原発賠償支援スキーム3

政府保証がついていても払う義務のあるのは債務者本人ですから、社債がいつか発行出来なくなるときに備えて本来元金を徐々に蓄積しておくべきですが、8月21〜22日に社債の仕組みで書いたように、どこの優良企業も利息さえ払って行けば良い仕組みです。
我が国の赤字国債同様にうっかりすると利息支払分までも次の社債で手当てしている企業が多いのではないでしょうか?
国債がデフォルトになるときには国債を大量に買い込んでいる国内各種金融機関も軒並みデフォルトになり、多くの貸付金も大方焦げ付く事態でしょうから、国債がデフォルトのときしかデフォルトにならない債務は、国内的には超優良債務と言えます。
ちなみに、政府保証付きでも信用がなくなって次の借り換え用の社債発を行出来ないとき・・5年もの債権とすれば5年先に政府が保証債務を払えないと言う予測が立っているときですが、実は誰も5年先のことは分らないので、現時点で既に国債がデフォルト寸前であって初めて「今払えない者が5年先の保証するなんておかしいよ!」となるものです。
原発大事故まで東電は世界の超優良企業だった筈ですが、それでもひとたび事故にあって次に借り換え用の社債発行が出来なくなりデフォルトの危機に見舞われる状態ですが、政府保証の神通力が効かなくなったときにいきなり東電や新機構が自前資金で次々と到来する社債を償還出来る筈がありません。
東電の持っている銀行株や大手国内優良株を売って資金にしようとしても、国債がデフォルト状態になれば上記のように銀行株や大手企業株の大暴落で売って資金を作るどころの話ではありません。
借り換えが出来なくなるときには、国内企業全部が連鎖倒産ですから自分のお金で払うことは全く予定していない・・元々不可能な設計です。
政府保証が現実化するとき・・機構が新規社債発行不能のときとは、政府債務が破綻して政府保証の効能がなくなったときのことですから、政府保証とは言うものの、イザ保証債務を支払うときには既に政府が破綻しているのですから、政府自身も1銭も払わない結果で終わる予定になります。
政府保証とは言っても最後は東電も機構も、政府もみんなでそろって踏み倒すことを前提にしていることになります。
このように社債や国債発行スキームは名目上発行の度に利息分を上乗せして行って膨らみますが、最後まで払う気がない詐欺みたいな仕組みです。
ニクソンショック以降、金の裏付けがなくなった後の貨幣や国債・政府保証債・大手企業の社債などは、政府や大手企業が先頭に立ってモラルハザードを拡大しているのが現状と言えるでしょう。
景気沈滞を嫌がって必ず来る景気下降期にその都度紙幣の乱発・これを吸収するための国債乱発をして来た咎めの帳尻合わせがリーマンショック以降南欧諸国など鎖の弱いところから世界を駆け巡りながら徐々に続いているのです。
この最後に来るのが我が国の国債デフォルトと言うことでしょうか?
原発被害を100%賠償しますとは言っても、実際は社債と言う紙の発行の繰り返しで先送りするだけで関係者は誰も自腹をいためない仕組みです。
政府が払えないときは、最後に一種の徳政令で終わりですから、お互い気楽なものです。

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