消費者信用の拡大政策8と格差縮小?

NHKや東京、朝日の期待する?方向性とは逆に日本では個人金融資産が膨れ上がる一方です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC17H0N_X10C17A3EAF000/
家計金融資産、最高を更新 16年末1800兆円
2017/3/17 10:41
このようにしてみると、プラスマイナスの比率が気になるのが普通の疑問でしょう。
孫正義氏が世界的大富豪とはいうものの、負債額もこれに匹敵するほど大きいと言われるように要はバランスの問題です。
個人金融資産がいくら世界一になっても破産予備軍とは交わらない・・持っている人と持っていない人との格差が大きいだけで関係がないかも知れませんが、個人金融資産合計が減る一方で破産者や倒産も増える一方では、その社会の将来性が暗くなります。
少なくとも個人金融資産が増え続けていることは明るい話題でしょう。
もしも、個人金融資産が増え続けているにも関わらず一方で破産者が増えつづけている場合、格差が問題です(ただしこの後に書くように仮には算数が増えてもそれだけでは一概に拡大とは言えません)が、昨日紹介した通りNHK宣伝に関わらず全体の消費信用が減っているようですからそれは当たらないでしょう。
それに所得格差があるとすれば所得再分配と(いくら再分配しても無駄遣いする人には)消費教育の問題でしょう。
ただし、消費信用には資産家から無産層への実質所得移転をしている意味があることを7月14日に書きました。
もしも毎年一定率のデフォルトが起きるとその分資産家層からの貸金が消滅するのですから所得再分配そのものです。
生活保護で所得移転するよりは消費信用供与による移転の方が、消費者が頑張って返そうと言う意欲がある点で健全です。
最近生活保護現場でも、若くて元気のいいものに・労務賃を払ってくれないで逃げられたような相談・彼らには失業保険もありません・・でdは、まずは生活資金の貸付から始めるような事例が出てきました。(債務整理相談で福祉事務所が債権者に登場している事例です)
その頑張り力の補助エンジン供給に当たるのが超低金利政策であり、借り易さの仕組みづくり・・友達に借金して買いものするのは恥ずかしいがクレジットなら恥ずかしくないという意識づくりです。
超低金利そのものがすでに資産蓄積している階層から蓄積のない階層への膨大な所得移転(世代的に見れば大胸高齢層から若年層)ですが、運悪く?戦い敗れて破綻(白旗を掲げて降伏)した時には、気持ちよく免除してやる・・その時に100%の所得移転になります。
所得再分配に逸れますが、フローの収入格差を基準にするジニ係数重視論をこれまで繰り返し批判してきましたが、保育所や学校制度に始まり、成人にまで就労支援その他多種多様な公的支援・公的学習環境・公費負担による各種美術館博物館、図書館等の教育設備、医療負担が整備されるなど公的設備・インフラ整備は、全て所得再分配の一環をなしています。
可処分所得の価値についても、日本のように高額医療費を自己負担しなくてよい国と自己負担が大きい国とでは大きな違いです。
鉄道未整備の国・・広大な原野が広がる地域では車保有資金がないと自分で自由な移動ができません・アメリカでは運転できない子供は自転車区域を超えた移動の自由がありません)が、地下鉄網や路線バスの整備されている都内では数百円もあれば簡単に23区の端から端まで簡単に移動できますしお付きの人がなくとも小学生でも一人で電車通学しています。
アメリカでは子供だけにすると検挙されることがあるとすら言われてますが、安全がただ意識の日本ではびっくりする話です。
報道イメージだけしか知りませんので真偽不明ですが、例えば以下の通りです。
https://matome.naver.jp/odai/2140517995024474901
日本と同じ感覚でいるとすぐに逮捕されてしまうかも。
アメリカでは一般に13歳になって初めてティーンエイジャーとして認められ、行動の責任が自分にあるようになります。それまでは常に親が保護する義務があるのだそうです。このため、13歳未満の子供だけで街を歩いていれば子供達は保護され、その親達にはペナルティーが課せられます。
出典アメリカ育児事情〜子どもの安全管理〜
日本では貧乏人も金持ちもみんな冷暖房の効いた電車で移動でき、大方の駅にはエレベーター等があって、足腰の弱った老人や車椅子の人でも世話係の下男下女を伴わなくとも単独で移動できるし、警備のお供もいらない・身の安全は自衛できるお金持ちだけでなく庶民まで恩恵を受ける社会です。
数字的に見れば、総支出のうち9割が公的インフラで賄われている場合、残りの1割の支出額が、2対1であっても生活水準格差は10%しか違っていません。
可処分所得が10万円と20万では2倍の格差のように見えますが、インフラ次第で国によって大きな差があるのですから直接的収入額だけで比較しても実態を表していません。
このように消費拡大政策は庶民の生活水準底上げに寄与していること・消費水準格差縮小機能を果たしてきたことは確かでしょう。
ところで、どんなに政治がうまく行っても、好景気でも商売に失敗する人が皆無になりませんし、インフラも利用が増えれば一定の比率で事故が生じます。
消費信用拡大も失敗を怖がって何も挑戦しない社会よりは、再挑戦機会保証でどんどん挑戦/失敗できる社会の方が健全です。
社会からの失敗・落伍者をゼロにするのは不可能でしょうから、再挑戦可能社会にする方が合理的です。
輸出用国内生産増は無理があるので、内需拡大しか国内生産をふやせない→購入資金のある人だけをターゲットにするのではなく、消費信用(借金)拡大によって消費拡大を図る場合、借金の意味が変わってきます。
それまでは借金するのは非常に恥ずかしいことという意識で、質屋も裏通りにあり、こそこそと裏口から入っていったものですが、その後若もの世代ではカードで買い物できるのが格好良いという意識に変わってきました。

消費者信用の拡大策7と破産新受件数推移

日本で個人破産が今後社会問題になるほど増えるかどうかは今後の様子次第としても、いずれにせよリーマンショック以降の経済では消費の動向が重要化していることから債務データ全体だけでは分からない、その一部である個人負債比率の指標性が高まっているように見えます。
従来経済対策としての金融緩和が、企業投資資金を潤沢にして投資活発化を狙ったものでしたが、平成に入った頃から消費の下支えや拡大効果を期待するようになっています。
この結果、金融緩和→消費信用拡大の流れが出来ているので、消費信用拡大自体を政府の失策であるかのように批判材料にしたり、消費信用利用者を白眼視するよりはそのコントロールが重要になってきました。
この失敗がサブプライムローンに端を発したリーマンショックだったというべきであり、消費信用拡大が一過性の「悪いもの」と見るのは間違いです。
お金持ちからゼロ金利で消費信用にお金を回すのは、いわば一種の所得再分配機能を果たしている面もあります。
総融資額の1割が仮にデフォルとするとすれば、全体として資産家層の回収が減る・その分の所得再配分が行われたのと同じです。
高齢者から孫や子供に贈与を進めて消費を促す贈与税軽減政策に比べれば、本当に困っている弱者の消費を助けたのですから公平性が優っています。
車が危険だからと禁止するのではなく、車の安全技術向上を図り、安全運転のためのルール整備や講習をして行くのが必要なのと同様で、消費金融も減りさえすればいいのではなく、如何にして飼い慣らして行くかこそが重要です。
日弁連や単位会が消費者教育の必要性を前提に、だいぶ前から中高校生を相手に出前講座を実施しているのは合理的な方向性です。
日本を先頭に先進諸国が超弩級(異次元)の金融緩和・消費拡大策をして来た結果、世界中で庶民の消費信用が膨れ上がって来た・・中韓等の将来性も企業債務だけ見ていると間違う時代が来たと見るべきでしょう。
金融緩和の効能から見ると企業は合理的ですから、いくら金利が下がってもあるいはマイナス金利でも販売増の見込みがなければ増産投資しません。
日本の車製造で言えば、トヨタやホンダが投資資金が不足している訳ではありません・・プラザ合意以降国内生産をこれ以上増やして輸出を増やしていけなくなった国際情勢があります。
国内需要で見れば車に限らず冷暖房機やブルドーザー・建機であれ、いろんな分野で増産投資は限界です。
「100万円借りて95万返せばいい」なら借りた方が一見得するみたいですが、借りた資金で出店したり新工場建設して商品の販売増が見込めないと借金元金の半分も返せないことがありますから、景気動向の見通しが悪いとマイナス金利で 貸すと言われても尻込みしてしまいます。
補助金行政はマイナス金利の行政版で、比喩的に言えば、初期投資資金の半分を補助してくれれば初期投資資金100%借りる場合に比べて借入金が半分で済む・・5割のマイナス金利だったことになります。
補助金行政が盛んだったのは、初期投資負担さえ何とかとなれば採算ラインが見込める成長経済時に「呼び水」として有効だったのですが、初期投資だけではなく稼働後のランニングコスト自体の赤字・恒常的赤字が見込まれる時にはこの手法では企業が手を挙げません。
福祉施設で補助金誘導が有効なのは、初期資金の多くが補助金でまかなわれれば、その後のランニング・運営は設備不足がまだまだ続くので心配がないからです。
このような流れの変化の結果・旧利権官庁が旧建設省や経産省から厚労省に広がったことになります。
経産省は国内補助金のさじ加減による産業育成よりは、日本企業の海外展開後援の方が重要になり、TPP交渉を見てもわかるように事実上海外経済交渉の本家になりつつあります。
農水省も長期間保有してきた補助金のバラマキ権限行使よりは、いかに日本の農業を守りそのためには逆に輸出していくかの、国際交渉の役割が増大しています。
何事も専守防衛・守るばかりでは現状維持すらできません。
政府はこれ以上の輸出増を見込めない以上は、国内消費拡大・内需拡大による産業活性化が必要になったので、補助金行政の市民版である商品券配布や1億創世資金として地方ばらまきをしました。
商品券の場合本来消費予定品を買うのに商品券を先に使ってその分紙幣を温存・貯蓄する人が多く全体消費が増えず不発に終わりました。
消費拡大にはまだまだ消費意欲はあるが、お金がなくて消費出来ない層に訴求するしかない→借金額を増やす方法→金利1割低下=債務額1割増まで消費しても支払額が同じですから金利低下による消費拡大を誘導するようになります。
政治が債務膨張を誘導して来たのですから、その目論見通りに庶民債務が増えたのは(政策が正しいかどうかは別として)政策の失敗ではありません。
この点消費者は企業家と違い単純で「一見お得」(その先のランニングコスト・・長期的にみて借金をふやして家計が成り立つかまで考えないで飛びつく傾向があります。
消費奨励と民度次第で詐欺的お得商法にひっかかる比率が違ってきます。
この視点で見ると、日本は世界の先頭を走る超金融緩和国ですが、7月10日に書いたとおり貸金業規制の変遷・経験を経ていることもあって?個人負債は中韓やアメリカの車ローンや学生ローンのように膨れがっていないイメージですが、私が知らないだけかも?と思って「破産増加」のキーワードで検索してみました。
検索してみると、NHKの「クローズアップ現在」に以下のようにセンセーショナルなフレーズで取り上げられていることが分かりました。
www.nhk.or.jp/gendai/articles/395
2017年4月12日(水)若者もシニアも破産急増!?銀行カードローン
  ゲスト 宇都宮健児(弁護士)
  ゲスト 飯田泰之(明治大学准教授)
  武田真一・田中泉 (キャスター)
・・・・国の規制改革推進委員として、銀行の実態にも詳しい飯田さん。
この問題の背景、どう見ている?
飯田さん:もともとの数字を確認すると、10年前に比べまして、消費者金融会社の貸付が10兆円減少して、そして銀行系のカードローンが2兆円増加したということですので、この消費者向けの無担保での貸出、マーケット自体はかなり小さくなっているんです。」
上記表題では「いかにも大変な事態になっている」かのようなイメージですが、内容は大分違っています。
内容にきっちり別の意見を書いていれば、「デマ報道でない」というメデイアの狡い報道の仕方がここにも見受けられます。
大方の人は忙しいので、週刊誌等の表紙など見て終わり・・最後まできっちり読む人は滅多にいない結果、・・私も内容まで読む暇がないので、破産が急増してるらしいという方向で描こうとしていたのですが、ちょっと時間が出来たので念のため内容に入って見たところ内容はこんな程度した。
実際政治では、大見出しの印象操作効果は抜群です。
そこで、その他メデイア報道がどうなっているかを見ると、東京新聞や朝日新聞がすぐ出てきますが、その他メデイアでは取り上げていないのか出てきません。
ただし、東京新聞も朝日も「破産急増」ではなく単に「破産増」だけの題名ですからNHK報道の意図性?角度付けが突出している印象です。
何のために根拠もないのに「急増」と報道しているのか不明です・・・。
NHKや朝日新聞は明るい話題は気に入らない傾向が見えます。

消費者信用の拡大6(金利の重要性)

ローン金利を「変動金利ではなく固定金利にしていれば大丈夫」という意見もあるでしょうが、個々人ではそうでしょうが、仮に100%のローンが固定金利で銀行だけが逆ざやで損をするようなうまい話が実際に成り立つでしょうか。
3〜4日あるいは逆ざやになるのが融資量の1%くらいならば銀行もヤリクリできますが、融資量の100%が逆ざやになれば金利収入がなくなるのですからたちまち倒産です。
固定金利客が2〜3割しかないなくても(この場合7〜8割の債務者の人が変動金利約定→相場通り金利が上がることになります)逆ざやで1年も2年も続く見込みでは2〜3割もの逆ざやを抱えていると業績不振で大変なことになりますし、他方で債務者の7〜8割の人にとって金利急上昇し、その何割かの債務者が払えなくなると不良債権が増えてこの面でも大変です。
もちろん住宅ローンの7〜8割が変動金利契約の場合、金利上昇すると余裕で払っていた人もギリギリになり(一般消費縮小で不景気になります)ギリギリで払っていた人などが払えない事態が起きたら大社会問題になります。
政府がローン債権を金融機関から全額買い上げて、ローン債務者に全額免除してやれば全てなかったことになります。
その資金は国際金利相場無視でゼロ金利国債を発行し日銀に引き受けさせてそれに当てれば財源は無制限に出来ます。
ただし財源を金融機関救済や特定債務者のために使うのか・・不公平だと大騒ぎになるでしょう。
文句を言う人の債務も救済してやれば文句が出ないので、結果的に国民全部が無借金・無債務になるまで全部救済したらどうなるでしょうか?
中小企業の賃金支払い債務も病院へ医寮費・病院従業員や業者への支払いも全部政府が代わって払ってやる・・スーパーでの買い物代金もスーパーの仕入れ代金も・・従業員の給料も何もかも全部払ってくれれば公平ですが・・公平というか(悪)平等になるとどうなるかです。
もしも何もかもみんな政府が肩代わりしてくれるようになると・・モノやサービスの代金が何のためにあるのか?紙幣って何のためにあるのか訳がわからなくなります。
自分の義務・・電車賃もコーヒー代も全てネット決済については政府が肩代わりしてくれるようになると、何のために頑張るのか?「価値とは何か?」と言う根源に打ち当たります。
「こんなバカなことが起きたら・・」という想像自体、私のようなバカな人間しか思いつかないでしょうが・・。
全て政府が払ってくれる社会・債務帳消しが増えるとモラルハザードになると言われますが、国民全員の債務をすベて政府が肩がわりする理想的な?社会が実現すると努力の元になる貨幣価値取得動機がなくなってしまうことは明らかでしょう。
現実にこれの小規模実験しているのが生活保護受給者です。
一応最低生活なので肩身が狭くここからの脱出願望があるだけまだマシですが、それでも何をするにも無償なので乱診乱療等のモラルハザードが起きる他に生活保護脱出意欲を失ってしまうなどモラルハザードが心配になっています。
生活保護受給権は法で認められた権利である・・したがって何の遠慮もいらないので堂々と権利主張すべきという主張が多いですが、法で認められている以上は「権利」に違いないでしょうが、自分が働いた対価を得る権利と違い、社会保障政策として受給権が認められたに過ぎない権利は、本来の意味から見れば亜流の権利です。
権利行使とは言っても亜流の権利であることを自覚してある程度の遠慮があってこそ、脱出努力も生まれるのではないでしょうか?
全国民の受給権としてすべての国民が全ての債務から免除されるようになる・・国民全部に行き渡ると肩身が狭い心配もなくなり、全員が働く意欲を喪失しかねない・・国内総生産がどうなるかの問題です。
文字通り お金に換えられないものだけ(実際どう言う言うものが残るのか?)が「価値のある」社会になっていくのでしょう。
食料品に限らずすべての分野で国に肩がわり支払いしてもらうシステムになると、古来からの交換経済システム自体が消滅しますし、(ひいては供給システムで働く・・自己の労働や努力の対価は意味がなくなるので、みんながまともに努力し働かなくなってしまうと、社会がどうなるかに直面します。
ほとんど全部の国民が働かなくなる→生産低下→供給システム崩壊→国際収支が大赤字になって輸入ができなくなる→生活水準大幅低下が待っているでしょう。
住宅ローンやクレジット残高拡大は個人の問題ですが、これを国家規模にしたのが日銀の国債大量購入・市場性のある債権等の大規模購入問題です。
国債大量購入の場合、発光体はいくらでも買ってくれるので支払いの心配がない上に、保有国債の金利が市場で上がりそうになれば(債権相場下落)日銀自身が金利を決める権利があるので「上げなきゃいいんだ・大丈夫」と思っているでしょうが、エコノミスト・国民はそれを際限なくできるのかを心配しています。
世界中の国債金利が上がり始めても最後の最後まで日銀がゼロ金利維持のために日本国債を買い支え続けるのが可能か?でしょう・・海外保有者から売り浴びせを受ければ日銀はいくらでも円を刷れるので発行済国債全部を買い占めることも可能です。
日銀が市場から国債を買うと同額分の紙幣が市場に出回りますが、例えば100億円で国債を売った企業は現金百億を持っている訳に行かないのですぐに何かに投資するか当面の置き場所として換金性の高い預金・証券その他何かに換金するので他の債権等の相場が上がります。
日銀が直接証券市場で買い支えて相場に介入しなくとも間接効果があります。
マンションやビルを買う資金に使うにしても、金融機関経由で代金で支払った紙幣が日銀に還流して行くので、言われるほど紙幣が市場に溢れることはありません。
国民の債務肩代わり同様に日銀券を大量発行して証券市場で新株発行を直接引き受けたり既存株式を買い占めたらどうなるでしょうか?
株式相場が成り立たなくなるというか、高値安定して民間企業の実力を反映しなくなります。
悪平等が個人おモラルハザードを起こすように企業価値の採点表・温度計である株式市場や債権市場評価が機能しなくなります。
個々人の債務を政府が全て払うようになると個々人が何に価値目標を置いていいのかわからなくなり生きる目標をなくすように、企業人も市場評価がなくなると、指標をなくして困るでしょう。
※追記7月16日日経新聞5pには、この点の主張のはしりが出てきましたので追加記載しておきます。
日銀買い支えの結果国債相場が動かず、権利変動がないと銀行間の短期先物取引もなくなりディーラー失業の危機を書いています。
平和なときにも軍の訓練がいるように、イザとなったときに相場を読む取引のプロ・・戦士がいなくなるリスクを書いています
政府が国債発行によって全て肩代わり支払いしていくと将来的には上記の通り社会が停滞縮小していくしかないでしょうが、そんなことが出来るのは、国際収支黒字の範囲が限界でしょう。
日本だけがゼロ金利でなり立つのかは日本の長期的な国際収支次第(・・金あまりか不足国かの基準)であることを何回も書いて来ました。
この限界が来たときに長年指標無関係で生きて来た日本人が普通の経済活動に移行出来るかの疑問です。
資源・リン鉱石に頼っていたナウール共和国が、これがなくなってどうにもならない状態に陥った例を何回か紹介してきました。
日本で個人破産が今後社会問題になるほど増えるかどうかは今後の様子次第としても、いずれにせよリーマンショック以降の経済では消費の動向が重要化していることから債務データ全体だけでは分からない、その一部である個人負債比率の指標性が高まっているように見えます。
従来経済対策としての金融緩和が、企業投資資金を潤沢にして投資活発化を狙ったものでしたが、平成に入った頃から消費の下支えや拡大効果を期待するようになっています。
この結果、金融緩和→消費信用拡大の流れが出来ているので、消費信用拡大自体を政府の失策であるかのように批判材料にしたり、消費信用利用者を白眼視するよりはそのコントロールが重要になってきました。
この失敗がサブプライムローンに端を発したリーマンショックだったというべきであり、消費信用拡大が一過性の「悪いもの」と見るのは間違いです。
お金持ちからゼロ金利で消費信用にお金を回すのは、いわば一種の所得再分配機能を果たしている面もあります。
総融資額の1割が仮にデフォルとするとすれば、全体として資産家層の回収が減る・その分の所得再配分が行われたのと同じです。
高齢者から孫や子供に贈与を進めて消費を促す贈与税軽減政策に比べれば、本当に困っている弱者の消費を助けたのですから公平性が優っています。

消費者信用の拡大5(破産増加?2)

融資には一定の不良債権発生が(金融機関にとっても不良債権発生が少ない方が良いでしょうが)あるのは仕方がないことですから、6万人程度の破産が岩盤かどうかは、論理の問題ではなく長期観察の問題でしょう。
同じ6万人でもトータルでの消費者債務(破産債務額)が増えているのかなど多様な吟味が必要です。
人口比だと約5〜10%のレンジですが、昔から東大入学者のうち約5%のハズレがあると言われてきたように、どんなに精選しても歩留まり率というものがあります。
経済政策巧拙の問題よりは、社会的落伍者が債務管理能力不足による・・誰でもカードを安易に作れるし借りられる・庶民でも消費を謳歌できる良い社会?になったので注意しないと過剰債務・落伍者になる時代が来ています。
誰でも腹いっぱい食べられるようになると肥満が増えるような関係です。
子供は自己管理能力の低さを懸念して親等の保護下におかれ社会の荒波に揉まれないように保護されていたように、成人でも(法的には平等としても実際には)経済取引に参加できるのは経験を積んだ資産家だけだったのが、今や庶民までもが直接金融取引に参加する便利な「大衆消費」時代が来たのです。
こういう時には自制心や訓練だけに頼る他に、公的に各種勧誘規制等をしていかないと弱い消費者は守られません。
この一環としての金利規制もあるのですが、消費債務の中でサラ金系より金利の低いカードローン系の比率が上がるようにしたのは当然の進歩と言うべきで、それ自体が(金利の低い庶民向け商品が提供されているのは)庶民にとって良い方向への変化であって銀行系が非難されるべきものではありません。
震災被害者向けに昨日紹介した超低金利・長期間据え置きの融資をした結果、公的債務の占める比率が高いからといって公的融資が悪の元凶だという人はいないでしょう。
ところで、過剰貸付の基準は可処分所得による・・総量規制は年収の何分の1で決めているのですが、可処分所得の増減は、雇用・景気動向状況に左右されます。
毎月無理なく払える限度が4万円の人が、6万円の支払い義務があってその支払いに苦しんでいる場合に、可処分所得が2万円増えれば(月収30万の人が32万になれば)危機を脱します。
ここにきて学卒の就職率が97%前後の勢いが報道されていますが、正規非正規雇用の関係でも改善が進んでいます。
以下は総務省統計局の労働速報です。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/
労働力調査(詳細集計) 平成29年(2017年)1~3月期平均(速報)結果
2017年5月9日公表
「結果の要約 役員を除く雇用者5402万人のうち,正規の職員・従業員は,前年同期に比べ47万人増加し,3385万人。非正規の職員・従業員は4万人増加し,2017万人。非正規の職員・従業員について,男女別に現職の雇用形態についた主な理由をみると,男女共に「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多く,男性は前年同期に比べ3万人増加し,女性は21万人増加」
実質賃金アップについては日経新聞によると以下の通りです
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF22H0E_T20C17A5EAF000
実質賃金6年ぶりプラス 16年度、名目も増加 」 2017/5/23 9:04
上記のとおり正規社員就労数が増えて賃金手取りも増えているなど好調ですから、昨年の破産申し立て統計が若干(1、2%)増えたとしても、そのまま増加傾向が続くのか?増えそうになっても今後どうなるかが不明です。
破産や再生申立て数は(震災特別有志で紹介したように据え置き期間が五年もあります)4〜5年前の不景気時に借りた借金の破綻が今頃出てくるなど・・)超遅行指数ですから、これだけで現在の政策を批判したり将来を判断することは出来ません。
将来を見るには、過去5〜10年間の消費者信用残(が増える一方だったか)の増減や、延滞者数の変化表などを読み込んで行かないと今後2〜3年先の破産増加を予想するのは無理があるでしょう。
この道のプロ集団である日弁連消費者委員会が昨年1、2%増加したことを仮に問題にしているとすれば、上記の関連データを読み込んだ上での主張なのかもしれませんが、もしそうならばそこまで言って貰わないと読む方は消化不良です。
下記の通り意見書が出ているようですから、そこには多分詳細データが出ているのでしょう。
http://www.jc-press.com/news/201610/101302.htm
消費者最新ニュース2016年10月
銀行系カードローンで自己破産、過剰貸し付け「防止を」 日弁連が意見書
「銀行系カードローンによる多重債務被害の増加が懸念されるとして、日本弁護士連合会は10月12日、過剰貸し付けの防止を求める意見書を金融庁に提出した。」
とあったので日弁連が破産増加を懸念している意見書を出したのかと思って日弁連意見書に飛んで見ました。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2016/160916_3.html
要旨を見ると破産増に対する懸念ではなく、銀行カード系も総量規制すべきという論旨であって理由を見るためにpdfの全文に入るとアンケートによるとサラ金系が減って(所得無視の)カード系債務が増えていることが中心関心らしく、ついでに16年5月までの新受件数が前年比100%超えるようになったことを触れているだけです。
2000年代に入って消費信用が何故伸びるかというと、高度成長の終わった国では、内需拡大しかないがお金を全国民に直接配るわけにいかない(という思い込み)→景気対策として「金融緩和すれば借りて消費する人が増えるだろう」と言う方向になったことが窺われます。
その中でわかり良いのが新築件数の増加目標は、てっとり早い効果が見込める分野ですから中韓もこの方面に精出してきました。
住宅ローン金利を下げればお金を配らなくとも自然に使ってくれるので簡単だからです。
100%融資を前提にすれば、金利を5%下げれば販売価格を5%値引きしたのと同じ効果になり、価格一定の場合、金利下げに比例して購入者の購買力が増します。
例えば年収800万の人しか買えない高額物件が5%年収の低い人でも買えます。
これに加えて頭金500万以上の残金ローンの条件であったのを全額ローンにすれば(この何年も前から仲介・登記等の諸費用や転居費用等の融資もあります)これと並行して「当初5年間金利だけ払えば良い」という設定の場合、本来500万円貯めるまでの期間と5年間の昇給を待たないと買えない人が5年プラス5年の合計10年早く買えます(消費先取りがその先どういう影響を及ぼすかは別問題ですが.・・)。
20年ローンを35年ローンに伸ばすと毎月の支払額が減るので、この面でも債務総額が増えても支払額が同じで一時的に購買力が上がります。
リボルビング方式の住宅ローン版で、多額の債務を負うようになっていることは同じです。
日本は平成初めのバブル崩壊以降、あの手この手で消費拡大・・弱者の生活水準向上に精出してきたことになります。
返済期限の先送りは低金利を前提にしていますから、日銀のゼロ金利政策同様にある日ローンやクレジット金利があがると収拾がつかなくなくなります。

消費者信用の拡大4(破産増加?)

ただし、経済成長すると収入が増える結果、(財政赤字解消には増税策と成長による収入を増やす方法があるのと同じです)過剰債務率が低下するので、安倍政権成立直後から4〜5年にわたる就労率上昇によって家計の可処分所得率アップが続いている結果、過剰債務率がかなり緩和されているはずです。
16年以来急減傾向にあった破産申立てが昨年初めて1、2%アップしたと言うのですが、1回キリの増加では、今後の増加傾向を示しているのか、ピークアウトなのか不明です。
個人破産や企業倒産は、その時の不景気にもある程度左右されますが、不景気が来ると相乗効果でとどめを刺されるだけのことであって、借金してすぐに破産や倒産しません。
倒産は事業のジリ貧傾向が数年以上続き債務残高が ジリジリと上がって行きメーンバンクが追い貸しに慎重になり、2番手の銀行から借り増し〜さらに3番手さらにノンバンクへと格を下げて行くのが普通です。
資金繰りに窮して銀行や親類縁者に追加融資を懇願しても誰も貸してくれなくなって最後に倒産するものであって、もしも泣きついて貸してくれればまた半年くらい延命します。
また貸す方も自分が貸しても1〜2ヶ月で夜逃げするような人に貸すと大損ですから、すぐに潰れるようなことは滅多にありません。
倒産や破産と本来の債務発生とはタイムラグがあるのが原則です。
東北大震災時に緊急巨額融資・・支払い期限の先送りなど大判振る舞いがありましたが、据え置き期間5年くらいありました・・この間返済が始まらないので破綻が送りされます。
家屋敷商売道具を流されてしまった人の中で再起しようとする人だけが借りたのでしょうが、普通の企業が事業拡大投資するのに比べてリスク率(いつ街が復興し避難した人が戻って来るか知れないなど)が高すぎますので、当然焦げ付き率が高まります。
だからこそビジネスに基づく融資がなり立たないので特別枠での低利融資制度が出来たのです。https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/shinsaikashitsuke.html
東日本大震災復興特別貸付の概要(日本政策金融公庫)
融資限度額 各融資制度ごとの融資限度額に6,000万円を加えた額 別枠4,800万円
※生活衛生セーフティネット貸付は別枠5,700万円
ご返済期間 (注2) 設備資金:20年以内<うち据置期間5年以内>
運転資金:15年以内<うち据置期間5年以内>
利率(年)(注2)
被害証明書等の発行を受けられた方
【当初3年間】<3,000万円まで>基準利率-1.4%(注)
<3,000万円超>基準利率-0.5%【4年目以降】基準利率-0.5%
上記以外の方 基準利率
東日本大震災に対処するための特別の財政援助および助成に関する法律(平成23年5月2日法律第40号)第2条第3項に定める特定被災区域(岩手、宮城、福島の3県は全域。青森、茨城、栃木、埼玉、千葉、新潟、長野の7県は一部)をいいます。」
据え置き期間の5年を過ぎたころからこの支払いが出来ない焦げ付きが大量に発生するだけではなく、デフォルト回避のためにカードローン等の利用に走る人も増えます。
個人の場合二重ローン解消制度が有名ですが、これは新築資金を貸してくれるのではなく、残ローン解消のために債務整理の申立してもブラックリストに載せない特別扱いするとか手持ち保留金限度を引き上げる程度です。
一般的行動を見ると、住宅ローン等の支払いが2〜3ヶ月に1回苦しくなってきて、少しだけカードローンに手を出しても、次のボーナスで返せるなどの繰り替えして数年経過で次のボーナスでも返せなくなっていき徐々にカードローン残が膨らんでいくような流れが一般的です。
ノーローン・当初何週間〜1ヶ月無利息広告が成り立っているのは当初は期間中に返せる人が大方ですが、これを繰り返している内に無利息期間中に返せなくなる人が出てくるのを見越した商売が成功することを証明しています。
破産申立て件数の激減が約十数年間続いた傾向の中で1、2%アップの増加率が仮に数年続いたとしても単なる下げ止まり・・岩盤・・全体としての減少傾向に変わりがないかも、この4〜5年の景気動向を含めてもっと詳しいデータがないと分かりません。
例えば企業倒産件数で見ると以下のとおりです。
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/monthly/201704.html
倒産件数が680件 4月としては27年ぶりの低水準
倒産件数は、前年同月比2.1%減(15件減)で2カ月ぶりに前年同月を下回った。前月3月が3カ月ぶりの増加に転じて推移が注目されたが、4月としては1990年(526件)以来27年ぶりの低水準になった。依然として企業倒産は抑制された状況が続いている。」
このように3月には増えていたのが4月には減っていますから、1回だけでは分かりません。
物事には岩盤があるのが普通ですから、10数年振りに破産申立てが年間1、2%増えるのが2〜3年続いてもその後また下がったりすれば、全体としては安定レベルと評価すべきでしょう。
http://jikohasan-pc.yw-information.com/toukei.htmlからのコピーです。
 年度別破産件数統計グラフ
上記によると、26年から28年の差は視覚的にはほとんどわかりませんので、岩盤に来ているのかも知れません。
月別破産件数統計 総数 月別破産件数統計 自然人

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