家計債務膨張2(韓国14)

企業の場合には、自己資本率と負債率の違いは金利と配当率の関係による代替性があるので、低金利下では年7〜8%(日本ではもっと低いですが)の利益配当を求められる新株発行よりは、ゼロ金利近辺の社債発行による資金手当の方が合理的ですが、家計は消費単位であって配当圧力がないのでそういう関係がないでしょう。
家計債務で考えられるのは、金利低下による毎月の支払額の減少とインフレによる名目収入増→負債の実質減価・期待でしょうか?
ケインズ理論によって財政資金投入にあるいは、民間需要拡大による需要創出・・不景気脱出を図るるようになると、世界中で財政赤字→家計債務膨張リスクが膨らみます。
アメリカが家計債務を証券化して世界にばらまいたので世界的リスクが現実化したのが、リーマンショックでしょう。
その後、アメリカでもEUでも膨らんだ債務破裂を防ぐために・・低金利政策をゼロ金利近傍・・限界まで進めましたが、低金利になっても元金を繰り上げ償還→債務縮減する方に行きませんでした。
業績低迷企業に対する補助金の多くが、企業活性化に資するよりはゾンビ企業の延命資金になることが多いのと同じでしょう。
比喩的に言えば、従来3000万までしか借りられなかった階層が、3500万まで借りても毎月の支払額が同じで返せるので・・より一層の債務元金膨張が進んだ方が多かったということでしょうか?
銀行にとっては企業向け融資が減った穴埋めに個人向け融資が増えて好都合でしょうが、利幅が減る一方の矛盾で苦しんでいます。
資本市場の発達で金融の社会的使命が終わった以上は、速やかに存在感を減らしていくべきでしょう。
金融緩和策がゼロ金利に張り付いて限界にきたので、今度はインフレ期待→元金の減価を目指す政策・・物価が2倍になれば負担感レベルでは借金が半分になったのと同じ・・一種の徳政令が国際的に採用されましたが、流石にこれは借金せずに真面目に働いている人が損をするので、国民支持が得られずうまくいきません。
黒田日銀だけの失敗ではなく、仮に制御したインフレが可能(制御できるのはインフレと言わないでしょう?)であっても、インフレ拒否感は世界的傾向でしょう。
いわば真面目に資産形成に励む方が良い・・・ベネズエラのように何万倍の物価になれば、金融資産の差(過去努力した人としない人の差)は雲散霧消・・全員が食うや食わずになります・・こういう社会を期待する人・・ヤケになっている人の方が少ないということであって慶賀すべきです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41052900Y9A200C1000000/

ベネズエラ、1月のインフレ率が268万%に
2019/2/8 6:24
【モンテビデオ=外山尚之】南米ベネズエラの国会は7日、1月の物価上昇率が年率268万8670%だったと発表した。与野党が激しく対立する中、政情混乱が経済にも波及し、ハイパーインフレーションが加速する状況となっている。
月間の物価上昇率は191%だった。前月から約50ポイント上昇しており、物価上昇のペースが加速している。国際通貨基金(IMF)は年内にインフレ率が年率1000万%に達すると予測しているが、現状のままではさらに上回る可能性が高い。

だいぶ前から書いていますが、物流の発達した現在、一国だけ商品価格が上がることはありえない・・あるとすれば「世界の物流網から切断された時だけ」・すなわち政府の制御したインフレはありえないのです。
世界経済から切断されるかどうかは、デフォルトするかどうかの経済実態によるのであって、一国政府が自由に決められません。
韓国や中国が、ウオンや人民元の暴落=輸入品決済資金が回らなくなるのを恐れる所以です。
昨日見た第一生命のグラフによれば、韓国の場合GDPに対する家計債務比率が(この間に日本同様に消費者破産があり、そのほかに多数回の徳政令実施があって債務チャラになっているにも拘らず)一直線で増えすぎている点が異常なのか?金融政策とおりに国民が踊る・・がうまくいっているかの評価の違いです。
中国も企業負債率の急上昇が国際関心になっていますが、両国ともに政府の誘導する通りに人民が資金吸い上げに協力している・・借金してでもGDPアップに協力してきた経済です。
昨日見た第一生命のグラフでは韓国の家計債務比率が90%あまりですが、他の報道ではすでに100%を超えているというグラフが出ています。
中国の統計が信用できないと言われますが、韓国の場合数字自体の誤魔化しではなく、統計分類・・チョンセなどの返還債務を家計債務に入れていないとか、個人事業債務が入っていないなどをプラスしていくと現状で約200%以上という意見もあります。
ちなみに日本では、個人事業債務も家計債務(法人化しているかの基準?)になっていますので、家計債務といっても統計方法によって大きな違いが出てきます。
まして韓国では自営業者が人口の25%というのですから、このグループをどのように分類するかによって実体経済の現状把握が大きく違ってきます。
自営業でも他人を一定数以上(たとえば5人以上)常時雇用する自営と家族労働に頼る(時々アルバイト使う程度)自営では負債の経済的意味(事業用の負債は一種の投資ですから巨額です)がまるで違ってきます。
30代でリストラされてすぐに飲食店やチェーン店など開業する一般的な韓国自営業の場合、負債の性質は家計負債に限りなく近いでしょう。
中韓ではどうやって国民から資金吸い上げに成功しているかですが、株式〜不動産バブルその他国主導の一種の仕手相場に国民を巻き込むパターンのようです。
日本人は堅実を重んじる国民性・投機相場に乗りにくいので、平成バブル期も業者間転売→消費者が買い始めた初期段階で大方終わったのですが、末端消費者まで参加させて毎回徳政令や破産で救済→救済しきれない分は自殺増や国外売春輸出で切り捨てられている韓国人民との違いでしょう。
中韓共に国民?人民が弱すぎるのです。

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