消費力アップ4と世界的減税潮流の基礎1

減税→小さな政府論・・消費力アップには財政投資はいらない・・邪魔だと言うのが世界の潮流であり、それが正しい方向です。
先進国では生産力アップよりは消費力アップがテーマであれば、政府が税で資金を集めて需要創出→生産力増強するのではなく、消費者のニーズを探りつつニーズに敏感な民間が生産して行くしかありません。
江戸時代には藩も幕府も財政は赤字で(今の国債のように豪商から借りて)苦しみ、上は質素倹約・・贅沢出来ずに、その分民は豊かでした・これこそが民中心・消費時代のあるべき姿です。
中国王朝やフランスの宮廷など民が飢えに苦しんでも華美な生活を誇り宮廷文化(だけ)が盛んでしたが、日本の場合庶民文化が栄え豊かになる一方で今も支配層や天皇家も質素倹約が上に立つものの努めとなっているのはこの歴史によります。
江戸時代の浮世絵や落語や盆栽各種娯楽が多方面で発達した文化力・需要は、政府が創出したものではなくニーズに敏感な民間が適応して来たのです。
レッセフェールと言う学問を知らない頃から、日本では昔から民の力を信じて実践してきました。
西欧が近代に入って漸く気が付いた人道主義とかと動物愛護の思想以前から日本では人道に反する虐待をしたり動植物を粗雑に扱う文化ではありません。
消費力アップ論によれば、税収=政府の役割をへらして消費者・国民の選択に委ねるのが正しい方向であり、これに応じて政府の役割を縮小して行くのが正しい方向です。
先進国で減税の機運が強くなって来たのは(マスコミは金持ちの強欲と非難し,それでも足りずにタクスヘイブンなどとスケープゴート化して騒いでいますが・・)税の縮小は政府の機能縮小の現実に適合しているのであって、大衆迎合主義と言う批判は政府の役割を従来どおり維持したい立場による一方の立場の宣伝に過ぎません。
「財政赤字をどうするのだ」という脅迫も税収が減ったならば、成長目的の政府機能.財政支出を縮小すればいいことですから、縮小すべきか否かの議論を先にすべきであって、この議論を飛ばしている点怪しいところがあります。
飽くまで旧来型政府の役割を維持したい勢力・・日本の官僚マスコミは減税要求の潮流を大衆迎合主義とか大金持ちが肥え太るばかりと批判しながらも減税の潮流に抗し切れないことから、これとセットで赤字財政をどうするのだと言う脅しを使い法人税と所得税の減税分を補填すべく所得税等を払っていなかった別の階層に対する増税をしようとしているのが消費税強化論になります。
所得税・法人税の課税対象は比較的所得の高い階層(一定所得以下の人は課税されない仕組み)ですが、彼らに対する課税を減税した分、政府の役割を縮小すれば無理がありません。
従来どおりに成長目的の役割を果たそうとすれば別の階層から取るしかないので、対象になるのは所得の低い階層(従来の非課税層)しかありません。
現代では所得格差を是正する税制の所得再分配機能が言われていますが、所得税を減税して消費税で穴埋めすれば、再分配機能の逆張りになります。
税の原初的機能は底辺層から搾り取るだけ絞ってそれを支配層に再分配して来たのが税の成り立ちからの原則的機能でですが民主国家ではこれを表に出せないので、格好付けに貧者にも気持ちだけ配って、再分配機能があるとこじつけて来たに過ぎません。
この点は消費税アップする都度、生活必需品を限定除外して弱者のために配慮したとお茶を濁しているのと同じパターンです。
消費税問題では部分的に除外部分を大宣伝しますが、所得のある人から税を取る代わりに所得のない階層からも税を取ろうとする原則・・骨格は変わりません。
宗教家が貧者の1灯と言って庶民からお金を吸い取りながら、豪華なローマ法王庁を見れば分かりますが..施餓鬼というか時々スープを振る舞う偽善と同じです。
所得税免除(課税限度額の引き上げ)が行き過ぎて来たので?もう一度形を変えて底辺層から徴収しようとするのが消費税の思想ですが、近年格差拡大が社会問題になって来たのは底辺層から税を取り他方で高額所得層に対する減税が進んで来た結果によります。
日本の格差がそれほどではないのは、消費税率をアップ出来なくて穴埋めに国債や郵貯を利用して来た(国民がお金を持っていることが重要ですが・・)・財政赤字によってファイナンス出来た幸運によります。
金欠で苦しんだ江戸幕府や各藩は、海外から借りずに国内資金で間にあわせていた点は今と同じです。
保険の赤字も何故赤字で運用出来ているかと言えば、国債等によるファイナンス(幕府や各藩が税を取らずに豪商から借りていたのと同じ)が出来ていたからです。
日本の財政や保険赤字が可能であったのは、国債や郵貯の資金出し手は(小金持ちを含めて基本は)お金持ちですから、金持ちから税・強制力を用いなくとも事実上所得移転が行なわれて来たから格差拡大も進みませんでした。
ここ数日書いたように金融緩和によって資金が海外に逃げるようになっている・・金融商品も貿易商品ですから…金利が実勢よりも安くされるのは国民にとっては国内金融商品が割高になり、海外の割安な→利回りの良い商品を買うことになります・・。
資金が海外に逃げて資金吸い上げが行き詰まって来た結果、日銀による国債買い戻しや株式市場介入に走っているのですが、このままでは資金が金利の高い海外に逃げるばかりでどうにもならない・・、いよいよ諸外国並みに消費税を引き上げるか政府機能縮小するしかなくなって来たようです。
(2択ならば、税収を上げるよりは政府予算を減らして財政政策機能を縮小すべきです)
トランプ氏は法人税と所得税の大幅減税を公約にし、他方で対外プレゼンスを減らす主張をしているのは主張が一貫しています。
例えば増減税同額・・減税分同額の企業補助金を減らすから資金手当は大丈夫と良く報道されるのは、一見首尾一貫していますがそれでは何のための減税か意味不明です。

金融政策の限界5(韓国のミニバブル1)

まだ中国韓国人には、近代的モラル・ルールが国民の心の芯に定着し切れていないことを7月28日に書きましたが、人民の価値観にとっては金利が安いならば今のうちに借りられるだけ借りてしまおう・・最後に払い切れなくなれば、踏み倒せば良いと言う魂胆でしょうか。
7月28日に書いたように中国や韓国では、借りたら返す必要があると言う近代法意識が未成熟(・・韓国では何回も借金棒引き令が行なわれて来たと言われています)だから1昨日紹介したような野放図な金融緩和政策が大手を振っていられると思われます。
現在中国の野放図な借金拡大傾向については、ちょっと日付が遡りますが勝又氏経済時評5月9日からの引用です。
「「フィナンシャル・タイムズ』(4月28日付)は、社説で「経済改革に苦闘」と題して、次のように論じた。・・・
(2)「巨額の債務がもたらすリスクは明らかだ。負債総額は国内総生産(GDP)の約240%に相当し、大半の新興国の比率をはるかに上回る。赤字の国有企業がかなりの債務を抱えているため、この数字が長期的に持続可能であるはずがない。さらに懸念されるのは債務増加の速度である。もっとも、現在では深刻な金融危機のリスクは限定的だろう。閉ざされた資本市場、高い家計貯蓄率、潜在的経済成長力を考えると、中国の全体的な負債水準は警戒レベルを下回るだろう。また、政府には企業債務(実際には国有企業や地方政府関連が多い)を国庫のバランスシートに移し替える余裕がある。政府の財務内容は依然、巨額の公的準備に裏付けられ、健全である」。
以下は勝又氏の意見です。
「中国の抱える債務総額は、この記事では対GDP比で240%としている。だが、マッキンゼー国際研究所の調べでは、282%(昨年4~6月現在)である。その後の債務増加を勘案すれば、300%超えも間近であろう。決して、安心できる水準ではない。「政府には企業債務(実際には国有企業や地方政府関連が多い)を国庫のバランスシートに移し替える余裕がある」と指摘しているが本当だろうか。」
(3)「不良債権処理の包括計画をまとめないうちは、問題の先送りにすぎない。国際通貨基金(IMF)が警告したように、政治的に微妙な分野を含めて産業の再編に取り組まなければ、(債務の株式化や証券化を通じて処理する)現政府案は逆効果ともなりかねない。中国経済のリバランス(消費主導型への再均衡化)は極めて難題で、当局は予見しうる将来、刺激策を続けなければなるまい。これまではゾンビ企業にあまりにも肩入れしてきた。重要なことは保健、教育、都市の住宅、輸送、大規模な環境浄化など、より社会的に有益な分野に支出することだ。最も衝撃の小さいシナリオでも、債務負担の軽減にまだ10年近くはかかるだろう。その間、世界各国は中国の改革の遅れのあおりを覚悟することになる」。
この勝又氏の引用するリポートによって債務の合理的再編に取り組んでも(先送りをしていればもっとかかります・・)今では、中国の病人状態脱出には、10年以上かかると言うのが常識になっているようです。
まして中国の場合、統計さえ正確な発表が出来ない・・不正確な状態ですから文字どおり合理的対応出来る筈がない・・その場しのぎになるのは目に見えています。
今年2月26日のG20で鉄鋼石炭などの過剰生産を整理すると発言したのに、その直ぐに金融緩和した結果、休止したばかりの設備が再稼働始めたりマンションバブルが再発生している状態です。
上記記事では、「債務の株式化を図る」となっていますが、要は(株式化すれば返済義務がないから)返済を免れようとする方向へすり替えて行く魂胆であることが明らかです。
その後の経過はを見れば合理的再編・起業淘汰を計るどころか1昨日紹介したとおり、ゾンビ企業延命のために社会融資総量の激増になっているのですから大変です。
韓国も、ここ数年の成長率鈍化打開のための金融緩和が模索され少しずつ実行されていますが、金融緩和すると国民の反応が良過ぎて?債務が増え過ぎる・将来へのリスク拡大が心配される状態・・日本の国民のように金融緩和しても返す当てもないのにお金を借りない自律性が低い点が懸念されています・・中国同様に借りられるなら借りておこうとする点では同じ体質でしょう。
以下は、http://www.data-max.co.jp/280218_ry02からの引用です。
  日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
「日本のようにローンを組むことによって金融機関の審査を通るのではなく、契約金だけを用意できれば、まず住宅購入ができるようになっているため、これが後で負債として負担になるケースも多い。現代は、昔のように一斉に不動産が上がるような時代ではなくなったので、値上がりを見込んで無理して購入した住宅が値下がりし、融資残額にも満たないことでハウスプアになったりしている。
 とくに現在の朴謹恵大統領時代になって、不動産を活性化させて、内需活性化の呼び水にしようという狙いで金利を下げ、不動産の規制を緩和したところ、政府の予想を上回る急激な不動産過熱が発生し、その期間中に家計負債は急増してしまった。政府では「お金を借りてでも住宅を買いなさい」と奨励した覚えはないと否定しているが、いずれにせよ、家計負債が膨大に膨らんだことは紛れもない事実である。」
政府が煽ったかどうかは別として国民が簡単に借金に飛びつく体質である点では日本との大違いです。
国民をたぶらかして大儲けする中韓の企業や政府と国民の方がしたたかな日本社会との違いでしょうか?
日本のバブル崩壊を大騒ぎしていますが、急上昇した高値で売り抜けた農民や旧地主が不動産屋等が大幅値下がりで損をしたのと同額を儲けている・・国内での資金移動に過ぎないとう意見を連載したことがあります。
中国の場合企業家(日本からの投資家を含めて)から地方政府(共産党幹部)に所得移転したことになります。

アメリカ優位性喪失5(物量作戦の限界2)

第二次世界大戦終了後の東南アジアでの植民地独立戦争で英仏蘭が敗退していったこと(日本兵が現地に居残って指導していたことが知られています)やアメリカのベトナム戦争の失敗は、既に日本との戦いの経験で研究済みどおりの展開になっていたことが分ります。
アメリカ得意の物量作戦は広大な海戦や砂漠での戦いでは有効ですが、硫黄島戦終了時に大規模戦以外の戦闘形態・・ジャングルや都市ゲリラその他での限界が見えていたのに、ベトナム戦争や第二次イラク戦争・・占領行政までやったのは、これを学ばなかったことになります。
第一次イラク戦争(湾岸戦争)ではあっさり兵を引いたのは、占領後の統治困難をパパブッシュが知っていたからかも知れません。
2週間ほど前に、イギリス政府によるイラク戦争に関する調査報告書が出ましたが、これによると戦争開始に関する判断ミスの外に終結後・・占領後の展望についての戦略不足が現在のテロ社会化・・混迷の原因になっていることが書かれているようです。
ただし、ちょっと話題がそれますが、アラブ世界の大混乱を別の角度から見れば別の結果も見えてきます。
イラクに留まらずリビヤ〜エジプト〜シリアに連なる連続的政府転覆の結果は偶然ではありません。
敢えてアラブ民族内での無政府状態化・・内部対立激化・大混乱に陥らせて、アラブ民族のトータル弱体化を図ってイスラエルの安泰を図る裏の統一的目的があったとすれば、(裏の目的は政府調査報告書には出ません)がその作戦は大成功している見方も可能です。
アラブ諸国の無政府状態化の進行によってどこが得しているかの結果から見れば、イラク戦争以降長年中東の火薬庫であったイスラエルとアラブの対立問題が話題にもならなくなったことから明らかです。
イスラエルの陰謀(があったとすれば)に加担した西欧諸国(何故かリビアにはNATO軍が積極的に支援していましたし、シリア反政府軍応援にはフランスが積極的でした)は難民流入の報復を受けているのはその反作用として合理的です。
数日前にも南仏ニースで大規模テロが起きていますが、フランスでのテロが多いのは、アラブ混迷化にフランスがかなり貢献?している・・貢献度合いによるのではないでしょうか?
私は異民族と混在するのは良くないと書いていますが、移民がいればテロになるとは限りません。
フランスでのテロ頻発は、移民の多さだけではなくフランスのやり過ぎに対する反感が動機・モチベーションになっているのではないでしょうか? 
占領政治の難しさ・・原始的恐怖政治をしたのでは、支配地の経済力を活用出来ませんので巨額軍事費を使って占領しても却って損をするだけですからフランスもアルジェから、手を引いたのです。
民生を安定させながら占領統治をしようとすれば、占領後の統治の方が難しいのは当然です。
イラク戦争に際してイギリスの調査報告ではその研究不足のまま参戦してしまったと言うのですが、素直に報告している点が真新しいところでしょうか?
アメリカが日本占領後の統治をどうやって良いか分らずに苦慮したときに当然米英は協議していた筈なのに、(混乱させること自体が目的だったとする上記ユダヤの陰謀でない限り)この反省が充分にされていなかったことになります。
企業買収も金さえあれば買収までは可能ですが、その後成功するかの研究調査こそが重要です。
いみじくもブッシュだったかが「日本でうまく行ったから・・」と当時言い訳をしていたのは、日本占領前後の研究をしていたことが分りますが、この発言を聞いた当時ブッシュのバカさ加減に驚いた日本人が多かったと思います。
幼児に家事のお手伝いをさせて大方はオヤがしてやっても「良くやったね」とおだてるようなもので、超々高度な政治経験のない中東・アラブ民族には日本のようにうまくアメリカをおだてて泳がせてくれる能力などないことを知らない意見です。
日本の場合、硫黄島や沖縄での勇敢な戦いでアメリカ軍に対して衝撃を十分与えた後にビビっている占領軍をうまく手なずけて占領後日本人を奴隷化してしまう計画を変更さて、柔軟支配に持ち込んだ何千年単位で築いて来た高度な政治力によるものです。
(November 12, 2013「マッカーサーの功罪5(軍政の撤回3)」で直接統治の占領軍指令を結果的に発効させなかった経緯を書いたことがあります)
アメリカは最後の詰め・・終結の見通しに関する手詰まり打開のためにヤルタ会談(1945年2月4日~11日〜ポツダム宣言ポツダム宣言(1945年(昭和20年)7月26日)その他で頻りに降伏を迫っていましたが、日本が受入れる様子が見えないまま硫黄島作戦の大損害などがあって困ってしまいソ連を対日戦争に引き込み・原爆投下に踏み切るしかない状態に追い込まれていたことが分ります。
これがアメリカで主張されている原爆投下正当化論の背景根拠ですし、沖縄人が日本軍に無理矢理に死に追いやられたとするでっち上げ歴史教育を強制して来た原因です。
原爆投下正当論は言い換えれば、原爆投下しないと日本に大規模野外戦では勝てても、最終的に勝ち切るには大損害が予想されたという自白そのものです。

アメリカ優位性喪失4(物量作戦の限界1)

特攻機でも、アッツ島玉砕でも硫黄島や沖縄の戦いでも日本兵は自分個人の命のためではなく背後の自国民族のために1分1秒でも本土侵略を受けるのを遅くさせるために戦いました。
自分の損得で参加している志願兵・傭兵のアメリカ・強制的に徴用される中国兵の場合、命を失うと意味がないので危険のない限度でしか戦わない→負け戦になると踏ん張る気力がない・・中国・朝鮮の陣立ての基本は古来から先頭の兵が逃げないように後方から見張る兵がいて先頭の兵が逃げたら真っ先にその兵を射殺する仕組みになっていると言われています。
損得勘定で参加し逃げると血祭りに上げられる恐怖によって戦う兵を前提にしているのが多くの国の兵士ですから、圧倒的兵力のときには何とかなりますが、勝つか負ける分らない状態になると味方の監視をかいくぐって如何に逃げるかばかり考えるので、しのぎを削る戦いには弱くなります。
日本の場合,命令に従わないと処罰される恐怖感によるのではなく、自分の命を棄てても犬死にならない限り子々孫々のために役立ちたい思いですから死んでも食らいついて離さない根性が諸外国の兵との違いです。

以下はhttp://www.iwojima.jp/data3.htmlのデータです。
1945年2月19日 – 1945年3月26日
硫黄島戦の両軍の損害

硫黄島戦の両軍の損害

     日本軍               米 軍
   戦死者(人)
   陸 軍 12,723        海兵隊 5,931
   海 軍 7,406         陸 軍 9
   島 民 (82)           海 軍 881
   小 計 20,129        小 計 6,821
 
   戦傷者(人) 陸 軍 726     海兵隊 19,920
   海 軍 294           陸 軍 1,917
   島 民 (21)           海 軍 28
   小 計 1,020         小 計 21,865

   合  計 21,149        28,686

以下は沖縄戦に関するウイキペデイアのデータです。
1945年3月26日 – 6月23日
沖縄での両軍及び民間人を合わせた地上戦中の戦没者は20万人とされる[5]。 その内訳は、沖縄県生活福祉部援護課の1976年3月発表によると、日本側の死者・行方不明者は188,136人で、沖縄県外出身の正規兵が65,908 人、沖縄出身者が122,228人、そのうち94,000人が民間人である。日本側の負傷者数は不明。アメリカ軍側の死者・行方不明者は14,006人、 イギリス軍の死者が82人で、アメリカ軍の負傷者72,012人であった[6](日本側被害の詳細は#住民犠牲についてを参照)。

圧倒的物量で始めた硫黄島占領作戦・・ヤマの形がなくなるほどの艦砲射撃や空爆の後に戦車を先頭に上陸して来る米兵に対して何十日も殆ど水しかのんでいない日本兵が大砲もなく素手に近い・・弾薬すらほとんどない鉄砲だけで戦ってこの結果でした。
続けて予定どおりに実施した沖縄戦でも、攻撃側の死傷者数が10万人近くになっています。
沖縄戦での死傷数が硫黄島の戦いと大して変わらないのは正規軍同士の戦いが多かったこと・・この場合物量に優る米軍の損害率が下がることによります。
この結果を見て日本本土上陸作戦遂行にはこの10倍〜100倍の被害が出る・占領後もゲリラ戦になればどのくらいの被害が出るか計り知れないと言う計算が立ちますし、兵の方も圧倒的安全な戦いでないと尻込みしたくなる兵が多くなります。
知覧にある特攻機出撃基地に行けば分りますが、みんな銃後の家族・民族のために散って行ったのです。
敗戦を数分、数秒遅らせれば良いと言うよりは、その後の占領支配に対する影響を考えて生命を賭してみんな頑張ったことが分ります。
特攻機攻撃の激化は、今の自爆テロの先行事例で占領完成後にも日本人の命知らずの襲撃・・長期的テロが続くことが当然想定されていたと思われます。
蒙古襲来を防いだのも地元武士による夜襲の連続によること・・このために蒙古軍は昼間の戦いで占領した橋頭堡を夜間維持出来なかった・・船に帰るしかなかったので台風被害になってしまったことを紹介したことがあります。
幕末での長州対四国連合艦隊の戦い後の戦後処理でも、連合艦隊側が占領した島の租借要求が高杉晋作にあっさり蹴っ飛ばされて引き下がったのも、全てこの恐怖によります。
アメリカは日本の歴史を研究していますので、硫黄島作戦では日本軍得意の夜襲を研究していてその想定での橋頭堡確保作戦をしていたようです。
膨大な死傷者を出したアメリカ軍の恐怖・・この恐怖心の現れが・・白兵戦に頼るしかない本土上陸作戦をためらうようになった要因です。
本土の場合島とは違い奥行きが深い・・海岸線の戦いでは艦砲射撃が届きますが内陸部には届きません・・海岸線だけの支配では夜襲その他ゲリラ襲撃に悩まされて維持出来ない点は蒙古襲来時と同じです。
制圧までの被害想定とその後の武力一辺倒の占領統治には無理がある・・原爆投下と言う歴史に残るマイナス行為に踏み切るしかなくなった・・・追いつめられた決断でした。
硫黄島〜沖縄作戦後アメリカ軍内に恐怖心が支配していて、アメリカは軍事的には手詰まり状態に陥っていたことが分ります。
第二次世界大戦終了後の東南アジアでの植民地独立戦争で英仏蘭が敗退していったこと(日本兵が現地に居残って指導していたことが知られています)やベトナム戦争の失敗は、既にこの日本との戦いの経験で(力攻めで最後までやった場合の占領後のリスク)研究済みどおりの展開になっていたことが分ります。
アメリカ得意の物量作戦は広大な海戦や砂漠での戦いでは有効ですが、硫黄島・沖縄戦終了時に大規模戦以外の戦闘形態・・ジャングルや都市ゲリラその他での限界が見えていたのに、ベトナム戦争やイラク戦争を起こしたのは、これを敢えて学ばなかったことになります。
第一次イラク戦争(湾岸戦争)ではあっさり兵を引いたのは、占領後の統治困難をパパブッシュが知っていたからかも知れません。
2週間ほど前に、イギリス政府による第二次イラク戦争に関する調査報告書が出ましたが、これによると戦争開始に関する判断ミスの外に終結後・・占領後の展望についての戦略不足が現在のテロ社会化・・混迷の原因になっていることが書かれているようです。

欧米と日本の対応5(欧米の移民受入れ2)

間にいろいろ書いてしまいましたが、7月2日に書いた北海油田による西欧復権との関係のデータを紹介します。
北海油田に関する7月2日現在のウイキペデイアの記事によれば以下のとおりです。
「原油推定埋蔵量は130億バレル。日産約600万バレル。1960年にイギリスが開発開始。次いでノルウェーが開発に乗り出す。ノルウェー南西沿岸のスタヴァンゲルとイギリスのアバディーンは石油産業で発展し、イギリスは1980年代から石油輸出国となった。イギリスは2014年現在でもEU加盟国最大の原油生産国ならびに原油輸出国であり[1]、ノルウェーはロシアを除く欧州最大の原油生産国・輸出国で、原油生産量は2013年現在で世界第16位[2]、石油輸出量は2010年現在で世界9位である[3]。」
「イギリスの鉱区では、石油生産量が1990年代後半にピークを迎え、その後は既存油田の成熟化に新油田の発見が追いつかず徐々に減少している。 1981年~2005年の間、原油の純輸出国であったが、2005年以降は純輸入国となっている」
上記のとおり、イギリスは約25年間資源輸出国として潤ったことが復権に繋がったのですが、北海油田の枯渇(2005年以降イギリスが原油輸入国に転落・・輸入代金を払う立場に変化)が始まりこのボーナス効果が徐々に減ってきました。
資源特需による場合製造業等の一般産業の実力以上に国際収支が良くなるためにポンドが割高になり却ってその他産業が蝕まれて行き・・若者の職場が奪われて行きます。
まして同時期に中国の改革開放・市場参加が進み始めた頃です。
上記原油輸出最盛期にあたる1992〜3年頃に1週間ほど家族でロンドンへ行ったときの光景では、日本とはまるで違う活気のない都会・日本で言えば地方都市レベルのイメ−ジでした。
他方で中国の改革開放以来始まった超低賃金競争(原油輸出でポンド相場が上がるとイギリスの賃銀が国際的に割高になります)対応(その他高齢化対策その他)のために移民導入策が続きました。
移民導入+ポーランド等の低賃金国のEU取り込み政策(EU東方拡大)は、アメリカの移民導入による絶え間ない労働者供給策とも一致しています。
アメリカが物量作戦で2度の大戦で存在感を発揮したことから、戦後ずうっと農地に始まって・資源力+大量生産大量消費(人口大国化)・・「大きいことは良いことだ」と言う間違った思想が世界中ではびこっていたことが分ります。
この辺の意見は、この後で日本の対応として書いて行く予定の
「アメリカ式資源+大量生産の挑戦に同じ土俵で競争するのではなく逆に量が少なくともおいしいトマトや果物、牛肉・その他を作るのが良い」
と言う基礎的意見を前提に書いています。
安物の絵を1000枚積み上げておくよりは、心に響く一枚の絵を飾った方が良いと言えば分りよいでしょうか?
以前書きましたが、中学生の頃のアメリカの人口は2億以下の人口でしたが今では三億3500万人(以下のデータとちょっとあいませんがどかでこう書いていましたが・・)にも増えているのは、アメリカ自身も中国に負けない大規模市場を維持するために移民導入で対応して来たことが分ります。
世界ネタ帳http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=LP&c1=US&c2=JP
によると1980年には227.62(日本116.77)→2016年には324.33(日本126.54)となっていますので、対日本比の増加率の差は半端ではありません・・この差は移民流入によるものです。
日本のように60歳前後でなくなっていた人が90代まで生きるようになって・死ぬ人が減って人口が増えているだけですと、せいぜい1割くらいしか増えませんので、同期間に約1、5倍になっているアメリカの場合には社会増によることが明らかです。
日本の高齢化進行が世界一早いと一般に言われていますが、高齢化は社会の豊かさの進行に比例するのがふつうですから、欧米の方が日本よりも早くから少子高齢化が進行して来た筈です。
グリンスパーン元議長やキッシンジャーあるいはジョージソロス氏などみんな超高齢者であって高齢化は日本の専売特許ではありません。
実際私の中学生の頃には、フランスが人口減に悩まされていると言う報道が頻りにされていました。
アメリカでも早くからフロリダあたりに高齢者が移住する現象が知られていました。
西欧の少子高齢化がマスコミで言われなくなったのは,主に旧植民地であるアフリカや中東からの移民を受入れるようになってからです。
欧米に比べて日本の長寿が目立つのは、日本の食生活・公衆衛生環境が良いだけではなく、健康管理能力が低く先進国に住むようになっても1世代目には長寿社会の恩恵を受けられない若年移民の比率が少ない面も大きいでしょう。
アメリカの場合以前から移民受入れ大国だったので移民が増えていることが目立たなかっただけで、実際にはベトナム戦争以来アジアから移民を大量に受入れてきたので、急速にアジア系移民が増えています。
以下https://ja.wikipedia.org/国勢調査の結果からアジア系移民比率部分だけコピーします
 人種   2010年      2000年          増減 
     人口   割合    人口   割合     人口  率

アジアン  14.7  4.8%   10.2   3.6%      4.4  43.3%

僅か10年間でアジア系比率が4、5%も上がっていることが分ります。
欧米では、賃銀の国際平準化に対抗するために移民を入れて低賃金競争をしたのと同様に、少子高齢化問題にも日本のように正面から向き合うことなく、移民=若年層中心ですし、しかも出生率の高い移民流入で人口減を補う政策で誤摩化して来たことが分ります。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC