どうなる先進国?

これに対して、製品輸入国すなわち貿易赤字国となってしまった先進国は、過去の貿易赤字・後進国と何が違うかと言えば、投資した貿易赤字分を資本収益で均衡させて輸入するようになっていることくらいが、違いと言えば違いで、その他の経済条件は同じですから行く行くは新興国と賃金レベルが同じになる(先進国の賃金が下がり他方で新興国の賃金が上がる均衡点)までは赤字の垂れ流しになるしかありません。
産業革命による輸出競争力の格差発生も煎じ詰めれば結局は人件費の問題でした。
一方は機械化によって、手作業の国よりも単位時間当たり多くの生産が出来るようになった・・すなわち製品単価当たり人件費率が安くなったので製品単価が下がり、イギリスの競争力が圧倒してしまいインドの綿糸業者がばたばたと倒産したのがその始まりでした。
運送屋だって競争力の源泉は大八車で運ぶ場合と車利用を比較すれば、前者は少しづつしかも同じ距離なら歩くので時間がかかるのに車ならその何倍も多くしかも早く運べる・・一人当たりの生産性の上昇によるものです。
この意味では現在の新興国の貿易黒字は低賃金によるのであって先端技術によるのではないから・・とバカにするのは間違っています。
理由はなんであれ製品当たりの賃金コストの安い国がこれまで貿易戦争で勝って来たのです。
何十倍比率で高賃金の先進国が貿易黒字を維持出来たのは、先端機械の独占によって結果的に単位生産コストが安く出来たからに外なりません。
この機械(高速道路や鉄道等インフラも含めてここでは書いています)利用が機会均等化されて新興国も同じ機械(インフラ)を使えるようになれば、一人当たり生産性が同じになるので、人件費の高低が、製品価格にもろに反映されて来ます。
産業革命では、結果的に自然人の手取り格差が生じましたが、今回は新興国が技術優位に基づくのではなく同じインフラを使える点で同水準に引き上げるまでのことですから、同レベルまで行く(一時的に勢いで追い越すことがあるのは当然です)だろうと言うだけですから逆転はないかも知れません。
とは言え、生産力以上の生活をする・・赤字の垂れ流しの連続と言う点では、これまでのアフリカ等の最貧国経済と同じこと・・政治的にも弱くなりそうですが、上記の通り資本投資国としての収益回収出来る点が借金とは違って立場が強い・・経営権を握っているのと、技術優位性を保っている点でしょうか?
とは言え、物流・貿易収支だけではなく、トータルとしての中国の黒字傾向は明らかで、中国に限らず新興国でも貿易黒字による資本蓄積が進んで行きます。

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