商業・交易社会とリーダーシップ

 

ところで、日本では有史以来農業が国の基本産業でした(白村江の敗戦以来原則的立場は鎖国状態・・自給自足を原則で来たことを繰り返し書きました・・このDNAが騒ぐので日本の企業は総合型自前主義にこだわって来たのです)から、利害調整・・世話役が幅を利かす社会であったのに対して、モンゴルや匈奴あるいは中央アジア等遊牧系あるいは商品交換社会では、昔から根回し・調節型よりは統率力・リーダーシップが求められていたのは、土地の痩せた地域では自給が不可能ですから、異民族との交換経済・・交易には途中の安全確保その他闘争が本質・必須だったからです。 
交換経済社会・・その前提として通商が必須ですが、気象変動の激しい砂漠の旅・あるいは海路でも瞬時の決断が集団の生死を決めますので、指導者の資質は根回しよりは果敢な決断力が必須の要件です。
日本のように合戦にあたっても軍議を開いてそこで大将が決断する仕組みでは、嵐の迫っている船は帆を下ろすのに間に合わずに嵐に呑まれてしまうでしょう。
商業社会の長かった国では、即断即決向きの国民性が出来上がっているのにたいし、農業社会経験が中心の我が国では出る杭は打たれるし、国民自身自分より優れた指導者の出現を好みません。
ですから優れた指導者の出現を望むには、国民自身の偏った平等意識を変えて行くしかないでしょう。
今後農業国・・食料生産国でも、国際商業活動に参加しない限り生き残れない時代ですから、世界中でどこの集団でも商品交換経済的決断・・リーダーシップが求められる時代になったのです。
リーダーの出現を求めるだけではなく、リーダーに委ねるように国民性自体を変えて行くしかありません。
我が国の企業がいくら技術が優れていると自慢していても、良いものさえ作れば良いと言う農業社会的発想では競争に負ける・・トータル提案力が要求されている時代で、韓国の原子力発電事業輸出にも負け続けているし、多分新幹線輸出でも大分遅れている中国にさえ遅れを取りそうになっているのです。
大リーガーの松井やイチローを見れば分るでしょうが、一定の技術がないと始まり(相手にされ)ませんが、かといって交渉能力・・エージェントがないとやって行けないのが現実です。
我が国では昔から「腕さえよければ良いのだ」と言う職人気質を尊ぶようなところがありますが、そんな偏狭な心や態度では国際競争を勝ち抜けません。

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