友好国と行動基準2

親日国の東南アジア・・タイを例にとれば日本企業が大量に進出していて中国や周辺に輸出していますが、日本への輸出はホンの僅かです。
台湾だって似たようなものです。
市場としての中国に嫌われて輸出激減するよりは、技術移転してくれている日本には悪いけれども今回は中国の味方をしますとなります。
東南アジアに進出している日系企業自体が、そう言う選択をしがちです.
日本が大量進出している東南アジア諸国全部が結果的に上記のような結果になります。
今朝の日経朝刊5ページ目にインフラ「整備の代わりに米とゴム」と言う題名で出ていましたが、マレーシアもタイも日本による経済協力でインフラ整備を進める代わりにその資金の支払に代えて米とゴムを買ってくれと提案されて、日本政府が困っている構図が出ていました。
(大分前に中国が見返りに大量の米輸入を約束したという報道がありましたが・・・このように相応の輸入とセットで商談が進んでいる現実があります)
日本は輸出するばかりで買わない・買えない弱点があります。
資源輸入額が大きい結果、その他商品は滅多に買えないのがギブ&テイクの交易ルール上不利になっているのです。
物々交換ではこちらに欲しいものがないと交換してもらえないので、タイが米の欲しい国に輸出して外貨を稼いでその外貨で日本にインフラ輸入代金を払ってくれれば良いという立場・・時代錯誤の主張だと言えばそうですが、民生品の場合、個別企業製品を見返りにその製品を買うことなど想定困難ですからこうした問題が起きなかったのです。
トヨタに部品を治めている下請けが見返りにトヨタ製品を買ってくれと言われてもせいぜい自社使用分程度であって、納入金額と同額まで買うことは不可能ですから民間取引ではこう言う要求をすること自体あり得なかったことになります。
民間貿易と違いインフラ整備・・公共工事となると、インフラから直接に何かを輸出したりする儲けがないので政府としては、財政赤字になる一方ですから、代償的資金を欲しくなるのでしょう。
従来は借款供与で足りていたのですが、インフラ輸出競争時代になると発注側が強くなって借款では満足しなくなって来たのです。
支払資金を貸してくれるのではなく、相手から自国製品を直接買ってくれる方に発注したいと言われると従来ならばそこまで言うのでは断っていれば良かったのですが、なりふり構わないインフラ輸出競争時代になっているので、対中国や韓国との競争上弱い関係です。
対後進国市場ではこちらは粗悪品あるいは低級品を輸入しても仕方がないと言う関係ですから「代わりに何か買って!」と言われると困ります。
代金の代わりに(代物弁済として)現物をもらってそれを他所の国に売ってやるしかないでしょう。
金融機関が融資の見返りに土地等を担保取得した場合、不動産業者と提携したりしてその処分手段を工夫します。
金貸しの場合、相手に資金調達能力がないから,融資を申し込むのですから仕方がないとは言えますが、物品の購入の場合までこれを言われると国内取引・・公取基準で言えば、優越的地位の濫用に似てきます。
巨額インフラ受注は、発注者が民間ではないので、発注機関でもある公的機関や政府首脳がこうした要望を出すこと自体一種の輸入障壁ですから、WTOの不当貿易制限の疑いがありますが、そんなことを言ってられないが現実です。
そもそも首脳外交が重要であること自体を疑問視する意見が少ないのは、首脳の発注への影響力が強い・・しかも実質WTO違反の疑いを問題にしないことを前提にしています。
政府は直接にそんなことを出来ませんから、商社の出番にするかインフラ整備を前提に現地に工場を進出してその製品を周辺国に売って、インフラ整備出来るようにして貿易黒字を稼げるようにしてやるしかありません。
タイではこの循環がうまく行っていたのですが、最近周辺国の離陸が進んで・・周辺国でも工業製品を作るようになって)輸出がうまく行かなくなって来た(いわゆる中進国の罠にはまりつつある傾向)からでしょう。
最近タイやマレーシアの成長率鈍化が、ASEAN全体の成長率平均を下げるようになっています。
従来型の応援のやり方からもっと進んで、タイやマレーシアが陥りつつある中進国の罠からの脱却に向けて一緒に考えるなど企画立案等の協力段階に進む必要があります。

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