自治体の意思決定6(居住期間2)

文化人・憲法学者の言うとおり政治制度は、政治家を信頼するものではなく権力に対する猜疑心で三権分立制度や情報公開制度があります。
自治体選挙制度が濫用される疑いがあるならば(猜疑心だけで制度を作るべきとすれば濫用の事実認定まで要りません・・権力集中→腐敗→三権分立論が腐敗の事実認定がいらないのと同じです)、これらを牽制する制度設計が必要です。
自治体選挙で本来の支持率・・実力以上の地位をどうやって得るかとなれば、特定自治体の重要性に応じて支持者を(自主的に)そこへ集中させればその地域での支持率が急上昇します。
しかも10月22日紹介したとおり3ヶ月前から住民登録していれば良いのであれば、活動家が自主的に?順次移動して行けばアチコチの自治体で重複して投票出来る・・・悪用する組織が増えて来た現実を直視してこれを早期に改正する必要があります。
3ヶ月以上前に住民登録を移動しておけば、選挙権がある仕組みならば自衛隊基地問題や原発立地あるいは原発ゴミ処理施設の賛否などの国政上の重要問題が起きてから活動家が住所移動しても十分間に合う仕組みになっているから、選挙制度を濫用するリスクが高まっているのですから、・・これの放置こそ重大な違憲状態です。
現在合法的節税目的で一定期間海外への住所移転問題がクロ−ズアップされていますが(私が知ったのは武富士元会長長男の2000億円に上る税還付訴訟の判例を見たことによりますが・・)21日の日経朝刊1面に相続税対象者として従来5年超の海外在住期間者には海外資産に対する相続税免除規定を変更する予定と言う記事が出ています。
昔と違って海外移転でさえ簡単になり、税逃れ目的に住所移転が容易になっている・・本当に住んでいるかどうか近所の人には分り難くなっている現状を直視して制度改正する必要があります。
法的には住所=「生活の本拠」の移動ですから、生活の本拠を移さずに住民票だけ移動するのは違法ですが、・・選挙作業現場では実態調査している暇がないし選挙目的移動の認定が困難なので、住民登録を基準に選挙人名簿を選挙に間に合うように機械的に作成し投票用紙送付を間に合わせるのに必死です。
これを5年以上の居住期間を必要とすれば、選挙準備もかなり早くからやれますし、生活実体のない不審な移動をあぶり出す調査力がアップするでしょう。
5年にもなると偽装負担(資金負担団体のコスト)も大きくなり、不正移住に対するブレーキになります。
ただし、21日の新聞記事によると海外資産の相続税対象から外す基準として5年超でも悪用する例が多いので改正すると言う記事です。
上記のように税制ではしょっ中対応しているのに民主主義の根幹に関わる選挙権について戦後約70年間も何故放置して来たかが(野党が反対していて改正し難いのでしょうか?)疑問です。
仮に5年以上の居住要件してもその人が選挙出来ないのではなく、従来の選挙区での選挙権があるのですから、(今は海外転勤者の現地選挙まで導入されている時代で、遠隔地の不利益はそれほど大きくはありません)まして本来の転居の大多数は、隣の町あるいは同一通勤圏(鉄道沿線間)からの移住が多いのでそんなに不便にならないのが普通です。
転居すれば職場への通勤や友人知己と遠くなる・・子供の転校その他一定の不都合があるのを考えた上で転居するものですから、その内の1つとして考慮しておけば足りることで予測不能の損害とは言えません。
加えて地方自治制度発足当時と異なり、原発、空港、基地設置も地元意見が重視されるようになって来ると・・日常生活的争点ではなくなって来ると自治体選挙も、長期居住を要件とした方が合理的です。
村全部水没するダム建設賛否について先祖代々住んでいる人と4〜5ヶ月前に来た人あるいは来春転勤で移動する予定の転勤族も同じ発言権があること自体がおかしいと思う人の方が多いのではないでしょうか?
原発の誘致や空港の誘致も同じで、転勤族で、来春転勤が決まっている人がその町の将来に関する決議に参加出来るのはおかしいでしょう。
こう言う問題は5〜10年の居住期間では解決不能、文化は3代と言いますが3代以上住み続けている人に限定すべきと思います。
町内会ではアパート・借家の人を元々期待していないし、アパート・借家の人も町内会に入ろうとしないのは「定住していてこそ一緒に決めて行く仲間」と言う暗黙の合意を表しています。
ただ現実論として当面3ケ月間を5年に変更してはどうかというだけです。
県知事選挙なども政党色が強まると、党派的主張を貫徹するために熱心な支持者が自発的に?住所移転する人が増えて来るのを防げません。
自治体首長の政党色化が悪いのではなく、国政テーマに自治体が口出しするために政治裁量権を予定しない技術的基準による許認可権の行使を色付け運用するようになった結果、自治体政治がイデオロギー化して来た逆の関係です。
自治体に決定権があるコト自体をすぐに変えられないとしても、居住期間を5年以上にすれば自治体選挙の半年前後の時間差を利用して次々巡業的移動の濫用行為は最低防げます。
ただし、基地問題や原発新規設置やダム設建設などの国家百年の計・・大きな計画は事前準備も長期化して行きますので、5年前後前から地元調整などが始まり最終的住民投票や選挙はそのごとなりますから、5年程度の居住期間要件では選挙目当ての移住を防げません。
以下は噂に過ぎませんが、現在ホットなニュースでは、次の総選挙解散の時期を巡っての憶測では、総選挙日程を与党で決めるには公明党が総選挙と都議会選挙には最低3ヶ月以上の(最小でも半年前後の)期間を空けることが至上命題になっている・・これが長年政界の常識とされています。
ところで、実際の住民票を意図的移動するには、選挙日の3ヶ月前の数ヶ月〜半年以上前から徐々に転入・・選挙後も数ヶ月〜半年前後かけて少しずつ出て行く方法しかないのが普通です。
選挙期日のピッタリ3ヶ月前に何万人と一斉移動出来ない・目立ち過ぎます・・選挙が終わって翌日に直ぐに・・何万人も一斉に元に戻す住民票移動が出来ないので、結果的に選挙予定日(これも半年前には具体的期日が確定していない・・ハバがあります。)前後合計8〜9ヶ月間は公明党が衆院解散に同意出来ないのが政界の常識になっていると言われています。
解散時期については公明党が同意しなくとも総理の専権ですが、そこは貸し借りの複雑な政治駆け引きの世界です。
自民党としては、公明党に貸しを作って損がないので、公明党の(脱法行為ミエミエの)勝手な都合を尊重して都議会選挙前か後にするしかないのですが、都議会選挙後だと衆議員任期が迫って来るので今度は政権の方が追い込まれ解散になってしまうリスクがあります。
そこで今年の「通常国会での冒頭解散しかないだろう」と一般に言われて政治家が走り出しています。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016050100063&g=polからの引用です
衆院解散、年内か=年越せば任期満了近くも-政局シミュレーション
◇17年は解散なし?
17年7月には、任期満了を迎える東京都議選が控える。公明党は都議選を国政選挙並みに重視しており、衆院選との重複を避けたいのが本音。
追い込まれリスク
 そこで浮上するのが18年の解散だ。・・任期満了が迫れば「追い込まれ解散」の様相を呈し、劣勢を強いられるリスクは高まる。」
「公明党は・・重複を避けたい」と言う婉曲的表現ですが、この不文律・・政界公知の噂・推測?公明党の至上命題の前提には、公職選挙法の三ヶ月期間の規定がある・・と言うのがもっぱらの噂さです。
以上のとおり公明党が「意図的住所移転を利用している」と言う公然の前提になっていることになります。
住所移転を離れて考えると本来同日選の方が一般的に投票率が上がりますが、これが困る政党は投票率が低い方が有利→活動家率が高いことも表しています。

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