司法権の限界6(人権・正義の相対性2)

夫婦別姓に関する最高裁合憲判決に戻りますと、社会の道義や正義はその社会が決めると言うあたりまえの前提・・誰か偉い人が正義を決めるべきではないと言う確認が必要です。
人権や平和と言う名目で反日行動する勢力は、日本の上位機関として国連を想定しているらしくそこへ食い込んで、ご託宣を得れば良いと言うやり方が多いようですが・・かれらは社会ごとに正義があると言う前提を無視していることが分ります。
国や民族の意思をバカにして上に聳える?超然たる正義を決める神のようなモノを措前提する勢力と言えます。
別姓支持勢力からは最高裁判決に対して落胆の声がありますが、国民多数の支持を得ているならば政治決定を求めれば実現出来ることであって、法改正を求めずに何故裁判で決めようとするのか分りません。
本来法律改正で間に合うものをあえて司法での決着を求める勢力は、国民意思に反している前提・・民意を超越した偉い人の御託宣が欲しいと言うに等しいことになりませんか?
民主国家においては多数の支持を受けた意見が法になり得るので、国民の支持を受けている勢力は憲法違反など主張する必要がありません。
何か気に入らないと直ぐに憲法違反と主張する勢力は、多数からの支持を受けられない・・民意=多数意思を無視するか軽視している勢力のことになります。
憲法が気に入らないと国連決議や勧告、報告を持ち出します。
国民の支持を受けられない勢力=民意を代表しない勢力が、「多数市民の意見を無視している」とか、「大衆迎合主義」とか自分を支持しない国民を衆愚(バカ)扱いして都合良く分類していることになります。
政治の場で議論するべきことをしないで、(あるいは政治論争で負けて)司法に持ち込む運動は、憲法の予定している国民主権原理を無視した・・憲法違反の主張になります。
別姓に関しても時代・・国や社会を越えた超越的価値観がある訳ではありません。
「同姓めとらず」の原則による中国・朝鮮では別姓のママですが、別姓論者の基礎的価値観は中韓の価値観を下敷きにしているように見えますが・・。
中韓の方が古代から人権意識が優れていたと思う人はいないでしょう。
西洋系でもクリントン大統領候補で周知のとおり、前クリントン大統領夫人ですが中韓を除けば、世界中で同姓が普通です。
別姓に関しては(女性に不利だと言う意見を中心に)多様な意見があると思いますから、社会意識の落ち着き・・民意を汲むのは政治家の仕事です・・政治の場で決めたら良いことです。
他所のどこかの原理を持って来て、司法権がどちらの方が優れていると決めるのは行き過ぎです。
意見が分かれている分野・・法で決め切れていない分野で司法がどちらの方が良いと決める権利はありません。
意見が拮抗しているときにどちらを進めるかこそが政治家の決断力の見せ場ですが、新たに国民の進べき方向を司法権が決めるのは権限外です。
またこれを司法に求める運動・憲法を守れと言う運動は・・逆説的ですが、司法に民意を超越したどこかの外国意見の強制を求めるもので、憲法違反をさせようと唆す犯罪的運動です。
安楽死で言えば、担当裁判官が、個人意見として安楽死させるべきと考え、あるいは国連から「安楽死を認めるべきだ」と言う勧告があっても、国民意思による刑法改正をしていないのに、合法であると判断することは法創造をするものであって許されません。
この後で「法と良心」の定義で書きますが、司法による法創造が許されないだけではなく、個人の主観的意見による法解釈は「良心」に反するものであって許されません。
歴史的に見て、天皇制に限らず権力維持するには権力の乱用をしない・・余計な口出しをしない・・謙抑性が必須要件です。
裁判所の最終決定(全国的影響のある事件は最終的には最高裁まで行くのが普通ですが諫早事件でのように政治利用が進み過ぎると却って、高裁どまりになって困っている事件もあります)にどの機関も異議を唱えられないことを良いことにして、最高裁を含めて司法権が出しゃばり過ぎる・・権限濫用すると司法制度自体の革命的改正機運が高まるでしょう。
似たような機関としては軍部があり、軍部がのさばってしまうとみんな怖くて黙っているしかない・・不満蓄積による革命的運動以外にこれを取り除くことが出来なくなります。
不満爆発まで行くと多くは勢いがつき過ぎるので,タイやエジプトのように一時の混乱を沈めるために已むなく軍が介入しても1日も早く軟着陸しようと努力しています。
司法権は国民から要請されてもいないのに、政治に介入するのは愚の骨頂です。
必要もないのに政治介入し過ぎて国民的反発を受け信用をなくすと、本来必要な司法機能(法暴走したときのチェック機能)まで縮小するリスクを心配しています。

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