規模追及と民度2

EUが成立した当初人口約2億と言われ,本日現在ネタ帳によるとアメリカの場合,93年当時は260.15万人であり16年は323.98万人です。)アメリカの人口(市場規模)に対抗出来るようになったと話題になっていました。
(検索しても何故かEU成立当時の総人口が出ませんが,イギリスは後から加入した記憶ですから当時の独仏伊あわせても約1億5000万ですからそんなところだったでしょう)
マスコミではEU結成は独仏間の戦争の惨禍を繰り返さないためと言うきれいごと中心報道ですが,元は石炭鉄鋼連盟から始まったように市場統合・戦後植民地と言う囲い込み可能な市場を失って大規模市場を持つ米国と格差が開く一方になった・衰退に直面した西欧がキリスト教圏での共同市場創設による対抗の動きのグランドヴィジョンだったのです。
経済統合・・競争力回復が主要目的だったからこそ国家統合よりも先に貨幣統合・・ユーロ創設と(低賃金労働者の)移動の自由・シェンゲン協定を急いだことも分ります。
企業で言えば,大きいことは良いことだと言う思潮がはやり,売上何兆円企業でないと生き残れないと言う動きで、その頃クライスラーその他世界企業の大統合がはやりました。
その頃今後は本拠地市場2億人を単位とする時代が来た・1億あまりしか人口のない日本は苦しくなると言う意見を読んだ記憶です。
2億人程度の本拠地市場で新規事業の揺籃期に大事に育てて・一定規模に育ててから世界に打って出る必要があると言う意見がマスコミを賑わしていました。
アメリカはEUの人口挑戦に負けないようにその後も移民を入れて対抗し,EUもその後領域的に東方拡大を続けるとともに移民受け入れも進めました。
(植民地ではなく対等な合併・連合に切り替えただけ?)
この結果2015年の暫定値ではEU人口は5億820万人と発表されていますので、もの凄い膨張で,上記ネタ帳のデータによるアメリカの現人口を大幅に追い越して人口競争では大成功していたことが分ります。
上記のとおりEU全体の過去の人口統計が出ませんので,タマタマ出た14年のドイツ人口を見ますと,以下のとおりです。
p.reuters.com/article/ger-idJPKCN0Q90KB20150804
[ベルリン 3日 ロイター] – ドイツ連邦統計局によると、ドイツ在住の移民の数が2014年には3.7%増加し、過去最高の1100万人に達した。全人口の5分の1が何らかの移民のバックグラウンドをもっていることになる。
移民の多くは、ポーランド、ルーマニア、イタリア、ブルガリア、ハンガリーなど欧州連合(EU)諸国の出身。
2014年の移民人口は、2011年比で約10%(約150万人)増加。移民人口を除いたドイツ人の人口は逆に同1.4%減少した。」
移民概念がはっきりしませんが、一定年限までの国籍取得者も含むルーツを言うのか、国籍取得者を除くとすれば過去30年間累計すれば国籍取得者は膨大でしょうから,流入人口数は膨大です・・兎も角こんな状態です。 
フランスでは「移民とは」以下の分類で外国生まれの国籍取得者を含まないようですから,フランスで生まれた2世で国籍取得したものは含まないことになります。
http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2014_5/france_01.html
「フランスにおいて「外国人」とはフランス国籍を持たずにフランスに居住する全外国人がこれにあたる。フランス国内で外国人を親として出生し、フランス国籍取得を決めていない者も含まれる。これに対して、「移民」は出生地及び国籍の2重の基準により定義される 。つまり、(1)現在フランスに居住しているものの、外国において外国人として出生した者、(2)フランス国籍を取得後も外国において外国人として出生した事実に基づき移民の一部として類型される。」
ドイツ移民の統計ルールも仮にフランスと(EU)同基準であれば,オヤがドイツ国籍を取得した二世以降の場合には移民数としてカウントされていないことになります。
ドイツ人口の2割が移民とは言っても、既に移民2世が増えているでしょうから,2世以降を移民に含めれば,もっと多くの人が含まれていることになります。
「ドイツ、フランス等で出生率が上向いたのを見習え」とマスコミが報道しますが,アラブアジア系移民の出生率が高いのが普通ですが、独仏国籍取得者の生んだ子はドイツ、フランス人の出生率に数えるとすれば、実態(生粋のフランス人等の出生率でみれば)は怪しいところがあります。
しかも上記のとおりドイツではこれを含めても出生率が下がっていると書かれています。
話がEUやアメリカの人口増加政策に流れましたが,EU結成に成功した1993年前後頃からソ連崩壊・・中国の改革開放が始まり世界市場が急拡大し,消費人口・・購買力による発言力としては、アメリかもEUも中国に遠く及ばない存在になってしまいました。
言わば焼け石に水だったことになります。
一方で生産設備その他の自動化・コンピューター化が進んだ結果、比喩的に言えば熟練度2〜3点でも電化製品等の生産に従事出来るようになって来たので、中国その他の新興国でもテレビ冷蔵庫〜クルマでさえその他製造設備を先進国が投資さえすれば作れるようになったので,先進工業国の独占生産体制が崩れて来ました。
半導体で世界を席巻していた日本は今では,半導体製造設備輸出国になっていて半導体製造現場は中国等に移っているのを見れば分ります。
中国やインド、バングラデシュ、ブラジル等の練度2〜3点の低レベル労働力でも汎用品を作れるようになって来て、(先進国の優位性は製造設備があることだったのです)彼らが世界生産市場に参入して来ると今度は賃金格差によって先進国が負け始めました・・逆輸入の開始です。
人口さえ多ければ市場規模や,生産従事者数で有利と言う前提が揺らぎ始めるとアメリカの移民受入れ策やEU拡大政策に無理が出て来ます。
自動化,ロボット化の工夫による生産性向上努力は成功しても、半年もしない内に中国の工場でも取り入れられるのでは,いわゆるイタチごっこで人件費平準化圧力から逃れられません。
生産性向上の工夫努力の手を抜いて安い人件費・・移民に頼るか海外移転しかないと言うのが、世界の潮流・・アメリカ式発想だったことになります。
新興国対策として人口大国の地位を維持するために移民を受入れるようになる=低賃金競争するための移民受入れ政策に変質すると元々の国民・ピープルの賃金下げ圧力になり元々のピープルに犠牲を強いることになります。
製品で言えば品質競争ではなく、安売り競争のパターンに陥るとその業界はダメになると言われていますが,さしあたりしわ寄せが下請け泣かせや弱い労働者・・人件費圧縮→非正規化の加速→中間層縮小になります。
ついにこれの限界が来たのがイギリスのEU離脱決定であり、EU全体での移民反対論の盛り上がりとアメリカの移民排斥を煽るトランプ氏の当選です。
新興国の低賃金攻勢→輸入物価下落・デフレ圧力に対して移民を排斥しても,金利引き下げてもどうなる訳でもない・・金融緩和は無駄な努力であり,政治的に見ればヒステリー症状だと言うのが私のこれまでの意見です。

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