中国バブルの本質3(新興国経済2)

フリーのジャーナリストが、数週間の旅行観察程度でも、社会のムードを読むには有効ですが、その先、企業内実のデータに基づく微妙な変化を読み、紹介するには無理があります。
深圳特区などの大規模工場群のあたりをタクシーで走り回ったら、少しは印象がつかめるかも知れませんが、広大な敷地の塀の外からの観察では隔靴掻痒の感がします。
倒産して閉鎖されている工場については、通りがかりに見れば分るでしょうが、(これもタマタマうまくその工場正門前を通りかかった場合だけです)2〜3割減産しているかどうかなどの変化は分らないでしょう。
市街の雰囲気を逸早く報道するウオッチャーの役割は貴重ですが、この方向性をある程度理解したら、(ムード報道は何回聞いても仕方がないので、)その次にはこれを裏付けるデータから迫る報道が欲しいものです。
素人は慾が深いと言われればそれまでですが・・。
国内景況感把握に関しても、年または数ヶ月遅れの統計が出るのを待つよりは最先端感覚・直感に頼る街角景気把握が重視されていますが、直感把握の後ではその直感を裏付けるデータ報道が欲しいのと同じです。
この辺はフリージャーナリストの手には負えない・・商事会社など海外展開している企業実務家の方が詳しいでしょうから、彼らのネット(企業名を知られたくないならば匿名で且つ業界情報で)参加が望まれます。
中国、韓国、インドネシア等々国別で(政府統計ではない)業界別にその国での月別売上高推移など具体的データを知りたい人が多いでしょう。
先進国のバブルとは、均衡の取れた種々雑多な産業群がある中でオランダのチューリップ・・日本の不動産バブルのように特定分野で急激な需要(仮儒)拡大した現象を言うものです。
中国の場合17日から書いて来たとおり、経済全般の不振=過大供給能力化の結果、(不動産需要は経済全体の動きを反映し易いので)不動産や株式バブルが目立っているだけですから、先進国のバブルとは違います。
中国は図体が大きいだけであって、外資導入に始まる一斉開花式の新興国型経済で成長して来た点では同じですから、不動産業や株式相場等に限定せずに同時並行的に各種投資が一斉に(輸出目的=内需無視の過大投資)行なわれて来ました。
新興国型経済は外資流入によって新規成長した分野では、成立目的から言って、国内需要目的ではないので、内需から見れば、過大になっている本質があります。
この辺は新興国としては老舗ですが、韓国産業界が内需無視の外需依存体質になっている・・国民が貧困に喘いでいて、売春輸出に励まざるを得なくなっているのに、貿易だけ黒字になっているのと同じです。
新興国では外資導入に際して、ひ弱な内国産業が壊滅するのが怖いので、輸出製品製造目的を条件に進出許可することが多いので、経済特区では元々国内需要に整合していません。
バングラデッシュの巨大な縫製工場が時おり報道されていましたが、これらは当初から輸出目的であって、内需のために巨大工場が生まれているのではありません。
バングラデッシュ等に移転した生産分、中国の大規模縫製工場では仕事がなくなっている筈と言う印象付けで終わらずに、バングラデッシュやベトナムの報道にあわせて中国縫製工場業界の生産量推移のデータが欲しくなるのが普通です。
新興国型経済では、外資導入目的が輸出産業育成にシフトしているので、ひとたび輸出競争力が損なわれるとあらゆる分野で過大投資問題=いわゆるバブル崩壊(本来のバブルではない・・大規模景気変動の一種であると言うのが私の意見です)が始ります。
植民地経済時代のプランテーション農業経済の脆弱性が問題であった歴史の繰り返しです。
これを防ぐために内需型経済への変換が必要であると言う意見が一般的ですし、抽象的にはそのとおりです。
家内工業から始まって内需・・地域需要を満たしてから近隣県に進出し、更に自社の属する関東や九州等の地域全般に販路を伸ばして全国メーカーになって、その余力で輸出力もつけて行った・・段階的に発展して行くのが日本や世界の先進国の発展形態です。
20日に書いたとおり、この段階を飛ばしている新興国では、いきなり内需転換と言われてもこれに見合った産業構造になっていません。
日本の高度な消費者向けに日本人が指導して日本向けホーレンソーなどの洗浄や包装をして出荷して行くやり方(衣類その他も皆同じです)で、元々中国国内需要向けに生産した経験がありません。
中小企業から大きくなった企業が倒産したら経営者は元の中小企業・・自分で「昔取った杵柄」で物造りを再開出来ます。
(大工さんやペンキ屋が大きな会社にしてから、倒産しても、元の職人に戻ったり年齢が高くなって現場が無理ならば、監督などやれます・・原点に返れば良いのです)
中国等新興国では経営者が、何の技術経験もなく資本さえあれば、日本から大規模機械化した工場設備を導入して日本技術者から機械操作をおしえられて生産を始めただけで従業員も流れ作業しか経験していません。
日本のように段階的発展の経験がなく、国内需要向けでなく、画一的低レベル品を作るために立地した大規模工場が、内需型・・きめ細かな多品種少量生産にイキナリ切り替われる訳がありません。

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