二国間交渉2(北方領土と自衛力)

経済関係についてのトランプ氏のアメリカ第一主義の実行は難しいとしても、アメリカ第一→国際政治関係から大胆に手を引く方向性は,アメリカの国力相対化の実態から見て正しい方向性ですから、実現して行くでしょう。
撤退縮小・・ある地域からデパートを撤退すると言う発表同様でその実行はそれほど難しいことではありません。
直ちに完全実行出来ないとしてもロシアに対する経済制裁関連は次第に緩むと見て(ロシアの国際孤立脱却の道が見えて日本利用メリットが減ったので)すぐに反応したのはプーチンで、時間をおかずに北方領土に関して対日融和路線を修正した印象の発言をしています。
トランプ氏の路線がそのまま実現出来るかどうかは別として地域大国の自由度(積み重ねて来た国際合意を踏みにじる権利・・横暴)を高めようとするものであり、アメリカ自身も出来れば無茶をやる仲間入りしたいと言うものですから、経済制裁解除〜緩和にも繋がるし既存ルール破りをしているロシアや中国に有利な展開です。
12月2日の日経夕刊一面には,トランプ氏が空調大手キャリアとメキシコへの工場移転中止合意したことを受けて同社工場を訪問して?海外に出て行く企業には高関税を掛けると演説した様子が出ています。
こんな脅しを露骨に受けた企業はスクムでしょうし・・こういう脅しがまかり通るようになると,中国で「共産党幹部にらまれたらおしまい」と言うことで裏で賄賂がはびこるのと同じ光景が始まるでしょう。
トランプ氏経営するいろんな傘下企業から,中国で大量の特許申請がていてみんな却下されていたそうですが,当選するとすぐに再審査されて,全ての?特許が通過したとの噂です。
このような動きが直ぐ出て来るでしょう。
アメリカは賄賂を厳しく取り締まっていますが,(ヒラリーは巨額献金していないと面会出来ないと言うシステムだったらしいですから・要は洗練されているかどうかだけで,既にアメリカは腐りかけているのです)名指して非難するのは・中国のように政敵だけ取り締まるようになるのと似た結果になりますから,余程国民がしっかりしないと一種の独裁・恐怖政治に移行して行きます。

中ロやエルドアン等の世界の独裁者にとっては、アメリカのトランプ氏が自分たちと同じ仲間に入ってくれると従来型欧米の批判が緩くなる期待で喜んでいることになります。
私の持論ですが、ロシアが謝って熨斗(長年の違法行為に対する詫び料)を付けて返して来るなら別ですが,そうでなければ北方領土返還にこだわる必要がない思います。
故郷は大事ですが、日本国内の他の過疎地同様で,実際にはふる里を捨てて都会に出るしかないのが現実・・ソモソモ元の住民が本当に帰島を求めているかさえ明らかでないのに、北方領土解決のためにどんな条件でも飲むような馬鹿げた返還実現にこだわる必要がないでしょう。
誰も戻りたくないとは表向き言わないでしょうが,北海道中で実際には過疎地を棄てて札幌等への移住が進んでいるのに、北方領土に限って逆に戻りたい人がいるとすれば,建前・政治的意図によるものでしょう。
過疎の島のために、返還後も沖縄のように膨大な補助金の垂れ流しになる上に、その後も不満ばかり言われるのでは御免です・・と言う本音をみんな言えないだけではないでしょうか?
不法占領を許せないと言うことで押して行くべきであって,頭を下げてお土産を出して返してもらうための運動が何故必要かの疑問です。
日本はソ連の条約違反の責任を明らかにしない限り戦争状態のママ・・受け取れない・・喧嘩状態で結構ですと言うべきでしょう。
韓国人に盗まれたお寺の仏像を返してもらうために,経済援助したり頭を下げてお願い行く必要があるかと言うのと同じです。
泥棒が盗んだ品を返すときには,返す方が「済みませんでした」と謝罪し示談金をプラスするのが普通の道義でしょう。
何故被害者がお金を積まなくてはならないのか理解不能と言うか,それでは犯罪者・侵略者が増える一方です。
隙さえあれば泥棒や強盗に入るチャンスを窺っているロシアと仲良くする必要をもともと感じません・・。
ロシアに返還の気がなくなったとすれば、もっけの幸いではないでしょうか?
ただし、トランプ氏の政策方向性による地域大国の違法行為誘発危険性・自由度が高まっていることは事実です。
ロシアの強気の変化で分るように,トランプ氏登場による実際に起こる大変化・・日本が国力不相応に最も弱い状態に置かれている軍事挑戦に対する備えコソが必要です。
アメリカ駐留軍は元々日本を防衛する気持ちはありません。
日米安保条約は占領軍の名称を変えただけであって,元々占領・植民地支配のための軍の性質はそのままでした。
独立国に「占領軍の性質剥き出しのママで居坐っているのははおかしい」と言う岸政権の努力でアメリカは仕方なし防衛条約に格上げ同意したに過ぎません。
物事の理解には由来が重要です。
仕方なしに「施政権の及ぶ範囲」の防衛義務を書いただけですから,本気で日本を守る気持ちは根っからありません。
ここで念のために日米安保条約の歴史(内容変遷)を見て置きましょう。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19520228.T1J.html東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室
[文書名] 日米安全保障条約(旧)(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約)によると以下のとおりです。
前文
 日本国及びアメリカ合衆国は、千九百五十一年九月八日に、日本国内及びその附近における合衆国の陸軍、空軍及び海軍の配備に関する規定を有する安全保障条約に署名したので、
 また、同条約第三条は、合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は両政府間の行政協定で決定すると述べているので、
 また、日本国及びアメリカ合衆国は、安全保障条約に基く各自の義務を具体化し、且つ、両国民間の相互の利益及び敬意の緊密なきずなを強化する実際的な行政取極を締結することを希望するので、
 よつて、日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、次に掲げる条項によりこの協定を締結した。
第一条
 平和条約及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じよう{前3文字強調}を鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。
第二条
 第一条に掲げる権利が行使される間は、日本国は、アメリカ合衆国の事前の同意なくして、基地、基地における若しくは基地に関する権利、権力若しくは権能、駐兵若しくは演習の権利又は陸軍、空軍若しくは海軍の通過の権利を第三国に許与しない。
第三条
 アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。
第四条
 この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。
第五条
 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国によつて批准されなければならない。この条約は、批准書が両国によつてワシントンで交換された時に効力を生ずる。
 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で、日本語及び英語により、本書二通を作成した。」

上記旧安保条約第一条はいわゆる内乱条項ですが,これを見ると日本の要請がなくとも米軍はアメリカに都合の悪い運動があれば,独自に鎮圧のために自由に出動出来ることになっていました・・マサに植民地支配軍そのものでした。
第一条は西欧諸国が植民地独立を認めるにあたって施行していた絶対的に譲れない条文(・・フィリッピンでも独立を認めるときにこの条文が入っているとのことです)です。
独立後の条約でありながら,日米安保条約は(日本独立認める条件として)占領軍の性質そのままの地位継続を保障する条約が(当然アメリカは日本の要請で駐留すると言う仕組みにしていますが・・異民族に占領を続けて欲しいとお願いする・・こんな酷い条約を望む国はあり得ませんから,)憲法の交戦権法放棄条項同様に事実上強制されていたことが分ります。
占領軍が好き勝手に国内鎮圧出来る条文がある限り、独立国とは名実共に言えません。
そこで、日本は独立後粘り強くこの条項の撤廃を求めていて漸く成功しかけたのですが,これが国会で批准しないと効力が出ない・・すなわち日本占領が続く仕組みでしたから,これに反対する勢力は日本が従来どおりアメリカ占領下にいた方が良いと言う主張をして大騒動を起こていたことになります。
日本の独立第一歩になる条約改訂を妨害して元の占領条約に引き戻そうとしていたのがいわゆる60年安保騒動だったことになります・当然アメリカが裏で糸を引いていたでしょうから,騒動が大きくなればなるほど良い・・鎮圧のための軍を出動しません。
(世界中の政変の多くはCIAの仕掛けだと言う陰謀論が普通に言われています・・日本では,戦後初めてアメリカ離れを画策した田中総理の追い落とし策として日本人を利用した「金脈人脈」の発表で退陣に追い込み,ロッキード事件はイキナリアメリカから証拠が出て来た不思議なもので,田中氏のとどめを刺すためだったことが知られていますし、ソ連崩壊儀日本が無用になった途端に日本叩きを受けている真っ最中に「アメリカ財務省証券の売却も出来る」のだと発言した橋本総理の急激な失脚もアメリカの意趣返しが言われています。)

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