豪華クルーズ船対応批判9(米国の対応3)

一応のセオリーをあらかじめ決めていてもいざという場合、環境に合わせて臨機応変にやるしかないことが多いのが実務というものですから、批判するならばルール通りかどうかだけではなく、臨機応変に手順を変える必要があったか、その変更が合理的であったか否かではないでしょうか?
日本のクルーズ船対応批判論にはそうした具体的批判がなくCDCルール違反というだけの形式批判が多かったように見えるのが不思議です。
日本のように検査=陽性が決まった順に下船させ入院させるのではなく、米国の場合陽性が決まった人を寄港地が決まらない理由で船内隔離のまま4日間も放置していたのですから驚きです。
米国の場合3500人全員でなく陽性判明者はわずか21名ですので、米国得意の空輸で簡単に運べたはずです。
昨日紹介記事では陽性判明者21名中19名は乗員でしたが、彼らについては、着岸後も入院させず最後まで船内にとどめていたままらしいのも不思議です。
仮に彼らの入院治療をしない予定であったのであればその他陽性者は2名しかいません。
2名しか出なかった乗客=陽性患者だけでもヘリで地元病院へ何故空輸しないで船内に残したまま船の入港先さえ決められず洋上漂流に委ねていたのか合理性が不明です。
フィリピン人乗員を空輸するのが嫌だったから、まとめて放置したのでしょうか?
文春引用続きです。

なぜ、オークランド港が選ばれたのか?
地元の医療関係者は、ロサンゼルス・タイムズ紙で異を唱えた。
「ウエスト・オークランド地区には、昔から、声高に強く反対しない、低所得のマイノリティー層が居住しているからでしょう。
そんな理由で、オークランド港に寄港を決めたんだと思います」

グランドプリンセス号など豪華客船の寄港などで潤っている華やかな商業港が、いざ感染者が帰ってくるとなると、着岸自体を拒否していて、4〜5日後に近隣の貧しい人が多く住む港にようやく入港着岸できたということです。
米国感染拡大の基礎に大規模格差があると注目され始めましたが、経済格差に伴う一種の不正がいろんな場面で広がっていたようです。
金持ちの声ばかり大きく、貧乏人は声を上げられない社会の鬱屈が、今回のミネソタ州での黒人殺害に対する全国規模の不満の発火点になったのでしょう。
文春レポート引用に戻ります。

約2400人乗客「全員下船」はダイヤモンドの教訓か
無事寄港した「グランド・プリンセス号」だったが、「ダイヤモンド・プリンセス号」とは違い、まず最初に、寄港後、乗客全員を下船させることとなった。これは、乗員乗客を船内で検査し、船内で隔離したために船内感染が発生、697人の感染者と7人の死者(3月13日現在)を出した「ダイヤモンド・プリンセス号」から得た大きな教訓かもしれない。
しかし、CDCは、単に、医療ガイドラインに従っただけとも考えられる。
ニューヨーク・タイムズ紙によれば、医療ガイドラインでは、感染している可能性がある乗客は船内で検査せず、下船させることが推奨されているという。「ダイヤモンド・プリンセス号」は医療ガイドラインを無視して、船内で検査を行ったことが問題だったというのだ。
「グランド・プリンセス号」の場合、医療ガイドラインに従ってか、乗客のウイルス検査を船内ではなく、下船後に搬送される場所で行われることになった。
2400人は「病院」「ホテル」「米軍基地」に振り分け
下船した乗客は体調により、搬送される場所が振り分けられている。
まず、体調が悪い乗客は病院に搬送された。病院で治療を受けて退院した人々は、いくつかのホテルに振り分けられ、14日間の隔離に入ることになる。
感染しているかは不明だが、病院での治療までは必要がない軽い体調不良を見せている24人の乗客は現在ホテルで隔離されている。ホテルは、一般客が宿泊するところからは分離されているので安全だと州知事は説明している。
体調に問題がない乗客は、4つの米軍基地の施設に振り分けられることになった。乗客の大半を占めるカリフォルニア州の住民は州内のトラヴィス空軍基地かミラマー海軍基地に、それ以外の住民はテキサス州の基地とジョージア州の基地に送られて検査を受け、14日間の隔離に入っている。
外国籍の乗客はチャーター機で自国へと送還されることになった
船内では「牛のように並んで順番を待っていた」
下船作業はスムーズに進んでいるとは言えない。寄港2日目の3月10日までに1407人が下船したものの、10日時点ではまだ1000人以上が船内に取り残されていた。
また、下船風景を見た乗客からは感染を恐れる声もあがっている。
「乗客がまるで牛のように並んで降りる順番を待っていたわ。みな1カ所に集められ、体が触れ合っている人もいた。タラップは渋滞状態だった。彼らは、チャーターバスに乗せられて行ったわ。それを見て、とても怖くなった。あれでは感染してしまうわ。あんな風に下船して安全ということなら、なぜ、私たちは5日間も部屋に閉じ込められていたわけ?」

豪華クルーズ船対応批判3

船内検査を選択したから膨大な感染拡大が生じたというのが岩田氏の立論のようですが、彼の論理によっても厚労省統計を見ると現時点でも、クルーズ船感染者数が712名に過ぎず、かつ予定されていた横浜市内病院で一箇所で全員収容できている様子で行く先がないというトラブルが報道されていません。
以下厚労省発表データです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11879.html

新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年6月15日版)
3月15日、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客のうち、船内で14日間の健康観察期間が終了し2月19日から23日にかけて順次下船した計1,011人の方への健康フォローアップが終了しました。
【6月14日24時時点の状況について】

表の引用できませんが、PCR検査陽性は712名となっています。

※1 那覇港出港時点の人数。うち日本国籍の者1,341人
※2 船会社の医療スタッフとして途中乗船し、PCR陽性となった1名は含めず、チャーター便で帰国した40名を含む。国内事例同様入院後に有症状となった者は無症状病原体保有者数から除いている。
※3 退院等している者655名のうち有症状360名、無症状295名。チャーター便で帰国した者を除く。

陽性判明次第即時入院させていたし、当初人数が大したことがなかったので医療施設不足で下船させなかったのではありません。
もっとも感染の有無を問わず3700人全員を一まずホテルに収容するのは武漢からのチャーター機のように少数者をホテルに収容するの違って、大量受け入れ可能な民間施設がないので無理だったでしょうが、岩田氏は医療施設に限定しています。
医療施設であれば、発症者から順に受け入れれば少数で済むことです。
岩田氏は、問題にならなかったことを問題であったかのように主張し、(そこから船内対処の方が完璧にできるかのような主張で押し切った勢力(厚労省官僚)があったかのようにイメージさせた上で、船内検査の方が良いという以上は)完璧であるべきという結論を導いているようです。
上記を見ると当時問題であったのは、感染していてもコロナの症状が出ない(潜伏期間が約2週間と言われていた)状況で、潜伏期間中の人や未感染者などの分類作業をするために必要な一定期間の待機場所・ホテル等の手配可能性と乗客の内どれだけが検査やステイに応じるかの問題だった可能性が高いでしょう。
岩田氏は、感染症対応医療機関のキャパシテイ不足を主張しながら流石に問題があると思ったのか周到に「最初のジレンマ」と言っていて、本来のジレンマがあった逃げ場も用意しながらそれを伏せたまま議論を自己の主張の正当性化に進めていくようです。
本来のジレンマでないことを論争点に持ち出して、その議論の結果船内検査に決めたならば乗客のためにより良い医療サービスを目指すものだという前提を読む者にイメージさせます。
「その判断が間違っていたのかどうかわからないが」と言いながら「そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。」と言い切ってその後の論理を進めています。
下船させて検査するか船内検査かのキャパシテイの優劣を競うだけならば上記のように、発症者優先で近隣指定病院搬送したりできる範囲で分散入院させたり、船内に一部残したりする手間暇を惜しむかどうかの違いに過ぎません。
一律外出禁止令でなく自粛要請の場合、個々人や業界ごとの工夫次第で3蜜を防ぐ工夫が生まれるるのと同じで、物事は現場工夫力が重要です。
彼は米国留学によって、米国式感染症対策を学んできたのが「売り」でしょうから、欧米式に個人工夫を禁止し、社会的にはロックダウン・・個々人の事情や工夫余地のない上からの一律強制とそれを指揮する米国CDCのような司令塔が存在しない日本の厚労省指導体制がバカくさく見えたのでしょうか?
古代から現場力重視・ボトムアップ社会の日本社会では、強力な司令塔を設置して個々人努力を積極禁止するロックダウン政策は国民性に合いません。
岩田氏のいう「最初のジレンマ」とは「ジレンマ=両立できない相克」ではなく、素人の私が数秒読んだだけでもすぐに思いつくように、発症程度等による優先検査順位や分散処理する手間さえかければ良いのでないか?
その場合どういう問題が生じるかの事前予測と準備の問題ではないでしょうか?
そんな程度のことはジレンマとして議論にもならないし、現場におろしていけば司々で普通に処理していく普通の準備行為ではないでしょうか?
そんなことを準備会議で大げさに主張しても、議長は「そうだね現場からの相談には丁寧に応じる必要がある」程度で応じて「丁寧にやってください」程度の指示を事務方にして、議長は次の重要なテーマに移っていくのが普通です。
・・岩田氏はちょっと工夫すれば良いことを工夫の余地がないジレンマと理解し二択しかないと思い込んでいたのでしょうか?
昨日紹介した岩田氏の主張を読むと岩田氏は米国留学で得た知識を前提に米国ではCDCという強力な司令塔があるのに、日本にはなく指揮命令系統が「ぐちゃぐちゃ」だという批判精神が先立っている印象を受けます。
専門家でない厚労省官僚が仕切っていることに対する批判が結論として重視されているような表現になっている印象です。
岩田氏が考えるように、キャパの比較が重要テーマであったとすれば、(彼はそれを「最初のジレンマ」と称して議論のテーマが他にあったことを示唆しながら他のテーマを紹介しないまま、キャパの優劣論だけを議論の正統性の根拠に持ってきた議論を展開しています)の主張通り下船→陸上での受け入れより船内検査の方がより良いものである必要が論理上出てきそうです。
ただし「陸上病院以上であるべき」という主張が限界で「完璧」を要求するのは論理飛躍があるでしょう。
岩田氏のいう「最初のジレンマ」しかテーマが(2番目以下のテーマが)なかったにしても、世の中に完璧なシステムがあるのでしょうか?
いろんなシステムあるいは製品も研究も試作品→製品化→現場利用によるフィードバックによって日々改良されていくもので世に出る当初から完璧でなければならないというものはありません。
岩田氏の生きている医療分野でも医薬品に限らず、医療機器あるいは医師の技術そのものに至るまで、医師になった以上完璧であるべきと言えるでしょうか?
岩田氏自身医師資格を得てからあちこちで研鑽を積んで現在があるのであって、取得時から現在の能力を持っていたとはいえないでしょう。
クルーズ船内という特殊環境下で、しかも3750人近くにも及ぶ大量検査を初めてする以上、何が完璧かの定義自体が意味不明です。
その点は措くとして、そもそも船内検査選択したのは、下船後検査環境以上の検査設備・体制があるという理由で決めたのであれば、陸上受け入れよりも環境が良い前提になるべきですが、そもそもそういうことは議長が「わかりました下船の場合には事務方に指示しておきましょう」程度で次の議題に移れば良いレベルなので本来の議論対象・テーマではなかったのでないか?
違ったテーマで船内検査が決まったのにこれを意図的に隠して論点すり替えしてるのではないか?
善解すれば、先決重要論点を理解できなかったかの疑問です。
「最初のジレンマ」といいながら2番目以下のジレンマに触れないで「最初のジレンマ」だけを前提に批判するのが不思議です。
上記の通り、キャパ優劣問題であれば多様な解決策が可能であった=ジレンマでなく工夫レベルの問題であったので、仮にジレンマという二択のバーターになるべき選択テーマがあったとすれば、別次元のテーマがあったからではないかと私は思います。
すなわちその時のテーマは下船後外国人が検査拒否あるいは滞在拒否して国内観光に出てしまった場合どうするかが、重要テーマだったのではないでしょうか?
クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号入港は2月3日で、直前1月29日に武漢からチャーター機で帰国した邦人が政府の用意したホテルでの滞在要請も検査要請も拒否して帰ってしまった例を6月11日に紹介しました。
このころの報道ではチャーター機救援に当たっては政府は、救援対象者として、帰国後の一定期間隔離(三日日ホテル全員収容)と、感染検査を受けることの承諾を得た人限定で帰国希望募集していたと報道されていました。
それに応じて承諾書に署名(多分署名をとっているでしょう)したのに?帰国できた途端に法の根拠がないことを理由に?検査協力を振り切って帰宅してしまった人が2名出たという報道でした。
このように見ると日本の官僚の用意周到さに驚くばかりです。

専門家の責任3(元農水次官事件と戸塚ヨットスクール事件)

従来あった保護義務者同意制度も平成25年に廃止されましたが、99、99%の人は、真に困った家族の相談であって違法目的で最愛の息子(発達障害の場合女性は暴力を振るわないので家族の許容量次第でなんとかなるようですが)を入院させたい人はいないでしょうが、それにしても手に負えなくなっている息子の粗暴行為の原因が素人にはわからないので専門家に相談したいという動機であって、治療でない暴力によって制圧してほしいとまで思っている親は稀でしょう。
昨年農水省元次官が社会に迷惑をかけられないと息子を自ら手にかけた事件が報道されていました。
元農水事務次官長男殺害事件に関するウイキペデイアです。

2019年5月25日、それまで一人暮らしをしていた長男Eが自宅に戻り、父親Kと母親と長男Eでの3人の生活が始まる。(父親Kの供述によると)その直後から長男Eによる激しい家庭内暴力が有り、父親Kと母親はおびえて暮らすようになっていたという[5]。
長男Eは外出せずオンラインゲーム等をして引きこもり状態の生活をしていたが、2019年6月1日、近所の小学校の運動会の声がうるさいと腹を立て父親Kと口論になったという[6]。この数日前の2019年5月28日に、川崎市登戸通り魔事件が起きており、父親Kは(逮捕時の供述によると)「息子も周りに危害を加えるかもしれないと」不安に思い、刃物で長男Eを殺害した[7]。長男Eは数十箇所を刺されており、初公判でも「強固な殺意に基づく危険な犯行」とされた。

これにそっくりな発達障害の子を抱えた経緯の事件が約23年前の金属バット事件でした。

https://toyokeizai.net/articles/-/320929?page=2

引用省略しますが、親が精神科医に相談しても子供のために尽くしてやれと言うばかりだったようです。・・障害児を持った親の不幸ここに極わまれりという感じです。
入院を求めている家族や介護関係者による・・子供を思わない親はいないとしても「この人は如何に手に負えないか!」の過去に起きた事例説明は利害対立可能性のある人の主張も含まれる点が難しい・・悪意で利用され、これと倫理観欠如病院がマッチするととんでもない人権侵害になったのが宇都宮病院事件でした。
そんな悪質病院は万に一つしかないとしても、学問上精神障害になる原因が明確でなく、症状による判断しかない→症状も熱が出るとか咳が出るなどの客観性がない・・周辺の説明に頼るしかない・診断基準客観化が進まない以上は、事後的な外部透明性が必須と言うのが教訓だったのでしょう。
まして宇都宮病院事件のように、入院させたのが兄弟の場合(遺産分けなど利害がある場合もあり)はなおさらです。
シンナーや覚せい剤中毒の場合には血液検査などの客観性がありますが、発達障害や精神障害等の場合、身体的外形的データがほぼ皆無と言えます。
宇都宮病院事件とほぼ同時期に起きた事件では戸塚ヨットスクール事件がありました。
これなども、家族の手に負えない子供をスパルタ式教育・暴力的制圧を標榜する組織の事実上の監禁状態に置くもの・・本人が同意するはずのない剥き出しの酷い暴力宿舎的事件でしたが、これもまさか違法監禁しますと公称していたはずがない・・本人同意による形式になっていたはずです。
戸塚ヨットスクール事件に関するウイキペデイアの記事です。

戸塚ヨットスクール事件(とつかヨットスクールじけん)は、1983年までに愛知県知多郡美浜町のヨットスクール「戸塚ヨットスクール」内で発生、発覚して社会問題に発展した一連の事件。
当初は「戸塚宏ジュニアヨットスクール」の名称で、ヨットの技術を教える教室だった。その後非行や情緒障害等に戸塚の指導は効果があるとマスコミで報じられたことで、親元からスクールに預けられる生徒が増加し、指導内容をヨットの技術養成から非行や情緒障害の更生へと切り替えた。当初は教育界のカリスマとしてマスコミは好意的に取り上げていたが、後に事件が発覚した。
2名の死亡事件が発生した直後に、同事件を題材とした「スパルタの海」がノンフィクション小説として中日新聞に掲載され、映画版(伊東四朗主演)も制作された。

親や周囲に暴力を振るう息子に困り切った両親や親族がいて、こういう事件が起きたのでしょう。
昨日(6月4日)のニュースでは、23歳の男がボーガンとかいう弓で家族(祖母と母、弟)を殺傷し、叔母をも射殺そうとしたところ叔母が近所に助けを求めたことで110番通報で、発覚したニュースが出ています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200604/k10012457531000.html

ボーガンで撃たれ3人死亡 逮捕の大学生「家族殺すつもり」
2020年6月4日 22時59分
(事件内容引用省略)

過去のボーガン事件
ボーガンを使った事件は過去にも起こっています。

去年5月、北海道日高町で、50代の父親をボーガンの矢を放って殺害しようとしたとして当時29歳の男が殺人未遂の疑いで逮捕されています。

以上のように家庭内暴力が行き着いた先の事件がしょっちゅう起きてるので、戸塚ヨットスクールのような需要があったし現在もあることは確かでしょう。
家庭内解決不能な場合、武士社会のように親に生殺与奪の権がなくなったのに、それに代わる公的解決ルールが整備されていない隘路があるようです。
家庭内暴力のうちで、夫婦間のDVには早くから警察が関与するようになってきてその後親による乳幼児や児童虐待にも公的な目が入るようになりつつありますが、子供の祖父母に対するDVへの関与が進まないのは、親の方が強い・親による子供虐待防止方向ばかりの前提で、成人した子供の場合、剥き出しの暴力関係では逆転していることに社会が関心を持たなかったというか、社会変化に法制度が遅れているので親の苦悩がいや増しているのかもしれません。

新型コロナの実害比較(新興国の3重苦)

バングラやインド、ネパール等の南アジア諸国は、中東や西欧への出稼ぎが多く、出稼ぎによる本国送金が、貧困国経済を支えてきた側面があります。
出稼ぎ者による送金がなくなり母国の家族生活が苦しくなっていたところに夫や子供が失業して帰って来るとダブルで生活苦になります。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14464839.html

(コロナ危機と世界)途上国の危機:下 職失う出稼ぎ、母国に逆流 米の移民、雇用の調整弁 2020年5月4日 5時00分
新型コロナウイルスの大流行は、世界各地の移民や出稼ぎの労働者を直撃した。収入減や解雇が相次ぎ、母国へ帰る「逆流」も始まった。仕送りに頼ってきた途上国の家族は貧困の縁に立たされている。

上記は中南米諸国でコロナ禍急拡大があっても(ブラジルもメキシコもペルーも)思うように外出規制できない背景を踏まえたものでしょうが、アジアも同じです。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00118/042200013/

新型コロナで窮地の出稼ぎ労働者 東南アジアに「依存リスク」
2020年4月23日

https://blog.goo.ne.jp/otatomoyuki/e/cf6fe31b83f613beddabd7616de7ef77

【コラム】新型コロナウィルスまとめ:バングラデシュ(2020年5月16日現在)
バングラデシュでは3月7日に初めて新型コロナウイルスの感染者3名が確認されました。その後、4月14日に感染者数は1,000名、5月4日には10,000名、そして5月15日には20,000名を超えました。一方、新型コロナウイルスによる死亡者も、3月18日に最初の死亡者が確認されてから、4月20日に100名を超え、5月8日には200名に達しました。感染者数と死亡者数は加速度的に増加しています。
バングラデシュ政府は3月26日から政府機関や学校を閉鎖した他、公共交通機関も停止し、実質的な「全国封鎖」を実施しています。
一方、生活苦に陥った縫製工場労働者のデモ抗議が散見されるなど、経済的な影響の大きさも見られます。この為、バングラデシュ政府は5月10日から経済活動の限定的な再開を許可しました。
・・・現在、海外在住のバングラデシュ人の内、およそ400名が新型コロナウイルスで死亡したことが明らかになっています。

インド、バングラや周辺諸国等では海外出稼ぎ者による本国送金が外貨収入の大きな部分を占めているのですが、欧米シンガポールや中東諸国等への出稼ぎ者が現地の外出禁止政策で失業し、住む家もなく食料にも困るようになり、何百万という出稼ぎ者が本国帰還を望んでいる状態が報道されています。
国際便が停止しているのでチャーター機を求めているが、その手配がつかない(母国のチャーター機を飛ばす資金力次第でしょう)上に、失業者激増中の母国に無職者および感染者を抱え込むリスクがあるので貧困国は二重苦〜3重苦で行き詰まっているという報道になってきました。
コロナ感染拡大が始まったばかりでも、すぐに営業再開させないと経済が持たなくなってきた・・背に腹は代えられないという状況らしいです。
米も国内格差により外出禁止が続くと、米国内の弱い部分・・非正規雇用中心の貧困層=蓄積がないのにすぐ失業する階層が食えなくなり始めたので、なりふり構わない再開を急ぐ原因になっている点は貧困国同様です。
要は米国は国内に貧困階層(国?)を抱えている2分された社会になっている弱点が浮き彫りになってきました。
国内に格差を抱え込んでいる米国は全体として感染拡大中であるにも関わらず、経済活動再開せざるを得なくなったのと遅れて急拡大が始まったばかりの貧困国が経済活動再開するしかなくなったのと原因動機は同じです。
米国の失業率・就労者減は以下の通りです。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/05/fbe9b9327fefa377.html

4月の米失業率は14.7%と戦後最高を記録、雇用者数は前月から2,050万人減
米国労働省が5月8日に発表した2020年4月の失業率は14.7%(添付資料の図、表1参照)と、市場予想(16.0%)を下回ったものの、大幅な悪化となった。就業者数が前月から2,236万9,000人減少した一方で、失業者数が1,593万8,000人増加した結果、失業率は前月(4.4%:2020年4月6日記事参照)より10.3ポイント上昇した。1982年12月に記録した10.8%を上回り、統計開始(1948年)以来の最高水準となった。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/04/f25e797027a01d5f.html

米ロサンゼルス都市圏の失業率、5月には31.7%へ上昇の見込み
ロサンゼルス郡経済開発公社(LAEDC)は4月21日、「南カリフォルニアにおける新型コロナウイルスによる雇用への影響(EMPLOYMENT IMPACT OF COVID-19:SOUTHERN CALIFORNIA)」と題したレポートを発表した。
レポートによると、南カリフォルニア(注1)の雇用者数は、2020年5月に前年同月比27.4%減の746万人に落ち込み、282万人の雇用が失われると予測されている。その結果5月の失業率は31.4%に悪化し、中でも、ロサンゼルス郡とオレンジ郡からなるロサンゼルス都市圏(注2)の失業率は31.7%と南カリフォルニアの平均を上回る高水準が予測されている。
これではしゃにむに事業再開したくなるわけです。

ドイツも26日日経新聞夕刊ではルフトハンザ航空に対する1兆円の政府資金注入の報道がありましたが、コロナ対応優秀国であり経済力突出のドイツを含めどこの国も長引く外出禁止によって経済失速→資金的に限界になって再開を急ぐようになってきましたが、コロナ対処法が見つかった訳ではありません。
格差とは何か?ですが、お金があれば大方の応用が効きますので基本は何ヶ月収入が途絶えてもやりくりがつくか?ですが、都市型生活の弱点というか、食品トイレットペーパーその他必需品の備蓄の多いあるいは応用力のある家庭(マスクが必要となれば妻が毎朝洋服に合わせて作ってくれる)と、単身者等「その日暮らし」的生活者との違いでお金があってもちょっとした品不足情報で直ぐに振り回されて走り回る必要性が違ってきます。
「備えあれば憂いなし」というように大手企業も内部留保の厚い企業と儲けを気前よく分配し(最悪は自社株買い?)次々と投資してきた企業は、変化に弱い点は貧困層と同じです。
世界的に見て災害の多い日本企業は、エコノミストに批判されても内部留保の厚さが際立っていましたが、(個人事業主でもある弁護士業の視点で一定内部留保は必要という視点で、私はエコノミストの批判論を批判してきました)航空産業その他の手元資金の厚さでは国際的に抜きん出ていることがコロナ禍の始まった時点で、国際比較されていました。

新型コロナによる諸外国の実害比較(序盤採点3・池田意見1)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200519-00629583-shincho-soci&p=1

日本のコロナ対策は奇妙に成功」と米外交誌、日本のメディアもようやく気づき始めて……5/19(火) 11:31配信
デイリー新潮
記事は安倍政権に嫌味
共同通信(電子版)は5月15日、「日本のコロナ対策『奇妙な成功』 低い死亡率、米外交誌が論評」との記事を配信した。冒頭部分を引用させていただく。
《米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)は14日、東京発の論評記事で、日本の新型コロナウイルス感染対策はことごとく見当違いに見えるが、結果的には世界で最も死亡率を低く抑えた国の一つであり「(対応は)奇妙にもうまくいっているようだ」と伝えた》
▼日本の新型コロナウイルス対策は、何から何まで間違っているように思える。ウイルス検査を受けた人は人口の0・185%、ソーシャル・ディスタンシングも中途半端。国民の過半数が、政府の対応に批判的だ。

▼だが日本は、感染死亡率が世界で最も低い部類だ。直接死者数は5月14日現在で687人。100万人あたりの死者数は、日本が5人、アメリカは258人、スペインは584人。防疫政策が評価されたドイツでさえ94人だ。これは日本がラッキーなだけなのか、政策の成果なのか、見極めるのは難しい。
以下中略

以上は外国の意見ですが、21日紹介した集団免疫論同様に安倍政策に対する間接的嫌味になっている点は同じようです。
引用中略後続きです。

評論家で「アゴラ研究所」所長の池田信夫氏は、5月9日に「アゴラ」に掲載した「日本人が新型コロナに感染しにくいのはなぜか」で、この記事に異議を唱えた。
《このウィングフィールド=ヘイズ記者はドイツや韓国の検査件数を調べたのかもしれないが、普通の人は検査件数なんか知らない。大事なのは何人死んだかである。彼が「先進国」として日本が見習うよう求めているイギリスのコロナ死亡率は日本の100倍なのだ》
《ところが、この記事にはそれがまったく出てこない。日本の検査体制は不十分かもしれないが、たくさん検査して3万人も死んでいるイギリスと、検査は少なくても死者が550人の日本のどっちがいいのか。答は明らかだろう》
「喩えて言えば、学校のクラスで1番成績の悪い生徒が、オール5の優等生に『もっと勉強をしろ』と説教をするようなものです。一時期、『日本も2週間後は、アメリカのニューヨークのようになる』という予測が、まことしやかに語られていました。しかし、あれから1か月以上が経ちましたが、日本国内で感染爆発は起きていません」

池田氏の現状認識は私と同じというか言い得て妙です。

同氏は続けて
「無為無策」が最高の政策
4月7日の宣言発出は理解できるが、池田氏は「その後の自粛継続や、5月4日に安倍首相が表明した宣言の延長は全く無意味でした」と厳しく批判する。

この表題だけ見ると池田氏が安倍政権の無為無策批判しているように見えますが、内容を見ると無為無策で良かったのに緊急事態宣言や延長が間違いと批判するようです。
私の素人感想では無為=無策とは限らない、状況によってはジタバタせずに「無為」が最高の決断であったことがあります。(登山者が道に迷った場合、歩き回らないのが鉄則と言われます。
これと言った合理的手段不明のときに・・信頼する部下、国民に恵まれているときにはジタバタせずに情報提供だけで警戒してくださいと通報だけに止めるのが最高の政治ではないか?
日本民族は信頼して任せれば、それぞれに工夫して解決能力を発揮する民族ではないでしょうか?
国民の能力が高くとも正確な情報がないと判断を誤るので、台風が来る場合に正確な気象情報が必要なのと同じで「台風がきますよ!」という警戒報道とほぼ同様の役割・・緊急事態宣言は「こういう状態です警戒して下さい」というアナウンスの意味です。
日本は個人個人がしっかりしてるので当時の先端見解(まだ学問的にどれが正しいか不明である以上・コロナに関するいろんな見解や刻々と変わる情報)を紹介してそれをどう解釈して行動するか・近づく台風にどのように備えるかは個々人の自宅や勤務先との通勤経路等の実情に応じて柔軟判断に委ねる・外出自粛を求める程度の政策発信が民族的能力に適合していたと思います。
もちろん以上は素人の思いつき着想です。
池田氏の意見内容を読む気がなかったのですが読んで見ると「無為が良い」という点では私と同意見のようです。
無為が良いと言っても無為=無策ではなく、必要な手は打つ必要があります。
方向性なくジタバタしない方が良いだけであって、どのような台風がどこまで近づいているかに類する国民に対する未知の敵コロナに対する日々刻々の情報発信は必要です。
緊急事態宣言は、政府が知っている情報についての緊急度の宣言であって、気象庁の暴風雨警報発令と同じ意味があり無意味ではありません。
メデイア系の人たちは政府の役割を権力行為・強制することに限定しているのではないでしょうか?
米山氏は自粛要請は事実上強制力を持つとして憲法違反論を展開していた記憶ですが、物事には強制だけでなくお願いや情報発信があります。
その後の引用省略しますが、池田氏は日本等の損害僅少国にはBCG接種国が多いという噂さを利用したBCG接種効果によるというようですが、BCG接種効果論は、もしかして?と言う着想段階でしかなく、まだ学問的にはっきりしていないので、私のような素人が「こうじゃないの!」という感想意見を言うのは別としてプロ評論家の公式意見としては戴けません。

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