消費者信用の拡大4(破産増加?)

ただし、経済成長すると収入が増える結果、(財政赤字解消には増税策と成長による収入を増やす方法があるのと同じです)過剰債務率が低下するので、安倍政権成立直後から4〜5年にわたる就労率上昇によって家計の可処分所得率アップが続いている結果、過剰債務率がかなり緩和されているはずです。
16年以来急減傾向にあった破産申立てが昨年初めて1、2%アップしたと言うのですが、1回キリの増加では、今後の増加傾向を示しているのか、ピークアウトなのか不明です。
個人破産や企業倒産は、その時の不景気にもある程度左右されますが、不景気が来ると相乗効果でとどめを刺されるだけのことであって、借金してすぐに破産や倒産しません。
倒産は事業のジリ貧傾向が数年以上続き債務残高が ジリジリと上がって行きメーンバンクが追い貸しに慎重になり、2番手の銀行から借り増し〜さらに3番手さらにノンバンクへと格を下げて行くのが普通です。
資金繰りに窮して銀行や親類縁者に追加融資を懇願しても誰も貸してくれなくなって最後に倒産するものであって、もしも泣きついて貸してくれればまた半年くらい延命します。
また貸す方も自分が貸しても1〜2ヶ月で夜逃げするような人に貸すと大損ですから、すぐに潰れるようなことは滅多にありません。
倒産や破産と本来の債務発生とはタイムラグがあるのが原則です。
東北大震災時に緊急巨額融資・・支払い期限の先送りなど大判振る舞いがありましたが、据え置き期間5年くらいありました・・この間返済が始まらないので破綻が送りされます。
家屋敷商売道具を流されてしまった人の中で再起しようとする人だけが借りたのでしょうが、普通の企業が事業拡大投資するのに比べてリスク率(いつ街が復興し避難した人が戻って来るか知れないなど)が高すぎますので、当然焦げ付き率が高まります。
だからこそビジネスに基づく融資がなり立たないので特別枠での低利融資制度が出来たのです。https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/shinsaikashitsuke.html
東日本大震災復興特別貸付の概要(日本政策金融公庫)
融資限度額 各融資制度ごとの融資限度額に6,000万円を加えた額 別枠4,800万円
※生活衛生セーフティネット貸付は別枠5,700万円
ご返済期間 (注2) 設備資金:20年以内<うち据置期間5年以内>
運転資金:15年以内<うち据置期間5年以内>
利率(年)(注2)
被害証明書等の発行を受けられた方
【当初3年間】<3,000万円まで>基準利率-1.4%(注)
<3,000万円超>基準利率-0.5%【4年目以降】基準利率-0.5%
上記以外の方 基準利率
東日本大震災に対処するための特別の財政援助および助成に関する法律(平成23年5月2日法律第40号)第2条第3項に定める特定被災区域(岩手、宮城、福島の3県は全域。青森、茨城、栃木、埼玉、千葉、新潟、長野の7県は一部)をいいます。」
据え置き期間の5年を過ぎたころからこの支払いが出来ない焦げ付きが大量に発生するだけではなく、デフォルト回避のためにカードローン等の利用に走る人も増えます。
個人の場合二重ローン解消制度が有名ですが、これは新築資金を貸してくれるのではなく、残ローン解消のために債務整理の申立してもブラックリストに載せない特別扱いするとか手持ち保留金限度を引き上げる程度です。
一般的行動を見ると、住宅ローン等の支払いが2〜3ヶ月に1回苦しくなってきて、少しだけカードローンに手を出しても、次のボーナスで返せるなどの繰り替えして数年経過で次のボーナスでも返せなくなっていき徐々にカードローン残が膨らんでいくような流れが一般的です。
ノーローン・当初何週間〜1ヶ月無利息広告が成り立っているのは当初は期間中に返せる人が大方ですが、これを繰り返している内に無利息期間中に返せなくなる人が出てくるのを見越した商売が成功することを証明しています。
破産申立て件数の激減が約十数年間続いた傾向の中で1、2%アップの増加率が仮に数年続いたとしても単なる下げ止まり・・岩盤・・全体としての減少傾向に変わりがないかも、この4〜5年の景気動向を含めてもっと詳しいデータがないと分かりません。
例えば企業倒産件数で見ると以下のとおりです。
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/monthly/201704.html
倒産件数が680件 4月としては27年ぶりの低水準
倒産件数は、前年同月比2.1%減(15件減)で2カ月ぶりに前年同月を下回った。前月3月が3カ月ぶりの増加に転じて推移が注目されたが、4月としては1990年(526件)以来27年ぶりの低水準になった。依然として企業倒産は抑制された状況が続いている。」
このように3月には増えていたのが4月には減っていますから、1回だけでは分かりません。
物事には岩盤があるのが普通ですから、10数年振りに破産申立てが年間1、2%増えるのが2〜3年続いてもその後また下がったりすれば、全体としては安定レベルと評価すべきでしょう。
http://jikohasan-pc.yw-information.com/toukei.htmlからのコピーです。
 年度別破産件数統計グラフ
上記によると、26年から28年の差は視覚的にはほとんどわかりませんので、岩盤に来ているのかも知れません。
月別破産件数統計 総数 月別破産件数統計 自然人

消費者信用の拡大3(過剰与信と地銀暴走?)

サラ金禍による家庭崩壊や犯罪の増加によって放置できなくなったことから、サラ金に対する規制を厳しくしたのが以下のサラ金2法です。
http://www.soyokaze-law.jp/7-1.htm
昭和58年(1983年)11月1日、「貸金業の規制等に関する法律」(貸金業法)が制定され、さらに「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(出資法)も同時に改正され、いわゆる『サラ金規制2法』として施行されました」
その後グレーゾン金利に関する裁判解釈が厳しくなる一方で、平成22年には利息制限法の上限が20%になり、出資法違反の刑事罰も同じになって(グレーゾン金利がなくなり)総額規制も出来るなどによってようやくサラ金禍が収束したところです。
サラ金だけ悪者に仕立て上げて独立系サラ金のを大方を潰してしまって(独立系王者のだった武富士もついに破産して今は元プロミス(今は住友銀行系でSMBCコンシュウマーとかと言いますが・・)買い取って幕引きとなりましたが、大元の過剰融資がなくなった訳ではないのでその帳尻をどうするかの決着がついていません。
銀行・信販系の物販に基づく過剰融資によって一定率で発生する支払い困難者の受け皿をどうするかというところですが、サラ金に変わって銀行自身または子会社がカードローンの融資枠を設定して受け皿となっています。
カードローンは銀行系ですからサラ金より金利が低いことが売り物ですが、いずれせよ元の金利・・例えば住宅ローン等より何倍も高いのが原則ですから、先送り期間がサラ金より長い程度のメリットしかありません。
大手銀行のカードローン金利の比較表が以下に出ていますので参照してください・3%前後〜18%のレンジで信用力・例えば大手企業ホワイトカラーの・・によって金利が決まる仕組みですが)サラ金より低い場合が多いとはいえ1%前後の住宅ローンに比べれば何倍〜何十倍もの金利=利幅が大きくなります。
http://camatome.com/2013/01/ginkou-cardloan-kinri-hikaku.php
私の実務経験による印象では、平成18〜20年頃にサラ金禍の大方が収束し、その後は逆に過払い訴訟で受け身になっていった記憶です。
その後は銀行系が受け皿になったのですが、企業経営者向け融資と違い銀行系であれサラ金系であれ、一旦消費信用にハマると、アリ地獄にハマった様に抜け出せなくなる点が共通です。
住宅ローンを払えなくなった人がより金利の高いカードローンで借り増しして安い住宅ローンの補填をするのではもっと苦しくなる・・銀行系は金利がサラ金より低い分だけ破綻までの期間を先延ばし出来るだけですから、大元の過剰融資が有る限りその内爆発します。
サラ金からカードローンへ主役交代してから約10年経過で、ついに先送りの限界が始まりかけています。
ここにきてカードローンが過剰貸付の原因になってきたのは、商売の方向が定まらない銀行が苦し紛れに総量規制のない(総量規制は貸金業法の規制ですから銀行は関係がありません)カードローンの過剰貸付に走っている現象ではないかと思われます。
格差反対論の標的になっている金融業ですが、実は低金利・金余りの結果、地銀などは融資業務が成り立たなくなっている状況をJune 27, 2017「格差社会1(業種内格差)」で紹介しましたが、カードローン拡大を「リテール重視」と称してごまかしてきたに過ぎないように見えます。
地銀の多くは実はまともな融資先がない結果、この数十年国債等の債券投資の利ざやに頼ってきたものの、日銀のゼロ金利政策によって国債購入頼れなくなったので、リスクのある国外債券投資するしかなくなり、国内的にはカードーローンの乱売・・過剰融資で稼ぐしか無くなっていた弊害が出てきたのではないでしょうか?
たまたま、7月9日の日経朝刊春秋欄には、海外債券投資に傾く地銀の動向に対する批判的意見が出ています。
債券投資業になるには銀行の元々の成り立ちが違うので大手銀行でさえDNA的能力に無理があるのではないでしょうか?
「小人閑居して不善をなす」と言うように、銀行にとってまともな仕事がなくなると生き残るために能力の裏付けもなく変な方向へ走っている心配があります。
自主規制(目利きでもないのに海外債券の投機的売買に参入したり、国内では高利貸しマガイをしないと銀行がやっていけないならば)時代の役割を終えた銀行を早く(強制的に)絞り込むべきでしょう。
銀行は祖業である決済機能しか残らないのではないかと15年ほど前に書いたことがありますが、これについてはATMの発達でセブンイレブン等のコンビニ系にお株を奪われそうになっています。
東京スター銀行だったか?では、どこかのコンビニへのATM委託を始めるとだいぶ前にニュースになっていました。
7月9日現在のイオン銀行の宣伝です。
http://www.aeonbank.co.jp/loan
イオン銀行カードローン
「カードローンとは、審査で決まった限度額以内なら、必要な金額を何度でもお借入れできるタイプのローンです。」
「カードローンが暮らしを彩る7つの理由・・・」
と借金生活がいかに素晴らしいかの宣伝です。
お借入れ極度額は10万円~800万円。金利は年3.8~13.8%(2017年7月1日現在)」
上記によれば、サラリーマンが800万円まで融資可能の審査通過の場合を例にすると、実際にはない極端な例ですが銀行4行を歩けば短期間に合計3200万円まで借りられる仕組みです。
総量規制がないとこういうことが起きるので、総量規制が始まったのですが銀行がこういう悪どい宣伝をしないだろうと信用し規制対象にしなかったのですが、これを悪用している可能性があります。
https://mainichi.jp/articles/20170418/k00/00m/020/104000c
銀行の個人向けカードローンの残高が急増し、過剰融資を懸念する声が強まっている。消費者金融並みの高金利である一方、貸金業法で定められた融資額の制限(総量規制)が適用されず、多重債務対策の抜け穴になりかねないためだ。銀行業界は3月に融資審査の強化を申し合わせたが、「自主規制でどこまで効果があがるのか」と厳しい視線が注がれている。
銀行のカードローンの残高は、貸金業法改正で貸金業者に「年収3分の1まで」との総量規制が導入された2010年6月以降、急速に増加。16年末は5兆4377億円で、10年3月末比65%も膨らんだ。特に日銀が大規模金融緩和を始めた13年以降、各行は高い金利を得られるカードローンをこぞって強化。一部地銀にとっては主力商品に成長した。」
「さらに16年の自己破産申立件数は前年比1・2%増の約6万4600件で13年ぶりに増加に転じており・・」
「こうした声を受け、全国銀行協会は3月、各行が広告宣伝や審査体制を自己点検し、見直すと申し合わせた。
・・日弁連多重債務問題検討ワーキンググループの三上理(おさむ)事務局長は「マイナス金利で銀行の収益環境が厳しい中、高利の銀行カードローンの貸し出しが申し合わせだけで減るとは考えにくい。制度の見直しが必要だ」と指摘する。」
破産増加がカードローン増加によるかどうか今のところ私には分かりませんが、消費者の債務総額がいくら増えても貸し出し競争しても良い制度は間違いだと思いますから、信用供与には系列に関係なく総量規制すべきでしょう。

消費者信用の拡大2(供給過剰と過剰与信)

民法の消費貸借では同じ国民が貸す方に回ったり借りる場合もある互換性(その他分野も全てそういう建て付けです)の関係で出来ています。
(「とんとんとんからりんと隣組の歌で歌詞の1節に「あれこれ面倒 味噌醤油御飯の炊き方 垣根越し教えられたり 教えたり」とあるように、要は味噌醤油をちょっと借りたり貸したりする程の関係・・今で言えば財布を忘れてちょっと知人に小銭を借りたり手元のボールペンを貸してもらうような場合です。)
業として貸すようになると民法の原則的規定では済まなくなってくる・・貸金業法から規制法になっていくのは、業者は貸すばかりの一方的な関係になってきたので規制が必要になったものです。
戦後自由化が進んだように言われますが、結果から見ると逆に宅建業法や証取法から金融商品法になり道路交通法や建築基準法など規制強化が進む一方です。
あらゆる分野で対等者間の契約というものが意味をなさなくなってきた時代の法制度がどうあるべきかが消費者保護法制定の原動力でしたし、いろんな分野で問われています。
自由化が進むとこれのルール化の必要が出てきた・・モータリゼーションで移動の自由が現実化すると、(歩行者同士ならばスクランブル交差点でわかるようにルールがなくとも自然に入り乱れて歩けますが)運転者と歩行者となれば、隔絶した力関係を背景にした交通ルールがより細かくなり、不動産取引が増えると宅建業法ができ、金融商品が増えると証券や金融商品を取り扱う業者に対する規制が厳しくなって行くのは、仕方がないでしょう。
投資のようなリターンが想定されていない消費信用の拡大発達に戻りますと、消費財購入の借金は勤労者で言えば、原則的に昇級を前提にしない限り満期が来てもその時返済すべき新たな収入がないので無理っぽい借金ですが、これを打開するために毎月一定額支払う月報販売が始まりました。
欲しいものを買うために1年間貯蓄してから買うのではなく欲しいと思ったらまず買ってその後1年間毎月貯金しているつもりで月掛けで業者に払えばいいというやり方です。
これは時間を金利負担で買うことになって一見合理的です。
お金を貯めてから友達と旅行したい、進学したい、おしゃれな洋服を買いたいなどと言っていると年令・チャンスがどんどん過ぎてしまいます。
「一見」合理的とは合理的に行動できる人にとって(ダケ)合理的というだけであって、「あれが欲しいがそのために1年間は他の買い物や遊びを我慢できる」人はそんなに多くありません。(だから多くの人にとってお金が貯まらないのです)
本来自発的に貯金できない人でも借金になると半強制的(韓国女性のように海外売春遠征してでも返そうとする人が出てきます)なので無理して払う動機付けが生まれる結果、自発的貯金を殆ど出来ない人の8〜9割を何とか真面目人間に変身させることに成功するでしょうが、それでも終わりころには息切れする人が出てきます。
供給側からすれば、消費の先取りをすれば1年早く売れるものの、その代わり1年前の先取り分の反動減が起きますし、(消費税アップ予定やたばこ値上げ前の先取り需要景気の後で値上げ後の反動減がおきます)消費者が月賦を払うために節約すれば日常的に消費していた他の小さな100個の買い物を我慢する結果他の商品が売れなくなります。
早い者勝ちを防ぐために、リボルビング方式が考案されました。
これは次々と商品を買いクレジットを組んで総額が増えても毎月の支払額が変わらない(返済期間が長くなるし金利支払い期間が長いので帳尻は合っていますが)目先にごまかされる人には一見魔法の仕組みです。
満期を際限なく伸ばしていければ返済期限がないのと同じ・・金利負担だけが重荷ですが、どんどん金利を下げて行けば、(例えば5%の金利が1%になれば借入総額を5倍まで増やしても金利負担が同じです)借入限度が上がります。
日本国債の買い替え債発行はこの原理の国家的応用で、満期が来ればその買い替え債を発行してその新規発行によって得た資金で完済して行くので満期のない借金と資金繰りとしては同じです。
この際、重要なのは買い替え債発行時の国債相場・金利動向です。
満期直前に金利が1%アップしていれば1%多く発行しなければ資金不足になりますから債務残高が膨らんでいきますし、下がってればその逆で借り換え債発行額を減らせます。
国債の場合借り手である政府の方で勝手に?金利を決められるので、低金利政策が主流になってきたことになります。
消費者信用の隆盛は、モノ不足時代が終わり供給過剰体制が恒常化→高度成長終了→給与アップ・支払い能力の右肩上がりの終焉→支払い能力を超えた消費拡大を煽るしかなくなったことによって消費拡大を求める供給側と事業用融資の縮小が始まったことによって業務存在価値を失った金融資本の生き残りのための合作で始まった印象です。
昭和4〜50年代から社債等資本市場の発達により、優良企業が直接資金調達が簡易可能になったことにより、庶民から小口資金を集めて貸す・・問屋的役割の銀行から資金調達する必要がなくなったこと(「銀行よさようなら、証券よこんにちは」のキャッチフレーズ)を14〜15年ほど前にこのコラムで紹介したことがあります。
このように支払い能力を超えた需要喚起必要性の視点で国家的に見ると、需要創出のためのケインズ的財政投入の活発化・・日本政府借金(・・国債には建設国債と赤字国債の2種類がありますが、)財政赤字の始まりと消費信用活発化と赤字国債発行が恒常化するようになった時期がほぼ並行していたことからも観ることができます。
赤字国債に関するウイキペデアでは以下の通りです。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit
「財政法第4条は「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」と規定しており、国債発行を原則として禁止している。財政法第4条の但し書きは「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定しており、例外的に建設国債の発行を認めている。
しかし、1965年度の補正予算で赤字国債の発行を認める1年限りの特例公債法が制定され、赤字国債が戦後初めて発行された。その後は10年間は赤字国債の発行はなかったが、1975年度に再び発行されて以降は1989年度まで特例法の制定を続け赤字国債が発行された。
1990年度にはその年の臨時特別公債を除く赤字国債の発行額がゼロになり、1993年度まで発行額ゼロが続くものの、1994年度から再び発行されその後に至っている。」
国家財政に話題が逸れましたが、消費信用の拡大は一見合理的ですが、上記の通り合理的な人間ばかりではない・時間の経過で支払いに窮する人が一定率発生します。
住宅ローンやクレジットの支払いに困った人がデフォルトの先送りのためにサラ金に借りる傾向が出るのは当然の成り行きでした。
上記のとおり過剰消費=過剰債務を誘導する限りいつかは(過剰である以上)支払いに困るのですから、破綻先送利のために徐々に下位の金融業者(サラ金にも払えないとヤミ金に走る→犯罪に走るなど・・自殺と他殺とは紙一重です)に頼るようになるのは想定範囲内のことです。
サラ金金利が高すぎる、取立てがひどいなどの問題があるとしても、過剰貸付を放置するから住宅ローンや各種クレジット支払いのためにサラ金等に借りるのですから、本来サラ金に行くようになった時点でデフォルトすべきだったことになります。
サラ金で借りて2〜3年ほど住宅ローンやクレジット等を払ってくれた・・先送りで得したのは、汚れ役をサラ金に押し付けた金融機関や信販系・バックの物販業界です。

消費者信用の拡大1(商法の消滅?)

中国や米国の車ローンのサブプライム化→節度なく借金にのめり込む状況を見ると国ごとに庶民レベルに大きな差があるように見えます。
新興国・・貧しい環境から脱却できると食べ過ぎて肥満や糖尿病になる人が多いのですが、その場合にもはじめっから自制する人と、一定の経験で学習しますから、肥満比率の上昇がどこまで上がって止まるかは民度次第です。
消費者信用も初めてのときにどの程度まで爆発的に広がるかも民度次第ですが、2回目3回目には学習して広がりが小さくなる傾向も民度次第です。
自然災害でさえ繰り返されたときの対応力はその民度次第です。
消費信用急拡大大傾向を見ておきますと、金融対象変化の側面から見ると、何のために貸すのかと言えば古くから事業資金の不足を補うもの・融資とは実質的に見て投資資金の融通でした。
税や利息の語源から見ても、種モミを貸せば秋には実る前提でその回収をはかる仕組みから始まっていることからもわかります。
株式投資との違いは確定利回りを約束するかどうかの違い(満期に払う能力がなければ結局回収不能になる点は同じ)ですから、投資と金融は(相手の品定めが重要な点でも)元は同根です。
近年では(例えば国債やサブプライムローン販売で知られるように)満期が来る前に換金売りするのが普通ですので、売買価格・市場相場が発行体の信用と金利動向によって変動する結果、確定利回りといっても券面額のない株券と機能的に似て来ました。
金融と証券の分離または融合などとこの数十年騒いでいますが、金融の本質を考えれば本来の業務・・目利き能力が必要になるのは当然のことでしょう。
融資対象の分類では、元々は種もみの貸付から始まった=自営農民が対象であったことからも分かるように従来(戦後だけを見ても)金融を必要とする人・顧客ターゲットは経済合理的に行動する経済人・企業・事業主を主たる対象にしていたものであって、事業主や経営する法人の代表者であっても事業を離れた個人にとっては、銀行はお金を預ける関係であって借りる関係ではありませんでした。
同じお任せでも貸付債権の回収リスクを銀行が負う点で、投資ファンドや保険商品と実は結果がちがっています。
リスクを持ってくれると言っても失敗が多くなって取り付け騒ぎがおきれば預金保険機構ができるまではただになってしまった点では同じです。
(今は1000万円までの保証です)
預金者が銀行の貸付先の信用状態を全く分からないで預ける以上は、銀行にとっては大量の貸付の中から一定率の回収不能債権が発生してもトータルで中和して預金利息以上の利潤をあげれば良い・以下になれば赤字になる関係です。
回収不能・・不良債権率を低く抑えることが銀行にとって生命線ですから、貸付段階の審査能力・目利き能力が最重要です。
リスクの高そうな事業者には銀行が貸せませんが、高度成長期には資金需要が高かったのでグレーゾーンの企業は高利金融業者から借りる(私の弁護士業務での経験では昭和50年始めころには月利5分が標準相場でした)ようになり隆盛を誇りましたが、多くは正規金融機関が相手にしない弱小事業者向けのものでした。
借りる方も事業経営者の場合、それなりの経営能力・自己規制能力を前提としていたし、消費財は買うための資金が溜まってから自己資金で買うのが、原則的生活態度でした。
戦後でも消費者向け融資は例外的で担保のしっかりした住宅ローンのみの時代が続いていました。
その後自動車や耐久消費財の月賦販売が始まってから、耐久消費財と言えない商品購入にまで各種クレジット販売が発達しましたが、いずれも物販の分割払い・・「物(ブツ)」の裏付けを伴うものでした。
純粋に消費目的のクレジット(信販系)や借入・貸付が(以前紹介したように日本でも古くは土倉〜現在の質屋がありましたが)昭和40年ころから徐々に広がり、公然と行われるようになったのは、50年前後頃のいわゆるサラ金の発達以降になります。
大衆社会・・経済主体としての訓練を受けていない一般消費者が経済活動の主役に躍り出た時代の1側面です。
法の世界でも近代法では、商人対象の商法と素人対象の民法の2階層の仕組みでしたが、過去約10数年の法令改正の大筋方向を見ると民商法の垣根を崩していく方向性が顕著です。
民法では特約しない限り無償が原則ですが、今どき他人にタダで物事を頼むことなど想定すらできませんから、今はみんな商法(商行為法)の世界に生きています。
今国会で成立した民法大改正でも時効や金利制度を民商法で共通にするなど垣根をなくす方向が顕著ですから(最近の15年前後では商法から会社法や保険法が抜けてしまうなど空洞化が進んでいます)「商法」という大法典の存在意義がそのうち無くなるように思います。
私のような関心を持った研究論文がすでに2008年に発表されています。
http://wwr8.ucom.ne.jp/sh02/pdf/shiryou0601.pdf
[商行為法WG最終報告書]
商行為法に関する論点整理
(第504条~第558条,第593条~第596条)
2008年3月31日
商行為法WG
(東京大学 山下友信 京都大学 洲崎博史 東京大学 藤田友敬 学習院大学 後藤 元)
【前注】
(1)以下の検討は,民法(債権法)の想定される改正に際して商行為法の規定についていかなる調整が必要かという観点から行ったものであり,商行為法ないし商法全体の立法論的あり方について根本的に検討しているわけではない。例えば,商法の適用範囲を画する基本概念である商人および商行為の概念自体については,根本的な検討が必要であり,その結果如何では,以下の検討結果にも影響が及ぶことがありうる。・・・・
(2)以下において「一般法化」とは,商人・商行為という要件をはずして規定を民法に
移すこと,「統合」とは,何らかの要件(商人性・事業者性・有償性等)を付加した上で民法に組み入れることをいうものとする。
・・以下面白そうですが、長くなり過ぎるので省略します。
このように民=一般人と商人の区別がなくなりつつある社会では、社会の一体化が進んでいるかと言うと逆で、格差社会と言われるように消費者と供給者・企業という隔絶した社会構造になっています。
いわば民商の2階層の社会から消費費者保護法が成立していることが象徴的ですが、フラットな消費者・大衆と事業者の2元社会・・中間の市民がいなくなりつつある社会です。
消費者契約法
(平成十二年五月十二日法律第六十一号)
  第一章 総則
(目的) 
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

中国新車販売数の推移

中国の過去の新車販売台数の伸び率については、以下の記事にはいればグラフになっていますので、(ただし14年2月の論文ですから14年からは予想数字ですが15年の2500万台など予想数字は概ね当たっています。)ご関心のある方は直接ご覧ください。
https://www.shinnihon.or.jp/shinnihon-library/publications/issue/info-sensor/pdf/info-sensor-2014-02-07.pdf
JBS 情報センサー Vol.90 February 2014
グラフをコピペできないの木になる部分だけ紹介しますと、これによると2002年には37.4%増で、2003年には40.5%増の後04年は11、1%、05年は13、5%増に減速し、6年25.3%、7年21.8%の後リーマンショックの08年には6.7%増にまで低下します。
09年には何と45.5%増になって、翌10年には2.3%11年には2.5%に急減します。
その後12年4.3%13年10%と一言で特徴を書けば、乱高下の連続ですが、一応プラス成長が続いていました。
14年以降は予想伸び率ですが、この1〜2ヶ月の間にこのコラムで15年以降の日系独韓系等の国別販売伸び率で紹介して来たとおり実際にも毎年二桁増程度の伸びが続いていました。
これが昨日紹介した通り17年5月にはわずかですが、ついにマイナスになったのです。
以下文字部分の一部も引用しておきます・・ドイツのフォルクスァーゲンは85年から進出していた老舗であったことがわかります。
「乗用車販売でも世界一となった中国自動車市場 広州駐在員長内幸浩•
Yukihiro Osanai
2007年からEY広州事務所に駐在し、中国華南に進出する日経企業のサポートに従事している。日系自動車メーカーが集中する広州エリアを中心に武漢、重慶、長沙等完成品メーカーや部品メーカーに対する監査、税務、アドバイザリー等、豊富な経験を有する。
2013年12月3日ドイツ自動車工業会は、中国乗用車販売台数は1,600万台を上回り、初めて世界最大の乗用車市場となり、今後も、その地位を維持することが見込まれるとしています。
一方、外資規制など課題の大きさも、その規模を反映しています。2000年以前の創設期では、国営関連企業の下、少数の熟練工が組織的な品質管理なしにローエンドモデルの商業車生産を行っていました。
1985年にはフォルクスワーゲンが外資活用の下に参入し、86年から始まった中国第7次5カ年計画から自動車産業は基幹産業となりました。
2000年代は発展期となり、世界貿易機関に加入した01年ごろから所得水準向上や道路インフラ整備が進み、モータリゼーションが急速に進みました。
熟練工の増大、品質管理の向上、海外部品メーカーの参入により、顧客ニーズに応じた生産が可能となりました。
09年に自動車生産台数および販売台数で世界一となった中国は、13年に乗用車の販売台数でも、世界一になりました。中国汽車工業協会(CAAM)は中国の自動車販売台数が15年には2,500万台、20年には約3,000万台に達すると予想しています(<図1>参照)。
今後の中国自動車市場の成長の根拠は、主に米国や世界平均に比べ低い自動車保有率GDP成長率、一人当たりGDPおよび都市化率にあるとされています。」
上記は2014年2月の記事ですが、最近の意見では以下の通りです。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/page-3.html
2017-06-29 05:00:00
中国、「サブプライムローン」住宅・自動車ローン急増で再現?
中国では、企業の新規借り入れは下火だが、代って若者の住宅と自動車のローンが急増。金融機関の安易な貸出姿勢が、ローンを増やしたのだ。肝心の所得は、製造業中心に頭打ちから減少に向かっている。跳ね上がった高値の住宅をローンで購入したものの、果たしてローン支払いができるのか、危ぶまれてきた。
(1)「AFP通信は5月、中国の若年層がローンを容易に組めることについての問題を報じた。記事によると、30代の夫婦が自家用車をマツダからベンツに乗り換えようとした際、銀行から20万元(約360万円)のローンを受けるのに、わずか数分で審査を通ったという。『いとも簡単にローンを組めるため、多くの若者が借金して車や住宅を買っている。」
・・(5)「ムーディーズは中国の債務規模の急増に懸念し、5月下旬に中国国債の格付けを30年ぶりに『Aa3』から『A1』に引き下げた。市場調査会社『龍洲経訊』エコノミストの陳龍氏は、家計債務は2011年以降、毎年平均で19%増のペースで拡大しており、その増加は中国債務拡大の主要な原因となったとの見解を示した。『そのペースで増えていくと、20年に家計債務の規模は、現在の倍となる約66兆元(約1056兆円)まで達し、GDPの70%を占める。13年にはGDPの30%だった。他の国ではこの高水準になるまで数十年かかったのに』とした」
韓国の家計膨張の危機ばかり報道されていましたが、中国の個人債務もしっかりと膨張していたことがわかります。
中国新車販売が今年に入ってこれまでの前年比2桁増どころか、減速傾向が鮮明になってきたのは、上記記事と合わせると如何にも債務膨張が飽和状態に近づいてきたようですが、昨日紹介した2004年の報告でもすでに限界がきたような書き方でしたが、その後上記のように伸び率こそ下がっても世界に迷惑をかけずに今までやってこられました。
今回とどの辺が違うのかをプロが書く以上は解説してほしいものです。
素人の私なりに推測すると、当時は中国の経済規模が小さくて当時の中国にとって負債規模が限界に来ていたとしても、その後経済規模の急拡大の結果から見れば絶体量が少なかった・・この結果政策の巧拙と関係なく危機回避が自動的にできていた可能性があります。
日本で財政赤字は成長路線で解消できるという主張は過去の成功体験をいうのと同じです。
1億の売り上げ企業で10億の負債は返済不能でも、売りげを2〜30億に増やせば負債比率が相対的に下がって難なく返済できてしまうパターンです。
当時の中国はWTO加盟を追い風にこれから世界中に打って出る勢いがあったが、(GDP伸び率も10%台が普通でした)今回は中国が世界の工場としての役割が縮小過程に入っている・逆風下・低成長経済に移行していく(自裁に低成長に入っているのは間違いないでしょう)時に増えていく負債はどういう効果があるかなどといろんな言い方ができるでしょうが・・。
公共工事などのインフラは政府の思う通りに投資してGDPをあげられますが、車のような末端商品は政府がいくら売ろうとしても消費者にお金が回らないと売れません。
上記冒頭紹介の車販売の乱高下はそのまま中国経済が荒っぽい動きをしていたことを表していると言うべきでしょう。
株が急上昇していたと思えば、約1年半で大暴落させるようなことのくり返し・・(株暴落は目立っただけ?)危なっかしくて見てられないような粗暴運転をいろんな場面でやって来たのではないでしょうか?
一定率で毎年のように高成長しているとしてきた中国政府公表GDP伸び率はまやかしであって、車販売伸び率変化に比例した乱高下経済であった可能性があります。

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