民意(選挙と世論調査)2

科学的にわからないとすれば、原発の即時停止が妥当か2030年台までの猶予を置く民主党の主張が妥当か40年代が妥当か否かは、専門家優位の科学判断でもなければ・法律判断分野ではなくその被害を受けるかその間だけでも利益を受けた方が良いかのリスク判断は、当事者=民意次第というべき分野です。
科学的にいつ大規模地震や火山噴火があるか不明であれば、原発を即時停止すべきか10年〜20年で徐々に減らしていくかなどは(いつ来るか分からない点は専門家も国民も同じですから)専門家が決めることでなく、国民の総意・価値判断事項です。
大学進学しても社長になれるか銀行員になれるか平社員で終わるかも全く保証の限りではありませんが、大学進学する人がいるように、いろんな分野で結果保証の限りでないがいろんなことに挑戦する人がいっぱいいます。
リスクを取るかどうは当事者が決めるべきであって、先生や周りのいくら立派な人でも第三者が決めるのではなく最終決定権者は本人です。
ましてや、裁判所が科学根拠なく、神の意思体現者のように誰が何に挑戦すべきかを高みから決める権限などある筈がないでしょう。
文字通り「良心」があるならば、「自分にはそういう権限がない」と回避すべきです。
海渡氏の意見では、民意によるべきか?という疑問さえ抱かずに科学でわからないならばエリート裁判官が「良心に従って決めるべきという主張が自然に出てくるのが、彼らの特徴です。
昨日だったか?思想の自由市場論で書いたように、指導者が一方的に決める思考回路に親しんでいる場合にこういう意見が自然に出てくるのでしょうか?
ただし、終わりの方では流石に気になったらしく(交通事故ゼロが100ゼロでなくとも良いのとは次元の違う大規模被害になるから?)「多くの国民の世論が脱原発を求めている現在」と書いてありましたが、どこで多くの国民が脱原発を求めていると調査したのか根拠を書いていません。
本来論証すべきテーマは原発が壊滅的機被害を受ける地震がいつ来るか分からない時に、その間、そうするかについて、国民意思によるべきか陰陽師等の占い師に委ねるか等の決定権者に関する議論が必要です。
神のお告げや独裁者の命令よりは「民意によるべし」というのが、民主主義国家においては争いのないルールであると思えます。
そうなると論証すべきは民意がどうなっているかが重要ですが、この重要な民意がどうなのかについて海渡氏はいつの世論調査かの引用すらしないでいきなり「「国民の世論が脱原発を求めている現在」という結論を出して一方的に自己主張と同じだというかのようです。
革新系の常套文句・・・「国民多数の声を無視するな」と同じ繰り返しです。
重要なのは地震や火山噴火の予知が確かかどうかではなく、この程度しかわからないことについて、国民が原発にどの程度までのリスクを許容しているかです。
車の事故がゼロでないから乗っては行けないという人はいないのですが、車や一般の公害と違い原発の被害が巨大だから、「確率100%ぜろが必須に決まっている」と言うのが、海渡氏の立場のようですが、そういう国民合意があるのかどうかこそが重要です。
いつも書くように、彼ら選挙では少数の支持しか得られない革新系が国民意思を何故代表していると言い切れる?かです。
反原発を誘導したい立場あるいは促進したい立場で行う非中立の世論調査で民意が決まるならばこの世の中に選挙制度も国会も不要です。
報道機関が勝手にやっているだけで、世論調査には民意を確定する権限が一切ないのですが、報道機関が自己のやっていることを誇大に評価しているだけのことです。
民主国家においては本当の民意は、秘密投票制の選挙で決まるものであって、それ以外には正式に知る方法がありません。
特に英国のEU離脱国民投票と事前世論調査の大幅食い違い、アメリカ大統領戦での世論調査と選挙結果の大幅乖離、日本でも昨年の総選挙前の内閣支持率低下状態の大規模報道と選挙結果の大幅乖離などが続き、世論調査の信用性が大幅に低下しました。
4〜5年前の都知事選で原発反対を主要政策に掲げて立候補した元総理細川氏(大物コンビ)が元総理小泉氏支持を受けてメデイアの大報道を受けて選挙に臨みましたが、惨敗しています。


共同通信
2014/01/13 に公開

細川護熙元首相(76)は14日昼、東京都知事選(23日告示、2月9日投開票)への立候補に向け、小泉純一郎元首相と都内のホテルで会談した。
細川氏は出馬を表明。 「脱原発」を目指す考えで一致している小泉氏 は支援する考えを伝えた。

14年の都知事選の選挙結果は以下の通りでした。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit

1 ■舛添要一    無所属  新   2,112,979   43.40%
2 ■宇都宮健児   無所属   新    982,594.767   20.18%
3 ■細川護煕 無所属 新    956,063   19.64%

http://blogos.com/news/2014_tokyotochijisen/?g=politics

新聞各紙の社説
手堅さを選んだ都民             朝日新聞
原発論戦今後に生かせ 首都の安全網に全力を 毎日新聞
・無責任な「原発ゼロ」信任されず – 読売新聞
・「脱原発」ムードの敗北だ 五輪や福祉への対応を急げ – 産経新聞

上記の通り原発事故から日の浅いこの時期でも、脱原発を正面テーマに据えた選挙をしてみると、根拠のない?原発反対論は19%あまりの支持・・棄権票を反対票にカウントする革新系の好きな計算方法によれば約1100万有権者の内95万人しか支持されなかったということです。
しかも原発反対派の公約自体は即時全面廃止の主張ではなく、せいぜい脱原発という方向性の主張に過ぎませんが、それでも19%あまり(有権者の1割弱 )の支持しかなかったのです。
ところでここで注意すべきは原発訴訟は、仮処分による「即時停止」を求めるものであって、民主党でさえそんな過激な主張をしていません。
民主党は蓮舫執行部の昨年始め頃に2030年までの廃止表明に動きだしたものの、党内反発が強くて党内の公式議題にすらできず失速して、退陣となり前原執行部になって、総選挙を迎えたものです。
ちょっと見ると、17年選挙時に民主党の立候補がなかったので民主党の政策が直接出なくなっていますが、間接的には以下の通りです。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171005/ddm/002/010/122000c

希望の党は「2030年までに原発ゼロ」を掲げ、民進党が訴えていた「30年代ゼロ」より踏み込む方針だ…

毎日新聞でさえも上記の通りで、即時停止などの乱暴な意見は怖くて選挙公約にすら掲げられないということは民意は即時停止を求めていないという各党の評価でしょう。
海渡氏は、どういう根拠で即時停止を求めるのが民意/国民多数の意思であるかのように主張しているのでしょうか?

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