円高差益還元3

政府は自分の赤字を抑えるために企業の保険等の企業負担率を上げる(実質増税)一方ですから、企業は人件費負担率アップと増税のダブルパンチを受ける状態で約20年やってきました。
これでは、国内に残った企業の利益率低下が必然ですので、(配当期待の)日本の株式市場が低迷するのは仕方のないことです。
ちなみに平成5〜6年ころには1ドル160円前後していたのが、今では80円を割っている(18日のニューヨーク外為市場では79円01円でした)・・ドル表示での実質給与は2倍になっています。
グローバル化に合わせて実質賃金を引き下げなければ国際競争に適応して行けないのですが、これでは逆張りも良いところです。
同じことは政府収支にも言えますので、デフレになると名目政府歳入も縮小し、バランスが悪くなるので保険その他法人負担率の引き上げに躍起です。
しかし、給付削減努力をせずに企業負担ばかり上げて行くと、企業経営者に愛国心があっても限度を超えれば中国人並みに「対策」するしかないでしょう。
政府に強権に基づく「上に政策あれば下に対策あり」というのが中国の処世術ですが、我が国もこうした不公正・アンバランスな政策累積の結果、輸入差益を受ける企業・消費者と輸出差損を受ける企業に分かれると、損をすると思う企業が海外に逃げるしかなくなっていることになります。
(冗談ですが・・)政府も企業並みに租税回避地・・タックスヘイブンに移転できれば、財政赤字問題がなくなります。
政府の財政赤字問題・累積1000兆円に及ぶ国債発行残高は、デフレ下での従来基準での支出維持の累積によるものですが、産業界にもこのくらいの負担を押し付けて来た結果・・企業も実は1000兆円の負担増加分を必死に企業努力で消化して来たと言えるかも知れません。
企業は政府のように無責任に赤字を累積し、転嫁出来ませんので、海外展開してその儲けを国内還流することによって何とか損失(為替差損)の穴埋めで凌いで来たことになります。
トヨタで言えば、日産や本田のように海外生産比率を上げて行けばもっと利益率が上がる筈ですが、これをじっと我慢して国内工場を維持して高賃金を負担して来たことによる累積損失額は膨大です。
ホンダ、日産だって(その他各種業界も)トヨタほどではないにしても国内に踏みとどまるための努力をしているので、これら国内総企業の負担(利益の食いつぶし)を足せば、政府赤字以上の負担をして来たことになるように思われます。
我が国・先進国の場合、為替相場に賃金水準その他支給を連動させたとしても、それで終わりではなく、さらにグローバル化以降の世界賃金平準化に合わせる努力をしなければ国際競争に遅れを取ってしまいます。
グローバル化・低賃金国との競争がとどめようのない経済の流れであることについて、日本一国が反対しても阻止することは不可能ですから、ある程度適応するしかないのも現実です。
これに対する解決策が非正規雇用の拡大(・・下方硬直性のある賃金相場が市場連動性になるメリット)ですが、これがあまりにも急激すぎると国民意識がついて行けず、国民が不幸になります。
我が国の場合、世界最大の蓄積があるので焦ることなく時間をかけてやってるうちに、他方で一定の技術高度化対応・適応が進むメリットもあります。
ちなみに昨日の日経夕刊によれば昨年我が国の対外純資産が更に増えて過去最高になっているとのことです。
余りドラスチックにグローバル化=国内賃下げ・あるいは解雇・失業と言う早い進行ですと国内で国民が高度化適応努力するヒマさえありません。
ついて行けないで失業してしまった労働者はやる気をなくしてしまい、民族の消長にもかかわりかねません。

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