憲法学とは?3(集団自衛権1)

自衛のための軍事力を持つと相互にヒートアップする一方になるから軍拡競争になって危険だという古典的主張が普通ですが、北朝鮮の事例を見ると前からこのコラムで書いている私の小規模核武装論の正しさが証明されていると思われます。
自衛目的の核武装であれば軍拡競争する必要がなく、超大国が数百発の核弾頭を持とうが、数千発持とうが、弱小国が自国を守るための抑止力としてはちょっとした反撃に必要な数十発程度持っていれば十分です。
本来1〜2発大国へ打ち返せば十分ですが、大国による先制攻撃で発射装置が使用不能にされるリスクがあるので隠密裏(対米抑止力でいえば太平洋中幅広く)に逃げ回っておく予備弾頭保有が必要ですから今の段階では数十発以上となります。
相手が数百〜数千倍の量を誇ってもあまり意味がありません。
このように自衛オンリーであれば軍事予算も最小ですみ、他方超大国の大量兵器保有維持は無用になるので、保有兵器縮小に向かうはずです。
もともと、一定の抑止力保持が攻撃を抑止することは昔から常識的に知られていました。
大して強くなくとも男が一緒にいれば夜道でのかっぱらいや強盗行為を事前に思いとどまらせる抑止効果があります。
路上ひったくり等の被害者に無抵抗が予想される女性が多いのは、この原理を表しています。
夜道では女性一人でなく集団で歩いたり、弱くても母親が子供を迎えに行くことが多い理由です。
非武装論は塾から暗い夜道を歩いて帰る子供を母親やお父さんが迎えに行く必要がないという意見と同じでしょうか?
ドアーや鍵をいかに厳重にしても時間をかければこじ開けられない鍵やドアはありませんが、時間をかけさせることで泥棒は嫌がって寄り付きませんし、お城の場合時間を稼げば応援部隊の到着を期待できるから守りを厳重にしているのです。
正しい方は危害に直面すれば助けを呼べるのが普通ですから、子供の場合助けを呼ぶ能力もないので母親が一緒にいることが必要なのであり、呼ぶ力を含めた一定の抵抗力さえあれば間に合うし、襲う方はリスクが大きいのでよほどのことがないと手を出しません。
このように自衛力とは多くの場合抑止力保持の問題であり、相手の戦力の何割以下で間に合う筈ですから、相手が何割減しか持っていなければ強い方も侵略意図さえなければ、ほんのちょっと多く持てば体面を保てる?ことになり、必要以上持つ意味がなくなるので軍拡どころか縮小競争になる筈です。
思想の自由に戻します。
国家転覆まで言わなくとも、対日テロ組織を応援するために「どうしたら日本でテロを成功させるか」「テロ要員養成方法」などの研究発表の自由がある・処罰法がない以上、いくら研究発表しても良いという人がいるのでしょうか。
思想の自由・国家が思想を差別すべきでないという理由で国税で賄う国立大学教授が、「人殺しを巧妙にやる方法」などの研究に精出していて良い・研究費の助成をすべきでしょうか?
生命の危機にあっても「自衛する権利がない」というような思想ってどういう論理があるのか私には理解不能です。
憲法学者には(私のように理解力の低い弁護士を含めた)一般人に理解不能な高尚な理屈があるのでしょうが、一般人には高尚すぎて理解出来ない・国民の生存本能として「襲われて殺されそうになれば、叶わぬまでも相手の手首や指に噛み付いたり抵抗したい」ものです。
(オーム真理教によって殺害された坂本一家殺害事件では坂本弁護士の奥さんが殺される寸前に相手の指を噛み切っていたと言われます)
危険が迫れば、警察に相談し、巡回を増やしてもらい自宅の施錠を厳重にするのが普通です。
この基本的精神・国民の信念こそが、憲法条文に仮に明記していなくとも政府・国民の守るべき「実質的意味の憲法」と言うべきでしょう。
条文上も生命身体の自由を守るのは国家が「最大の尊重」と書いています。

憲法
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法学者とこれを応援する人権派弁護士は我々一般人の理解不能な高尚な屁理屈をこね回して、人として犯してはならない「実質的憲法」違反行為を誘発する論理展開しているように見えます。
憲法学者の7割もの人が、日本民族約97%が支持している「実質的意味の憲法観」を共有していないのでしょうか?
日本がミサイル迎撃システム強化を発表すると、すかさず中国が日本の軍国主義化を批判するのですが、日本の憲法学者は日本人の多くとは価値観が合わないが中国とでは価値観が一致しているということでしょうか?
ところでこれまでの自衛論は、大声で助けを呼べば誰か来てくれる・自宅のドアーを頑丈にして守る程度ですが、この自衛論は、すぐに警官が救出に来てくれる前提の自衛論です。
アメリカが世界の警察官をやめた場合、いつまでも自宅に長期間篭ってばかりいられないので、必要な外出をどうするかの問題が起きてきます。
一歩外に出れば一定の危険がある・・個人生活で見ても暖房がないし雨も降るので、コートを着たり傘を持つように外部環境に備えるのが普通です。
自衛隊違憲論者や平和憲法死守運動家や護憲運動家の意見によれば、軍備保有=侵略国家になるようですから、この伝によれば日本周辺は日本を侵略したい国々ばかりひしめいていることなります。
ところで自衛隊合憲論者でありながら、領海外での集団自衛権否定論は首尾一貫しないように見えます。
領海外での自衛行動が出来ないとすれば、自宅の戸締りができても一歩も外に出られないほど危険な社会になっても、家の外では自衛することも許されないという論理でしょうが、そうなれば日々の買い物にも仕事にも学校にも行けないので1〜2週間でまいってしまいます。
国家単位で見れば、これまで米国が世界の運輸・航路安全を保障してくれていたのですが、今後インド洋や東南アジアや南シナ海のシーレーンで航行の自由を阻害されるようになると日本経済が存続できるかの瀬戸際に直面します。
特定国が、この航路で日本向け貨物だけ止めた上で日本に無理難題を要求してきても、これを受け入れるしか無くなる事態になればどうするかです。
全面的に航路を止めなくても、国籍を不明の海賊船を多数送り込んでしょっちゅう日本向け船舶のみ狙って略奪や乗務員殺害を繰り返すようになった場合どうなるでしょうか?
日本向け輸送だけ護衛船団が必要となれば、コスト増になり他方で諸外国にとっては日本向け用船料アップ要求になり、交易条件が非常に不利になります。
今の尖閣諸島近辺の状況を見ればわかるように、中国は公船や漁船と称して日本の海上保安庁の船の何十倍?もの船を海上保安庁の周りに動員して群がっています。
これを海賊と称して武装化して南シナ海やインド洋などで日常的に輸送船の周囲に群がり襲撃を繰り返すようになると、日本の海上自衛隊独力では守り切れない事態が起きてきます。

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