国家的関心事と自治体の拒否権(国家意思形成システム破壊)1

ソモソモ、独立国家で治安維持に国家的責任を持つべき・・国家警察・実動部隊を持たない国が日本以外にあるのでしょうか?
占領軍は日本の「武力」部分を徹底破壊し尽くす目的であったことが分ります。
日本は独立後もアメリカのご機嫌を損なうことが出来ず、自治体警察の基本を変えられないまま現在に至っているのです。
占領軍による警察の組織力破壊ばかりはなく、福島原発事故対応に際して、消防出動が各都道府県知事または自治体首長の権限(石原都知事が何か不満を言っていたことが報道されていましたが国家的大災害に際して、国家・政府が直截出動命令を出せない仕組みになっている状態が報道されていましたが、国家規模の大事件に対しておかしいと思った人が多いのではないでしょうか?
これまでも大災害・・神戸大地震のときだったか自衛隊の応援要請が遅れた知事がいて問題視されたことがあるように思いますが、・・国家的大災害でも知事の意見次第と言うのは、国家のあり方としておかしくないでしょうか?
https://ja.wikipedia.org/wiki/阪神・淡路大震災
「自衛隊については、地震発生数分後には行動を始めたものの、阪急伊丹駅へ近傍派遣(災害派遣)を行った第36普通科連隊を除き、神戸市中心部への災害派遣は直ちにはなされなかった。第36普通科連隊は、「近傍派遣」(自衛隊法第八十三条三項)によって出動しているが、他の部隊は知事の要請(自衛隊法第八十三条一項)の待機状態になっていた。」
「こうした状況把握の混乱の中、派遣要請は、地震発生から4時間後に自衛隊との電話が偶然繋がった野口一行・兵庫県消防交通安全課課長補佐(当時)の機転で行われ、知事へは事後承諾となった」
タマタマ中間管理職の機転で出動出来たと言う偶然によっているようです。
災害対策基本法
(昭和三十六年十一月十五日法律第二百二十三号)
(国の責務)
第三条  国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのつとり、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することに鑑み、組織及び機能の全てを挙げて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する。
2  国は、前項の責務を遂行するため、災害予防、災害応急対策及び災害復旧の基本となるべき計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施するとともに、地方公共団体、指定公共機関、指定地方公共機関等が処理する防災に関する事務又は業務の実施の推進とその総合調整を行ない、及び災害に係る経費負担の適正化を図らなければならない。
3  指定行政機関及び指定地方行政機関は、その所掌事務を遂行するにあたつては、第一項に規定する国の責務が十分に果たされることとなるように、相互に協力しなければならない。
4  指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長は、この法律の規定による都道府県及び市町村の地域防災計画の作成及び実施が円滑に行なわれるように、その所掌事務について当該都道府県又は市町村に対し、勧告し、指導し、助言し、その他適切な措置をとらなければならない。

上記を見れば分るように警察庁法同様に政府は企画立案する程度でイザと言うときに統括して指揮命令出来る権能を書いていません。
指揮命令権がない前提で政府からの勧告や助言、自治体間の「協力」を強調しているだけです。
「協力」と言うことは自治体の首長次第で協力しない権利が留保されていることになります。
アメリカではハリケーン・カトリーナの大災害に際しての連邦政府の対応の不手際があって議論が続いているようですが、以下の論文を読むと、アメリカでは連邦政府成立独立戦争の歴史経緯があって、州軍・民兵と言うモノがあって、第一次的に州の軍隊が出動する前提があったところ、ハリケーンカトリーナでは、州単位では対応し切れない大規模災害になったことによるものらしいです。
http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/review/3-1/3-1-4.pdf
海幹校戦略研究2013年5月(3-1)
48米国における軍隊の国内出動
―「カトリーナ」が残したもの
―井上 高志
本文省略(自警団?に始まる軍の歴史を説き起こしていて内容がありますので、関心のある方は直接お読み下さい)
日本の場合県単位の軍が元々ないし、アメリカの各州とは比較にならないほど地方自治体の規模が小さいのですから、県知事の要請(自治体軍で手に負えないときだけ?と言う前提がありません)が出てから出動する仕組み自体が不合理です。
要請がなくとも大災害があれば救援は一刻を争うのですから自動的に災害救援部隊は救援出動出来る・・職権発動形式にすべきです。
消防署やパトカーは被害者の救援以来がなくとも出動しています・・被害者・・被害が県単位の大規模になったときだけ、県知事の救援依頼手続を要求するのは矛盾です。
(大規模災害のときは被害甚大で却って急ぎますし、遠くから来てもらうには時間がかかります)
兵力は「悪」と言う非武装論同様の前提思想があって、依頼がない限り助けてはいけないという逆立ちした思想に縛られているからです。
EUやイギリス(連合王国)、アメリカ(合衆国と翻訳されていますが、国家形態としてはUNITED STATE . 連合・連邦国家です)ドイツも連邦制ですし、欧米系の国は、連邦・連合国が多いのです。
一定の主権国の連合体では、元々別の国が連合・連邦になっただけですから、隣の国の軍や警察が勝手に入って来るのは困るので救援要請の手順を要する歴史があるのは分ります。
EUの場合も同じでしょう。
我が国の場合列島全体が古代から同胞意識であり、現在の県単位は明治初期に中央政府の都合で決めた括りでしかありませんから、県単位で対立するための軍隊や警察を持ったこともないし、・・それぞれの民族意識や敵対意識がありません。
大災害が起きたら、隣の県の警察だろうと消防だろうとどちらでも良いから、速く助けに来て欲しいものです。
このため消防組織に関しては市町村の枠を越えた助け合い・・広域消防組合が出来て協力に留まらず(協力要請→承諾→出動ではなく)自動的な関係=出動指令体制の一本化が進んでいますが、これでも同一県内だけです。
県境を越えると飽くまで協力要請がないと何故行けないのか?
欧米流の自治・ステート概念に学者が毒され過ぎていると思われます。
欧米のステートと都道府県は全く成り立ちが違うのです。
国家とはどういうものか?
欧米の概念を翻訳してその制度をそのママ、国情・歴史の違う我が国に導入するのではなく、実質・成り立ちに遡って考え直すべき時期が来ているでしょう。

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