開発独裁と実質非効率1

韓国や中国あるいは後進国では、日本のように充分な根回しなしに唐突な政策発表をしてはあっさり撤回したり、あるいは直ぐに着工・実行など乱暴・・良く言えば政治決断や企業トップ判断が早いですが、その分無駄な投資も多くなっています。
このように社会合意もないし、事前規制の未発達国では、政治形態的には開発独裁という即断即行型の独裁政治(権力の誇示にもなるし・・・先進国で経験済みのプロジェクトの実施ですからある程度問題点が分っている効率性もあります)が適合しています。
GDPの計算上は、無駄な投資でも繰り返せば(後で解体しても)当面GDPを押し上げるし、国内需要が増えるので政府統計としては外観上見栄えが・勢いが良くなります。
中華帝国の栄光復活をローガンとして掲げる中国政府にとっては、目先有効な政策だったでしょう。
目先のGDP押上効果があって赫々たる成果の発表になりますが、後で公害被害問題が起きる・・あるいは不良製品を作り直すなどのマイナス面を隠しているので、言わば損失の先送りをしている粉飾決算みたいなものです。
マイナス面を先送り出来なくなって総合的・象徴的にあらわれて来たのが、公害の深刻化や影の銀行等の金融秩序破綻リスク・暴動の頻発による司法秩序の崩壊現象その他あちこちで噴出して来ました。
マイナス面を先送り・・隠し切れなくなって来たのが、最近の中国経済リスク浮上です。
中国の場合、新幹線事故で明らかなようにいろんな大工事を周到な準備なくして無茶苦茶に実行して、その後に危険となって全面的にやり直すと経済損失が大きくなります。
(企業で考えれば結果的に大損失になることは直ぐに分りますが、それでも毒餃子・毒入りミルクなど何でも目先の利益のためにやる国民性です。)
中国社会全体になるとは規模が大きいので、最後にしわ寄せの来る金融システムその他不都合な部分をヤミに潜らせて5〜6年間結果を隠して来られたのですが、最近では個々の不都合の集積である金融秩序や公害の分野で結果が出て来て隠し切れなくなった状態です。
首都全体を移転するしかないと言う議論が出るほどひどい状態・・公害発生はその象徴ですから、国全体で似たような不良品のオンパレードで先送りして来たのです。
大変な損失現実化がこれから待ったなしの状態ですが、これさえも首都移転等の大工事をすればGDPが前年度比拡大したという自慢の根拠になるのでしょう。
GDP発表と言うマジックでは都合が良いとしても、経済全体で歪みが生じます。
今まではこの無理の穴埋め・帳尻合わせに外国からのヤミ資金を含めた投資資金が使われてきて、一種のマネーロンダリング作用としてシャドウーバンキング(影の銀行)が使われていました。
昨年夏の反日暴動以降ヤミ資金を含めて外資流入が激減してきたので、シャドウーバンキングへの資金流入が細った結果、今年5月以降のシャドウバンキング(影の銀行)の行き詰まりリスクが顕在化して中国発の経済危機発生不安が現実化して来ました。
日経平均で言えば、中国関連株銘柄(日産等)が下押し材料になってアメリカ関連株(トヨタ等)が上昇株と明暗を分けていて、その影響力の割合で日経平均を上げたり下げたりの繰り返しになっています。
この繰り返しの過程で、中国関連株の比重が下がって行く・・結果的に日本経済での中国比重が下がり続けた状態で最後に中国発経済危機になれば、日本の損害が減ります。
(例えば今では、中国関連株が仮に半分あるとした場合、関連株式が3〜4分の1・・もっと進んで10分の1に減ってから危機発生の方がリスクがそれだけ減ります)
韓国や欧州勢が日本や米国からの投資減少の穴埋めに動いているようですから、(穴埋め勢力がなくてこの段階で直ぐに危機発生すると日本は甚大な被害を受けてしまいますので)有り難くお任せしておけば良いでしょう。
周到な事前準備・・悪く言えば規制でがんじがらめになると、新しいことに挑戦し難い弊害が生まれてきますが、これは事前準備・・細かな規制が悪いかどうかの問題ではなく、社会の進歩に応じて規制修正に柔軟対応するか、規制を硬直化させるかの運用能力の問題です。

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