原発のコスト(損害賠償リスク)

日本国内事故の場合は、政府はもう安全だと言って早め早めに(根拠のない?)安全宣言をして、避難指定を早めに解除して行くでしょうが、(危険になる数値も根拠なく・・審査会の意見に基づいているので根拠あるということでしょうが・・・)引き上げているのが現状です・・)外国が日本に請求して来る場合はその逆で最大限の主張をして来ることが目に見えています。
一部指定解除が報道されていますが、商売人はもちろんのこと、勤務者でも部分的解除で自宅に帰れても勤務先が未解除範囲内で休業中の場合、帰っても仕事がない問題があります。
一生で100ミリシーベルトまで安全だから、その範囲内では避難する必要がない・・過剰反応だと言うのが今の政府のやり方ですが、これが国際的に訴えられた場合、(対等者間では)そんな根拠のない主張が通る筈がありません。
日本もこれまで認めて来た国際基準では、1年間の被曝総量が1ミリシーベルトですから、政府の基準では100年間かかる・・即ち現在に生きている人の半数以上が年間1ミリシーベルトの2〜3倍程度までは安全だという論理になってしまい、論理矛盾以外の何ものでもありません。
黒を白と言い張るような論理矛盾の主張は国際的には無理ですから、安全だとする根拠の立証がいるでしょうが政府は今までそのデータを開示していません。
8月2日に割に早く家に帰れたのでラジオ放送を聞いていたら、この決定に参画したらしい京都大学教授が、「100ミリシーベルトを超えたら危険と言うか科学的な証明がまだないので、・・分らないのだから良いじゃないか・・」というような意味不明な曖昧模糊とした回答していました。
原発安全基準で、「その先は分らないから危険だからやめよう」と言うのではなく、「その先は分らないから議論する必要がない・・結果的に安全ということにしていた」結果、今回の大事故になったのと同じ論法です。
日本政府や御用学者の安全指針の根拠が怪しいので風評被害が起き・・スーパーや焼き肉レストランなどは、「政府は正しいに決まっている」というだけでは商売にならないので、防衛のために自主検査をせざるをなくなっていて、(自主検査出来る大手は競争上有利になります)国全体では却って二重コストになっています。
その他の都県では個別の損害・牛や野菜などの検査などにかかった費用、風評被害、機会損失(スーパーなどで仕入れた牛肉を売り損ねた)などが問題になるでしょう。
7月24日の日経新聞では、福島に限らず東京のホテルでもまだ何割減の海外旅客需要(千葉まで離れていても真夏になっても海水浴客は激減)のままらしいですから、こうした関東東北各県での損害もテーマになります。
原子力損害賠償紛争審査会基準では外国人による5月末日までのキャンセルが対象になるようですが、実害はそれどころではないでしょう。
また被害補償の基準としては政府の避難指定区域内住民だけで、その外側で自主避難した住民はその範囲外・・将来的には問題になるでしょうが・・今は問題にしていないようです。
避難区域の指定は政府が恣意的?に決めているだけですから、その決め方によって賠償範囲を変えられます。
こんな政府の都合による一方的線引きを基準に・・それすら東電は支払能力がないというのに、原発コストが安いと言われても国民は納得出来ないでしょう。

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