社会党の教条主義化3(宣伝重視)

共産主義系の文化人あるいは運動家が日常活動→地元庶民の困りごと解決に精出すならば・・一緒に知恵をしぼる内に新たな知見や解決策が見つかることが多いので、社会の変化に対応できたでしょうが、社会党の場合庶民に知恵を教えてもらうのでなく、庶民は遅れている・教育対象なので庶民の知恵を学ぶチャンスにできない・・一般党員は庶民の知恵を党上層部に伝えるパイプの役割を果たさなかったのです。
ソ連の影響力の大きかった共産党が、中ソから距離を置く独自路線に舵を切った(舵を切らざるを得なくなった?)結果、国際支援をあてにできなくなり国内地盤維持培養にエネルギーを注がざるを得なくなった→日常活動重視→下部党員が生活者の視点でものを考える素養が磨かれたのに対して、社会党は国際社会やメデイア界で共産党を蹴落として?国際関係やメデイアや学者と連携を独占して宣伝重視→日常活動に重きを置かない政党になった面が否めません。
共産党はもともとソ連式上意下達システムでしたが、公明党、自民党のように困りごと解決に汗をかく日常活動をするようになった結果、上意下達体質を事実上変えていくことになりました。
社会党は支持率低迷で苦しくなってからも日常活動に向かわず、国際提携に頼るようになっていったように見える点で方向性に大きな違いが生じました。
現在でも国内で0、何%の支持率しかない社民党の福島瑞穂氏が国際組織の副議長になっている不思議な状態を見ればそのDNAがわかるでしょう。
福島瑞穂氏に関するウイキペデイアです。

福島 瑞穂(ふくしま みずほ、1955年12月24日 – )は、日本の弁護士、政治家。社会民主党所属の参議院議員(4期)、社会民主党党首(第3・6代)、同参議院議員会長、社会主義インターナショナル副議長。神奈川県在住。

地元日常問題に関心が低い→庶民は感謝しない→結果的に党員が増えない=党費納付者が少ない・・党収入が議員歳費中心政党の場合、巨大な党組織を維持できないので外部からの秘密資金流入に頼るリスクが高まります。
本日現在の日本社会党に関するウキペデイアの記事からです。

革新自治体と社会主義協会派の台頭
・・・・親ソ傾向の社会主義協会派の勢力拡大により、本来の左派である佐々木は中国との接近を強めるとともに、構造改革論争以来の仇敵の江田と結び、以後、協会派と反協会派の党内対立が激化した。1975年にソ連敵視を意味する覇権主義反対を明記した日中共同声明を成田委員長が結んだことで、両者の対立はさらに激化した。
ソ連崩壊後のクレムリン秘密文書公開により、社会党がソ連から援助を得ていたことが明らかにされたが、当時の社会党執行部はソ連の資金援助を否定した。

客観データが開示されているのに、具体的反論しないでただ否定するというだけでは忘れられるのを待っている・反論して論争を長引かせたくないという意図が推測されます。
上記記事では反社会主義協会派(党内左派)は中国援助に頼っている状況らしいですが、資金関係については中国政権がまだ崩壊していないので、証拠がないのは当然でしょう。
ただし文革を賞賛し毛沢東語録賛美(造反有理のスローガン)など親中姿勢は明白でした。
中国政府内では賄賂天国・・全てゲンナマ重視の中国政府が、資金援助なしに外国政党を手なづけていたとは想定できないと思っている人が多いでしょう。
上記の通りソ連や中国(これの証拠は出てません)の資金援助で党を運営していたから、日本のためになる政治には「なんでも反対」を貫いていたのではないかの憶測が広がります。
社会党衰退の原因についてネット上では、以下の論考が芦田内閣以来の検討を加えていて有益です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaes1986/17/0/17_0_84/_pdf/-char/ja

日本社会党 の盛 衰 をめ ぐる若干 の考察 -選挙戦術 と政権 ・政策戦 略谷 聖美
要 旨:社 会 党 は,60年 代 に入 る と停滞 し,そ の後 は長 期低 落 の道 をた どった。 この停滞 と衰 退 を め ぐって は さ まざ まな原 因が 指摘 されて きた。 なか で も,党 の非現 実 的 イデオ ロ ギ ーが党 の適 応 力 を奪 った とい う見 方 は もっ とも一 般 的 な もの で あっ た。 本 稿 は,衰 退 の原 因 を め ぐる諸 々の説 明 を逐 一検 討 し,そ れ らの 多 くが必 ず しも説 得 力 を持 た な い こ とを明 らか にす る。 つ いで,選 挙 にお ける この党 の集票 戦術 を分析 し,労 組 依存 に安住 して個人後援会な どの集票組織の構築に努力 しなかった ことが衰退の一因であ ることを示す。 さらに,片 山 ・芦田内閣失敗 の負の影響 はあった ものの,こ の党の連合戦 略 と政策展開は60年代中葉 までは巷間いわれているよりもずっと現実的で,党 が活力 を失 ったのは,そ うした現実派が党内抗争で社会主義協会などの教条的左派に敗れたあ とにな ってか らの ことであることを指摘 した。

詳細紹介しませんが、この論考に同意するかどうかは別として頭の整理になりました。
読んでみて私の思いつき的主張・個人が自分の得票維持拡大・地盤培養のために個人事業主として日常業務に精出す努力をしてこなかった・民意〜客の気持ちがわからない弱点という私の着想は専門家でない考えの浅さがありますが、一部あっている自信を持ちました。
私は子供の頃からしっかりした理解力なく誤解に満ちた人生でしたが、ある人物や絵画であれ論文であれ全体として見れば意見相違があっても、部分部分で見れば共鳴部分があるもので、いろんな物事をを自分に都合よく理解する傾向・・へえ!自分の好みや意見と同じじゃない・・とすぐ納得する・・不満や敵意を持たない・・だれでも好きになるおめでたい性格です。
路地・・鉢植えの草花を見れば、全体としてデタラメかどうかは別としてまずは個々の花びらを愛でたくなる無節操な生き方です。

調査主体による世論調査の傾向差3

世論調査は中国のGDPや各種統計発表を日本のプロは一定の修正を施して、解釈しているような関係です。
日本の報道機関各社は信用維持のために各社の(新聞界の押し紙慣行同様)、悪しき慣行を正す必要があるのではないでしょうか?
報道機関による世論調査の結果差は以下引用する通りで、時事ドットコムでは自民党支持率24%台と立憲3、5%しかないのに、NHKでは32、5%台と5%代に大幅に上がります。
朝日では、立憲は9%代で推移する表が出ています(引用省略)。
他政党との比率も毎回変動するのではなく、政党別支持率の比率傾向が調査主体ごとに毎回同じ比率で変動しているのが不思議です。
※確かな野党の社民や共産の支持率はどの調査主体でもあまり変わりません。
積極的贔屓をしているメデイアがないということでしょうか?
最新世論調査結果の具体例です。
https://www.realpolitics.jp/research/による調査期間別の政党支持率の5月平均です。

上記のように自民支持率は朝日、毎日が27、5〜28%しかないのですが、他は概ね30%台後半です。
アトランダムにかけたはずの電話応答者がたまたま偏った人に当たったのではない証拠にその前からもほぼ同じように朝日毎日とその他では大きな差が毎回ついている点をこのシリーズでは問題にしています。(「朝日が」という意味ではなく、読売の場合自民党支持率高めなどの調査主体でも)下請け現場で発注者向け忖度操作が行われていたのでないかの疑いです。
推移を見ていきます。
“https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_politics-support-politicalparty”
時事ドットコムニュース【図解・政治】政党支持率の推移


記事などの内容は2020年3月13日掲載時のものです
以下のNHKの7月の表を前記https://www.realpolitics.jp/researchの5月平均と比べれば傾向は同じです
http://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu
7月10日(金)~12日(日)
各政党の支持率 NHK世論調査

政党名
自民党 32.2
立憲民主党 4.9
国民民主党 0.7
公明党 2.8
日本維新の会 3.0
共産党 2.2
社民党 0.4
れいわ新選組 0.6
その他の政治団体 0.5
支持なし 45.5
わからない、無回答 7.2

社会党の抵抗政党化3(成田闘争と一坪地主)

成田空港開設は当初予定地であった富里村周辺では激しい反対運動が起きて組織化されていたのですが、候補地について紆余曲折ののちに政府は突如三里塚に予定変更してしまったので、地元自治体が成田市に変わり、しかも地元自治体が反対運動になびかなくなりました。
空港予定地の大方が元御料牧場で私有地が少なかったこと(・・周辺は騒音被害を受ける程度で逆に空港が軌道に乗れば関連需要の恩恵を受ける人の方が多いことから歓迎傾向だったのかな?)社会党はやむなく一坪地主になって地権者の一人として反対する方法を選んだようです。
(この方法は現在沖縄での基地闘争手段としての住民票取得政策につながっているようです)
当時の社会党代議士(元委員長クラスを含め)が一坪地主運動を呼びかけて農地を1坪づつ購入して、地主になって空港の用地買収反対運動の事実上の黒幕になっていたのはこの嚆矢です。
一坪地主に関する2020年7月6日現在のウイキペデイアの解説です。

NIMBYによる反対運動や、自然環境保護などのために土地収用手続きを煩雑化させたり、地元の反対派の人数の多さを示す住民運動の一環として、一坪地主になることがある。
行政側は土地収用のために一坪地主に対して一人ずつ対応する必要になるが、行方不明だったり外国に出ていたりすると、土地収用が一層進みにくくなる。また、地元の反対派の人数の多さとして強調されることもあるが、NIMBYという思想で当該地域の問題を知るまでは、当該地域と全く縁がない地権者もいる。
・・・実際の例として、成田空港問題(三里塚闘争)の空港反対運動における一坪共有地運動、東北・上越新幹線反対運動、沖縄県の基地反対運動における一坪反戦地主会などがある[1]。
成田空港問題の事例[編集]
三里塚闘争での一坪共有地運動は、当初日本社会党(社会党)が推進したものであり、成田知巳や佐々木更三をはじめとする社会党議員らも参加した。元新東京国際空港公団副総裁の山本力蔵が「影響は大変だった。社会党役員のそうそうたる名前がある。天下の政党がそんなことをやるとは夢にも思わなかっただけに脅威だった」と倦みながら述懐している[2]。社会党は砂川闘争の教訓から裁判で結論が出るまでに時間がかかって国もあきらめざるを得なくなると考えていた[3]。
運動は約700人の共有で始まり、一時約1200人にまで膨らんだが、空港公団の買収により約400人に減った。このため、三里塚芝山連合空港反対同盟は1983年に再分割運動を進めた結果、85年には土地所有者が約1400人に増加し、2008年は約1100人程度と推計される[4]。なお、この再分割の是非を巡る意見対立などから反対同盟は北原派と熱田派に分裂している。

一坪地主運動というのは、航空政策がどうあるべきかの言論闘争をやめて進捗妨害するだけのための運動を明確にしたものです。
まともな言論活動をしないで、ただ駄々をこねるような時間稼ぎだけの運動ですから、こういうのはまともな政党のするべきことではないでしょう。
だから「天下の政党がそんなことをやるとは夢にも思わなかった」という副総裁の発言が残っているのでしょう。
名目は地元民の反対形式ですが、実態は実は一坪前後をわずかな対価で買い受けて地元民という名でよそ者が反対運動していたことになります。
主に、社会党を先頭に社会党系実力部隊?として要請した?社青同や、三派十流と言われる過激派全学連崩れが主役で暴れ回っていました。
民主主義の基本ルール・言論を堂々と戦わせるが、議論を経て決を取ったあとは結果に潔く従う・・これに違反する政党は、政党という名に値しないのでないでしょうか?
旧社会党は空港の場合軍事基地転用目的反対といい、お金持ちしか飛行機に乗らないといい、高速道路も同様主張でしたが、あっという間に飛行機を庶民が利用する時代が来たし、高速道路もトラック輸送中心時代が来ています。
時代錯誤な反対ばかりして国策(国会で決まったこと)遂行妨害ばかりしていたので徐々に国民支持を失ない遂に中堅以下の議員ほとんどが脱退して新党結成に走ってしまい、抜け殻のように存続した社民党は、政党としての使命を卒業した印象になりました。
この教訓を踏まえて社民党を除く野党は、この数十年では合法的反対運動・現地闘争と一線を画すのが普通になってきました。
すなわち現在の政党(社会党の解体後の民主党以来の立憲民主党や国民)は国会を通過した原発政策やイラク特措法その他海外派兵反対ではなく、国会できめ細かく決めたルールに現地行動が違反していないか、原発設置基準に反していないかの追求限定ですから正面切って民主主義のルールに反している訳ではありません。
ただし、本音で原発反対なら政策論として政党の名で堂々と主張すべきが政党ですが、政策論争を一切展開せずに、政党名を出さずに地元民を原告主体にして友軍的?別働隊?的弁護団がシコシコと安全規制に反していないかの重箱の隅を突つくような原発訴訟を全國で展開しているようです。

利害調整不全8(地域エゴ野放し3)

美濃部都政は民意重視というお題目によって杉並ゴミ戦争を煽っただけで杉並区と江東区の利害調整・解決できず信用をなくしました。
民主党政権奪取時の説明(公約?)ではいわゆる「埋蔵金を取り崩せば資金対応できる」という漫画のような触れ込みでしたが、政権党になってみると埋蔵金がなくて、実現不能な公約であったことがバレました。
やむなく事業仕分けに進んだのですが、周到な識見・準備なくパフォーマンス重視で性急に行ったために耳目を集めたものの結果的に散々の結果だった印象です。
エゴに基づく反対運動が保護されれば両立し得ない他方の国民代表の合意で決まった国の政策実現が遠のく・・保育所やゴミ処理の必要な人がその便宜を受けられなくなります。
そうなると・・各人が自宅内で子供を育てるしかないし、自宅内ゴミ処理が義務化されることになるのでしょうか?
共同体破壊思想です。
いわゆるリベラル派の人たちは抽象的にいえば人権擁護・具体的には保育所増設その他個別権利実現に熱心ですが、一方であちこちの反対運動応援にも熱心です。
双方の利害調整の方向性がないままバラバラに八方美人的公約を並べているから、一定レベル以上の国民支持を得られません。
ボルトン氏の暴露本?では韓国の文大統領は統合失調症の人だと書いていて韓国では大騒ぎですが、いわゆる世界のリベラル派の言動に大方当てハマりそうです。
日本では、杉並ゴミ戦争で有名になりましたが、民意重視という原則論だけではどうにもならない・・民意重視とはいろんな意見を求めて、出てきた相反する利害調整に努力し一つの方向性を出す・・成果をあげるという意味です。
この処理がもたついたことにより美濃部都政は利害調整能力不足を露呈し以来革新系都知事候補は信用を失い現在に至っています。
都議会でも国会議員でも旧社共系あるいは立憲民主系の数は微々たるものです。
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/outline/factional.html
各会派等の構成(令和2年3月9日現在)

日本共産党東京都議会議員団 18(うち女性13)人
都議会立憲民主党・民主クラブ 5人
現員 123(うち女性36)人

上記によれば約1割の議席しかありませんが、6日投開票の都知事選結果も似たようなものです。
https://www.asahi.com/senkyo/tochijisen/2020/kaihyo/によれば、保守系(現職)小池百合子氏59、7%、立憲、共産等の旧革新系野党推薦?の宇都宮健児氏13、76%となっています。(その他大勢の立候補者がいますので合計100になりません)
いわゆるニンビーは本来無理筋の論理・全般的整合性がない・・公共の利益と調和しない・・両立し得ない主張です。
NIMBYという専門用語があるようですが、ウイキペデイアによれば以下の通りです。

NIMBY(ニンビー)とは、英語: “Not In My Back Yard”(我が家の裏には御免)の略語で、「施設の必要性は認めるが、自らの居住地域には建てないでくれ」と主張する住民たちや、その態度を指す言葉である(「総論賛成・各論反対」)。日本語では、これらの施設について「忌避施設」「迷惑施設」[1]「嫌悪施設」[2]などと呼称される。

総論賛成各論反対・・国や地域に必要な施設であることはわかるが、自宅付近は嫌!という自分勝手な論理ですから全国基盤のある政党の支持は受けられないのが普通です。
県内対立や市内対立の場合、知事や市長が困ります。
困難な斡旋仲裁努力を放棄して弁護士に投げて来る事案が増えてきました。
杉並ゴミ戦争は、結局訴訟に進み裁判所の和解勧告で終わったものです。
この数十年複雑な利害対立を政治の場で解決できなくなってきた、諫早湾の開門閉門の利害対立も政治家はお手上げで司法に丸投げですが、政治家の解決能力低下というより、紛争当事者がほどほどで妥協する能力がないことが基本でしょう。
少し前の日本社会であれば埋め立てをするかしないかの以前段階(いわゆる根回し)で意見調査委が終わったのでしょうが、それぞれの権利意識(というよりエゴ?)が高まってしまって譲り合うべき着地点を見出せなくなったことにあるのでしょう。
杉並ゴミ戦争のようなエゴむき出しで妥協できない社会になってきた弊害でもあるでしょうし、政治家(国民レベル以上の政治家は出ないので)の方も国民の利害調整役どころか自分自身が国政段階の論争の結果、落ち着くべき決着を受け入れる能力がなくなっていて国会決議に潔く従わずに蒸し返しに使うようになったからでしょう。
ポピュリストというか調整能力のないバラマキ型政治家の場合、外敵(トランプ氏のように国内政敵を煽る→分断社会化)に頼る傾向が多いのはこの所為です。
全うな育児対応能力がない母親の常套手段・・乳幼児をあやすのにガラガラで気を引いたり、ぐずる子供に対して「おまわりさんが来る」と脅すのが(戦後なぜこういう対応が流行ったのか不明ですが)一時流行ったのもこの一種でしょう。

民主主義と利害調整力不全3

民主党の政権を担った主な政治家は旧社会党以来の離合集散を繰り返した野党時代に国家全般の政治との整合無視で特定主張に特化してきた・・自己主張以外は何でも反対の経験しかなかったことが失速の原因でした。
その矛盾がすぐにあらわれたのが、ヤンバダムの問題でした。
野党時代には根拠なく反対さえしてれば一定の支持が得られたのですが、(どんな政治決定にも5〜10%の決定反対の立場・本当はその政策決定に反対でないが反対運動することによって保証金を引き上げたいなどいろんな思惑で普段政権党支持層でも自己利益のために社会党に応援を頼む人がいます)政権をとってみると全体ビジョンが必須(反対層数%の支持だけでは運営できません)になり破綻したのです。
まさか5〜10%の支持を頼りに政治をできません。
基礎的支持層が5〜10%しかないときに消費税反対等の大フィーバーを起こして大量得票をえて政権が転がり込んできた場合、その党のダムその他個別政策に対する支持が多かった訳ではないのですが、従来の反対派としては選挙に勝った以上反対を実行してほしいと期待するので板挟みで困ってしまいます。
経済利害の調整は簡単ですが、価値観相克になると討論による止揚はうまくいきません。
最近先進諸国では価値観にこだわる主張が増えてきたので民主主義の理念で合理的説得によって、より良い結論に至る・・価値観統合・利害調整に失敗し始めている姿が顕著です。
その原因は何か?ですが、どこに道路をつけるかなどの生活要求的意見相違は優先順位程度の問題ですので利害調整が簡単ですし、あるいは墓地等の嫌忌施設の場合相応の経済補償の上積みなどで合意可能です。
ところが、宗教や人種差別やLGBTあるいは日本で言えば嫌中嫌韓、慰安婦問題、その他欧米諸国でも民族感情や宗教論争に類する分野を政治テーマに持ってくるようになると生理的に受け入れにくい、見返り程度の穴埋め補償に馴染みません。
英国でEU離脱論が盛り上がってきて、外国人に職を奪われる・外国人が自由に入ってくるのは嫌だという議論が広がってしまうとEU離脱の経済損得の議論など吹っ飛んでしまい妥協の余地がなくなったのでしょう。
異民族との混在を嫌がる風潮が始まってからの議論では、合理的討論・説得程度で主義主張がころりと変わる訳がないので、白熱した討論をすること自体が相手に対する悪感情を煽る方向に働き対立を深刻化することになりかねません。
ヘーゲル的弁証法・・正反合の止揚が成立する余地のない分野の主張がゴロゴロ出てきて、これが表面化してきたことによって静かな議論による解決が不能になってきたというべきでしょう。
最近ヘイトスピーチ禁止の動きが出ていますが、そうせざるを得ないほど利害集団ごとの憎悪感情に基づく主張が増えてきたことよるものでしょう。
いわば、近代法が予定していた教養と財産のある合理的人間同士の対話の場合、「言って良いこと悪いことの区別」があって、「口に出さない文化」「礼儀」が保たれてきたのですが、(言いたいことがあってもモゴモゴして100分の1くらいしか発言しない文化・・)感情論むき出しで勝負してくる大衆社会化→大衆そのものの意見がストレートにツイッター等で発信されるようになってきたことが大きいように思われます。
旧態然としたある委員会で、弁護士委員だけでなく「この問題は外部(判事検事)委員の意見を特に伺いたいのですが・・」と水を向けても(よそのことにあまり言いたくないのか?)あちら立てこちら立てての立論を経た上で・・・そこはプロですので最後は自己の意見をきっちり発言してくれるのですが、ちょっと聞いていると何を言いたいのか分かりにくい発言から始める人が多いのが現状です。
途中のモゴモゴ的発言が十分に聞き取れていないこともあって、「結論として〇〇でいいのですか」と引き取ることが多いのですが・・。
ただし、上記は古すぎる委員会の特殊事例ですので、誤解のないように付言しますと公共団体での会議の場合は、もともと外部有識者100%の委員会でよそ者が発言する前提ですので初めから論旨明快・・一直線の意見が多い印象です。教養人がほんのちょっと本音を匂わせるだけで意向が通じる社会・・これの究極の姿が平安時代におこなわれていた和歌のやりとりでしょうか?

わが国では古くから露骨な表現は品がないと思われてきた歴史で、平安時代にはこれが極まった時代であったと言えるでしょうか?
和歌というと恋や心の内を吐露する歌ばかり紹介されていますが、政治家はいつも和歌に託して間接的婉曲的表現をしていたのです。
いつも例を引く源三位頼政の以下の歌はその一例です。
平家一門の栄華の陰でいつまでの四位のままで三位(殿上人)に上がれない気持ちを読んだところ、清盛が驚いてすぐに官位を三位に引き上げた故事が知られています。

のぼるべきたよりなき身は木の下に 椎(四位)をひろひて世をわたるかな
— 『平家物語』 巻第四 「鵺」

明治以降言いたいことをいうのが正しいと教育されてきた効果が、上記公共団体での審議会や委員会での活発な議論になってきているのでしょうし、社外取締役が黙って出席しているだけの人は意味がないと言われるようになってきた状態です。
今後ネット会議になってくるとみんながうなづく程度の雰囲気では議論が進みませんので積極的・歯切れの良い発言でないと委員会に参加しているのかすら分からなくなってきます。
ここまでは相応の経験(他事業での成功者など)高度な識見を担保に選任されている以上は「職責を果たすべき」という意味で評価できるし必要な職責でしょう。

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