弁護士大増員の影響(弁護士会費負担の脅威)1

弁護士会の単位が都道府県単位になっているのは、タマタマ弁護士法が出来たときにあった行政単位を利用しただけですから、県単位で構成する必要性を再検討すべき時期がきているように思います。
今は千葉県内登録だけでも弁護士は約700人もいるのですから、県に1つと言うのではなく、政党要件同様に一定以上・・たとえば100人以上に達すれば別の会を設立出来るようにすべきだと言う意見が出て来るような気がします。
※当然のことながら「公益事業を一切しなくても良いのか」などいろんな要件議論が必要ですが・・。
地域限定せずに関東1円どこに住んでいても(政党のように)一定数に達すれば独立の会を設立出来るようにしても良いでしょう。
弁護士の関心の違い・・ひいては利害関係も地域差よりは、どのような事件を共通にやっているかの方が大きくなっています。
政治活動の是非と関係なく、元々強制加入制度自体が、近年の弁護士大幅増員・・若手弁護士や高齢化した弁護士・中高年層の限界的収入層の収入減・低下によって揺らぎ始めて行きます。
弁護士登録しない・法曹有資格者構想が議論されるようになって来たのも、このような実態があるからでしょう。
弁護士大増員以降これまで若手弁護士の生活苦ばかり注目が集まっていましたが、高齢会員も苦しくなっている様子です。
社会の生活水準が落ちると構成員の中で弱者に先ず影響が出るのと同じで、弁護士大増員によって経済的影響を受けるのは、若手だけではありません。
社会の場合、高齢者は労働収入が減ってもその代わり年金制度が充実していますが、弁護士の場合、高齢会員向けの収入システムはありません。
せいぜい後記の会費免除制度くらいでしょうか?
高齢会員や中高年会員は自己の収入減を恥ずかしくていえないからか、会費免除などを大きな声で主張していませんが、日弁連会員の登録抹消情報を見ていると最近自発的に廃業する(高齢会員と思われる人)が目につくようになっています。
また会費未納で懲戒処分を受けている中高年会員も少しずつ増えて来ているように思えます。
いわゆる不祥事・・非弁提携などを起こす会員も、高齢者に多くなっています。
この種の事件はミスが原因ではなく、経済困窮がほぼ100%の原因ですから、困窮度の指標とも言えます。
10〜15年以上前までは、裁判官・検事等の定年退職後の仕事として、弁護士登録する人が普通でした。
定年退官者は、基本的には年金で普通のサラリーマン以上?の生活が出来るので、会員登録しておいて、老後の余技のように「会費支払程度の収入があれば良いか』と弁護士会に加入している方が多かったと思います。
大増員前には月に1〜2回って来る国選弁護受任程度の弁護活動をして行けば良いかと言う意識が普通でしたが、最近では若手会員が増えて国選その他公的配点の取り合い状態になっているので、公的な仕事は年に1〜2件回って来るかどうかになって思惑が狂ってしまったと思われます。
何の収入もないまま年間60〜70万円前後もする会費を払うのでは、定年後の名誉料としては高過ぎるので、定年退官→登録後数年程度でやめてしまう例が出て来たと思うと、この関係に敏感に反応したらしく、この数年では退官した知り合いが弁護士登録したと言う挨拶が少なくなりました。
弁護士激増問題はひとり弁護士会の問題に留まらず、判事・検事にとっても、現職のときに考えていた定年後の老後設計を大きく狂わせつつあるようです。
ここ10数年來弁護士会が弁護士大増員で大騒ぎして来たのに対して、裁判所や検察庁は自分のところは採用を殆ど増やさずにいて・・(成績上位・上澄みの採用で良いので、新規採用者のレベルダウンの心配がありません)裁判所・検察庁を構成する判検事は自分に関係ないと高見の見物をしているイメージでした。

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