輸出→現地生産→利益還流4

営業利益率の低下は、売り上げが現状維持または伸びていても値引き等の無理な販売に陥っていないかの指標・無理の限界がきて経営がガタガタになる先触れを知るための重要指標です。
昨日紹介した現代自動車の表によれば、売り上げが0、9%増なのに営業利益率が47%も下がっているのですから、無理な売り上げ維持努力があったと見るべきでしょうか?
ところで、昨日見た業績表によると当期純利益で見ると63、8%減のようです。
営業利益率だけ見てれば良いとなると費目の付け替えなど小細工がはびこる他、関連会社に損失を付け替えることも可能ですので、連結での総合収支の動向も重要です。
当期純利益63、8%減ということは、売り上げ内容が悪いだけでなくその他の分野でも総合的(悪い時には悪いことが重なる?)に苦しいのでしょうか?
当期純利益は資産評価損など為替動向の損得も含めた結果ですので、長年の不振事業の整理(膿を出して)で次期以降の飛躍のきっかけにしたい場合もあれば、先行投資の花が開く前の持ち出し・苦しい時期もありますので、当期純利益の増減結果数字だけでは一概に言えませんが・・・。
ついでに日本の輸入車比率を見て起きます。
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/7087/

18年の輸入車新規登録台数 シェア過去最高、好調SUVが牽引
2019年1月15日
日本自動車輸入組合(JAIA)が10日発表した2018年の輸入車新規登録台数によると、外国メーカー車の販売台数は前年比1・1%増の30万9405台と3年連続で増加した。
・・・日本メーカーの逆輸入車は、前年比26・5%増の5万6861台と2年ぶりに増加した。17年9月に「シビック」を国内に再投入したホンダが、同4・7倍の1万4130台を販売した。

日本の輸入車市場の動向は、日系メーカーの逆輸入の動向が大きなウエートを占めていることがわかります。
毒餃子事件で有名になりましたが、中国解放後日本の食品工場その他が大挙して中国現地進出して、日本への農産物等々の逆輸入を手がけています。
私の町内会で行なっているお花見大会で、参加者に振る舞う焼き鳥が中国製の冷凍ものであったことから4〜5年前国産に切り替えたことがあります。
スーパーにいけば食品のかなりの食品が中国産になっていますが、ほとんどが日本企業が進出し日本向けに生産工程を指導して逆輸入を始めたものです。
米国の対中巨額貿易赤字といっても、内実は米国企業が中国進出して逆輸入している例が大半と言われています。
米韓FTAに戻ります。
FTAの結果、米国車の輸出増にほとんど関係がなかった・・逆に韓国車の輸入が増えた方が圧倒的に多かったので米国の不満が大きく、トランプ政権成立直後から対韓批判のトランプ砲が炸裂したことによるFTA改定交渉が始まりました。
トランプ政権による改定交渉の影響を紹介します。
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/b55a97f94ec06747.html

2018年4月18日
米韓FTA見直し:外資系メーカーが自動車輸出をけん引
大筋合意の評価と韓国の対米自動車貿易・牛肉輸入の推移(2)
米韓FTA発効後、韓国の対米自動車輸出の増加が顕著だ。しかし、これは米韓FTAによる米国の乗用車輸入関税撤廃前の現象で、撤廃後は逆に輸出が伸び悩んでいる。また、輸出を増やしたのは在韓外資系企業で、現代・起亜自動車は米国市場での販売伸び悩みなどにより、輸出増は限定的だ。他方、対米自動車輸入は韓国の乗用車関税引き下げ・撤廃により増加している。

米韓FTAまで国内高利益率を元手に韓国企業は海外進出していたのですが、FTAによってその事業モデルが崩壊したので国外でもジリ貧になって来たようです。
現代・起亜自動車グループに対する独占利益保護がなくなると、貿易黒字といっても外資系の韓国進出企業の輸出が増えている状況が上記に出ています。
新興国が国内産業育成のために輸出基地の提供・・国内販売を事実上規制して輸出特化するならば進出を認めるのが新興国のパターンでしたが、韓国の場合進出した韓国GM、サムスンルノーも事実上輸出特化企業になっているようです。
25日紹介した私の発展ステージ論でいえば、韓国に進出した外資系企業に限っては、原初的形態・新興国が輸出特化型企業誘致して外貨を稼ぐ①段階でまだ止まっていることがわかります。
この数年国外進出した韓国系企業が本国の支援なしの公平競争でも勝ち残り、ステージ⑥海外収益還流段階に進めるかの真価が問われるようになってきたようです。
このステージへの移行が(収益の還流)できないままでドラ息子への?仕送りが必要な限り、いつまでも貿易黒字に頼るしかないでしょう。https://www.sankei.com/premium/news/180423/prm1804230001-n1.html

2018.4.25 08:00
ビジネス解読】韓国自動車産業が崖っぷち
「ビジネスモデル」崩壊危機
直近の韓国国内の自動車生産台数がメキシコに逆転されたうえ、業界を牽引(けんいん)してきた現代(ヒュンダイ)自動車の勢いはじり貧だ。国内における圧倒的なシェアを背景にした現代自のビジネスモデルが、国内外の経済環境の急変により崩壊の危機にさらされているからだ。
東亜日報は3月13日の配信記事で、「韓国自動車産業に赤信号がともった」と切り出し、1~2月の韓国内自動車生産台数が前年同期比5.5%減の59万9346台となり、前年世界7位のメキシコを約3万3000台下回ったと報じた。
聯合ニュースは2月13日、現代自と傘下の起亜自動車の国内生産に占める割合が昨年末に44.0%となり、06年の73.3%から大幅に減ったと報じた。「国内での生産性やコスト面で競争力を失った」と指摘する。

上記によれば、現代・起亜グループの占有率が、FTA以前は73%もあったのに18年4月の記事では44 %に下がっている→この間、防戦のために販売単価下げの繰り返し→(昨日紹介したように)営業利益率低下→(関連企業にも相応の負担を求めたでしょうから)連結利益悪化→下請け納入単価切り下げ→下請けのリストラ→倒産続出?
この種パターンが車産業に限らず・・大宇造船、韓進開運の破綻・関連納入企業倒産などの全般的マイナス傾向になって行ったものと思われます。

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