あいちトリエンナーレ不自由展に関する専門家意見と民意乖離10(行政には、選任した芸術監督の裁量に判断を委ね、多様性を保障することに最大限の配慮をすることが求められるか?)

芸術監督津田大介氏に関するウイキペデイア記載経歴引用続きです。

2010年代
2010年 – 、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)フェロー。
2010年 – 、特定非営利活動法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパンフェロー( – 2013年)。
2010年、上智大学文学部新聞学科非常勤講師。
2010年 – 、スマイキー株式会社(旧ピーエムアール) 顧問。
2011年、武蔵大学社会学部メディア社会学科非常勤講師。
2011年9月、有料メールマガジン『メディアの現場』の配信を開始。以降、毎週水曜日発行。
2012年4月、株式会社ゲンロン取締役( – 2015年3月)、関西大学総合情報学部特任教授(任期:2012年4月 – 2013年3月)に就任。「ネットジャーナリズム論」「ネットジャーナリズム実習」を担当。
以下中略
2015年 – 朝日新聞社論壇委員
2017年 – 早稲田大学文学学術院教授(任期付)[12][13]
2017年8月1日 – あいちトリエンナーレ2019の芸術監督に就任[1

10年代に入るとどういう実績によるのかメデイア関連の仕事が増えて15年に朝日新聞論壇委員になって17年にアイチトリエンナーレ芸術監督就任の経歴です。
以上によると彼が芸術家=創作の専門家ではないばかりか、芸術専門家としての評論活動等の実績もないし、作品展覧会等の主催経歴もなさそうです。
10年台に入って朝日新聞やあちこちの大学で任期付きとはいえ招聘されているのは、彼の情報発信力が評価されたからではないかと推察されますが、それにしても芸術監督になるベき経歴としては異色で、その異色性(政治的発言の方向性も十分に知られていたでしょう)を発揮してもらうはっきりした意図で芸術監督に選任したと想定されます。
津田大介氏をジャーナリストと紹介していますので、彼の基本職業はジャーナリストと理解すべきでしょうが、ジャーナリストが芸術監督になったことになりますが、これまで見た経歴では、芸術系専門を生かしてジャーナリストになったのではなく、メデイア系活躍の経歴しかなさそうです。
こういう人でも芸術監督になってさえいれば、素人は口出しするな!と言えるのでしょうか?
昨日引用した大村知事による委嘱時の記事の再引用です。
どこかの大学の名誉学位を貰った政治家が政治発言して都合が悪くなると、学問の自由を守れ!と政治発言が免責されるかのような主張です。

「実行委員会の大村秀章会長(愛知県知事)は津田に「とんがった芸術祭にしたい」と委嘱状を渡した」

というのですから、彼の政治方向性を知悉した上で「とんがった」企画を期待していたことになります。
「とんがった」企画期待とはジャーナリストとして日頃表現しているとんがった主張を遠慮なく出して下さいという意味ではないでしょうか?
政治色満々の展覧会を(政治任用?)の(芸術家でない)芸術監督がプロ学芸員の提案を作品を次ぐ継と拒否し自己の好みで捨選択し開催しておきながら、いざ政治問題になると芸術展への政治の介入を許さないかのような立場を代表するのはなんとなく(自分自身が芸術家でないのに芸術展示作品取捨選択の監督をしているのとどのように整合するのか)不思議な主張です。
ウイキペデイア記載の津田大介芸術監督の発言と朝日の主張を再引用します。

芸術監督の津田大介は「政治家は、表現の自由に対して権力を行使できる立場であり、もう少し発言は抑制的であるべきだと思います」と批判し[71]、また、津田を論説委員として擁する朝日新聞も「行政には、選任した芸術監督の裁量に判断を委ね、多様性を保障することに最大限の配慮をすることが求められる。」と批判を行った[

芸術監督というといかにも専門家のようですが、津田氏の経歴を見たように、ジャーナリストというだけで何の専門家かも不明で、はっきりしていることは朝日新聞の政治傾向と親和性のあるジャーナリストらしいというだけです。
芸術監督として選べばその人の政治姿勢そのママで良い、外野(行政や世論)は意見を言うべきでないというかのようです。
そこまでいうと芸術監督のレベル保証はどうなっているのかが気になりませんか?
津田氏の経歴によると芸術そのものに関する経歴がなく、芸術を政治利用した発言があるかも知れない程度のイメージしか伝わってきません。
政治組織内部で部下の一人を芸術監督すれば良いのか?
早速津田芸術監督や朝日新聞の主張を逆手に取った施設利用が行われたようです。
トリエンナーレ・不自由展に関するウイキペデイアの記事内にある参考事例に飛んでみると以下の通りです。
「不」自由展に対するアンチテーマとして「自由展」を開催しています。

あいちトリカエナハーレ2019「表現の自由展」
2019年(令和元年)10月27日に愛知県名古屋市の愛知県女性総合センター(ウィルあいち)で開催された芸術祭である。主催は政治団体の日本第一党の愛知県本部。
経緯[編集]
主催側の主張では、「国民からの猛反発を受けて一部が展示中止され、未だに責任の所在や事実の検証、展示再開是非で迷走を続けるあいちトリエンナーレ2019に対抗する日本人のための芸術祭として企画・開催された」[1]芸術祭である。 あいちトリエンナーレが愛知県や名古屋市などからの税金、県や複数企業からの後援を受けたうえで開催されていたのに対し、こちらは全て個人個人からの資金により開催され、県や企業からの後援を一切受けていない。また、一時停止後に再開されたあいちトリエンナーレ2019では撮影などが禁止されていたが、こちらでは参加者の顔を映さない限りは撮影や中継はほぼ可能としていた。
内容[編集]
桜井誠によるライダイハンについての講演と、同氏制作の芸術作品「ベトナムの子供」の展示、「不自由」と大きく書かれたバッグ、ベトナム戦争時の韓国軍兵士の蛮行を表現する紙粘土製「ライダイハン像」[3]、「犯罪はいつも朝鮮人」と書かれたカルタなどが展示された[4]。
芸術監督は長尾旭日本第一党副党首、会場責任者は谷口博史日本第一党愛知県本部長[1]
愛知県の大村知事は、「内容からしてヘイトに当たると言わざるを得ない。(内容を確認した時点で)中止を指示すべきだった」と述べた[5]。主催者側代表の桜井は「私はチマチョゴリを着てライダイハンの説明をしただけで、ヘイトなんて全くやっていない」「かるたは売っている物。それがヘイトというのは検閲じゃないですか」と主張した[9]。

継続契約保障と社会変化4(離婚法制の変化・破綻主義へ)

継続的契約関係ではDecember 9, 2017の「継続契約保障と社会変化3(借地借家法立法3)」で書いた続きになります。継続関係解消で似たような事例では、偕老同穴の誓い・共白髪の末まで・・と契ったはずの夫婦関係も何かの事情変化でわかれる(離婚)しかない事態が起きます。
この場合も戦前の旧法では、法律上は相手に契約不履行・・不貞行為等の違反・落ち度がないと離婚を求める権利がありませんでしたが、戦後は破綻主義といって、破綻している以上無理にこれを維持させるのは意味がないし逆に害悪があるということで離婚できるようになりました。

民法旧規定
第二款 裁判上ノ離婚
第八百十三条 夫婦ノ一方ハ左ノ場合ニ限リ離婚ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
一 配偶者カ重婚ヲ為シタルトキ
二 妻カ姦通ヲ為シタルトキ
三 夫カ姦通罪ニ因リテ刑ニ処セラレタルトキ
四 配偶者カ偽造、賄賂、猥褻、窃盗、強盗、詐欺取財、受寄財物費消、贓物ニ関スル罪若クハ刑法第百七十五条第二百六十条ニ掲ケタル罪ニ因リテ軽罪以上ノ刑ニ処セラレ又ハ其他ノ罪ニ因リテ重禁錮三年以上ノ刑ニ処セラレタルトキ
五 配偶者ヨリ同居ニ堪ヘサル虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ
六 配偶者ヨリ悪意ヲ以テ遺棄セラレタルトキ
七 配偶者ノ直系尊属ヨリ虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ
八 配偶者カ自己ノ直系尊属ニ対シテ虐待ヲ為シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルトキ
九 配偶者ノ生死カ三年以上分明ナラサルトキ
十 壻養子縁組ノ場合ニ於テ離縁アリタルトキ又ハ養子カ家女ト婚姻ヲ為シタル場合ニ於テ離縁若クハ縁組ノ取消アリタルトキ
第八百十四条 前条第一号乃至第四号ノ場合ニ於テ夫婦ノ一方カ他ノ一方ノ行為ニ同意シタルトキハ離婚ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
2 前条第一号乃至第七号ノ場合ニ於テ夫婦ノ一方カ他ノ一方又ハ其直系尊属ノ行為ヲ宥恕シタルトキ亦同シ

上記の通り相手方になんらかの原因がないと離婚の訴えが認めれない仕組みでした。
民法現行規定

(裁判上の離婚)
第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
《改正》平16法147
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

上記「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」がこれ(破綻主義採用)にあたるという解釈が定着しています。
第二項の「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。」場合とは、離婚に至った事情を総合し、離婚請求される方の生活保障等のバランスを考慮することになっています。
破綻主義と言っても当初は有責配偶者(例えば浮気している方)から、自分の浮気や暴力が原因で「夫婦関係が破綻した」という理由の離婚請求を認めない・・いくら高額慰謝料・終身の生活保障をすると言っても)妻が「懲らしめや復讐のために?」拒否すると離婚が認められない解釈でした。
この間の研究については以下の論文がネットに出ています。
ただし、論文発表時期明示がないのですが、かなり古い時期の分しか引用されていないので、現在の参考にならないかも知れませんが、問題点が十分に掘り下げられていますので深く知りたい方は、以下を参照してください。
https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20181112095822.pdf?id=ART0001408704

いわゆる制限づき破綻主義の判例法理について(その1)梅木茂
1聞題の所在
2 有 責配偶者の離 婚請求拒否法理 の背景
3.判例の動向 な らびに考察
「法 は かくの如き不徳義勝 手気儘 を許すもので は ない.道徳 を守 り,不 徳義 を許 さない ことが法の最重要 な職分である.総て法はこ の趣旨にお いて解 釈されな け れ ば な らない、・・・前記 民法の規定は相手方に有責行為のあることを要件とするもの でないことは認 め る け れ ど も,さりと て前記の様な不徳義 得手勝手の請求を許すものではない.(最高裁 昭和27.2.19判決最高民集6.2.110)

借地借家法成立前には、相場の数倍の立ち退き料支払いを申し出ても借地人が拒否すればどうしょうもなかったし・・労働契約解約のために契約上の退職金の数倍の上乗せ支払いを申し出ても労働者が応じなければそれまでだったのと「軌を一」にしていました。
その後(昭和62年)破綻後一定期間経過と子の養育や相手方の生活保障等のセットで有責配偶者からの請求でも離婚が認められる最高裁判例(いわゆる破綻主義)が出て、これが定着しています。
離婚を認めるかどうかは離婚後の相手方や子供の生活がどうなるかの問題であるという実態を直視してその面の判断が重視されるようになってきたのです。
こういう判例が出る前から庶民の世界・・現場労働系低所得階層・特に職を転々とする傾向のある男相手の場合には、相手が浮気でいなくなったのであろうと理由が何であろうと、慰謝料を1円も払わないからと離婚しないと頑張っていてもどうなるものでもありません。
こういう場合には早く離婚して母子手当て・母子優先のいろんな制度(公営住宅の優先入居その他)利用をして生活の安定を図り、場合によっては次の男と再婚した方が有利なので、どんどん別れていくのが私が弁護士を始めた昭和40年代でも普通でした。
仮に相手の居所がわかってもあちこちフラフラ職の定まらない(こういう場合生活費も入れない男が普通)男相手に「慰謝料を払わない」から「払え」と裁判しているよりは早く別れて社会保障手続きする方が簡明ですし、次の相手と再婚する方が手っ取り早いからです。
たまたま夫が行方不明で離婚届けを出せない場合に、(再婚前に次の子供ができると大変なことになるので)はやく離婚するために弁護士費用を払ってでも法的手続きするのが普通でした。
長々とした裁判になる事件の多くは、相手が高額収入・・安定職業に就いている場合で話の通じない・ほどほどのところで手を打つ能力のない・・同士の争いが普通でした。
最近家事事件が多くなっているのは、男も子育て参加の掛け声によって男性も子供に対する愛着が 強くなってきた結果、親権者や子供との面会にこだわる人が増えたことによります。

継続保障4(三菱UFJBKの10年計画?1)

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1710/25/news018.html

2017年10月25日 06時00分 公開
銀行業界に激震が走った。三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJグループ)の平野信行社長が9月、「事務作業の自動化やデジタル化によって9500人相当の労働力を削減する」と発言したからだ。
9500人というとグループの中核企業である三菱東京UFJ銀行の従業員の3割に相当する人数である。
平野氏は、あくまで「9500人相当の労働力を削減する」と言っただけで、9500人をリストラするといったわけではない。余った労働力はよりクリエイティブな業務にシフトするとのことだが、皆がクリエイティブな業務に従事できるとは限らない。実質的な人員削減策と受け止めた銀行員は少なくないだろう。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22847550Y7A021C1EA30003

銀行大リストラ時代 3.2万人分業務削減へ
2017/10/28 19:17
日本経済新聞 電子版
みずほフィナンシャルグループ(FG)など3メガバンクが大規模な構造改革に乗り出す。デジタル技術による効率化などにより、単純合算で3.2万人分に上る業務量を減らす。日銀によるマイナス金利政策の長期化や人口減などで国内業務は構造不況の色合いが濃くなって来たため。数千人単位で新卒を大量採用し、全国各地の店舗に配置する従来のモデルも転換を迫られる。

http://blogos.com/article/229520/

記事
沢利之
2017年06月18日 16:43
三菱UFJ1万人人員削減計画、早期退職で加速が好ましい
3日ほど前ブルンバーグが「三菱UFJグループが今後10年程度で過去最大となる1万人規模の人員削減を検討していることが分かった」と報じていた。
・・例えば今後銀行が生き残ることができる分野の一つに「資産運用部門」を上げることができるが、資産運用部門で求められる人材・スキルは預金吸収・貸出型と全く違う。これを同じ人事システムで処遇しようとすると資産運用部門の優秀な人材は退職し、外資系の資産運用会社に移籍する可能性が高い。
つまり銀行は総人員を減らすだけでなく、専門分野で活躍する人材を長期的に育成・確保する必要があるのだ。そのためには人事制度の改革と大胆な人減らしが必要なのである。

私は三菱の発表まで水面下の動きを知りませんでしたが、10年間で何万人不要になるなどという悠長な発表のずっと前から果敢なリストラ・・足し算ではなく人員入れ替えが必要という意見が6月時点で出ていたらしいのです。
既存権利に手をつけずにそのまま温存して定年になってやめて行くのを待つ・新分野兆戦に適した能力のある人員を新規採用・・足し算して行くようなやり方では、入れ替えに長期を要しすぎて技術革新の早い現在では、企業が潰れてしまうでしょう。
以前から書いていますが千葉の例でいうと、旧市街の改造には利害が錯綜して難しいのであんちょこに埋立地造成(幕張新都心立地など)や郊外に住宅団地を作る足し算式政治でごまかしてきました。
人口がいくらでも増えていく成長期には足し算政治で良かったのですが、人口が現状維持になってくるとスクラップアンドビルド・何か新しいことをやる以上は何かを廃止しないと財政的に持たなくなっています。
数年前から、千葉市では(政治によらない)大規模な都市改造が始まっています。
ちば駅から遠い順にパルコ、三越百貨店が昨年中に閉店し代わって新駅ビルが完成してちば駅周辺集中・コンパクトシティ化に急速に進み始めました。
最早従来の決まり文句であった旧市街の活性化(見捨てるのか!)などの2正面作戦を言う暇がない状態です。
選挙制度改革も同じで、産業構造の変化に合わせて都市部の人口が増えて、投票価値格差が広がると過疎化した地方の議員数を減らさずに増えた都会の選挙区を増やして相対的に格差縮小を図る足し算方式でしたが、これも限界がきてついに島根県などの合区に手をつけざるを得なくなりました。
三菱の発表を見ると銀行業界はいわゆる護送船団方式と揶揄されていましたが、未だに手厚い保護でぬるま湯に浸かっているのではないかの疑念を持つのは私だけでしょうか?
東京などの大都会に限らず、地方都市に例外なくシャッター通りが生まれてしまった原因は、都市再開発用に旧市街の土地や建物の明け渡し需要が必要になったのに既得権の壁が強すぎて旧市街地に手をつけられない・時代適合の新陳代謝ができない状態・戦後の貧しい住居がひしめいたままだったので、郊外にスーパーや若者の住む住宅団地などが立地してしまった結果です。
若者だって市中心地で新婚生活したいし、スーパー等の業者だってできれば人のあ集まる中心地で開業したかったでしょうが、既得権保護の抵抗が強すぎて(大規模店舗法など)新興勢力を寄せ付けなかったので結果的に中心市街地が地盤沈下してしまったのです。
これを国単位でやっていると日本全体が地盤沈下し周辺の国々・・韓国等が潤うことになります・・・この例としては、成田空港開設反対運動の結果、空港の開業も拡張も思うように出来ないうちに韓国仁川空港等に国際ハブ空港の地位を奪われてしまった例が挙げられます。
労働分野でも生産活動や事業分野が根本的に変わっていく変化の時代が始まっています。
これに対応して企業も・・従来事業の延長・・熟練によってその延長的工夫だけで、新機軸を生み出すだけではない(車でいえば電気自動車、・・車製造の熟練の技では対応不能・・金融でいえばフィンテックなど)全く別の分野で育った発想や技術が必要とされる環境に放りこまれる時代になりました。
今日たまたま、歴博(国立歴史民族博物館)発行の2017年novenber205号26pの研究者紹介を見ていると、コンピューターによる古文書解読(くずし字等解読アプリ」を開発した)すごさを書いている文章が目にはいりました。
私のような素人にとっては美術館・博物館等で壮麗な金粉を散らした立派な料紙に(例えば宗達の絵に光悦の)流麗なかな文字の「賛』や和歌があってもよほど知っている有名な和歌などでない限り読みこなせないのでは・外国人が意味不明のまま見ているのほとんど変わらない・・とても悲しいことです。
美的鑑賞ではそれでいいのでしょうが、文字の意味も知って鑑賞できた方がなお感激が深いでしょう。
くずし字を自動的に翻訳できるようになれば、大した労力・コストがかからずに展示の都度楷書に印刷したものを横において展示してくれるようになれば、私レベルの人間にとってはとても助かります。
協調学習利用のためにクラウドソーシングのシステム設計によってオープン化した結果、現在は災害史料に対象を拡大し1日1万ページのペースで翻刻が進んでいることが報告されています。
この人は1984年生まれで2017年4月に歴博に採用されたばかりとのことです。
話が横にそれましたが、その道何十年の経験を積んだ人しか「くずし字」を読みこなせない・この分野に新しい技術をひっ下げた分野外から新技術者導入の快挙の例です。

継続契約保障と社会変化3(借地借家法立法3)

12月6日に出たばかりのNHK受信料に関する最高裁判例で時間軸をhttp://www.toranosuke.xyz/entry/2016-1105_nhk-saikosaiによって見ると以下の通りです。

事件の概要 *6
2006年3月、テレビを設置、「放送内容が偏っていて容認できない」と契約拒否。
2011年9月、NHKは男性宅に受信契約申込書を送付したが、応じず。
契約の申し立てを行った時点で契約は成立すると、NHKは主張。
1審:東京地方裁判所判決(2013年7月判決)
2審:東京高等裁判所 (2013年12月18判決, 下田裁判長)

となっていて、超長期の時間がかかっています。
弁護士が判例を説明して、企業からどのくらいの期間で決まりますか?と聞かれてもそう簡単には答えられないの実情です。
これでは企業活動(大手マンション業者の場合には、見込みだけであちこちにちょっかいを出しておいて買えるようになった順に仕入れていけばいいのですが、事業用地取得・・デパートの出店や工場進出などの場合には売ってさえくれれば駅に近ければどこでもいいという訳にはいかないので長期間不確定では事業計画がなり立たない・・不向きな制度設計になっています。
判例さえあれば良いかというと実務的には大違いなのが分かるでしょう。
この法制度がない時代にも事実上適正な立ち退き料支払いの示談で出てもらって都市再開発などができていたのですが、建築後4〜50年以上のあばら家に住んでいる借地人や借家人に正当な立ち退き料の提案をしてもアクまで「金の問題でない」と言い張られると法外な立退き料を払うしかなく、法的に強制する方法がありませんでしたが、判例は徐々に自己使用目的でなくとも金銭補完を認める方向に動いていたのです。
借地制度は、戦後牢固とした勢力を張る「何でも反対派?」(社会変革反対)政党の基礎的制度ですから、解約の自由度をあげる改正には頑強な反対が続いていました。
これでは時代即応の都市設計・再開発が進まない不都合があったので、借地借家法が新規立法の機運が盛り上がったのです。
昨日借地借家法の付則を紹介しましたが、「付則」とはいえ、これが最重要部分で(超保守系)革新政党との妥協によって、既存契約に適用なしとする妥協がされたので、過去の契約に関しては、従来通りとなってしまいました。
今どき新規借地契約をする人などめったになく、存在する借地権等はいつ始まったか分からないほど親や祖父の世代からの古いものが中心ですから、新法では古くからの借地の再開発案件には利用できないままですから、新法制定による都市革新促進効果は(定期借地権付き大型マンション等でたまに利用されることがある程度で)限定的になっています。
時代遅れのブティックやレストラン等の場合、この先何十年も建て替え予定がないのに「今度家を建て替えたら綺麗にするから」というだけでリフォームを一切しないのに似ています。
このように「弱者救済」の掛け声ばかりでなんでも反対していると木造密集アパートばかり残って行く・・近代化阻害ばかりでは災害対応も無理ですし、国際都市感競争に遅れをとるのが必至です。
車や電気製品のように短期に買い換えて行く商品の場合には、新製品からの規制・・排ガス規制というのは意味がありますが、超長期の借地契約でしかも無制限的に更新が保証されている借地関係では、(しかも新規借地契約など滅多になく旧契約が問題なのに、)今後の契約からの適用ですと言っても社会的にほとんど意味がないことなります。
都市再開発や新規事業用地取得の障害になって困っているのは、新規借地ではなく明治大正昭和前半に、大量に生み出された山手線の内外に多い古くからの借地です。
古くからの借地が事実上無期限に更新されていく前提ですと新法制定の効果がほとんどなくなります。
現代型借地契約として時々見かけるのは、大型マンションの場合、多数地権者からの買収が必須ですが、開発用地内の一部地主が先祖伝来の土地を売りたくない(一時に大金が入ると税負担が大きいなどいろんな事情で)と頑張った場合、便法としての「定借」が利用されるようになっている程度でしょうか。
あらたに生まれた定期借地権の利用形態としては、ビル用地の一部に所有権を残しておいても50年程度の長期ですから、(自分が生きている間には)配当金をもらうだけの債権に似ていて「保有」している意味が実際に無い(50年先に何か言えるというだけ)のに比して、マンション等ビル保有者の方は50年先にどうなるか不明で不安定になるマイナスだけで新規借地を奨励するべき社会的意義がほとんどありません。
マンション法の累次の改正で特別多数で所有権の一態様で有る共有者に対してさえ、強制的改築(建物取り壊し決議)ができるようにになっているのに、地主というだけで(全体敷地の1%しか持っていない地主が合理的理由なく拒否権を発動できる)老朽化したマンションの死命を制することができるのは、おかしなことだという時代が来るべきでしょう。
長期的には借地という半端な制度は臨時目的の1時使用目的以外にはなくなって行くべきではないでしょうか?
自分で利用する予定のない土地を持つこと自体がおかしいのであって、必要な人がいて相応の価格で買いたいといえば手放すのが筋です。
数十年あるいは50年以上も先まで土地利用計画すらないのに、売るのを拒否して所有権維持にこだわる人をなぜ保護するのか分かりません。
こういう不合理なヒト・しかも社会にとって迷惑なひとを保護するために、(既存借地の流動化を図るためならばわかりますが)いつでも返してもらえるような法律(新借地法)を作るのは方向性として間違っています。
有効利用もしていないのに「あくまで売りたくない」と言い張る所有権者の乱用と同じで、いったん借りたら既得権になって周辺の発展を無視して巨額立ち退き料を積まれてもアクまで「この古い家が好きです」と言い張って占拠し続けるのを社会が保証してやるべき・・どういう借地人でも「何が何でも保護すべき」という論者がいるとしたらこれも異常で、どういう社会のあり方を想定しているのか不明です。
バブルの頃に小さなラーメン屋か薬局だったかで何億という立ち退き料支払いが何件か話題になっていましたが、そのたぐいです。
※ ただしH6年の最高裁判例によって相当の対価が提供されていれば正当事由が補完されるようになってることは昨日紹介した通りです。
都市再開発での借地権問題同様に既得権には手をつけない・先送りしか出来ない問題は、厳しい解雇規制の結果、国際競争にさらされている大手企業の雇用現場で起きています。
企業でよくいう新事業向けに再構築し直すときに旧事業向けの余剰人員をリストラしないで、定年退職対応の新人不補充・(解雇規制があるため)「自然減を待つ」というのも同工異曲です。
1〜2ヶ月ほど前に三菱UFJBKの(フィンテック化進展等による)大規模人員不要化発言が話題を集めましたが、不要になるというだけで希望退職を募るのかすらはっきりできない・・不明の批判を受けているのは、解雇制限法理による点は、借地法関連の保護法理が支障になっているのと根底が同じです。

継続契約保障と社会変化2(借地借家法立法2)

昨日紹介した法改正の議論の結果、平成3年に成立したのが現行借地借家法で、この新法により定期借地や定期借家制度が創設され、さらに定期契約でない場合でも更新拒絶ができるように「正当事由」の条文内容を類型的具体化して使い安く変更されました。

借地借家法(平成3・10・4・法律 90号)
第1章 総 則(第1条-第2条)
第2章 借 地
第1節 借地権の存続期間等(第3条-第9条)
第2節 借地権の効力(第10条-第16条)
第3節 借地条件の変更等(第17条-第21条)
第4節 定期借地権等(第22条-第25条)
第3章 借 家
第1節 建物賃貸借契約の更新等(第26条-第30条)
第2節 建物賃貸借の効力(第31条-第37条)
第3節 定期建物賃貸借等(第38条-第40条)
第4章 借地条件の変更等の裁判手続(第41条-第60条)

(趣旨)
第1条 この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。
(借地契約の更新拒絶の要件)
第6条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

附 則 抄
第四条 この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、附則第二条の規定による廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。
(借地上の建物の朽廃に関する経過措置)
第五条 この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の朽廃による消滅に関しては、なお従前の例による。
(借地契約の更新に関する経過措置)
第六条 この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。
(建物の再築による借地権の期間の延長に関する経過措置)
第七条 この法律の施行前に設定された借地権について、その借地権の目的である土地の上の建物の滅失後の建物の築造による借地権の期間の延長に関しては、なお、従前の例による。

平成3年の借地借家法との比較のために旧借家法(わかりやすくするために「旧と書きましたが、実は以下に書く通り現行の借地権の大方は、この法律の規制を受けますので、実務家では廃止された借地法と借家法が日常的アイテムになっています)を紹介します。
そこで、借地法(大正十年法律第四十九号)を紹介したいのですが今のところ、ネット情報では現行法中心で改正前の法令情報が極めて少ないので、ネット検索では借家法しか出てきませんが、更新拒絶要件関連の基本は同じですので、借家法の引用だけしておきます。

大正十年四月八日法律第五十号
〔賃貸借の更新拒絶又は解約申入の制限〕
第一条ノ二
建物ノ賃貸人ハ自ラ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ非サレハ賃貸借ノ更新ヲ拒ミ又ハ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得ス

昨日紹介した大阪市立大学法学部生熊長幸氏の論文のとおり、借地借家法制定立案時に定期借地、定期建物賃貸借制度創設の他に一般(従来型)の借地借家契約でも、更新拒絶自由の合理化を図ったのですが、いわゆる現状維持派・反対勢力の主張が強くて法制定作業が進まないので結果的に当時すでに判例で認められている正当事由を法文化する程度で収まりました。
反対派の動きが強くて借地借家法の制定作業が進まないので催促するかのように、新判例の動きが出てきたとも言われます。
結果的にこの判例を条文化する程度までは仕方がないか!という妥協ができて国会通過になったようです。
最高裁のデータからです。
最判の時期は法制定後の平成6年ですが、高裁事件受理は昭和63年(ということは1審受理はその1〜2年前)で最高裁受理は平成2年の事件ですから、借地借家法制定準備・・審議会等での議論と判例の動きが並行していたことがわかります。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52466

平成2(オ)326事件名 建物収去土地明渡等
裁判年月日 平成6年10月25日
法廷名 最高裁判所第三小法廷裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等巻・号・頁  民集 第48巻7号1303頁
原審裁判所名東京高等裁判所原審事件番号 昭和63(ネ)3286
原審裁判年月日 平成元年11月30日
判示事項
借地法四条一項所定の正当事由を補完する立退料等の提供ないし増額の申出の時期
裁判要旨
借地法四条一項所定の正当事由を補完する立退料等金員の提供ないしその増額の申出は事実審の口頭弁論終結時までにされたものについては、原則としてこれを考慮することができる。
参照法条   借地法4条1項,借地法6条2項

判例さえあればいいのか?となるとそこは大違いです。
上記判例があっても、「相応の立退き料を払うので出てもらって跡地にマンションを建てたい、デパート用地に売りたい、工場用地に売りたい」と言う理由では(上記旧法の自己使用その他必要条件にあたらないので)長期裁判を經ないと(上記の通り1審判決から最判まで膨大な時間がかかっています)どうにもならない・・判決時期等が不確定過ぎて計画的進行を重んじる企業用地としては手を出しにくくなります。

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