徴用工訴訟と国内法論理(米中対決の相似形?)2

韓国に思い知らせてやれ!という嫌韓感情論者が気にいるような結果になるかは、米中対決の激化によって韓国の対中輸出激減方向ですので韓国輸出企業生産が落ち込むこの時期はチャンス・・韓国経由の対中輸出製品への部品組み込みが減る・・韓国内で工場を維持するメリットが減るこのチャンスを先取りするかどうか程度のことになります。
5月21日の日経新聞3pによれば、ファーウエィの中国国外でのスマホ出荷台数は、全体のほぼ半分を占めるダントツ(ただし欧州ではサムスンが首位)であるが、ドイツ半導体企業がファーウエィ向け部材供給の一部を停止したと出ていて、その影響を書いています。
上記記事を見ると日本にとってのファーウエィ規制に対する意味合いは、ファーウエイにどんどん追い抜かれ始めて経営不振に陥りかけているサムスンの売り上げ増になり米中対決は韓国に有利に働く面があり、強気にさせる側面があるということです。
・・ただし日本の半導体設備企業がドイツに倣ってサムスンへの供給停止するとどうなるか・そうなればサムスンは上記ドイツ企業に供給を依頼する可能性が高いでしょう。
ドイツ企業にとってはファーウエィ向け輸出がなくなった穴埋めになるので、積極的にサムスンへの売り込みを図ってもおかしくない状況です。
ドイツから売り込み競争激化の真っ最中に、その防戦に努める日本企業が供給停止できるかの疑問です。
玉突き現象の究極のババを引くのは、日本かもしれません。
米中対決による中国の対米輸出激減の影響・・対中輸出比率が世界一高い韓国が一番影響を受ける・・工場稼働率激減というのがマクロ的見方でしょうが、個別にみると意外に複雑です。
複雑化の原因は、日系現地工場の大さにも比例します。
資本収支で言えば、工場や店舗投資はホットマネーと違うと言われる所以です。
韓国の対日依存度低下を主張する小塩氏意見に対して、今は現地生産が進んでいるので貿易収支だけで見るのは間違いだと書いてきましたが、実は対中関係でも現地生産化が進んでいるので、日本や韓国の対中貿易依存度だけでなく中国現地生産の規模も合わせて読む必要があります。
韓国の対中貿易が25%を占め世界最大比率としても、現地生産比率と合わせないと総合的影響度がわかりません。
今朝の日経新聞1pでは日系企業の米国向け輸出品の中国での現地生産額(例えば任天堂のゲーム機の米国向け製品は100%中国生産らしいです)は約1兆円と出ています。
韓国が輸出に比べて対中投資比率が少ないとすれば、日本の方が現地投資規模が大きいとすれば、輸出先振替と違い簡単に工場移転できないので、日本の方が受ける悪影響が大きいことになります。
工場移転による納入業者の経営悪化や雇用環境悪化等については、輸出に頼らない日本の方が影響が少ないでしょうが、企業利益としては工場は簡単に動けないので打撃が大きいのです。
先の読みは別として、韓国輸出の25%を占める対中輸出が減れば、韓国内工場稼動率が下がる→韓国内の輸出企業向け部品供給を目的に進出していた日系企業の工場も稼動率が下がります。
韓国企業自体米国向け輸出のために中国での組み立て工場の稼働率を下げるかやめるしかないので、ベトナム等へ工場移転するしかないのと同様に、韓国内日本系工場もアジア諸国へ分散方向になります。
結局は嫌韓か反中どうかの感情論ではなく、経済合理性が勝負を決めることになります。
今朝の日経新聞にも出ていますが、25%の関税でもすぐに中国を出て行く選択肢は多くの企業にとっては難しいので、各企業のおかれた状況によって対応が違うのは当然です。
単なる輸出先であれば販売相手の新規開拓でいいのですが、工場進出している場合長期的視野でないと安易に工場移転はできません。
中国も必死に引き止めているでしょうから、これを振り切って出て行くと将来に禍根を残します。
いつ米中和解ができるかも不明なので、移転した直後に米中和解で関税がなくなると大損するリスクがあります。
新規工場進出するのは、現在の25%関税が元に戻ってもベトナム等でやっていける成算がないと簡単に動けないでしょうし、一方で米中対決がいつ解決するかわからないのにその間赤字経営を続けられないというジレンマです。
以下紹介しますが、韓国、中国から出て行く、あるいは生産の一部移転を発表する企業が出れば待ってましたとばかりに嫌韓、反中系ネットで拡散しますが、これらはもともと長期ビジョンの一環で計画していた実施時期がたまたまこの時期に当ったと場合が多いと見るべきでしょう。
東南アジアに多くの進出工場を持っている日本企業の場合、韓国や中国内工場をすぐ閉鎖するのではなく当面タイやベトナム等に分散している工場の生産比率を上げてそこから米国向けに(中国国内工場製品は米国向け以外に振り向けるのは、物流系の再編などもちろん大変ですが一応容易です。
元々韓国から移転計画があった場合やチャイナプラスワンを計画中の企業は計画の後押しになるでしょうが、何も予定していなかった企業にとっては降って湧いた災難で、どうして良いか不明でいきなり動けないし、焦って動けば大損失になるので様子見という現状維持にとどまるしかないでしょうから大変です。
こういう企業経営陣は運が悪かったというよりは、危機管理能力が低かったので右往左往していただけだったとの評価になる可能性があります。
今朝の日経新聞では25%の関税上げそのままではゲーム機であれ、テレビであれ売れなくなるがメーカー負担では持たないが、この時点だ大規模な工場移転となれば、巨額費用がかかるので
「25%のコスト増」どころではない・・かといって25%負担では採算割れになる・・動くに動けないジレンマに困っている企業が大多数であるような意見を書いていました。
要は見通しが悪くて「機敏対応」できない企業が多いという意味でしょうか?
環境激変時に腰を抜かしてみているような企業が99%の時に機を見るに敏な人が時代激変後のリーダーになっていくし、(渋沢栄一のような人?)時代変化をぼんやり見ているだけで時代に取り残され没落していく旧時代人との違いです。
活力を以て変化を生き抜け!という元気を出すための意見ではなく、どちらかといえば困っている人が多い・・トランプ氏の強引な行動は中国が困るだけでなく日本企業にとっても迷惑だという中国寄りのイメージ主張のようです。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC