海外収益の還流持続性5(ギリシャ・フランスの選択)

この5月6日 (日本時間では7日報道)に行われたギリシャの選挙で経済危機対策として行われている緊縮政策に反対する政党が躍進し、フランスでもドイツと連携して緊縮政策を進めて来たサルコジ現職大統領が敗れ、公務員増加など緊縮よりも支出拡大を主張して来た社会党のオランド氏が勝利しました。
第1次世界大戦後巨額賠償金債務に参ってしまったドイツが、その反動としての開き直りの主張でナチスドイツが躍進したのを想起させる事態です。
フランスやギリシャではナチスのように、景気対策として軍需産業を拡大して隣国を侵略する力はないでしょうが、それでも債務を踏み倒す(「貧者の核兵器」みたいな権利です)ことは出来ます。
債権国の言いなりの緊縮生活は御免・お断り等の主張の結果は、どうなるでしょうか?
緊縮反対と言うことは「倹約して借金支払に努める約束をしたくない」ということですから、言わば開き直りです。
1国だけで支払い拒否すると国際社会から除け者になるので出来ませんが、南欧諸国やフランスその他がまとまって未払い同盟を結ぶと除け者にしておく訳に行かなくなります。
世界中では債務国の方が多いので、金融資本の横暴と言う大義名分を打ち立てて思想的裏付けを得れば、瞬く間に金融資本打倒・・未払いを主張する政治結社が出来てこの主張が世界中に広がるでしょう。
緑の党・環境運動などに比べれば実利があるので、多くの賛同を得易い筈です。
折しも金融資本の総本山でオキュパイウオールの運動が起きたばかりでもあり、金融資本の儲け過ぎ・・横暴批判の思想が広がり始めています。
一定時期・・例えば2020年1月1日午前零時を期してそのトキ現在の債権債務を全部帳消しにするという国際合意(国際的徳政令)が出来たらどうなるでしょう。
このような合意ではっきり損をするのは純債権国ドイツと日本くらいで、その他は収支トントンまたは得する国が殆どでしょうから、この合意(と言う協定成立は無理でもこうした風潮・・今の基準で言えばモラルハザード・・)が成立する可能性が高いのです。
貿易黒字で外貨準備が大きいと思われている中国でも、全部チャラに出来れば日本や諸外国からの投資(木の書いたようにこれらは金融債権・株式です)をすべて接収出来るので損がありません。
以前どこかに書きましたが、約千年も続いた今のイタリア・ベネチア共和国は、最後のころは金融資本で食っていて、スペインやイギリスに次々と踏みたされたことが衰亡の原因になりました。
日本は世界最大の債権国ですが、この蓄積のある内に高齢化時代を乗り切り、人口7〜8000万人程度の安定期を迎えられれば理想的ですが、中南米諸国の国有化の動きやギリシャやフランスの動きを見ていると予想外に早く資本収益の本国送金が許されなくなる時代が来そうな雰囲気です。
我が国が高齢者の方が多い頭でっかち状態の人口構成から脱しない状態で資本収益回収が出来ない時代が来ると大変です。
高齢者が過去の蓄積による資本収益の(年金資金の運用先の焦げ付きにより)回収が出来なくなり、他方で、ここ数十年では現役世代は自分の働きだけでは高齢化した親世代を養うことが出来ないことが明らかです。
そのときまでに、一日も早く少子化を徹底して人口5〜7千万くらいでの安定状態に持って行き、国民の多くが物造り従事しこれによる収入を基本として、これに付随した程度のサービスや商人・金融業者等の均衡のとれた社会になるべきです。
そうなれば、日本は所得再分配による格差是正の必要性が少ない社会になります。

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