高齢者介護と外注1

 家庭における男の切り札はサービスが悪ければ、何時でも離婚・・あるいは家に帰らなくなることが出来るとは言っても、2010-9-19「家庭サービスと外注」に書いたように実際には簡単ではない・・儚いものですが、この辺は老人が子供の世話を受けるようになると、老人・・形式的にはその家は老人のもので気に入らなければ子供夫婦を追い出せるとしても、現実には容易でないのと似ています。
通い婚・サービス業の場合、気に入らなければ遊びに行かなければいいので簡単ですが、嫁取り婚の場合に追い出すのは実際大変だったのとも似ています。
リヤ王の悲劇の真実までは知りませんが、老いて自分で身の回りのことが出来なくなれば、気に入らないからと息子や娘を追い出しても、また誰かに頼らねばならないのが難点です。
例えば2人の子がいる場合に、一人とけんかして残りの一人の所に身を寄せるとそこでもう一度けんかになると行く所がなくなる・・おろそかにされる恐怖で、長男(または長女)との間で波風を立てないようにしてじっと我慢していることが多いようです。
「あまりひどいと娘のところへ逃げ出すぞ」と言える状態が花と言うことです。
昔から「女3界に家なし」とか「老いては子に従え」とか言われていましたが、女性は最後は子に看てもらうことが多かったからでしょう。
最近では介護システムが発達して来たので、社会化・客観化されて身内にかかり切りになってもらう必要が減少して来ましたので、この種の遠慮が要らなくなって来ました。
一旦同居すると気に入らないからと言って子供夫婦を追い出すのが無理となれば、(初めっから子供夫婦との同居をしないで)高齢化した場合自宅を処分して介護付のマンションへ入居する老夫婦が増えて来ていることを、2010-9-12前後「介護の社会化1」以下で書きました。
親しき仲にも礼儀ありと言うように、一定の緊張関係のある通い婚関係のように親子もスープの冷めない距離から通う別居が理想ではないでしょうか?
中高年世代では,「今の子供は当てにならないから」と言うのが普通ですが、子世代と同居し身の回りのことも自分で出来なくなると子供の立場が強くなるのは昔から同じです。
特に隠居分を取り置ける程(水戸黄門のように)裕福な家なら別ですが、江戸時代の武家であれ、農家であれ家督を譲ると今度は息子夫婦が家計の経営者で親夫婦は無収入で養って貰う部屋住みの厄介者に格下げです。
今のように年金等の自前の現金収入のない時代に(江戸時代にも商人はいましたが、ホンの一部です)隠居して家督を息子に譲ってしまうと、農業収入・・あるいは武士の家禄は全部息子の懐に入ってしまう状態・・・隠居分を取り置かない限り親夫婦には一銭も現金収入がありません。

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