新旧日米安保条約と日本の防衛3

トランプ氏は一方で基地経費発言していることからすると,世界での役割は別としてアジアに関しては,「基地経費負担するならばその地域の警察官をやっても良い」と言う意思表示に読めます。
完全にやめるのではなくコスト次第と言う一見自分勝手に見えるものの、商売人らしいしたたかな?分り易い計算がみえます。
いわゆる「雇い兵」ですが、日本政府の直接の雇い兵ではなく飽くまでアメリカに指揮権のある基地利用を条件とする「いいとこ取り」ですが、これを如何にしたたかに交渉して日本に取り込んで行くか・・米軍縮小に合わせた日本軍強化・の手腕が日本に問われています。
幕末ペリーの強引な手法に日本の上層部は驚きましたが,粗暴な人間は一見相手を驚かしますが時間の経過で粗暴な方が手玉でにとられるのが普通です。
商売人の腰が低いのは、長期的には腰の低い方に有利に働くことを知っているからです。
これを日頃から強引にやっているつもりが、「結果的にやられっぱなしになっている現状にストレスが溜まりカンシャクを起こしたのがアメリカのピープルでありこれの支持を受けているトランプ旋風である」と言う見立てで書いてきました。
今後の日米関係がどうあるべきかは,アメリカのプレゼンス縮小の移行期間に合わせて暗黙のうちに当然決まって行くことですから、(民進党は日本が困るのを期待しているのでしょうが実は)日本古代からの交渉実力から言ってそれほどの心配はありません。
日本にとってアメリカ軍の後ろ盾が控えていることが一定期間(この間に中国共産党政権が自壊して平和国家に変身してくれる期待もあります)重要でしょう。
トランプ氏も巨大な米軍設備・軍需産業・将兵をイキナリ本土防衛に必要なだけに縮小することは国内雇用問題だけとしても不可能ですし,まして国外にも既存の複雑な利害構築していた関係の整理がありますから、すぐには無茶を出来ません。
上記移行交渉には長期間を要することは間違いがありません。
多角交渉だと腕力による優位性が利かないのが面白くないので、今後はアメリカが強い立場を利用して一対一の2国間交渉を求めるのがトランプ氏の基本戦略のようですが,1対1の交渉でしかも粘り強い交渉になれば,日本の方が格段に交渉力が上です。
長期細かな交渉過程があれば、結果的に日本の立場を守れる・・徐々に米軍に引き上げてもらうのに比例して日本防衛力をアップして行く関係になることは、過去の交渉実績が示しています。
この関係が続いている限り中国は簡単に日本に手を出せないし,その間に日本の自衛力が強化されて行きます・・逆に時間をかければ,中国がつぶれそうな気配ですから時間が日本に味方するでしょう。
イギリスとEUの離脱交渉も複雑ですから,老かいなイギリスがどのような交渉能力を発揮するかの関心で,見物する方には面白い展開になるでしょう。
日本としてはトランプ氏を敵に回さずに(おだてながら)同氏がうまく政治を出来るように軟着陸させることに協力して行くしかありません。
今までも日本はアメリカの補完勢力として,陰日向なく協力して来た実績があるので、今後もアメリカの補完勢力に徹することが重要です。
トランプ氏の強引な手法では却って女房役の取りなしが必要になりますので,日本の役割が減じることがありません。
日本の国際役割・補完性機能に付いては2016/02/28/「覇道の限界と日本の補完性7」前後で連載中で途中になっていますが,動乱期にこそ再び脚光を浴びるべきでしょう。
16年2月に書いて来た補完機能は,アメリカは世界中でうまく行かなくなって来て日本の助けを必要としている現状を書いたものでした・・。
日本の助けを借りて漸く運営する・・オバマがあちこちでオタオタしているのに我慢出来なくなった国民がちゃぶ台返しをして「世界から引き上げろ」と言うヒステリーを起こしたのが今回大統領選「アメリカ第一」のスローガンの基礎です。
そうなると今後の日本のアメリカに対する補完機能の発露の方法を修正して行く必要がありますが,複雑になればなるほどうまくやれる能力の人が日本には一杯いますから心配はいりません。
話題が変わりますが,何千年も話し合いで解決して来た成熟した我が国で戦後イキナリ話し合い解決機能が何故なくなってしまったかの関心でこの数日60年安保条約騒動を例にして書いてきました。
サンフランシスコ平和条約が中ソ・共産系除外で成立した後遺症・・当時中ソの立場に固執する・・西側軍事力低下を最大目標とする中ソ系マスコミや外国資金で動く勢力は、日本の利益よりも中ソ系利益を優先する思想ですから、何を言っても受入れる余地がなかった・・話し合い解決の成立余地がなかったことに原因がありその後遺症を今に引きずっているのではないかと言う関心です。
数日前まで書いて来たようにこの延長上で60年安保騒動が起きたように見えます。
60年安保はサンフランすすこ平和条約による独立時に同時成立していた日本に極端に不利な条約の改訂・・日本に有利な改訂ですから、完全な対等条約を勝ち取るにはまだ無理があるにしても少しでも良くすることに反対する理由がなかった反対運動であったことを書いて来ました。
合理的理由があるとしたら米軍不利な改訂を阻止したい米軍スジの意向と,西側陣営に組み入れられている条約自体に反対するものであった・・西側陣営参加のサンフランシスコ平和条約反対運動・・要は日本独立を阻止したい勢力の蒸し返しでしょう。
アメリカ系の資金流入の有無は分りませんが(・・アメリカはソ連のようにまだつぶれていないにので・・)60年安保はソ連の資金と人的応援で行なわれていたことがソ連崩壊後分って来ました。
しかも昨年の集団自衛権論争は既に60年安保条約で(日本施政権内限定ですが)認められていたことが、12月2日に紹介した条文で分りました。
昨年マスコミ報道だけで,安保の条文をよく見ていませんでしたが,既存条文を見ると相互防衛義務負担が新たに生じるのではなく,共同防衛義務の範囲が広がることに対する反対だったのに集団自衛権ばかり(か分りませんが印象としては)氾濫していたように思えますが・・・。
たとえば、朝日の報道で見ると以下のとおりです。http://www.asahi.com/topics/word/%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9.htmlからの記事です。
集団的自衛権(2015年05月12日 朝刊)
同盟国などが攻撃されたとき、自国への攻撃と見なし、反撃できる権利。国連憲章など国際法で認められている。日本の歴代内閣は「保有しているが、憲法9条との関係で行使できない」との解釈を示していたが、安倍内閣は昨年7月の閣議決定で、解釈を変更。(1)日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態(存立危機事態)(2)我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使——の新たな3要件を満たせば、集団的自衛権による武力行使を憲法上可能とした。
上記のとおり集団自衛権行使が憲法違反かどうかばかりが朝日新聞に限らず大規模報道されていましたし、昨日の日経新聞でも「安倍政権のこの一年の成果として「集団自衛権がどうの・・」と言う記事がでていす。
集団自衛権・・共同対処は既に60年安保に規定されていてこれが国会通過していたのですから,何故いまごろ再び大騒ぎし直したか疑問です。
ここ4〜5年来の国防上の大きなテーマは、60安保条約の限界・・日本施政権下範囲を日本施政権外に共同防衛行為をする範囲拡大が許されるか?だったことなります。

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