なる加工基地ではなくなりつつあります。
有名なアップル・アイフォンの生産国は主に中国にある・一種の常識ですが・・という以下の記事を紹介しておきます。
https://04510.jp/factory-times/1002/
2015年11月15日公開 2017年9月14日更新

新モデルが発表されるたびに大きな話題となるiPhone。その大半は中国で製造されています。
台湾に本社を構え、中国に生産拠点を持つフォックスコン・グループの中心的存在で、電子機器の受託生産を行う世界最大の工場です。
受託生産とはAppleからの依頼で、iPhoneやiPadなどの製造を行います。iPhone6については、その6割の生産を鴻海精密工業が行っており、ほぼ独占的に製造しています。
なぜ中国でiPhoneはつくられるのか?
人件費は高い?安い?
著しい成長が続く中国では、人件費を引き上げる動きが相次いでいます。iPhone6をつくるときもiPhone5より生産難易度が高いため、賃上げが行われました。今の中国で人件費が安いということはありません。
それでも製造を中国で行う理由は、しっかりとしたサプライチェーン(原料の調達、製造から消費者のもとへ届くまでの流れ)が存在しているからです。しかも鴻海精密工業のサプライチェーンは質が高いことで知られます。たとえばディスプレイなら、原料の到着からわずか4日以内で1万台もの組み立てができる生産能力を備えています。
世界中でつくられるiPhone
では、中国以外ではどこでつくられているのでしょうか?中国に続く国として、最近はインドが注目されています。次はインドでの生産に焦点を当てて解説します。
2020年にはそうなる予定です。なぜインドなのでしょうか?それは、インドのスマートフォンの市場規模が世界第3位を誇るうえ、中国に比べて人件費などのコストを安くできるからです。Apple側も労働人口の多いインドで、コストを抑えながら現地生産できる強みは大きいと考えているようです。
iPhone以外の製造品は?
たとえば、Apple初のスマートウォッチとして発売されたApple watch。生産工場があるのはやはり中国で、江蘇(こうそ)省の常熟(じょうじゅく)にあります。ただし鴻海精密工業ではなく、MacBookやMac Pro、iPodなどを製造してきたクアンタ社の工場です。
日本メーカーもiPhoneにかかわっている!
製造拠点は中国にあるものの、iPhoneの中身は日本製の部品が採用されています。世界の中でも高い質を誇る日本の電子産業は、Appleの貴重な下請け企業として信頼されているのです。
カメラ機能
iPhoneの手ぶれ補正機能を果たしている部品はアルプス電気とミツミ電機という二社によってつくられています。暗い場所でも撮影が可能な「光学式手ぶれ補正用アクチュエーター」は欠かせない装置になっています。アルプス電気は中国へ、ミツミ電機はフィリピンへと生産拠点の移転を進めています。
ディスプレイ
4.7型と5.5型の両方の液晶パネルをつくっているのが、ジャパンディスプレイです。スマートフォンやタブレット、デジタルカメラ、カーナビなどのディスプレイを幅広く手掛けています。iPhoneだけでなく、中国メーカーからの受注が増加すると予想されています。
iPhoneの画面を点灯させるLEDバックライトをつくっているのはミネベアです。同社は中国だけでなくカンボジア、タイなどにも生産拠点を増やしています。

以上アイフォンを現在国際分業の代表的なものとして紹介して来ましたが、以上の通りで、今は(といっても昨日書いたように10年以上前の記事です)単体の技術のみが競争力の源泉ではなく、人材の層の厚さ・スピード等の総合力に移っています。
日本は高度部品供給国としてアイフォン製造に参画していますが、高度部品を作れても・それに安住していると大変なことになります・・世の中は絶えず流動しているので・・発注後どのくらいの日数で大量納品できるかなどいろんな要素が競争力に関係する時代です。
分秒を争う時代になると加工組み立て工場近隣で高度部品工場〜研究拠点を持たないと納品競争に負けてしまう時代が来ています。
この結果「最終加工しているだけ」とバカにして来た中国その他の加工基地周辺に高度技術拠点(今は外資との合弁企業中心ですが)集積するようになって来ました。
複雑なサプライチェーンになっている現在、米国による中国からの特定品の輸入制限がどういう効果・・アイフォン等の先端商品生産工場の米本国回帰があり得るのか?となってきます。
製造業者は、「最も良いものを作りやすい場所で作る」原理で動いているので、米国向けだけ別の国・・最適=ベストでなくても次順位・ネクストの国で作って(その分納品が遅くなるとか2級品?)米国へ輸出することになるのではないでしょうか?
ただし米国の本音は中国進出企業に対する知財移転強要に業を煮やしたという点で擁護する意見がありますが、それならばその制裁をすればいいことであって、同盟国にまで貿易赤字の削減を要求し、関税引き上げまたは、数量規制を要求するのは筋違いになります。
プラザ合意以降日本を叩いても中国が出て来たように、せいぜいインドのような中国のライバル国を育てあげて成功しても、そこへ中国から生産基地移転可能かどうかだけでしょう。
軍事側面から見た対中抑止力としての関係で、インド抱き込みに日米が必死になっているのもわかりますが・・。
後白河が平家を利用して源氏を叩いても平家に頼るしかなく、次に平家を追い落とすと源氏がより強く育ったので、結局武士の時代・鎌倉幕府が出来てしまったし、英国がドイツの挑戦を気にしているうちにアメリカにヘゲモニーを奪われたような関係・米国が追われる立場の再現です。
中国とロシアの違い・・ロシアが中国のように何故離陸できないかが気になります。
ロシア経済は、解放前の中国同様ソ連時代からロケットや戦闘機を作れても車や電化製品等の消費財をまともに作れない経済構造でした。
(ロケットなど大規模技術はスパイで何とかなりますが、洗濯機等消費財は単価が安いので従来型スパイになじまなかったことをSeptember 29, 2017,その他で紹介してきましたが、この点は解放前の中国も同様でした。
ロシアになっても消費材製造に弱い構造のままで困っていたところ、2000年直前頃から資源価格急騰によって黙っていても売上2倍になって潤ってきた結果、資源を売って消費財をふんだんに買えるようになった結果、消費財製造能力が上がらないままになってしまい、まるで進化していません。
この辺の経済原理は以前からナウール共和国の例を引いて書いている通りで、現在でいえば資源頼りの経済脱却にサウジ皇太子が焦っている通りです。
一般製品国際競争力を基準にした為替相場よりも、資源輸出による黒字分だけ通貨が高くなります。
資源だけで大幅黒字を稼ぐ結果、資源以外の農産物を含めて製造コストからみたら割高な通貨設定になってしまう結果、消費材や工業製品の国際競争力がなくなってしまうので、資源の値上がり分だけ国内産業が育つどころか先細りになります。
中国のように部品の国内製造に離陸できない原因は民度レベル差もあるでしょうが、ロシアは資源に頼りすぎるマイナスも大きいでしょう。

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