国民への説明責任3(逆は真ならずとは?)

人道主義的文化人の論文がネットに出ていましたので、これが代表的かどうかわかりませんがこのような意見をあちこちで読んだ記憶があるので多分代表的意見の一つでしょう。
ネットから消えてしまわないうちに紹介しておきます。
ただし引用の順序は前後します。
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110005050293.pdf?id=ART0008078537
Kobe College

NII-Electronic Library Service
日本軍性奴隷制(「従軍慰安婦」)問題と最近の動向
上野輝将
・・・・・『広辞苑』でみましたところ、「人間としての権利・自由を認められず、他人の支配の下に諸々の労務に服し、かつ売買・譲渡の目的とされる人」となっています、これで何が言いたいのかといいますと、暴力的な拉致があったか無かったか、それは奴隷の要件ではないということです。

ここで、論者はどういう根拠か「かつ売買・譲渡の目的とされる人」という必須要件を無視した議論を展開します。
前段の「人間としての権利・自由を認められず、他人の支配の下に諸々の労務に服し」という要件は、時代や社会状況によって、労働基準や人権概念自体が変わっていく要件ですから、これだけを基準にすると恣意的になりすぎます。
(武士が主君の命令に従うのは、今風にいえば人間としての権利がなかった・・し、戦前の労働は、今の労働基準で見れば奴隷労働になるか?)
「お金欲しさに労働条件のきつい企業に就職したりヤクザの下働きをする人もいるでしょうが、(あとで振り返ってあの時は「奴隷みたい」だった比喩的な言い方があるとしても)彼ら全てを「奴隷」とは言いません。
まして売春婦の多くはお金欲しさに自ら職業を選ぶことが多いから西欧の多くでは今でも売春を合法化しているし、日本でも管理売春だけが刑事処罰になっているのです。
奴隷か否かを分ける最重要要件は、牛馬のごとく「売買の対象」売買に関与できない「対象・商品」になっている状態こそがその本質です。
そこで広辞苑は「「かつ売買・譲渡の目的とされる人」という要件を「かつ」という単語を付加しているのです。
上野氏は、上記本質要件該当性チェックをすっ飛ばすどころかなんらの説明もなくいきなり

「暴力的な拉致があったか無かったか、それは奴隷の要件ではないということです。」

と言い切っています。
暴力的拉致と売買は時間差がある・.原因と結果の関係なので必ずしも一致しません・・拉致しなくとも人身売買の対象になってしまう場合もあるので(日本の高名な蔵相高橋是清が若い頃に何かの紹介でアメリカに渡ったら、奴隷に売られていたという有名な事例があります。
拉致が売買対象になる場合の原因の全てではないという意味では正しいのですが、広辞苑の要件は原因は何であれ現実に売買対象になっているかどうか・その人間に自由があるかどうかということです。
ですから、拉致→軍の強制不要というのは一応あっていますが、要は従軍慰安婦が(売り主が親かヤクザか別として)売春行為時に商品として売買対象であったかどうか・.女衒に騙されたにしても、その後日本軍相手の売春行為時にも監視監禁されて逃げられない状態が続いていたか?こそが重要でしょう。
これらを論証してから、慰安婦が性奴隷であったかどうかがきまることです。
拉致の必要がないことから軍が拉致していなくとも性奴隷だというのですが、そもそもど奴隷状態にある場合にその原因を問わないのはわかりますが、慰安婦が奴隷状態にあったか否かの前提事実を書いていないので分かりにくくなっています。
ただ広辞苑は一般の奴隷の定義ですから、慰安婦特有の政治問題・・諸外国での戦場で同じように行われていた売春婦(彼女らも多くは元はと言えば一定率で女衒に騙された女性もいるでしょうが)と違って、日本政府国民だけが何十年(パク前大統領によれば千年)たっても謝罪を続けねばならないほどの人道問題かは別問題です。
日本固有の問題にするには、諸外国とこの点が違うという・・「日本軍が直接売買拉致監禁に関係しているような事情が必要でしょう」という議論とゴッチャになっているように見えます。
泥棒をした者が悪いのはあたり前ですが、それを買ったものが悪いか?仮に悪い場合があるとしても泥棒以上に非難されるべきかは別問題です。
客の方は元どこかで何かの事情で売られた女性か、女衒に騙されたか、お金が欲しくて任意に売春している人かの区別はつきません。
性奴隷かどうかを見るには、拉致されて売春を強制されている人か、親に売られたか?女衒に騙されて途中で暴力団に売り飛ばれた人か等々によって色々なランクの人がいるのでそれ分類も必要です。
売春婦の中には逃げるに逃げられずに売春している女性が全くいないとは言い切れないでしょうが、売春婦の全部ではないことも公知の事実です。
西欧で合法化されている国で客は相手の氏素性を知らないのが普通ですから、「性奴隷の売春婦を相手にすれば処罰する」という法律は世界中にないはずです。
軍人が顧客だったということははっきりしていますが、それは世界中の戦場では古来から売春婦が付きものである事実からして、軍人が売春婦を相手にすれば日本だけ批判される理由にするのは無理があります。
日本だけ非難するには、特別事情の主張が必要でしょう。
ここで広辞苑の「奴隷」の定義に戻ります。
軍の強制がなくとも人身売買対象の場合がありますから、軍の強制が必須要件でないのは確かですが、広辞苑の定義では、「売買対象」であることが必須です。
軍の強制がないとしても慰安婦が任意に(金儲けのために)売春していたこととは必ずしも結びつかない(暴力団に拉致された場合もある)のと同様に、軍の強制不要ということから自発的売春婦まで性奴隷とはなりません。
要は売買対象(当事者の意思が尊重されない)の商品であったか否かです。
現在社会では、アメリカで知られるような公然たる奴隷制度がない・・人身売買は許されず、刑事処罰される現実があるので、「売買で物品のように取り引きされた」というためには、逃亡できない監視・・結果的に非合法な拉致監禁の仕組み=拉致被害の場合以外にはほぼ存在しえない現実があります。
逆からいえば、一定の自己資金を持ち自由に宿舎から出入りできる環境・.時には旅行できるような場合、奴隷とは言わないでしょう。
「逆は必ずしも真ならず」とはいうものの、「必ずしも」という意味は、「例外がありうる」→「逆が真であることが多い」という原則を表しています。
犯罪捜査も多くの状況証拠から犯人らしい人物を絞り込み(犯行現場付近にいた多くの人物から別の同種犯行現場にもいた人物を絞り込むなどしていますし、科学や化学・薬学の実験もこのやり方です。
一定の状況証拠があれば、それを覆すに足りる逆の状況証拠を出してこそ主張の合理性が担保されるのです。
自由に辞めることができるのに強制されていたということがあるの普通にはあり得ない状況です。
拉致された場合には自由意志によらない→奴隷状態ということですが、ごく例外的に拉致された場合以外でも奴隷になることもあるでしょうが、「拉致による以外の奴隷もありうる」ということから直ちに慰安婦が性奴隷と決まる仕組みが不明です。
慰安婦が拉致されたわけでもないのに「奴隷」状態というのは極めて少ない例外事例ですから、奴隷であった=自由意志がなかったことを事実をあげて積極的に証明する必要があるでしょう。
上野氏は、単に広辞苑では拉致を直接の要件にしていないというだけで、そこからなぜ慰安婦が性奴隷となるのかの説明がありません。

原発停止と(代替エネルギーの現状)3

科学技術の遅れとも言えないし、遅れ程度ならば追いつけないものでもないのに日本のソーラシステムが、西欧に比べて何故割高(約2倍)なのか謎ですが、ちょっと前に風力発電について書きましたが、地形上の問題かもしれません。
http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/saienecost.html
日欧の太陽光発電(非住宅)システム費用比較

太陽光発電(非住宅)システム費用について、日本(2016年)は28.9万円/kWであり、欧州(2014年)の15.5万円/kWと比べて、2倍近くの差があります。

年々安くなる世界の再エネ

世界的には、再エネルギーの発電コストの低減化は年々進んでいます。場合によっては、他の発電方法で発電された電力と比較しても、コスト面で競争力のある電源となり始めています。

太陽光発電と風力発電のコストの推移

(円/kWh)

太陽光発電のコスト

(円/kWh)世界的に、太陽光発電のコストの低減化は年々進んでいます。

風力発電のコスト

世界的に、風力発電のコストも低減化は年々進んでいます。

世界でもっとも安値の再エネ電力はいくらでしょうか。
それは、2016年のアラブ首長国連邦(UAE)における太陽光発電の入札案件で、入札価格は2.42セント/kWh、日本円で1kWhあたり3円ほどです。
なぜここまでコストを低減できたのでしょうか。
それにはさまざまな要因があると考えられますが、大きくは以下の2つの要因が低コストにつながったのではないかと推定されます。日照に恵まれた土地柄であるものの、それを差し引いても、日本と比べてかなりの安値といえそうです。
① 118万kWという大規模事業であったため資材の大量調達ができたこと、また単価が低い労働力を利用できたことから、資本費が日本の3分の1程度に
② 日照時間が長く、設備利用率が日本の1.5倍以上に
欧州における再エネの中心は風力発電であることも特筆すべきポイントです。ドイツでは発電電力量のうち9.2%、スペインでは19.2%を占めています。最近は洋上風力発電が盛んで、コストについても、2015年には13.72円/kWhだった入札価格が2017年には7.91円/kWhになるなど、急激に下落しています。
デンマークやオランダでは、洋上風力発電の設置に必要な環境アセスメントや地元との調整を政府が主導するなど、事業者の開発リスクを低減させる取り組みを進めており、これがコスト低減に寄与しているようです。

上記のような資源エネルギー庁の記事を見ると、技術革新でどうなるという要素が低い・逆に技術革新が進み人件費がアップし土地評価が上がるほどコストパフォーマンスが悪くなりそうです。

 

 

脱原発と貿易赤字3

中韓による追い上げ解決策として日本企業自体が現地生産からも卒業して組み立て型・最終製品から脱却してBtoB戦略への移行が徐々に始まったのですが、その大規模移行期が重なって、日本経済が踊り場に差し掛かっていたなどの総合的影響もあるでしょう。
(もともと韓、台湾〜タイなど東南アジア〜中国への生産基地移転でも、日本から中高度部品輸出が行われていて、その経験があったのを正面から進むべき方向性として認識するようになったにすぎません。)
国際収支という外形を見ると日本は縮小一方になってしまったように見えていたが、内実では震災被害克服・復旧だけでなく同時に、(工場や商店が被災して建て直すのにお金がかかりその間生産販売が止まりますが、その機会に内部仕様を変えるのが普通です)最終製品からの脱却も進めていたのを中韓は気がつかずに日本はダメだと思い込んでトドメをすべく反日運動に精出していたことになります。
外形上の黒字縮小どころか総合収支赤字転落が目前に迫り、この傾向が続くと15年以降どうなるかという不安の年でしたが、安倍政権成立後の異次元金融緩和による円安効果と、産業界の構造改革(BtoBへのシフト)の成果+14年夏ころからの原油相場下落によって国際収支が急回復できました。
貿易赤字が縮小(14年10兆4653億赤字→15年には8862億・10分の1以下に急減)したのは14年央から原油相場下落の恩恵効果の出た15年に入ってからです。
14年の月別データで見ると単月で経常収支の赤字になる時も出てきていましたが、1年間合計で何とか黒字に終わったという薄氷の年でした。
以下歴年別ではなく、月別の統計を財務省の国際収支月別統計(季節調整済み)から、14~16年分の引用します。
貿易赤字が13年秋から増勢を強め毎月8800〜9億超えの赤字が定着し、14年1月と3月にはいずれも1兆5000億円超えの赤字になっていましたが、14年9月頃から赤字縮小を始めます。
BtoBシフトや石油系火力よりコストの安い石炭火力新設等の影響が徐々に出て次第に貿易赤字縮小が進み14年夏ころからの原油相場急落の影響が15年に入ってはっきりと出てきたことがわかります。
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/bpnet.htm

単位億円

注  左から経常収支 貿易/サービス収支 貿易収支の順です・稲垣
経常収支  貿易/サービス収支 貿易収支

 

平成26年 1月 2014 Jan -14,561 -28,131 -24,241 54,742 78,983 -3,889 14,892 -1,322
  2月   Feb 7,409 -7,323 -5,761 59,331 65,093 -1,562 15,947 -1,215
  3月   Mar 2,445 -12,484 -11,934 64,900 76,834 -550 19,135 -4,206
  4月   Apr 3,554 -14,286 -7,992 59,764 67,756 -6,293 19,917 -2,077
  5月   May 6,936 -7,321 -7,052 57,093 64,146 -269 16,344 -2,088
  6月   Jun -1,934 -7,669 -5,542 61,090 66,632 -2,127 6,231 -496
  7月   Jul 5,482 -13,202 -8,661 62,570 71,231 -4,541 20,182 -1,498
  8月   Aug 4,039 -11,193 -8,557 56,526 65,083 -2,636 16,731 -1,498
  9月   Sep 10,086 -9,081 -7,192 64,777 71,969 -1,889 20,659 -1,493
  10月   Oct 8,607 -9,716 -7,643 65,762 73,405 -2,073 20,336 -2,013
  11月   Nov 4,524 -7,346 -6,318 63,248 69,566 -1,028 12,904 -1,034
  12月   Dec 2,628 -7,237 -3,759 70,944 74,703 -3,478 10,870 -1,005
平成27年 1月 2015 Jan 930 -12,643 -8,833 63,257 72,090 -3,810 14,315 -743
  2月   Feb 14,660 -2,465 -1,317 60,049 61,366 -1,148 18,802 -1,677
  3月   Mar 27,519 8,042 6,478 71,324 64,846 1,564 23,197 -3,719
  4月   Apr 13,718 -6,893 -1,495 62,345 63,840 -5,398 22,665 -2,055
  5月   May 18,814 -48 -564 57,375 57,939 516 20,795 -1,933
  6月   Jun 6,587 -954 1,007 64,759 63,752 -1,961 7,865 -324
  7月   Jul 18,483 -3,346 -1,235 65,657 66,892 -2,111 23,158 -1,329
  8月   Aug 16,581 -3,617 -3,558 58,687 62,245 -59 21,538 -1,339
  9月   Sep 14,847 -39 503 63,752 63,250 -542 17,309 -2,424
  10月   Oct 14,019 -2,163 1,810 63,477 61,667 -3,973 17,681 -1,499
  11月   Nov 10,759 -3,154 -3,273 59,439 62,712 119 15,798 -1,885
  12月   Dec 8,277 -889 1,616 62,621 61,005 -2,505 9,908 -743

 

 

民意3(脱原発論と即時廃止論とは大違い)

政党の掲げる政策は「間接的に民意を反映しているべきもの」とみれば、原発即時停止論を支持する民意を知るには原発即時停止論を掲げる政党とその当選者数・比率が重要です。
民主党でさえ30年台の原発ゼロ政策が公約でしたし、民主党から出た希望の党の公約は30年「台」を縮めた「30年」までに廃止の公約でしたから、即時停止論ではありません。
即時停止(に近い)主張を掲げる政党は共産党や社民党、立憲民主でしょうか?
これも近いというだけで与党にある心配がないから(鳩山氏の少なくとも県外へ同様に)無責任な主張をしているだけで、政権をとったその日に全国原発の一斉廃炉作業に入れるなど考えてもいないでしょう。
物事には順序があり、激変緩和のために5〜10年かけて順次廃炉していくなどの順序なしに一斉廃炉になれば全国で膨大な関連企業の倒産失業(原子力関連学生の進路もなくなります)が起きます。
ところが、福井か大津地裁だったかの操業停止仮処分でわかるように裁判の場合、決定のあったその日から即時完全停止です。
企業側は、まだこの決定が取り消される可能性があるので大量解雇に踏み切りませんが、もしも国策で即日全国一斉となれば早くとも政権交代まで数年もあるとすればそんな危うい期待で人員を抱え切れません)全電力会社あるいは原発関連の重電各社とその納入部品各社は即刻企業対応・生産仕入れ廃止、整理解雇・生産設備廃棄に走るしかないので、国を挙げての大騒動になります。
千載一遇のチャンスとばかりに国を滅ぼすつもりならば別ですが、いくら現実無視の立憲でも共産党でもそのような主張をしているとは思えません。
新潟県知事選で「慎重派」が当選し(最近辞任)ましたが、恒久的廃炉ではなく「いちゃもんをつけて」同意しない・・地元見返りを求める沖縄同様条件闘争での慎重派です。
本気で数十年停止のままならば業界上げて撤退してしまうので地元産業/雇用がどうなるかの大問題に発展します・全面撤退しない程度の脅しに使う意味です。
沖縄の例で分かるように目先の駆け引きに使う小狡い対応が、長期的に地元の信用にどう響くか(こういう地域へは、他産業進出が減るでしょう)の高度な判断が利くか、利かないかは地元民度次第です。
4〜5日後に引用する記事によれば、今年1月現在で上記⒊党合計議席は衆議院議員465議席中68議席ですから、即時停止に「近い」主張政党の議席保有率は1割あまりしかありません。
海渡氏は最終章の「提言」において

「これまで裁判所は、・・・国策に追随する判断を重ねて来た。しかし・・「多くの国民の世論が脱原発を求めている今日」・・市民は勇気ある裁判官を必ず支えることを信頼して「良心を貫いてほしい」
「再稼働を認めなかったいくつかの判決・決定は・・司法の良識をしめした」・・この良識に続く、勇気ある裁判所が次々と現れることを心から期待する」

と言うのですが、海渡氏は「国策」を民意に反する何か邪悪なものという前提を置いているように思われます。
いつも書くことですが、特定思想集団は中国やソ連の恐怖政治を理想としているからでしょうか?政府というのは民衆の敵だという信念が固いようです。
ところが民主国家における「国策」とは長期的な議論を経た民意によって決まって行くものであり、議論を戦わせるまでは民主国家で必要ですが、長期的(しょっちゅう変わる交通法規や補助金等の決定と違い、国の基本方針は何年もの議論をおこなって民意の動向を見定めてから行うのが一般的です・実際原子力政策に関しても東北大震災後すでに何回も選挙をおこなっています)かつ公正な議論を競い何回もの選挙を経て民意の方向性が決まった結果の国策に議論に負けた方が、あくまで反対し妨害するのはルール違反です。
彼の言う「国策」に反する決断をするべき「裁判官の良心」と何を意味するのでしょうか?
「勇気」を強調していますが、文字通り民主国家の原理を踏みにじる蛮勇・・権限乱用の自己陶酔の期待でしょうか?
裁判官は「法と良心のみに従うべき」ですが、良心とは形式的な文言に明記していなくとも、偏った一派に肩入れするような権限乱用しない・合理的民意を知る方法のない古代は「神威」民主国家においては良心のありかは「民意がどこにあるかを見る」良心ではないでしょうか?
今の時代民意以外に置くべき良心の基準は考えにくいことです。
「裁判官の良心」についてApril 3, 2016「司法権の限界9(法と良心とは?1)で書いていますので、これはその再論です。
裁判官が個人信条に従って民意による国策に反する判決を書くのは権利の濫用ですが、その「勇気を出せ」というのでしょうか?
ところで「国策」といっても原子力政策でいえば、すでに紹介した通り平成11年大地震以降の基本政策検討期間ではすでに7年経過していますが、民主党政権の30年代までの廃止、希望の党の党30年までの廃止、自民党のさらなる長期政策、原発訴訟団の即時廃止主張まで時間軸で大きな隔たりがあり、これが争点になっているのですす。
この間多くの国政選挙〜都知事戦その他各地方選を経て民意の方向性が徐々に出始めています。
現時点で即時廃止に「近い」を主張する政党は冒頭に紹介した通り、わずかに10数%の支持・議席しか得ていません。
上記の即時廃止は政党のうち54名を占める立憲民主の創立者で党首枝野氏は、上記30年台での廃止目標の基本政策を決めた時・・責任政党の閣議決定には、30年台目標の長期ビジョンに賛成していたのに、下野すると即時廃止論という無責任?な主張に変わるのって政治家に対する信用がどうなるのという気がしませんか?
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-c030.html

2012年9月14日、野田政権の時代です。
野田政権は、14日のエネルギー・環境会議で、「革新的エネルギー・環境戦略」として、「2030年代に原発ゼロを可能とする」との目標を政府方針に初めて盛り込み、原発の新増設をしないことや、運転期間を40年とすることも明記しました。
そして同時期に行なわれていたIAEA年次総会で、山根外務副大臣が、新たな原発建設をゼロにし、2030年代にまですべての原発を廃止する方針を公表する手はずを整えていました。
これを私は興味津々で眺めていました。政府方針で国際公約とする以上、その実現性はきわめて高いし、もし自民党に戻ったとしても、国際公約の歯止めが効くからです。
そして当然のこととして、ここまで踏み切った以上、エネルギー専門家を交えた工程表もあるだろうし、諸外国、特に米国との根回しも完了していると思っていたからです。
ところが、この政府の決定は、わずか2日後の9月19日にひっくり返ってしまいます。
野田政権は、30年代原発ゼロを閣議決定から、「参考」にまで格下げして、「柔軟性をもって不断の検証と見直しを行なう」という意味不明の文言で、事実上破棄してしまったのです。
そして、「受け入れ地域住民との対話」を強調して、もうしばらく後には、野田首相自ら大飯の再稼働を認めます。

世論誘導3(民度と発覚後ペナルテイーの重要性)

データアクセスチャンスに戻しますと、私の場合でいえば、弁護士会や日弁連で自分が関与している委員会活動に関して、委員会配布資料その他データに直接アクセスできていますが、それは委員現役である間だけのことです。
しかも現役委員の場合、正式な議事録や意見書になる前の詳細議論を見聞していることによる臨場感的な体感(非公式意見)も身につきます。
民意を重視するアップデートの政治過程に戻りますと、世論動向を知りどのように世論誘導するかは文字通りナマ情報(ある事件が起きたばあい、これに対する現在の民意)が生命線です。
現在アメリカで大問題になっているロシアゲート事件・.ロシアによる大統領選挙介入・・ヒラリー候補に対するマイナスイメージのフェイクニュースを垂れ流した疑惑・・で言えば、政治は過去の統計による議論では間に合いません。
米国大統領選挙が終わってからロシア関与がわかっても負けた方にとっては後の祭りですから、リアルタイムで情報を握る世界IT企業による情報操作が始まるとその独壇場になりそうです。
ただし、一定規模以上の企業の場合、関与企業が数年後に市場から抹殺されるとすれば簡単に悪事に手を染めません。
日本でも長い間選挙時に限って怪文書が横行したことがありましたが、民度の高い日本では非論理的な激しすぎる誹謗中傷行為は逆効果になることと、代議士や地方議員1回切りではなく次の選挙があるので、選挙後すぐにバレるような無茶な誹謗中傷には走らなくなって久しい感じです。
日本で不正の少ない社会が出来上がっているのは、長期的人間関係を大切にする価値観が基礎ですが、年季を積んだ人望のある人がトップになる議院内閣制(地方議会でも当選回数によって委員長になり議長になっていくなど)も一発勝負の不正を防ぐ制度保証になっているのでしょう。
大統領選に勝ちさえすればその後独裁権力が保証されている(検察その他が政治迎合で動き、権力にある限りかなりの抑えが効く場合)ような社会では、「目先選挙さえ勝てばいい」という一発勝負の誹謗中傷行為への誘惑が高くなるのでしょう。
組織票に頼る議員では極端な意見や相手党の誹謗をして中立的世論の失望を買って党全体支持率を下げても、組織内支持率は変わりません・・むしろ内部では「よくやった」「よくそこまで言った」という評価が上がるでしょうから、こういう意見が内部的評価(党内序列比例上位が)が上がり幅を利かします。
自己陶酔的過激主張(過激派の場合過激なテロであればあるほど)が幅を利かしていよいよ党全体の世論の支持が減っていきますが、国会議員当選者150人の党が120〜100〜80と順次減っても、勇ましいことを言っていた党内エリートの順位は変わりません。
空理空論に酔い痴れていた社会党がこうして消滅して行ったのです。
ロシアゲートでは、バルカン・マケドニアだったかの若者を一本釣りしていた(オレオレ詐欺で末端の受け渡し役としてアルバイトを雇うような)実情を紹介しましたが、そのうち背後で彼らを操っていたグループの追及にまで進むでしょう。
Facebook情報利用による選挙操作疑惑では、Facebookのトップが陳謝し、フェイクニュース拡散を放置せずに今後相応の削除を約束していましたが、大手は情報操作に関与していると思われたらおしまいです。
(15日の日経新聞夕刊3pでもイギリスコンサル(流用して米大統領選挙介入)以外に200のアプリが、フェイスブックからの情報流用疑いで停止したと発表しています)
起業したばかりの新興企業であってもITに当たって世界企業になった以上は、大量の従業員や株主あるいは取引先等のステークホルダーが生じているので、一時の利益(特定政治家と心中する)ようなリスクを取れません。
犯罪の特徴は発覚までの時間が長ければ長いほど成功率が高いし受益も大きいので犯行に及ぶ誘惑が高いのですが、半年後〜1年後であっても犯行発覚した場合の社会抹殺度の高さもその重要です。
数年前の統計などのデータを入手できても、現実政治経済の決断には利用できませんし、事後にバレた場合のリスクの大きさによる自己抑制だけでは、今後もメデイアやIT企業を通じた世論操作を防ぐのは無理がありそうですが、日本の場合には、国民の民度(庶民レベル)の高さが最後の砦となるのでしょうか。
治安維持は刑罰の重さだけではない民度による原理がここにも妥当するでしょう。
60年安保騒動以降の流れを見るとメデイアの煽りに反応する軽薄層が減る一方=メデイア誘導頼りの社会党支持率が下がり続けてついに事実上消滅した事実からわかります。
メデイアに煽られてそのま行動をする人はメデイアが持ち上げるので目立ちますが、いわゆるサイレントマジョリテイーは健全で底堅い社会です。
今回のセクハラ被害発表と国会審議拒否の結末を見るとメデイアが民意無視で作り上げた虚構の?騒動には国民は意味を認めない・・世論誘導が成功しなかったようです。
個人が被害を受けて止むに止まれず行動を起こした・「被害の声」というよりは政局にインパクトを与えるのが主目的だったのではないか?の疑いを抱く人の方が多かったでしょう。
野党も外国勢力の意を受けた大手メデイアの振り付けどおりに動くのではなく、日本の政治家である以上は「政策の足を引っ張りさえすれば良い」という反日的活動ではなく、前向きの政策を主張する健全政治が行われるようになっていく始まりとなれば良いのですが・・日本の将来が楽しみです。
メデイア界が外国(スパイ?)勢力が自由に浸透できる自由市場?になってしまったのは、米占領軍による検閲強化によって、米軍政に都合の良い方向へ報道機関内部人脈を完成させてから、独立後の日本で「思想表現の自由」→報道の自由をとなえて独立後の日本政府が報道機関内部人事に手をだせないようにしてしまったことによります。
日本独立後も日本に罪悪感を耐えず植え付けて、極東軍事裁判その他戦争原因究明を許さない・・反米思想の広がりを防ぐために教育界その他に打った布石の一つというべきでしょう。
カイロ宣言以来、日本による朝鮮半島の過酷な支配からの開放を主張していた経緯から、韓国が奴隷支配・その延長での慰安婦・・その外延である徴用工問題をいつも持ち出すのは米国が「罠を仕掛けて日本を戦争に引きずり込んだ」大義に関係するので応援せざるを得ないからです。
ポツダム宣言の前提となったカイロ宣言に関するウイキペディアの記事からの一部引用です。

カイロ宣言
第二次世界大戦中の1943年に開かれたカイロ会談(Cairo Conference)を経て示された宣言。連合国の対日方針などが定められた。
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前記三大国ハ朝鮮ノ人民ノ奴隷状態ニ留意シ軈テ朝鮮ヲ自由且独立ノモノタラシムルノ決意ヲ有ス

この結果、少しでも朝鮮半島支配の正当化発言・・学校を作るなど民生アップに協力してきた意見があると「妄言」と称してメデイア界一致のパッシングで袋叩きにして発言した大臣を引きずり降ろすようなことが行われてきました。
日本のためのメデイアか(背後で嗾す米国の威力を背景にする)朝鮮や中国の代弁者か分からないような実態が続いてきました。

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