脱原発と貿易赤字1

原発停止分の代替燃料原油等輸入が年間10兆円多く必要とした場合、民生と産業界で平等分担すれば(仮に電気使用量が5分5分と仮定すれば)産業界5兆円だけがコストアップですが、民生分をも負担すると、産業界の負担が10兆円の高コストになってその分、国際競争力が落ちてギリギリの競争をしている多くの輸出産業が負けて失業者が増え、一方で輸入品が増えて長期的には購買力低下・結果的に生活レベルを下げるしかなくなります。
原発停止によってコストが割高になっても火力〜再生エネルギーで補充する=割高になった分国際収支悪化→赤字になってもどんどん原油輸入してその他支出を切り詰める=生活水準低下を我慢するかの問題です。
簡単に言えば、原発廃止によって原油石炭等の輸入が年間10兆円(仮定数字)増えるとすれば、原発運転継続に比べて毎年10兆円支出(国外流出)が増える・永久に赤字を続けられないので先送りの結果、いつかは電力消費を国際収支均衡するまで減らす覚悟・減らしっぱなしでは産業界がまともな国際競争ができなくなり産業空洞化が起きます。
どの程度の産業収縮→先進国から中進国への地位低下に耐える覚悟があるかこそ、民意で決めるべきことです。
10万年に1回の大地震が心配で今から毎年10兆円(仮の数字)ずつ生活費を切り詰め産業縮小するのかどうかは民意で決めるべきでしょう。
数百年に1回の津波が心配だから漁業関係者が海辺の作業をやめて高台まで魚介類を運んで作業したり(高コスト化して海外からの輸入に負ける)自宅だけ高台に移転し二重生活するか(生活コスト倍増=生活水準半分に低下またはその分魚介類の販売価格上げ?)、10万年に1回のリスクなど考えてられないから今まで通り海辺に住み着くか、「人里離れた一軒家は100年に1回は強盗の心配→用心が悪いからガードマン程度の仕事しかなく収入が半分以下に減っても都会に移る」かどうかは、本人が決めることです。
仮に年間10兆円の支出増とすれば、そのコストアップをどれだけ減らせるかの省エネ革新能力・代替エネルギーの低コスト化の進捗に合わせるかの見通し・判断も必要です。
さしあたり原発停止でどれだけ原油等の輸入が増えて国際収支悪化するかが重要です。
その前提として電力コストの比較を見ておきましょう。

資源エネルギー庁

http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/nuclear/nuclearcost.htmlによる発電コスト比較です。

  2017-10-31            

原発のコストを考える

原発、石炭火力、LNG火力、風力、地熱、水力、石油火力、太陽光の発電コストのグラフです。

上記の通り、電力を原油や石炭輸入に頼るとコストパフォーマンスが悪い・・ひいては各種産業のコストアップに連なり、国際競争力が低下します。
原発廃止の代替対電力として石油原料に切り替えることによって10兆円出費が増えるだけではなく、生活費や産業コスト全般で年間10兆円を負担するために生産コストが10兆円上がる・・その分輸出競争力・輸入品に対する国内産業の競争力が落ちてしまいます。
世界中同じ電源構成ならば負担率が同じで構わないですが、日本と競合する韓国を例にすれば、原発事故をチャンスとばかりに原発増設とこれを背景にした輸出競争に励んでいます。href=”https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_jigyo/korea/detail/1231605%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8C%E3%81%B0%E4%BB%A5%E4%B8%8B%E3%81%AE%E9%80%9A%E3%82%8A%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82″>https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_jigyo/korea/detail/1231605によれば以下の通りです。

韓国は今後も原子力開発を推進してゆく方針である。
政府の「第1次・国家エネルギー基本計画」(2008~2030年)では、2030年の総発電設備容量に占める原発の比率を41%に、総発電電力量に占める比率を59%に引き上げることが目標になっている。このため、今後、100万kWや140万kW級の原発を各地に建設することが計画されている。

また、政府は原発事業を輸出産業に発展させる方針であり、次世代型原子炉(140万kW級APR+)の技術開発を進めている。なお、2009年にはアラブ首長国連邦から原発プロジェクト(APR14000を4基建設)を受注している。

韓国は日本の原発被害を煽りながら、一方で自国の原発比率を引き上げて日本との価格競争を優位に運ぼうとしていることがわかります。
韓国にとっては日本に追いつき追い越す千載一遇の大チャンスですから、日本国内のシンパを利用して1日でも長く原発再開妨害・先送りさせる戦略のように見えます。

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