消費者信用の拡大2(供給過剰と過剰与信)

民法の消費貸借では同じ国民が貸す方に回ったり借りる場合もある互換性(その他分野も全てそういう建て付けです)の関係で出来ています。
(「とんとんとんからりんと隣組の歌で歌詞の1節に「あれこれ面倒 味噌醤油御飯の炊き方 垣根越し教えられたり 教えたり」とあるように、要は味噌醤油をちょっと借りたり貸したりする程の関係・・今で言えば財布を忘れてちょっと知人に小銭を借りたり手元のボールペンを貸してもらうような場合です。)
業として貸すようになると民法の原則的規定では済まなくなってくる・・貸金業法から規制法になっていくのは、業者は貸すばかりの一方的な関係になってきたので規制が必要になったものです。
戦後自由化が進んだように言われますが、結果から見ると逆に宅建業法や証取法から金融商品法になり道路交通法や建築基準法など規制強化が進む一方です。
あらゆる分野で対等者間の契約というものが意味をなさなくなってきた時代の法制度がどうあるべきかが消費者保護法制定の原動力でしたし、いろんな分野で問われています。
自由化が進むとこれのルール化の必要が出てきた・・モータリゼーションで移動の自由が現実化すると、(歩行者同士ならばスクランブル交差点でわかるようにルールがなくとも自然に入り乱れて歩けますが)運転者と歩行者となれば、隔絶した力関係を背景にした交通ルールがより細かくなり、不動産取引が増えると宅建業法ができ、金融商品が増えると証券や金融商品を取り扱う業者に対する規制が厳しくなって行くのは、仕方がないでしょう。
投資のようなリターンが想定されていない消費信用の拡大発達に戻りますと、消費財購入の借金は勤労者で言えば、原則的に昇級を前提にしない限り満期が来てもその時返済すべき新たな収入がないので無理っぽい借金ですが、これを打開するために毎月一定額支払う月報販売が始まりました。
欲しいものを買うために1年間貯蓄してから買うのではなく欲しいと思ったらまず買ってその後1年間毎月貯金しているつもりで月掛けで業者に払えばいいというやり方です。
これは時間を金利負担で買うことになって一見合理的です。
お金を貯めてから友達と旅行したい、進学したい、おしゃれな洋服を買いたいなどと言っていると年令・チャンスがどんどん過ぎてしまいます。
「一見」合理的とは合理的に行動できる人にとって(ダケ)合理的というだけであって、「あれが欲しいがそのために1年間は他の買い物や遊びを我慢できる」人はそんなに多くありません。(だから多くの人にとってお金が貯まらないのです)
本来自発的に貯金できない人でも借金になると半強制的(韓国女性のように海外売春遠征してでも返そうとする人が出てきます)なので無理して払う動機付けが生まれる結果、自発的貯金を殆ど出来ない人の8〜9割を何とか真面目人間に変身させることに成功するでしょうが、それでも終わりころには息切れする人が出てきます。
供給側からすれば、消費の先取りをすれば1年早く売れるものの、その代わり1年前の先取り分の反動減が起きますし、(消費税アップ予定やたばこ値上げ前の先取り需要景気の後で値上げ後の反動減がおきます)消費者が月賦を払うために節約すれば日常的に消費していた他の小さな100個の買い物を我慢する結果他の商品が売れなくなります。
早い者勝ちを防ぐために、リボルビング方式が考案されました。
これは次々と商品を買いクレジットを組んで総額が増えても毎月の支払額が変わらない(返済期間が長くなるし金利支払い期間が長いので帳尻は合っていますが)目先にごまかされる人には一見魔法の仕組みです。
満期を際限なく伸ばしていければ返済期限がないのと同じ・・金利負担だけが重荷ですが、どんどん金利を下げて行けば、(例えば5%の金利が1%になれば借入総額を5倍まで増やしても金利負担が同じです)借入限度が上がります。
日本国債の買い替え債発行はこの原理の国家的応用で、満期が来ればその買い替え債を発行してその新規発行によって得た資金で完済して行くので満期のない借金と資金繰りとしては同じです。
この際、重要なのは買い替え債発行時の国債相場・金利動向です。
満期直前に金利が1%アップしていれば1%多く発行しなければ資金不足になりますから債務残高が膨らんでいきますし、下がってればその逆で借り換え債発行額を減らせます。
国債の場合借り手である政府の方で勝手に?金利を決められるので、低金利政策が主流になってきたことになります。
消費者信用の隆盛は、モノ不足時代が終わり供給過剰体制が恒常化→高度成長終了→給与アップ・支払い能力の右肩上がりの終焉→支払い能力を超えた消費拡大を煽るしかなくなったことによって消費拡大を求める供給側と事業用融資の縮小が始まったことによって業務存在価値を失った金融資本の生き残りのための合作で始まった印象です。
昭和4〜50年代から社債等資本市場の発達により、優良企業が直接資金調達が簡易可能になったことにより、庶民から小口資金を集めて貸す・・問屋的役割の銀行から資金調達する必要がなくなったこと(「銀行よさようなら、証券よこんにちは」のキャッチフレーズ)を14〜15年ほど前にこのコラムで紹介したことがあります。
このように支払い能力を超えた需要喚起必要性の視点で国家的に見ると、需要創出のためのケインズ的財政投入の活発化・・日本政府借金(・・国債には建設国債と赤字国債の2種類がありますが、)財政赤字の始まりと消費信用活発化と赤字国債発行が恒常化するようになった時期がほぼ並行していたことからも観ることができます。
赤字国債に関するウイキペデアでは以下の通りです。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit
「財政法第4条は「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」と規定しており、国債発行を原則として禁止している。財政法第4条の但し書きは「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定しており、例外的に建設国債の発行を認めている。
しかし、1965年度の補正予算で赤字国債の発行を認める1年限りの特例公債法が制定され、赤字国債が戦後初めて発行された。その後は10年間は赤字国債の発行はなかったが、1975年度に再び発行されて以降は1989年度まで特例法の制定を続け赤字国債が発行された。
1990年度にはその年の臨時特別公債を除く赤字国債の発行額がゼロになり、1993年度まで発行額ゼロが続くものの、1994年度から再び発行されその後に至っている。」
国家財政に話題が逸れましたが、消費信用の拡大は一見合理的ですが、上記の通り合理的な人間ばかりではない・時間の経過で支払いに窮する人が一定率発生します。
住宅ローンやクレジットの支払いに困った人がデフォルトの先送りのためにサラ金に借りる傾向が出るのは当然の成り行きでした。
上記のとおり過剰消費=過剰債務を誘導する限りいつかは(過剰である以上)支払いに困るのですから、破綻先送利のために徐々に下位の金融業者(サラ金にも払えないとヤミ金に走る→犯罪に走るなど・・自殺と他殺とは紙一重です)に頼るようになるのは想定範囲内のことです。
サラ金金利が高すぎる、取立てがひどいなどの問題があるとしても、過剰貸付を放置するから住宅ローンや各種クレジット支払いのためにサラ金等に借りるのですから、本来サラ金に行くようになった時点でデフォルトすべきだったことになります。
サラ金で借りて2〜3年ほど住宅ローンやクレジット等を払ってくれた・・先送りで得したのは、汚れ役をサラ金に押し付けた金融機関や信販系・バックの物販業界です。

ウクライナ危機13と中国の学習6(価値観外交の限界)

経済制裁の場合交易関係があるからこそ、その杜絶が相手の打撃になるのですから、被制裁国の交易相手になっている制裁側の国や企業にとっては、その数字の比率どおりの(輸出している国や企業は顧客を失うし、輸入している企業は仕入れが出来なくなります)損害が、(国や同盟国全体では1割の比率でも)特定企業や関係の深い国に集中して生じます。
西側全体とロシアの経済規模格差は10対1以下でしょうが、ウクライナ/ロシアで言えば全面禁輸になっても、アメリカや日本はあまり困らないでしょうが、関係の深いロシアと西欧では大損害が生じます。
アメリカは自分の損害極小のママで、西欧の犠牲で対ロシア制裁しようとするから、うまく行かないのです。
ロシアの例で分るように仮にアメリカが日本の味方をして中国への経済制裁を発動した場合も、その程度が重要です。
中国は今のところ中国が対日軍事行動に出れば、アメリカによるある程度の制裁発動が仕方がないとしても、どの程度に食い止められるかについてクリミア/ウクライナ危機の帰すうを見極めているところです。
現在のウクライナ危機に対するG7の対ロシア制裁は、政府要人に対する渡航禁止と資産凍結くらいしか出来ていません。
それでもロシアは東ウクライナに対する特殊潜行員による事実上の侵略行為をやめないので、追加制裁発動予定と28日の新聞では報道されていますが、上記要人の範囲を少し広げる程度しか出来ない様子です。
ほとぼりが冷めるまで短期間アメリカや西欧諸国へ旅行出来なくとも、ロシアは殆ど困らないから既成事実をドンドンドン積み上げて行くのではないでしょうか?
こんな及び腰の制裁しか出来ないのは、G7側で自分の受けるダメージを少なくしたい要望が強いからです。
ロシアに輸出したり進出していて関係の比較的大きい西欧諸国・特にドイツなど関係の深い順に制裁強化に反対したり規模縮小を主張する立場で意見がまとまり難くなっています。
オバマ大統領の指導力低下の原因は、個人的資質としての相手国との交渉能力レベル以前に自陣営内で結束をさせる根回し能力不足が下地にあります。
TPP交渉がまとまらないのも、大統領の決断だけではどうにもならない・・議会から通商交渉決定権能を獲得できないままで交渉しているのですから、言わば委任状を貰えるか否か不明の人物が交渉を始めているようなものです。
身内を説得できない人物が、外国・相手を説得できるのかと言っても良いでしょう。
日本総理決断は本当の決まりですが、オバマが総理と折角合意しても、「それから議会関係者と国内交渉しますので結果は分りません」というのでは、こちらの総理と相手の課長か主任クラスが来て交渉しているようなもので、格が違い過ぎて話にならない状態です。
国内意見をまとめられないから対外発信能力が意味不明となるし、G7でも、他の参加国をまとめ切れないから、効果の少ない要人の資産凍結程度しか決められないのです。
アメリカの国力低下があって、西欧諸国がアメリカと協調しないでわがままを言ってアメリカの足下を見ることもあるし、西側諸国をまとめ切れないオバマのふらつき・・マトモな決定をできないだろうとロシアが多寡をくくって足下を見た行動に出ていることになります。
対日暴動以来、中国は日本からの基幹部品輸入に頼る弱点回避のために、ドイツを引き込もうとしていますが、ロシアに食い込んだドイツがアメリカの制裁に対するブレーキ役になっている点を見れば、日本離れ→欧州引き込みの政策判断は正しいと自信を持ったでしょう。
仮に中国の侵略行為が始まったときでも、アメリカ企業も多く中国へ進出していますので、彼らも中国の味方となってアメリカ政府に制裁発動をやめるように・・やるにしても、骨抜きになるように働きかけるでしょう。
アメリカやドイツその他の国が中国に進出を増加して行くと、関係の深い比率に応じて制裁反対意見が強くなります。

ウクライナ危機12と中国の学習能力5

4月23日書いたように特定企業の狙い撃ちで国民不満のガス抜きに使い、尖閣諸島侵犯もやめるにやめられないので、細々と領海侵犯を繰り返しています。
公害の顕在化など失政が日に日に明らかになって行く状態で、中国政府はいつまで姑息なやり方で国民が納得させれるかの岐路にさしかかっています。
ロシアのウクライナに対するような対日圧倒的兵力差はないし、(開戦すれば逆に日本に大敗するでしょう)さしあたり韓国を取り込んで世界中で対日批判を起こしながら、特定企業の狙い撃ちで様子を見ようとしているところに、ウクライナ危機が発生しました。
経済不振の進行と国民の目・・不満をそらせるための対外軍事行動に追い込まれている・・誘惑に駆られている点では、ロシアのプーチン氏の置かれている立場と中共政府は類似しています。
追いつめられている点では、中共政府はまさに土壇場ですからプーチン政権の比ではありません。
改革開放以来30年来反日教育して来たものの、日本はまだまだ強いし(背後に直接アメリカ軍が控えている点でも)簡単に攻撃できない点では、ロシアとウクライナの関係より不利です。
そこで、手強い日本に対してはちょっかいを出す程度で、フィリッピンやベトナム等に対する周囲の島々を併呑する方向に徐々に方向転換して、国際反応をテストしてみようとしていたところでした。
南沙諸島では、その気になればほぼ無抵抗に占領出来ることも、ロシアの対クリミア・クライナ作戦と似ています。
暴力団か強盗のようなことをして経済制裁を受けた結果、経済不振がさらに酷くなって、結果的にプーチン政権転覆にならないか・・これを中国に当てはめた場合どうなるかを必死に観察して研究していると思われます。
中国の場合、ロシアとウクライナ関係に比べて日本に対して軍事力で圧倒的な差がない上に、現にアメリカが軍が駐留している地域であって、ロシアの内海のような黒海沿岸とは軍事的な意味が違います。
その上、外資の入り組み程度が半端ではありませんから、この流出が始まると経済が持ちません。
経済不振誤摩化しのための軍事威嚇ですから、結果的に数ヶ月くらいで経済破綻するのでは却って政権維持が難しくなるので意味がありません。
中国は軍事力ではロシアのように周辺国に対する圧倒的兵力を有していませんが、その代わり中国には世界一の外貨の蓄積と巨大な内需があるので、内需目当ての外資は直ぐに逃げないし・・資金流出が始まってもある程度持ちこたえられる強みがあります。
内需の幅が広い・・ロシア・資源輸出国のようなモノカルチャー的弱さがありません。
中国が金融制裁に対抗してアメリから資金を引き上げる・・アメリカ国債を売り払って自国通貨買い支えをすると脅しても、アメリカは自国通貨建てですから紙幣を印刷すれば支払が出来るので、アメリカは短期的には困りません。
むしろ、はっきり中国が敵対すればアメリカ国内の敵国資産凍結の実行で対抗できますし、そこまで行かなくともイランに対する制裁のように金融資産凍結・取引禁止できるのが普通です。
これをやられると、外貨準備は何の効力もなくなり、(使えないので)中国が資本流出に打つ手がなくなります。
問題は尖閣諸島を奇襲攻撃して占領したときに、中国から資本流出が起きるかどうかアメリカによる経済制裁があるかどうか、あったとしてどの程度になるかの見極めです。
アメリカが、日米安保条約によって本格参戦してくれるとは期待出来ない(日本人大多数が信用していないと思われます)までも、日本軍の後方支援をする一方で、中国に対する経済制裁に踏み切るのはかなり確率が高いと思われます。
いくら何でもこの程度のことすらしないとなれば、日米安保条約は完全に効力を失います。
4月23に国賓で来日したオバマ大統領が、尖閣諸島が日米安保条約に定めるアメリカの防衛義務の対象であると明言したニュースが流れています。

中国の学習能力4(反日行動の損得)

対日暴動・焼き討ち等の激しさと比較すれば、一見合法的装いで1企業だけ狙い打する商船三井差し押さえ事件は優しい方ですが、このような姑息なやり方では却ってじわじわと中国経済に利いて来ることが分らないのです。
暴動を煽るのと違い派手さがないので、潮が引くように投資が一斉に減りませんが、100分の1ずつ嫌がらせをやれば100分の1ずつ以上の投資萎縮効果が出るだけでは済みません。
商店が100人のうち一人の客くらいぞんざいに扱ってもいいだろうと強引な商売をすると、その客・100分の1だけが来なくなるのではなく、次に自分がそのよう扱いを受けるかもしれないと他の客が思うので、他の客も行かなくなります。
子供だから良いだろうと腐りかけたものを売りつけると、その店には大人も行かなくなります。
1罰百誡ならぬ1悪百倍効果です。
中国では目先の金儲けばかり教えて来たので、商人が信用を重んじる意味が理解できていないのです。
信用とは目先儲けるために何でもやることではなく、長期的に顧客をつなぎ止めることです。
国内経済不振で共産党政権が危なくなれば、政権維持のための切り札として、反日軍事行動に出ることが大分前から予定されてきました。
鄧小平の遺訓によって?江沢民政権発足当初から、イザ政権批判が高まれば日本攻撃に転化する仕掛けとして着々と反日教育に精出して来た結果、今ではこの教育を受けた若者全世代を反日色一色に染め上げることに成功しています。
(10歳ころから連日、日本は如何に酷い国か・・日本憎しの教育を受け始めていると今では既に40代になっていますから、現役人口の殆どが反日感情を心底持つように教育されていることになりますし、連日日本軍を悪役にしたテレビ映画等を放映していると言われます。)
マトモに息も出来ないような酷い公害の蔓延やシャドーバンキング問題でも明らかなように、中国は国内政治(公害を含めて)の失敗を統計操作やデータ採取禁止等では誤摩化し切れない時期(先送りしても後数年が限界でしょう)が到来しました。
公害の実態を隠すために、アメリカ大使館での独自大気汚染濃度調査を「けしからん」と大騒ぎしていたのですが、北京では真っ昼間から大気汚染で数百メートル先が見えないほどになって来たので、公害調査やマスコミ報道を禁止していても意味がなくなりました。
経済失速状態も如何に政府統計を誤摩化しても、身近に存在する在庫の山を覆い隠すことは出来ません。
中国は今や危機管理上の切り札・・鄧小平の遺言に従って30年がかりでこのときのために準備して来た反日軍事行動の切り札を使うかどうかのギリギリの選択段階になっています。
中国は手始めにレアアース禁輸をして尖閣諸島で軍事威嚇をした上で、同時に国内反日暴動を実行してみたものの、却って多方面で国内産業が困って来ました。
その結果、日本の中国離れが進み昨年の対中投資が急激に減少したにも拘らず、今年に入ってからでも日本の対中投資は更に大幅に減少した昨年比でさらに4割以上減っていると報道されています。
中国経済は外資の投資によって漸く成り立っている現状から、日本の投資敬遠策が経済失速加速の大きな原因になっています。
そこで昨年あたりから中国は内々に再び投資促進ミッションを日本に送り込んで来るようになりました。
対日レアアース禁輸で失敗し、反日暴動で失敗したので、後は政権批判をそらすには国内政治をまともな軌道に乗せるか、直接対日軍事行動に出るしか選択肢は残っていません。
軍事行動に出るには通常兵器での戦闘能力が低く到底日本と戦う能力がないので、これも振り上げた拳のおろし方に苦労している状態です。

ウクライナ危機10と中国の学習能力3

4月20日以降の報道では、商船三井の船を中国が戦前の補償を理由に差し押さえたとのことです。
商船三井に対する執行の問題は、これまで日本が如何に悪いかを煽って来た手前、国際条約で解決済み→なんでそんな条約を結んだ・・見返りに貰った金を寄越せと言う政権批判に直結するのが怖くて抑え切れないので、ガス抜きに使っている面もあります。
韓国も中国も賠償請求権放棄する代わりに日本から巨額資金を得ているのですが、国民に配らないで内緒で使い込んでしまった(・・この結果高度成長出来たのですが・・)ことを今更言えないからです。
大々的対日暴動は却って全般的対中投資を減少させてしまうことが分ったので、この1年ほどは方針を変えて個別企業を狙い撃ちし始めたのでしょう。
半年か数ヶ月くらい前にはニコンだったかキャノンだったかの日本企業を狙った大々的なマイナスキャンペインがありました。
個別企業イジメなら、その企業関係者だけの問題に絞って・・あるいは当局に目を付けられ・睨まれなければ良いんだという問題に矮小化できて、日本企業全体の投資減退にならないと読んだのでしょう。
特定企業を大々的にブラック企業として槍玉に挙げる対象を絞った一種の限定暴動的やり方ですが、これが恒常化すれば、日系企業が槍玉に挙げられないように当局の顔色を窺い付け届けに精出すしかありません。
対日強硬姿勢その他対日交渉ではそれら企業は中国寄り発言をし、日本政府に働きかけするしかなくなるでしょう。
この努力が低いとみなされれば、次の標的にされるリスクが高まります。
他方で国民の不満を少しずつガス抜きできるという一石二〜三鳥の狙いで始めたものでしょう。
とは言え、モノゴトにはそんなうまい話はありません。
とは言え、市場競争が厳しくて敗退のリスクがあるならば納得ですが、理不尽な言いがかりで敗退するリスクがある市場には、出来るだけ投資を避けたくなるのが目に見えています。
対日暴動以降日本の対中投資は激減に継ぐ激減で、昨年は前年比4割減と言われています。
長年反日教育で煽って来たのにイザとなると何も出来ないと弱腰批判されることと、ここ数年の経済停滞と公害の現実化等失政が明らかになってきたので、何かガス抜きしないと政権が持たない印象です。
もう一度反日大規模暴動を煽って対中投資が更に激減すると、中国経済は持たないのですが、全く日本批判をしないと政権が持たないので、日本の顔色を見ながら1企業ずつに絞ってでもやらざるを得なくなったのが中国政府の苦しいところです。
1企業ずつなら日本の反発が少ないだろうという期待でしょうが、これもあまり続くと、いわゆるカントリーリスクとして日系の対中投資は更にジリ貧になって行くし、行くべきだと思います。
例えば進出企業百社あるとして毎年2社くらいずつ槍玉に挙げられると、全体で2%のリスクのある投資となります。
槍だまに上げられる個別企業用にとっては、2%どころが巨額損失ですから、日本企業にとっては中国投資はリスクが大き過ぎるので、ぬれ手に粟の短期間にボロ儲けしていつでも逃げ出せそうな商売以外は進出しない方が賢明な選択となります。
中国投資は他国よりリスクが大きいので敬遠されて、同一条件なら投資が他所に逃げて行く・・誘致競争に負けるために中国政府が努力していることになります。
中国は充分な外貨を持っているとは言え、絶えざる投資を求め技術導入し続けないと自国企業だけではマトモなものを作れない点ではその他新興国と何ら変わりません。
2年前の対日暴動以降日本の対中投資が4割減になり、他方対東南アジア投資が急増している実態・・東南アジア諸国の急成長と片や中国経済の停滞・失速の始まりに中国政府は恐れおののいている筈です。
この経験に懲りた筈なのに、まだセコセコと(恐る恐る?)反日行動をやらざるを得ないのは、長年反日教育し、今や日本を追い越したと自慢していた手前、今更日本企業を叩き出す力がないとは国民に言えない弱みからです。

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