能力社会の遺産価値

今のところ一律生活費支給制度にはなっていないので、元気な夫をコケにするとたちまち生活に響くところが、父母の面倒を見ずに老人ホームに入れると将来相続出来なくなる(効果は大分先のことです・・)リスクを負うのとは訳が違います。
薬剤師や教師夫婦・公務員夫婦でもそうですが、ダブルインカムで比較的優雅な生活が出来ますが、それはダブるインカムを前提にしているに過ぎず夫の収入が入らなくなると大変です。
女性プログルファーや女優等特別な収入のある場合を除いて大方の場合、(ダブルインカムの場合でも)夫の収入を前提に目一杯ローンを組んだり、あるいは相応の高消費水準の生活になっていることが多いので、夫婦どちらかが逃げてしまうと大変どころか破綻のリスクとなります。
タワーマンション居住のサラリーマンの場合、ダブルインカムを前提にしたローンを組んでいることが多いようです。
風俗系や飲食業の場合、毎回のサービスと収入が対価関係ですから、客足が遠のけばもろに収入に響くので何時行っても愛想がいいのですが、これが仮に1年分前払いとか地位が安定化すればするほど、外形的サービス内容が低下していく傾向があります。
ですから、あまりいい客になると他の客で込みあっていると隅っこに行かされたりして客観的サービスが低下します。
それでも一見(いちげん)の客扱いよりはなじみの客になる意味は別にあるのでしょうが、それはまた別の意味がありますので、夫婦と挨拶程度にとどまる知人や競争相手にすぎない仕事同僚の外にどこか心のよりどころになる中間的人間関係の必要な時代が来ているかもしれないと言うテーマで別に書きます。
労働契約でも日雇いから期間工、契約社員、正規社員と契約関係が長期化すればするほど労働者の地位が安定しその裏返しに経営側の裁量権が後退します。
女性も外で働いていると夫婦中心のサービスがやっとで、子供が親(老人)世代を軽んじると言うか外注に委ねる方向へ傾斜して行くのに比例して、老人の方からも子供達に面倒を見てもらわない代わり遺産を子供達に残す意欲が薄れる方向へ逃げつつあります。
介護するべき子供世代(5〜60代前後)では、既に自分で自宅を買い求めた住宅ローンも終わっている世代(バブル崩壊後35年ローンが増えているので、今後は70前後までローン地獄のままになるでしょうから、これは今の5〜60代の話です)ですから、今更親の遺産がどうなろうとそれほど気にしない関係です。
今更親の家をもらえても貰えなくともそんなに気にならない・・親の家が空いても、今さら住み慣れた場所を離れて引っ越す気にもならない人が多い印象です。
江戸時代までの・・農地や家禄のように遺産相続しないと日々の収入自体がない時代から、親の遺産に関係のない勤労収入中心で食う時代に変わって相続財産の比重が下がったのです。
年老いた親の面倒をだらだらと見るよりは「遺産を貰えなくなっても良い」と言う相互の選択(勿論無意識の選択ですが・・庶民の智恵は凄い!)がうまく合致した結果でしょう。

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