低レベル化?とメディアの信用低下

今回NHKの「クローズアップ現代」の見出しと内容の食い違いを書いていて気がつくことは、報道関係者には基本的に反政府主義者が多いのは仕方がないとしても、報道全てに言得ることですが、政治的な主張するには特に反対論者がいることからより一層綿密な裏づけ調査が必要のにこれを怠っている・人材劣化が起きているからではないかと思われます。
昨日最後に書いたように文化欄に逃げているのは、ツッコミが浅すぎても読者が減るだけですが、政治利害のある場合には読者が減る程度では収まらず、利害関係者の強烈不満を呼び起こすリスクがあるからです。
サンゴ礁のやらせ報道では、地元漁協に利害があったことから判明したものです。
その後ネットの発達によって、政治テーマでもメデイア以外のものも反論できるようになってきたので、フェイクニュースが大きな問題になってきました。
あるいは読者や視聴者レベルが上がってムードだけ煽る・根拠のない意見には飽き足らない人が増えてきたのに、メデイア側が社会のレベルアップに追いついて行けなくなっている状態かもしれません。
これがトランプ氏によって、アメリカでもフェイクニュースの批判を受けるようになった原因です。
フェイクニュースは、積極的フェイクもあれば、調査不足もあるでしょうが、もともと報道各社の色付立場が重視され事実調査を軽視する傾向があれば、結果的に調査能力も上がりませんから根は同じです。
色付け角度付け報道が改まらない弊害というか、報道には一定の角度からの関心に基づく掘り起こしが必要なのでそれはそれでいいのですが、関心に基づく事実調査の合理性欠如が問題です。
慰安婦騒動に関して事実調査不足が問題になりましたが、「破産急増」テーマは事実無根でも慰安婦ほどの大事件性がありませんし、誰も問題視せず(私は信用拡大のコラムを書いている途中で最近の破産がどうなっているかが気になったので、たまたまネット検索したら出てきた中でNHKが1番客観的報道しているかと思って覗いて見て驚いただけです)に垂れ流して終わっている印象ですが、事実調査を怠って報道している点では同じ危険性があります。
朝日新聞の慰安婦報道に関する第三者委員会の報告書を、January 9, 2015「第三者委員会の役割2(朝日新聞慰安婦報道1)」のテーマでこのコラムで引用紹介したことがありますので結論部分の一部再引用します。
「・・しかし、韓国事情に精通した記者を中心にそのような証言事実はあり得るとの先入観がまず存在し、その先入観が裏付け調査を怠ったことに影響を与えたとすれば、 テーマの重要性に鑑みると、問題である。
そして、吉田証言に関する記事は、事件事故報道ほどの速報性は要求されないこと、裏付け調査がないまま相応の紙面を割いた記事が繰り返し紙面に掲載され、執筆者も複数にわたることを考え合わせると、後年の記事になればなるほど裏付け調 査を怠ったことを指摘せざるを得ない。」
まして、14日に紹介した日弁連意見書を見ると単に「カードローンについても総量規制の対象にすべきだ」という趣旨だけのことであって破産の増加については傍論的にデータを紹介しているだけで破産増自体に懸念を示すには、時期尚早としたのか?意見を書いていません。
しかもネットで簡単検索した限りでは日経も朝日新聞や東京新聞でも「破産増」だけの表示で「急増」とは書いていない(朝日はローン急増が原因か?と書いていますが破産急増とは書いていません)のに、NHKだけが何故「破産急増」と・・刺激的テーマにしてしかも「クローズアップ」して取り上げるほど社会性があると判断したのかが疑問です。
4月12日の「クローズアップ現代」の内容を読んで見るとカードローンが増えていることが話題の中心で、どこにも破産急増の話題が見当たりません。
羊頭狗肉というか、見出しと内容があってないのです。
破産急増とは時間軸でいうものですが、1%増の基準が1年間の統計結果による以上は長期間観察の結果なのですから、1〜2週間程度かけて関連データを調査して比較判断・深堀する時間をかけられないような緊急速報性がないことも確かです。
報道時間中の進行でNHKの期待に沿う意見が出たかは別としても、(文字化したネット報道には出ていません)まだ前年より1%増えたデータしかないことが明らかですから、これだけでなぜ「「急増」というテーマにしたのかの不思議さが残ります。
日常用語としても、1%程度の増減があったくらいで「急増」「急減」という言葉を使う人は滅多にいないのではないでしょうか?
日中気温がわずか1時間で25度から26度(約4%の変化)に変わっても急上昇と言わないでしょう。
しかも、「若者もシニアも」と見出しになっていますが、内容には年齢別の変化についてどのような調査をしたかの出典の明示もなければ、何%から何%に増えたかも書いていません。
司法統計年表に年齢別の増減推移まで出ていると言う意味かも知れません。
そこで司法統計年表16年のPDFで「破産新受事件数―受理区分別―全地方裁判所
第 102 表」に入って見ましたら、年間の合計数しか出ておらず、内訳としては自然人と法人の2分類しかありません。
NHKはどこから若者やシニアの年齢別統計を入手したのか不明です。
以上によると、派手な見出しと内容がまるで違う上に・・内容のない、いい加減な報道をしているように見えますが、これでは視聴者が離れていかないのか不思議です。
私はテレビを見ていないのでNHKの総合レベルが分からないですが、NHKは報道内容を全てネットにアップしていないはずですから、ネットアップする分は精選されているとすれば、「クローズアップ現代」のレベルがNHKの報道レベルの上位を代表していると言うべきでしょう。
慰安婦騒動以来、親中韓系報道をしてきたフジテレビや朝日新聞の売り上げ減少が知られていますが、これを受けて経営者は必死になって体質改善に取り組んでいると思われますが、NHKには民間と違って市場淘汰の仕組みがないので、番組が劣化していく一方になっているのかも知れません。
私に言わせれば、「朝日新聞やNHKの政治的立場が受け入れられなくなったのは残念」という自己正当化ばかりではなく、政治理念先行で事実無視の捏造的報道しか経験がないから、こんなことになっているのではないでしょうか?
見出しテーマと内容がまるで違っていても気にしない人材レベルの低さ・いろんな角度に知恵をめぐらせての多角的事実調査能力欠如こそが、基本的原因ではないかということです。
「若者もシニアも破産急増」というテーマを決める時に、相応の幹部が関与したはずですが、どういうデータ調査が必要かの思いをめぐらせる能力もない人ばかりで運営しているのでしょうか?
もしかしたら虚偽でもでっち上げでもムードを作り上げれば勝負あり・という成功経験しかない年齢層・事実調査経験のない幹部の方が、事実調査の必要性を具申する若手をドヤして「事実調査などいらない政治色付け先行でやれ!と檄を飛ばしていたのかもしれません。

労働分配率の指標性低下2(省力化投資と海外収益増加)

6月24日の日経新聞「大機小機」の主張を引用しておきましょう。
「・・・第二次安倍政権誕生と同時に始まった今回の景気は拡大56ヶ月を迎え、経常利益は史上最高を更新し、産業界は好況を享受している。雇用報酬は横ばいで民の暮らしは豊かになっていない。今回の景気は[産高民低]だ。・・「消費低迷の背景として人口減少や社会保障の将来の不安、デフレマインドの定着などが上げられている。だが、注目すべきは労働分配率が今回の景気回復局面で急低下し・・・たことだ」「労働分配率の低下は先進国共通の傾向の現象だ」「・・労働分配率が変わらなければ・・消費も多いに盛り上がっていた筈だ・・昨今の先進国の消費低迷と低成長の背景ではないか」
と書いています。
労働分配率は国内総生産に寄与した関係者間の分配の問題であり、企業の好況は海外収益を含めた概念ですから、この比較するのはすり替え的で論法です。
労働分配率については、以下に簡潔に解説されています。
http://www.shimoyama-office.jp/zeimukaikei/keieisihyou/keiei7.htm
労働分配率とは、付加価値のうち人件費の占める割合をいいます。
労働分配率=人件費÷付加価値
付加価値とは、企業が生産、販売等の活動により、新らしく生み出した価値をいいます。 簡単にいえば、材料を1,000万円購入し、工場で製品を製造し、その製品を5,000万円で販売した場合、付加価値は5,000万円-1,000万円=4,000万円となります。
付加価値の計算方法は、主に次の2つがあります。


このように、付加価値とは言わば粗利であって加工するための間接・直接のコストが入っています。
中国がGDPアップのために需要無視でドンドン公共工事していてもGDPだけは増える関係です。
上記の通り控除方式では、製品にするための工場設備等の経費が控除されていませんから、付加価値には昨日書いたように機械設備の費用が含まれている・・設備費用が多くなればなる程付加価値に占める労働分配率が下がる関係です。
加算方式の場合にも、機械設備等のコスト等は金融費用や減価償却費等として加算されますから同じです。
先進国であれば機械設備投入比率が上がり労働力投入量を減らすのが普通→付加価値に占める労働寄与率が下がる→労働分配率が下がります。
また豊かな先進国では企業の海外展開に比例して個々人も金融資産が増えているので、消費力は個々人の金融資産や知財収入等を含めて総合的に考えるべきです。
労働分配率は国内で付加価値を創造した分・・GDPの分配率の問題であって、海外収益どころか国内収益・企業収益とすら直截リンクしていません。
GDPは利益と関係がない・・中国で言えば需要無視の鉄道や道路マンションをいくら造ってもGDPそのものは増えます。
GDPが重視されたのは、無駄な投資をする企業や国はないと言う暗黙の前提があったからです。
自由市場で競争する企業でも見通しを誤って無駄な投資になる場合がありますが、その代わり市場から手痛い報復を受けます。
中国の場合市場競争がないので政権が続く限りソ連と同じで無駄ワオ強制できますが、長期的に見れば、「無駄なものは無駄」・・国民の損失になるでしょう。
国際比較の知能テストや学力テストでも、予め生徒に問題を練習させておくような不正をする国がない信頼で成り立っていますが、これをやる国が増えると国際比較が成り立ちません。
労働分配率に戻しますと利益ではなく設備等のコストを含めた概念ですから、喩えば、IT化やロボットや機械設備投資の結果生産量が5倍になっても労働者の寄与率は下がることはあっても上がることは滅多にありません。
設備の合理化で生産量が5倍になった結果支払う相手の大方はロボットや設備投資代金であって、労賃をこれに比例して増やすのは無理があります。
「労働分配率低下が先進国共通の現象」と言うのは当たっているでしょうが、設備投資等が増えれば付加価値に人件費率が下がるのは当たり前・・それと消費停滞とは直截関連しません。
コストが人件費だけの労賃がほぼ100%の社会(極端な場合、いくら働いても海外から収奪される植民地社会)と国内生産は機械化が進み、国内生産が減ってもその代わり海外収益に頼る割合が高くなる・個人金融資産の蓄積の大きい先進国社会との違いを無視しています。
共産党系のスキな搾取論を言うならば、国際的比較では今でも成り立つ議論のような気がします。
先進国が自国内労働・国内生産以上の生活を出来ているのは、その差額分を(知財・金融その他の名目で)「後進国から搾取している」からと言う論拠の1つとしては意味があるでしょうが・先進国内の所得分配論としては、時代錯誤論です。
先進国では、産業間(業種内の業態) 格差こそが問題でしょう。
古くは1次産業〜2次産業〜3次産業への移行(場所的には都市から農村への所得移転策がその1形態です)が重視されましたが、今は同じ2次産業でも重厚長大から軽薄短小へ程度の大まかな振り分けから、部品系の消長に移っていますし電子機器からIT関連へともっと細かな分類が必要な時代です。
ロボット産業と言っても分野別にいろいろです。
部品と言ってもどんどん進化して行くので電池のように元は機械等の構成品に過ぎなかったものが、今や電池の中の細かな部品を作る企業が部品業界であって、電池は完成品扱いではないでしょうか。

労働分配率の指標性低下1(省力化投資と海外収益増加)

働き以上の高給取りが100人減れば、その分製品コストが下がり国民全般が物価下落の形で受益し、業種的には利益率が改善される資本家やIT関連やロボットその他の製造装置販売関連が受益していることになります。
資本家や金融のプロ、IT技術者の高額受益は税として還元する・インフラ整備や図書館や文化施設・社会福祉資金になっているのが先進国ですが、生活保護やフードスタンプなど恩恵の配給のレベルアップよりは自分で稼ぎたい人が多いでしょう。
以前から書いていますが、同じく月30万円で生活する場合に、福祉支給によるのではなく、自分の働きで生活したいのは正しい欲求です。
従来同一企業内だけで労働分配率を議論して来たのですが、新たなパラダイム発生により今やサービス業と製造業・IT、ロボット産業・製造装置製造業界・配送関係などの異業種・社会内で調整が行なわれる必要が生じて来たと思われます。
6月24日日経新聞朝刊17p「大機小機」では、従来型分析・・労働分配率低下を重要指標として先進国共通のマイナス動向であるかのように論じています。
これまで書いて来たように、世界の工業基地として国内需要を満たすだけではなく世界への輸出分を含めた生産基地であった先進国では、プラザ合意以降日本を先頭にに東南アジアその他で生産しての迂回輸出が始まり、次いで2000年代にはいると消費現地生産が主流となって来た結果、輸出向け分の生産が縮小して行きその内逆輸入が始まれば、国内生産がジリジリと縮小傾向をたどるようになったのは当然です。
ただし、日本の場合最終品組み立て工程を新興国へ移したのみで部品等を輸出する産業構造に変化した結果、製造業はアメリカほど大きく衰退しませんでした。
それでも、濃く汗院のジリ貧が避けられないのでリーマンショック直前頃・・05/26/07「キャピタルゲインの時代17(国際収支表2)」のコラムで約10年間の国際収支表を紹介したことがありますが、今後キャピタルゲインの時代が来る//当時で年間約18〜19兆円の国際収支黒字の約半分が貿易黒字で残りが所得収支黒字でした。
そして現在では、昨年も約20兆円の黒字でしたが、その殆どが所得収支の黒字であって貿易黒字はあったりなかったりの繰り返しでほぼゼロ→17年5月の発表では貿易赤字でした。
このように国内生産による稼ぎはジリジリと減っている状態です。
2007年5月のコラムで儲けの半分が所得収支(海外からの利子配当所得)になっている以上、プラザ合意以前の輸出(国内生産)だけで稼いでいた時代に比べて、国内生産による儲けが減っているのだから、企業利益に対する国内労働に対する労働分配率が減るのが当たり前・・資本収入が多くを占める時代が来ると言う意見を書いたことがあります。
今年の5月13日にも書いています。
企業も儲けの海外比率が上がれば上がるほど、国内労働の寄与率が減っているのだから、国内労働者に対する企業収益との比較では労働分配率が下がるのは当然です。
比喩的に言えば、海外生産による儲けが1000億円で国内生産の儲けが100万円しかない・・収支トントン・あるいは100億の赤字であるが、過去の蓄積による配当や知財等の収益(営業外利益)及び海外収益の送金で何とかなっている場合、国内労働者に海外儲けの6〜7割も配れないでしょう。
トヨタなど海外収益の大きい企業の場合国内製造業の単体では、仮に90単位しか賃金を払えないのに海外収益や知財・金融利益などによる穴埋めによって100の賃金を払っているパターンが考えられます。
アメリカではその地域がダメになればゴーストタウンにして移転して行き、職人の技能が引くkレバベルトコンベアー方式で対応する何ごともアンチョクです、新興国の方が人件費が安いとなれば、国内に踏みとどまって何とか生き延びようとするよりは研究開発部門を残すとしても労働現場は人件費の安いところへ移転してしまうドライ・安易な生き方ですから、日本のように部品輸出で生き残るという工夫が乏しかった印象です。
この4〜5日の動きでは、トランプ氏の迫力に脅されて今年1月頃にメキシコへ工場新設中止発表したフォードが小型車フォーカスの生産を今になって中国生産に移管し、より大きな工場新設を発表したことが話題になっています。
今朝の日経新聞1面の春秋欄では、トレンプ氏の威光のかげりを反映しているとも言われていますが・・。
トヨタに代表されるように日本では、国民・同胞の生活維持が第一目標ですから、何が何でも国内工場を温存しながら海外展開する工夫・・これが部品輸出に転機を見いだしたのですが、アメリカでは丸ごと出て行くので、製造業従事者が極端に減ってしまい低賃金のサービス業従事者が増えてしまいました。
企業が(社内失業を)抱え込まない社会・・アメリカでは給与としては生産性以上を払えないが、国全体で見れば放置出来ませんので、後進国から大手企業や金融等の分野で配当金が入って来るのでこれを税金で取って分配する・社会保障資金になっている面があります。
例えばGMが中国で儲けたと言っても国内GM工場労働者に国内生産性以上の給与を払ったり余計な人員を抱え込まない・・失業者がいくら増えても企業利益は税で政府に収めればそれで責任を果たしていると言う考え方でしょう。
こうなると本当に海外収益を国内還流しているか・・法人税の実効性が重要になって来るので、税逃れ・タクスヘイブンが大きなテーマになって来たと見るべきでしょう。
先進国では多かれ少なかれこう言うパターンになっていますから、企業利益増大に比して労働分配率が下がる一方に決まっている・・労働分配率低下を社会正義に反するかのように主張する論法は経済実態にあっていません。
そもそも、労働分配率の議論は従来の定義では企業の儲けを基準にするのでははなく、国内付加価値.総生産・GDPに対する労賃分配率を言うものですから、海外での儲けが増えていることとは関係がない議論です。
24日日経の「大機小機」は、全体の基調としてアベノミクス以来企業の好況(海外収益を含めた概念)が続いているのに労働分配率が下がっているから消費が盛り上がらないと言う紛らわしい論旨を展開しています。
海外収益増加による好況の場合には国内労働者はその収益に関係していないのですから、企業全体の収益増に対する国内労働者の配分比率が下がるのは当然です。
国内収益100%の企業が10%売り上げ増になれば、その増収増益に寄与する労働者がほぼ10%増えるとすれば比例関係です。
しかしこの後で書くように国内完結企業でも、増収に寄与する労働力量が変わらず最新機械設備やロボット導入あるいは画期的新製品開発による場合もあります。
これらの場合、増収増益による収入の大半は機械設備・発明対価等の代金に消えて行くのであって、機械化等によって現場労働者が逆に2〜3割減ることが多く労働寄与率・分配率は逆に下がります。
消費力のテーマであれば、高齢化が進むと高齢者の労働収入は減っているが、現役時代に蓄えた金融資産による収入・・海外債券を含めた金融収入その他と年金等が収入の大部分を占めているのですから、年金生活者が好景気で月に10万円でも働くようになると、消費力は働く前に比べると大幅増になります・・労働分配率と何の関係があるでしょうか?
企業の好況と個人の消費力を比較するには労賃の増減だけはなく個人金融資産の増加率を含めて比較しないと意味がないでしょう。
多くの若者が少額でも株式等への投資できる制度が出来ていて若者ですら、証券投資している時代です・・そして日本全体では世界中から利子配当等の所得が年間20兆円近くあるのですから、金融資産・知財収入その他を見ないで労賃だけ見ても実態が分りません。

中国やりくりの限界1

中国の改革解放直後は、新規先端立地工場による大量雇用吸収で毎年のように何十万(〜もしかして何百万?)人と言う人々が、近代都市住民の仲間入りすることで所得が何十倍に上がる好景気で沸き立っていましたので、思想統制や共産党幹部の役得にも大した不満が起きませんでした。
1980年代後半だったと記憶しますが、香港から広州市に向かってバスで通過していたときに貧しい農村・・どろんこ道を草履みたいなもので歩いている人が多かった中)に出現している万元戸を通訳の人が紹介してくれたものです。
こう言う時代には高成長に参加できなかった人も2〜3年先は自分も・・と言う期待があって格差不満が起きません。
アメリカンドリームの中国版です。
ちなみにアメリカンドリームは格差社会を前提として(誰でもが・・と言うわけではなく運が良ければ)後で追いつく可能性を強調することで成り立っています。
こう言う期待・前提があって、長年中国では成長率が10%を割ると政権不安が起きるとか、つい数年前には7%以下はデッドラインとか言われて来ました。
リーマンショック以降高度成長が終わって新常態経済に変わって来ると、新規立地・・投資が減る・・新規に都市労働への参入が減って来ると工場労働者に参入する頭数を増やせない・既参入者の賃金アップしか餌!がなくなって来ます。
アメリカでアメリカンドリームが色あせて来て格差反発・・100万に1つくらいしかないドリームを売ったり国威発揚よりは、(宝くじの場合能力差がなく公平ですが・・アメリカンドリームはベーブルースやプレスリーなどの特殊才能保持者だけのことです)目の前の生活水準引き上げ要求が増えて来たのは当然です。
中国の既参入者も僻地農村から来たばかりのときは近代工場で働くだけでも夢のようであったでしょうが、都市生活に慣れて来ると最低賃金では不満が出て来ます。
この辺は先進国で移民2世にホームグロウン・テロリストが育つのと同じ原理です。
中国はリーマンショック以降成長鈍化の穴埋めに?経済原理を無視して最低賃金(需給に関係ない強制です)を毎年大幅に引き上げていたのでそのトガメが遂に出て来ました。
https://www.attax.co.jp/cbc/news/post-2545/によると以下のとおりです。
2016/03/09 2017/01/19
中国 広東省 今年と来年の最低賃金引き上げを見送り
「最低賃金標準は労務費に影響があり、2010年21.1%、2011年18.6%、2013年19.1%、2014年19.1%、2015年19%と推移してきた。
・これに対して広東省のGDP成長率は、2010年12.4%、2011年8%、2012年10.2%、2013年8.5%、2014年7.8%、2015年8%と推移している。」
GDPアップ率と直截比較するのはおかしいと言えば言えますが、何となく分りよいメージ数字です。
要は生産性アップと関係なく賃上げして行くのは非合理ですから、さすがに賃金が上がり過ぎて国際競争力が下がり過ぎたので、業界が保たなくなって来て最低賃金引き揚げストップの動きになってきたのがこの記事の表題です。
専制権力であっても経済原理に反したことは続かない一例でしょう。
いくらバブルを膨らませてもそれに合わせて紙幣増発すれば矛盾しないと言うことでしょうが、国内だけならばマンション価格が百倍になれば、人件費も全部百倍・紙幣百倍供給すれば一貫しますが、国際取引では為替相場で調整しないと中国製品が高過ぎて成り立ちません。
その帳尻合わせを市場・変動相場制に委ねれば・無理な賃上げ分に比例する(資本・幹部の取り分を減らすなどの修正がありますが原則として)人民元相場下落でしょうが、それをすると多くの新興国では対外債務支払不能リスクが起きる点では中国も同じ・・相場に任せられないので、買い支えたり出血輸出をシテ(黒字を稼ぐ)誤摩化して来ましたが、トランプ政権誕生で対米大幅黒字維持が直撃を食らいそうになって、出血輸出も限界が来たジレンマです。
日本と違って財政赤字が少ない・・余裕があると豪語していましたが、これまで公害対策や福祉政策をしていなかったばかりか不景気景気対策の経験がなかっただけのことです。
韓国の年金赤字が日本より少ないと自慢していたことがありましたが、食えない高齢者を放置シテ自殺するに任せていれば(韓国の高齢者自殺率の高さは世界一でしょうが・・高齢者地獄になっている様子が時々報道されています)年金財政は健全でしょう。
中国は今のところ企業倒産防止に必死になっているだけですが、それでも早くも外貨準備の底が見えて来て財政支出の限界が近づいて来た印象です・・・。
その内諸外国並みとは行かないまでも少しは障碍者や高齢者の医療費や福祉・公害対策などに使わざるを得なくなると・・韓国以上のいわゆる先老未富が到来して地獄絵図になりそうです。
ちなみに中国の高齢社会突入も待ったなしの状態です。
2億人を超える高齢者をどうするか・・もしかしたら、地獄絵図が現実社会に迫って来るのが目前・・大変なことです。
http://www.epochtimes.jp/2017/03/26925.html
「中国国務院が3月6日発表した「老齢事業発展計画」によると、2020年に60歳以上の高齢者は2億5500万人に達し、総人口の約2割を占めると予測した。労働人口が減少し、急速に進む中国の高齢化問題は再び注目されている。
同計画によると、20年60歳以上の高齢者の数は総人口の17.8%(14年末は15.5%)に達し、その内80歳以上の高齢者の数は約2900万人まで増える。また、高齢者の扶養比率(高齢人口に対する労働人口の割合)は28%で、5人で1.4人の高齢者を扶養しなければならないことを意味する。」
中国では低学歴・健康管理能力が低いことから50代で働けない人が多いと言われていますので、国際基準の60〜65歳以上を取り上げるのは実態に合っていない・・現実は既に大変な事態になっています。
70前後まで働きたい人が多い日本場合、バカの一つ覚えのように65歳以上の高齢化率を報道するのは意味がないとこのコラムで書いて来ましたが、中国の場合この逆の実態があります。
苦し紛れの無茶をする限界が迫って来てその内ゾンビ企業への追い貸しが出来なくなって、倒産続出→失業増大→マンションや商品投機資金が続かなくなる時期が来る可能性が取りざたされています。
昨年末から今年に掛けて債権委員会なるものが出来て、国有企業の不良債権処理システムが動き出したようですが、何が出来ようとも焦げ付き債権を棚上げされて払ってくれない事実は同じ・・結局最終貸し手・・金融機関の資産が縮小するしかありません。
どこかで経済原理に反した帳尻合わせが必要・・国民に迎合→結果的に傷を大きくするしかないと言うことでしょう。
今朝の日経新聞朝刊21p「大機小機」にはこの辺のジレンマを「中国経済4つの誤算」として要約した意見が出ています。
政権正統性がない穴埋めとして・・と反中系ネットでは良く言いますが、正当性があっても不景気が続くと政権が持たない点は同じです・・。
人件費上昇政策で御機嫌取りをして来た結果輸出向け製造業衰退が始まったのですが、だからと言って今更賃金を引き下げるわけには行きません
だからと言って今更賃金を引き下げるわけには行きません。
・・上記記事はこれ以上賃金を上げない宣言をするのがやっとと言うことです。

欧米と日本の対応3(EU→求心力低下)

トルコが自立したいのは当然ですが、これを表面化した手始めは難民急増に対する取り扱いに関するEUとの対等な(強気)交渉でした。
以下は日経新聞記事です。
http://www.nikkei.com/article/DG 2016/4/4 21:39
「2015年にシリアなどからトルコを経由してギリシャに渡った難民・移民の数は85万人に達する。最大経由地のトルコとEUは、今年3月、トルコが ギリシャに渡った難民・移民の送還に応じる一方、EU各国がトルコ国内の難民キャンプからシリア難民を直接受け入れることで合意した。
送還に応じる見返りに、EUはトルコに対する資金支援を60億ユーロ(約7600億円)に倍増させるほか、トルコ国民がEUに渡航する際の査証(ビザ)免除措置の導入を6月へ前倒しし、トルコのEU加盟交渉も加速させることを決めた。」
大手新聞はなおトルコのEU加盟希望に脈があるかのように書いています・・大手はうっかりしたことを書けないのは仕方がないですが・・、トルコの本音が変わって来たと読むべきでしょう。
ましてイギリスの離脱方向が出た今となっては、無理してEUに入れてもらう必要性が減じたことは確かです。
トルコはクリミヤ戦争で西欧列強の応援を受けて以来西欧列強に従属しっぱなしの屈辱の歴史でしたが、ここに来て正面の敵であるロシアとの関係修復・・ロシアの背後にいて日露戦争で勝ったことのある大国日本との関係強化など、中東の混迷もあって、地域大国としての復活・・独立志向が明白化してきました。
ロシアも国内のトルコ系民族の不服従(勇猛で知られるチェチェンその他中央アジアに広がる少数民族はトルコ系です)に苦しんでいるので、トルコとの修復は望むところです。
この動きに面白くない国々による、歴史的仇敵であるロシアとの仲違いを引き起こす陰謀(・・ロシア軍機の撃墜事件は何故起きたか闇の中でしたが、賢明にも双方感情的にならずにうまく修復してしまいました)だけでなく周辺国からも引き放す陰謀画策が激しくなり、昨年からイキナリトルコ国内でテロが頻発し、エルドアン大統領批判が大きく報道されるようになって来た原因とも言われます。
唆しがあれば直ぐに乗る中韓とは違い・・ロシアもトルコも冷静なので、欧米の陰謀や唆しに簡単に乗らないので、今のところトルコ、ロシアの関係悪化は見られません。
応酬の一致団結による対外政治力発揮効果を見てみると、確かにサミット7カ国首脳会議に西欧から、6人も出席出来るので数の上で有利になっていますが、加入者にとって見るとメリットがあるかと言う視点が必要です。
加入国が27カ国の場合、自国意見は27分の1しか反映しない上に小国は国力比例してもっと発言力が低く・・言わば独仏の官僚主導になってしまいます。
その代わり小国・・生活水準の低い中東欧やバルカン等諸国にとっては、文化度の高い英仏独に自由に出入り出来るメリットは大きなモノがありますので、自分の意見があまりとおらなくとも不満はそれほど大きくはありません。
日本にアジア諸国の人が出稼ぎに来るのは、政治意見を言えず言葉が不自由でもそれ以上のメリットがあるからです。
イギリスにとっては独仏とは対等者間であるのに文化基盤の違う(大陸と海洋民族の大きな生活習慣のが違い・・独仏とポーランドとの違いより大きいでしょう)独仏主導で自国の生活ルールの端々まで口出しされる不愉快と引き換えに独仏と自由に往来出来ることによる生活水準向上メリットは多くありません。
イギリスの発言力は大国なので27分の1ではなく2〜3倍の27分の3あったとしても独仏連合に多数決で負ける点は同じです。
イギリス以外は皆大陸諸国・・大陸的画一的処理方式が海洋国イギリスの生活方式にあわないのに、いつも多数で押しきられてしまう・・この状況にイギリス人の不満がたまっていたと見られます。
イギリス国民投票の結果は、トルコの加盟意欲にも大きな影響を与え・・EUの拡張主義・画一処理が曲がり角に来たことを世界に示した大事件であるからこそEU・・マスコミが焦っているのでしょう。
EUの設立理念が自由貿易促進ならば、・・・「民族の個性を残したまま関税さえ下げて行けば良いのでないか?」と言うのが、イギリス国民の思考方式でしょうから、何故何もかも1つの国になる・・民族移動の自由まで認める必要があるのか?と言う疑問です。
この辺が大陸の観念論・・中央集権的的画一処理優先発想とイギリスの経験論・・必要が生じてから(つぎはぎ的に?)考えて行けば良いという意識・・私たちも海洋民族として共感出来るところです。

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