限定戦争と原発政策1

相手国内に自国資産・・進出企業の資産などが多くなると相手を空爆しているようでいて、自国企業の資産を空爆することになり兼ねません。
進出企業だけ避けてその周辺をピンポイント空爆してもその企業のサプライチェーンや従業員が被害受けると事業活動が出来ません。
先日千葉の裁判所の近くにあるキ・ボールというところの一階ホールで、千葉の空襲や広島長崎に対する原爆の写真展があったのでみてきましたが、長崎付近には米軍の捕虜収容所があるからどうするかと言う意見に対し、(そんなのを一々気にしていられないということで)直ちに却下して、当初計画どおりに長崎へ投下したと書かれていました。
中世の発想・・王様が国民と関係なく戦争していたように国家間で戦争してもそれぞれの企業活動はそのまま続けたり、政治と経済・民族間憎悪を切り離すなどしない限り・・グローバル化の進んだ現在では波及効果が大きく複雑になり過ぎて、全面戦争をするのは現実的ではなくなります。
例えば尖閣諸島の帰属を争ってお互いの本土で爆弾を落としあうとすれば、双方の被害は尖閣諸島の100〜1000倍以上も発生してしまいます。
こうなると、「国益を守るための戦争」と言う概念は自己矛盾になりますので、そこまでして全面戦争しなければならない意味が何か?となってきます。
欧州が二度の大戦に懲りて戦争しない仕組みづくり・・EU成立になったと言いますが、要はヨーロッパでは国家間の人や企業の移動入り組みが複雑になり過ぎて国単位で喧嘩出来なくなった・・民族単位での争いが意味をなさなくなったことによります。
原爆の場合象徴的ですが、その他の戦争・・通常兵器でも空爆その他近代兵器(第二次世界大戦末期の米軍による焼夷弾攻撃など)になって来ると非戦闘員を巻き込む形になるので、一定エリア内にいる自国民・企業も巻き込むしかありません。
今後の戦争は原爆保有国も安易に原爆を使用出来ない国際道義があって・・全面戦争をすることが不可能になっています。
・・アメリカもベトナム戦争で面倒だから原爆を落とすと言えなかったし、中国も日本に対して尖閣諸島の領有問題で原爆による脅しを使えていません。
原爆による脅しをもしも中国が使えば、直ちに日本が核武装に走ることが目に見えているので、示唆すら出来ない状態です。
日本は核武装を実際にしなくとも、イザとなれば短期間にレーアメタルの代替品を開発したように、いつでも核開発出来る能力を持っていることが、中国等への核抑止力になっているのです。
原発単体での経済面の採算性だけを議論するのではなく、原発やロケット技術の維持は国防上のカードとして必須でしょう・・。
原発自体は廃棄費用・損害賠償まで考えると一定の赤字になるとしても、最先端技術を維持することで技術輸出で儲けられる面があるうえに、他方で核兵器の恒常的保有コストが不要になるメリットも大きいので、これらを総合して結果的に安いかどうかの議論が必要です。
医薬品でも何でもそうですが、研究開発部門だけ見れば100%赤字に決まっています。
クルマでも何でも研究開発の成果を活かして世界展開してどれだけ儲けられるかによって、研究開発費がペイするかどうかが決まるのです。
原発反対運動論には廃棄費用や一定率の損害発生費用・危険性を見込めばそもそも化石燃料等に比べて割高ではないか?と言う意見が多くを占めていますが、その種意見の場合にはこの技術を利用して世界展開して儲けを還元出来る場合にも(その儲け・・多くの人材雇用を生み出しているメリットを含めて)割高かどうかを検証しないと合理的な議論とは言えません。
原発反対運動家が原発が割高だと主張しながら、原発技術の海外輸出批判・・海外展開によるコスト引き下げ努力を批判しているのは、矛盾主張になります。

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