成長・停滞と出産2

平成バブル崩壊後では、江戸時代同様に経済停滞局面に入ったので、生き物の智恵として国民は自発的に少子化に転じているのですが、世代サイクルの変動に比べて経済情勢の変化の方が早いので、人口減が追いつかず若者の就職難・・非正規雇用問題になっているのです。
労働力の供給過剰は、高齢者がいつまでも隠退しなくなったので少子化にもかかわらず実質的労働人口が増え続けているのと、海外進出→国内生産縮小による需要減の両端から攻められていることによることを、これまで繰り返し書いて来ました。
我々弁護士増員問題も、従来の500人合格から750〜1000〜1500〜2000〜3000人合格にするとその差だけ増えて行くようなシュミレーションが多いのですが、従来60〜65才で多くが隠退していたのに対して、75才前後まで普通に働いている時代になるとその増加分を計算に入れないと間違います。
しかも高齢者が比較的有利な仕事を獲得して、若手は仕事がなくてサラ金や生活保護受給支援、少年事件等収入になりにくい事件ばかりやっているのが現状です。
これが合格者増に対する反乱が起きている・・平成22年春の日弁連会長選挙で増員反対派が当選した大きな原因です。
低成長社会になると原則として一家が分裂する必要・余裕がなくなったことと、次世代の多くが非正規職につくようになって自活し難くなって来たので、親が生きているうちから親の資産価値が増し(親の資金援助や同居して生活費を浮かせるなど)、さらには遺産承継価値増大となって親子関係維持の価値が増しつつあります。
成長の止まった社会・・静止社会と成長著しい動的社会とでは遺産価値が違うことをSeptember 20, 2010「所得低下と在宅介護」のブログで書きましたが、今回は国民全般の遺産価値感の変化ではなく、大都市とそれ以外の地域出身者との格差出現について書いて行きます。
農業社会では拡散して居住する形態ですので、遺産価値に地方と都会との格差はあまりありませんでしたが、商業社会化が進むと都市国家・都市集住形態が必然的帰結で散らばって住むメリットがありません。
(グローバリゼーションとは、言い換えれば世界中が商業社会化・・商品交換経済に巻き込まれるしかないことを意味します)
そこで商業社会化に比例して人口の都市集中が進むのは必然ですから、開国した明治以降ずっとその傾向で来たのですが、昭和末頃までは地方でも一定の都市機能のある場所はそれほど衰退していませんでした。
ですから、同じ県内に過疎地と都市部が混在している縣が殆どでした。

能力社会の遺産価値

今のところ一律生活費支給制度にはなっていないので、元気な夫をコケにするとたちまち生活に響くところが、父母の面倒を見ずに老人ホームに入れると将来相続出来なくなる(効果は大分先のことです・・)リスクを負うのとは訳が違います。
薬剤師や教師夫婦・公務員夫婦でもそうですが、ダブルインカムで比較的優雅な生活が出来ますが、それはダブるインカムを前提にしているに過ぎず夫の収入が入らなくなると大変です。
女性プログルファーや女優等特別な収入のある場合を除いて大方の場合、(ダブルインカムの場合でも)夫の収入を前提に目一杯ローンを組んだり、あるいは相応の高消費水準の生活になっていることが多いので、夫婦どちらかが逃げてしまうと大変どころか破綻のリスクとなります。
タワーマンション居住のサラリーマンの場合、ダブルインカムを前提にしたローンを組んでいることが多いようです。
風俗系や飲食業の場合、毎回のサービスと収入が対価関係ですから、客足が遠のけばもろに収入に響くので何時行っても愛想がいいのですが、これが仮に1年分前払いとか地位が安定化すればするほど、外形的サービス内容が低下していく傾向があります。
ですから、あまりいい客になると他の客で込みあっていると隅っこに行かされたりして客観的サービスが低下します。
それでも一見(いちげん)の客扱いよりはなじみの客になる意味は別にあるのでしょうが、それはまた別の意味がありますので、夫婦と挨拶程度にとどまる知人や競争相手にすぎない仕事同僚の外にどこか心のよりどころになる中間的人間関係の必要な時代が来ているかもしれないと言うテーマで別に書きます。
労働契約でも日雇いから期間工、契約社員、正規社員と契約関係が長期化すればするほど労働者の地位が安定しその裏返しに経営側の裁量権が後退します。
女性も外で働いていると夫婦中心のサービスがやっとで、子供が親(老人)世代を軽んじると言うか外注に委ねる方向へ傾斜して行くのに比例して、老人の方からも子供達に面倒を見てもらわない代わり遺産を子供達に残す意欲が薄れる方向へ逃げつつあります。
介護するべき子供世代(5〜60代前後)では、既に自分で自宅を買い求めた住宅ローンも終わっている世代(バブル崩壊後35年ローンが増えているので、今後は70前後までローン地獄のままになるでしょうから、これは今の5〜60代の話です)ですから、今更親の遺産がどうなろうとそれほど気にしない関係です。
今更親の家をもらえても貰えなくともそんなに気にならない・・親の家が空いても、今さら住み慣れた場所を離れて引っ越す気にもならない人が多い印象です。
江戸時代までの・・農地や家禄のように遺産相続しないと日々の収入自体がない時代から、親の遺産に関係のない勤労収入中心で食う時代に変わって相続財産の比重が下がったのです。
年老いた親の面倒をだらだらと見るよりは「遺産を貰えなくなっても良い」と言う相互の選択(勿論無意識の選択ですが・・庶民の智恵は凄い!)がうまく合致した結果でしょう。

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