輸出→現地生産→利益還流4

営業利益率の低下は、売り上げが現状維持または伸びていても値引き等の無理な販売に陥っていないかの指標・無理の限界がきて経営がガタガタになる先触れを知るための重要指標です。
昨日紹介した現代自動車の表によれば、売り上げが0、9%増なのに営業利益率が47%も下がっているのですから、無理な売り上げ維持努力があったと見るべきでしょうか?
ところで、昨日見た業績表によると当期純利益で見ると63、8%減のようです。
営業利益率だけ見てれば良いとなると費目の付け替えなど小細工がはびこる他、関連会社に損失を付け替えることも可能ですので、連結での総合収支の動向も重要です。
当期純利益63、8%減ということは、売り上げ内容が悪いだけでなくその他の分野でも総合的(悪い時には悪いことが重なる?)に苦しいのでしょうか?
当期純利益は資産評価損など為替動向の損得も含めた結果ですので、長年の不振事業の整理(膿を出して)で次期以降の飛躍のきっかけにしたい場合もあれば、先行投資の花が開く前の持ち出し・苦しい時期もありますので、当期純利益の増減結果数字だけでは一概に言えませんが・・・。
ついでに日本の輸入車比率を見て起きます。
https://www.aba-j.or.jp/info/industry/7087/

18年の輸入車新規登録台数 シェア過去最高、好調SUVが牽引
2019年1月15日
日本自動車輸入組合(JAIA)が10日発表した2018年の輸入車新規登録台数によると、外国メーカー車の販売台数は前年比1・1%増の30万9405台と3年連続で増加した。
・・・日本メーカーの逆輸入車は、前年比26・5%増の5万6861台と2年ぶりに増加した。17年9月に「シビック」を国内に再投入したホンダが、同4・7倍の1万4130台を販売した。

日本の輸入車市場の動向は、日系メーカーの逆輸入の動向が大きなウエートを占めていることがわかります。
毒餃子事件で有名になりましたが、中国解放後日本の食品工場その他が大挙して中国現地進出して、日本への農産物等々の逆輸入を手がけています。
私の町内会で行なっているお花見大会で、参加者に振る舞う焼き鳥が中国製の冷凍ものであったことから4〜5年前国産に切り替えたことがあります。
スーパーにいけば食品のかなりの食品が中国産になっていますが、ほとんどが日本企業が進出し日本向けに生産工程を指導して逆輸入を始めたものです。
米国の対中巨額貿易赤字といっても、内実は米国企業が中国進出して逆輸入している例が大半と言われています。
米韓FTAに戻ります。
FTAの結果、米国車の輸出増にほとんど関係がなかった・・逆に韓国車の輸入が増えた方が圧倒的に多かったので米国の不満が大きく、トランプ政権成立直後から対韓批判のトランプ砲が炸裂したことによるFTA改定交渉が始まりました。
トランプ政権による改定交渉の影響を紹介します。
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/b55a97f94ec06747.html

2018年4月18日
米韓FTA見直し:外資系メーカーが自動車輸出をけん引
大筋合意の評価と韓国の対米自動車貿易・牛肉輸入の推移(2)
米韓FTA発効後、韓国の対米自動車輸出の増加が顕著だ。しかし、これは米韓FTAによる米国の乗用車輸入関税撤廃前の現象で、撤廃後は逆に輸出が伸び悩んでいる。また、輸出を増やしたのは在韓外資系企業で、現代・起亜自動車は米国市場での販売伸び悩みなどにより、輸出増は限定的だ。他方、対米自動車輸入は韓国の乗用車関税引き下げ・撤廃により増加している。

米韓FTAまで国内高利益率を元手に韓国企業は海外進出していたのですが、FTAによってその事業モデルが崩壊したので国外でもジリ貧になって来たようです。
現代・起亜自動車グループに対する独占利益保護がなくなると、貿易黒字といっても外資系の韓国進出企業の輸出が増えている状況が上記に出ています。
新興国が国内産業育成のために輸出基地の提供・・国内販売を事実上規制して輸出特化するならば進出を認めるのが新興国のパターンでしたが、韓国の場合進出した韓国GM、サムスンルノーも事実上輸出特化企業になっているようです。
25日紹介した私の発展ステージ論でいえば、韓国に進出した外資系企業に限っては、原初的形態・新興国が輸出特化型企業誘致して外貨を稼ぐ①段階でまだ止まっていることがわかります。
この数年国外進出した韓国系企業が本国の支援なしの公平競争でも勝ち残り、ステージ⑥海外収益還流段階に進めるかの真価が問われるようになってきたようです。
このステージへの移行が(収益の還流)できないままでドラ息子への?仕送りが必要な限り、いつまでも貿易黒字に頼るしかないでしょう。https://www.sankei.com/premium/news/180423/prm1804230001-n1.html

2018.4.25 08:00
ビジネス解読】韓国自動車産業が崖っぷち
「ビジネスモデル」崩壊危機
直近の韓国国内の自動車生産台数がメキシコに逆転されたうえ、業界を牽引(けんいん)してきた現代(ヒュンダイ)自動車の勢いはじり貧だ。国内における圧倒的なシェアを背景にした現代自のビジネスモデルが、国内外の経済環境の急変により崩壊の危機にさらされているからだ。
東亜日報は3月13日の配信記事で、「韓国自動車産業に赤信号がともった」と切り出し、1~2月の韓国内自動車生産台数が前年同期比5.5%減の59万9346台となり、前年世界7位のメキシコを約3万3000台下回ったと報じた。
聯合ニュースは2月13日、現代自と傘下の起亜自動車の国内生産に占める割合が昨年末に44.0%となり、06年の73.3%から大幅に減ったと報じた。「国内での生産性やコスト面で競争力を失った」と指摘する。

上記によれば、現代・起亜グループの占有率が、FTA以前は73%もあったのに18年4月の記事では44 %に下がっている→この間、防戦のために販売単価下げの繰り返し→(昨日紹介したように)営業利益率低下→(関連企業にも相応の負担を求めたでしょうから)連結利益悪化→下請け納入単価切り下げ→下請けのリストラ→倒産続出?
この種パターンが車産業に限らず・・大宇造船、韓進開運の破綻・関連納入企業倒産などの全般的マイナス傾向になって行ったものと思われます。

輸出→現地進出→現地生産→利益還流3

中国は政府の資金投入を背景に国有企業が採算度外視の赤字輸出を仕掛けては世界の競合企業を潰してしまい独占企業化している点が国際問題化しています。
ここ数年では、鉄鋼の赤字輸出が世界の批判対象になっていましたが、これはコスト比重が大きい鉄鉱石価格が国際指標で明らかで、赤字輸出が明瞭だから批判しやすいだけです。
例えば中国の鉄道企業が代表的ですが、さしたる技術がないのに各国の鉄道敷設事業の受注入札で採算度外視受注によって日本が受注を奪われる例がしょっちゅうメデイアを騒がせていましたが、こういう不公正受注の繰り返しによって結果的に世界トップ企業になっているのがその一例です。
今回の米中対決ではトランプ氏が「国有企業優遇をやめろ!」という中国共産党支配の根幹に関わる要求を突きつけているので、習近平は自分の首・失脚すれば文字通り生存の危機に関わるので拒否せざるを得ないという構図らしいですが、韓国はバックの国内市場が小さいこともあって中国ほど露骨でないものの似たことを巧妙にしてきたし、これを参考に中国が大規模・露骨にやってきたことになります。
当初に締結した米韓FTAに関する当時のネット記事が見当たりませんが、ウイキペデイアによると以下の通りです。

・・・協定は、2012年3月15日に発効[4]。米韓FTAの発効により5年以内に95%の品目への関税を撤廃される・・・

上記によると12年発効で5年以内に95%削減・・5年間は段階的引き下げですから5%になってからまだ日が浅いことがわかりますが、毎年のように5分の1づつ関税引き下げが始まると年々の影響は大きかったでしょう。
関税大幅引き下げ→米国製車の輸出自由化!(トヨタも米国製であれば韓国輸出可能になった!)と騒がれたものです。
ただ米国生産の場合人件費等コストが高いので、結果的に米国車の対韓輸出は成功しなかったようです。
このFTAによるかどうか不明ですが、今ではGMとルノーが韓国現地生産しているようですが、これらも、昨年GM群山工場閉鎖がニュースになっていたようにうまくいってないようです。
サムスン・ルノー合弁工場もうまくいかず、日産の生産委託でなんとか維持して来たようですが、ゴーン氏に対する刑事事件によって無理な提携見直し機運になっているのでこの生産も消滅方向に向かいそうです。
現地生産は基本的に先進国から後進国への工場移転・・人件費等の安さと現地需要に短時間対応のメリットで遠隔地の本国からの輸出をやめて現地化するものです。
(韓国が先進国とすれば)先進国同士の現地生産化はこうしたメリットがほとんどない・韓国民族資本でさえ自国からの輸出の限界を感じて輸出先での生産に現地化するしかない(・これが成功するかどうかで韓国の将来が決まる状態です)ので、無理があります。
ベンツその他がいかに日本で人気があっても、日本国内生産に移行しないのは(日本は関税が低いこともあって)この理由です。
逆からいえば、先進国でありながらその国で現地生産が増えている国は、貿易制度の不公正度が高いか、輸出国での不公正な輸出ドライブがあるかです。
相互関税縮小は輸出面では韓国に有利だったでしょうが、輸入自由化や韓国内生産が始まったことによる競争環境に対抗するためには、現代自動車など国内企業の利益率減少・ボデイに効いてきたはずです。
ちなみに、今では日本の自動車市場に比べて韓国では輸入比率が高くなっていると言われていますので、アメリカへの輸出が増えた方が大かったとはいえ、それまで厳しい閉鎖市場だった韓国内市場(資本自由化による米国企業の韓国進出→国内生産が増えたこともあって)に与えたFTAの影響が大きかったと思われます。
https://japanese.joins.com/article/872/247872.html
韓国市場で輸入車比率が過去最高…国産車販売は3年連続減少

2018年12月07日07時44分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
韓国自動車産業協会と輸入自動車協会によると、今年(1-11月)の韓国自動車市場で輸入車のシェアは16.92%となった。過去最高だった2015年(15.53%)に比べ1.39ポイント高い。このままいけば今年の輸入車のシェアは過去最高となる。
・・・同じ期間、国産車の販売台数(118万2583台→117万9773台)はむしろ減少した。2016年(134万3379台)に続いて3年連続の減少だ。国産車は国内市場を奪われる一方、海外市場では苦戦している。2012年に301万2584台を輸出した韓国自動車企業は6年連続で輸出台数が減少した。

上記によれば3年連続減少というのですが、FTA発効5年経過したのは上記記事発行日の3年前のことです。
16%しか輸入比率がない点を見るのではなく、16%に抑えるために国内業者の消費者獲得競争激化→利益率低下によって国内ボロ儲けを輸出競争につぎ込んで格安販売の原資にしてきた事業モデルが壁にぶち当たってきたことがわかります。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/01/5a64649cc2cc69f2.html

現代自動車、2018年の営業利益は47%減に  2019年01月31日

表1 現代自動車の業績

車(に限らず商品・サービス)に人気があって売り上げ増の場合、定価販売に近づき営業利益率がアップし、売れないのを補うための代理店への奨励金アップや値引き販売・広告宣伝費アップなどで外見上売り上げ減を食い止めたり、販売台数が増えていても営業利益率が低下します。
日産は外見上目覚ましい販売増でしたが、ゴーン氏失脚により内実では無理があったことが、明らかになったばかりです。

輸出→現地進出→現地生産→利益還流2

(誰も支持しないかもしれませんが昨日書いた)私の考える独自の発展ステージ論によれば、貿易収支黒字に頼らなくなりつつある日本経済は発展ステージが上がっているので、めでたい事実ですが、これをいかにもマイナスイメージで報道するのが大手メデイアでした。
従来の報道では、まず貿易赤字になるとこれを大きなテーマで書いていて資金還流によって補填できる構造になっている事実を言い訳程度にちょこっと書いていることが多かったのですが、昨日引用記事ではいつの間にか、(私の20年来の意見同様に)主客逆転した書き方に変わってきました。
現地生産・消費地直近での生産は経済合理性がある上に、フードスタンプ配布のような貧困国援助よりも現地人も職につける・生活力向上メリットが大きいので、国内生産は国内消費に必要な限度に落ち着かせ、国内需要に必要な食料.資源等の輸入代金等は現地生産による収益で賄うのが国際正義上も合理的です。
その先に進むと、収益が外国に収奪される仕組みが不正義だという国際議論が起きてくるリスクを15年ほど前に国際平準化論シリーズで書いたことがありますが、ここでは省きます。
さらに海外生産が進むと日系企業の逆輸入が増えて、国内需要分も輸入に頼る・貿易赤字化進行となるのでしょう。
私の発展ステージ論によれば、輸出製品生産に必要なエルギーや完成品に組み込むための資源輸入が不要となり国内消費に必要な限度になって行きますから輸入額も減っていきます。
内需に必要な限度の国内生産になるので、GDPは輸出用国内生産が減るのでこの分だけGDPが縮小するし、労働力も生産用からサービス産業向けに変わっていきます。
女性の地位向上という理念や政治運動によるのではなく、業態変化が女性の地位向上に大きな影響を及ぼすでしょう。
個々人で見れば、衣食住の最低生活を満たすのに必死の時期には、まず空腹にならずに済む生活費を稼ぐのが最重要でこのお金を稼ぐ人の立場が強いでしょうが、一定水準を超えると室内のしつらえやおしゃれな生活を営む能力の必要性が高まります。
日本の場合、急激な国内生産縮小は国内雇用のミスマッチになるため輸出用生産を段階的に減らしていったので、所得収支と貿易黒字双方の巨額黒字蓄積・・年間約20兆円弱で約20年間推移してきました。
一方で上記の通り生活水準向上に向けて内需拡大にも努めてきた結果、GDPが減少するどころか、じわじわと上昇してきたのが現実です。
メデイアは日本のGDP前年比アップ率が諸外国より低率であることを大変なことのように喧伝し「失われた20年」とイメージ主張し、いかに中韓の成長力が高いか・・中国が日本を追い越したか韓国が追い上げているとかの報道に終始してきました。
私の発展ステージ論によれば、GDP競争の段階を日本は疾うに卒業しているのですから、こんな比較は意味がないことがわかるでしょう。
食事をするにも空腹を満たす目的9割と雰囲気を重視するのが9割では生産高では大きな違いがでてきます。
庭の草花の手入れに費やす時間は至福のときですが、GDP統計では大した貢献度がないのでしょう。
今でもガムシャラに働いて成功した人が成功者としてメデイアで賞賛されますが、国家全体としてはこういう人も必要ですが、その人の人生としての意味ではまた別でしょう。
カリスマ的経営者のいる会社では、創業者に畏敬の念を持ってみんな接するでしょうし、対面する人もすごいですね!と賞賛することはあっても「いい加減に家庭を大事にしたら!」と忠告する人はいなくなるのでしょう。
GE元会長が日経新聞に連載した「私の履歴書」ではGE会長としてカクカクたる成果をあげた彼が、その過程で成功にこだわる彼を見限って別れて行った元妻のことを切々と書いているくだりがあります。
原稿依頼した新聞社の方は、いかにして成功したかの履歴を書いて欲しくて執筆依頼しているのでこれを受けた以上、まさか仕事一筋で人生失敗したと書けないものの、老境に入った彼としては、暖かな家庭を失った悔悟の念・・自分の一生はなんであったのか?の気持ちが滲み出す文章です。
GE会長より小型ですが、家庭より仕事という考えで事業成功をした人が老境に入って孤独をかみしめるようになったのか?30年ほど前に別れた妻子に会いたいという人がいます。
妻子の方はそれぞれ現在落ち着いた生活をしているので、(昔流行した言葉ですが)プチブル的平和を楽しむ娘らにとっては、父親がどういう父親であったかが重要で現在事業で成功しているかどうかは関係ないようです。
父親の方は成功している姿を娘らに自慢したいし、娘らはそんなことに価値を置いていない・・このギャップをどうするかで悩むのが私の仕事です。
私も後期高齢者になったので、80歳前後で人生の整理・終活?をしたい人がこの数年私の周辺で増えてきました。
ある家庭で消費する量や品質がその家庭の豊かさであり、飲食店経営者が、飲食店で消費する食材の量を含めた消費量が近隣の一般家庭より多くとも自慢にならないでしょう。
25日に書いたステージ④ランクになった国は、輸出産業が大量仕入れ(輸入)大量輸出しているので見た目にはGDPが上昇しているのですが、外形的に大きく商品が動くだけで自家消費量は少ない・内実が乏しい状態です。
脱サラ.創業直後は睡眠を削り家庭をそっちのけで頑張る時期があってもいいでしょうが、ある程度成功すれば、家庭や文化面に時間をさくように物事にはライフサイクルがあります。
前年度比売り上げ増での競争・・GDP比でランク付けするのは同じステージ④にある国同士の将来性のランク付けとして機能するでしょうが、この段階を卒業して次のステージに移行している国と比較する指標ではありません。
大規模輸入して大量加工して大規模輸出する国は一見活気がありますが、物流センターのように物流がぐるぐる回っているだけで内実が貧しいステージにある・・中韓等の経済段階というべきでしょうか?
あるいはレストランに顧客用の立派なテーブルがいっぱいあって一般家庭のダイニングルームより立派でも、店主一家が裏手の薄くらい汚い部屋で食事している場合、どちらが豊かか?ということです。
生産業で言えば、工場兼自宅で千〜数千坪の大きな敷地内で生活している場合、一見大きな塀に囲まれた中の主人一家ですが、実際の居住空間が狭い上に工場内なので騒音振動臭気など環境が劣悪です。
工場の国外移転は、工場と自宅分離の国際版です。
ちょっと東京の地名を冠した企業名を思い出すだけでも、石川島播磨、東京電力、東芝、カネボウ(鐘ヶ淵紡績)など企業名でも分かるように東京都内に多くの工場が混在していました。
中央大学や教育大学その他大手大学の多くも学部別に郊外へ移転しましたが、いまでは逆に都心回帰を目指す方向になっています。
これらの工場や大学が各地に出て行くことによって、東京が衰退するどころか逆に発展する一方です。
東京と地方を比べて、東京には生産工場がほとんどない・もう東京はダメだと思う人は滅多にいないでしょう。
1000万の都市人口を養うにしても、国外収益等の送金で生活する先進国都会・特に東京は清潔です。
いわば、室内で石油等を燃やす暖房の代わりに、遠隔地の火力発電で都会はクリーンエネルギーによる冷暖房を満喫する関係です。
企業オーナーも主力工場を地方に移転させても、首脳部の自宅は高級住宅街のある東京や(元は船場・道修町発のオーナーの場合)芦屋等に移転するのが一般的歴史です。
本社の集中する丸の内などは工場騒音等もなく従業員もおしゃれな街で働けるので昔から人気エリアです。
英国は19世紀に世界の工場を引き受けて煙の都ロンドンになり、日本も一時高度成長期世界の工場化して公害に悩まされましたが、この数十年では輸出するよりは需要地・現地生産化して、先進国は内需分中心に国内生産するだけになりつつあります。
・・日本は資源を輸入に頼るしかないので、まだ自国内の必要物資を買うための代金捻出のために輸出していますが、(この数年では貿易収支はまだ原則的に黒字・たまに赤字になる程度)将来的には自国にない資源や食料等の国内消費に必要な資金は海外生産による利益配当や知財・技術料収入等で賄っていく方にシフトして行くのでしょう。
こういう時代に進んでいるのに国内生産量の増加率・GDP増減率で自慢しあっているのは、数十年遅れの価値基準で売り上げ自慢しているようなものです。
成金がいかに儲けたかを自慢し、下品な調度品を自慢し合っているような世界を、メデイアがいつまでも重視するのか不思議です。
企業は自国政府の保護(産業育成)を背景にして大きくなっている内弁慶ではなく、自国政府の後押しのない海外生産で利益を上げられてこそ世界でやっていける企業というべきです。
海外進出してうまくいかない企業しかない・・輸出で黒字を稼ぐしかない国って、実質競争力が弱くないですか?
韓国現代自動車は長年の自動車輸入規制によって、国内独占を利用して法外な?高価格で国民に売りその儲けを原資にして国外で安値販売しているパターンでした。
これは4〜5年前だったか?に米韓FTA協定によって米国製あれば高関税をかけられなくなったので、日系その他が米国生産車の投入が可能になりました。
米韓FTAによって現代自動車の国内利益が減少し、国外ダンピング輸出や現地進出原資がなくなるので、今後輸出や国外展開は苦しくなるだろうと当時言われていました。
ここ数年顕在化してきた現代自動車や韓国企業の苦境は、実はこの時に始まっているかもしれません。

輸出→現地進出→現地生産→利益還流

韓国の貿易依存率が高すぎると一般に言われる問題点は、韓国の産業構造が現地生産化に適していない・自前技術率が低いので海外進出すると国内空洞化が進みすぎる弱点を言うと見るべきかも知れません。
これが韓国や中国の失業率の異常な高さ(あるいは大卒就職率の低さ)になっているのでしょう。
韓国の貿易額の減少が国内生産高の減少を一定程度意味するとしても、上記の通り現地生産化進行による面もあるので、輸出減少の代わりに所得収支黒字等が増えたかどうか・・総合的に見るには貿易量縮小と所得収支等の黒字化=経常収支黒字化の関係を見ないと現地生産化の母国へ影響度を計れません。
現地生産化進めば輸出用国内生産が(輸出企業向け部品等納入する下請工場生産も)減少するのが当たり前ですから、輸出減少以上に知財や所得収支黒字が貿易縮小の穴埋めになっている国は、現地生産化が成功していると見るべきでしょう。
こう言う国は従来の輸出品は原則現地生産になるので内需率が高くなり輸出入の貿易総量が内需に必要な量に近くなるまで縮小します。
日本の例です
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41096450Y9A200C1EA4000/

海外投資、日本の稼ぎ頭に 経常収支の構図変化 2019/2/8 23:19
財務省が8日発表した18年の国際収支統計(速報)では、海外とのモノやサービスの取引を表す経常収支は19兆932億円の黒字だった。
黒字の額は2つの柱でほぼ説明できる。1つは海外子会社のもうけにあたる直投収益の10兆308億円。もう1つは外国債券の利子などにあたる証券投資収益の9兆8529億円だ。貿易黒字は1兆1877億円にすぎない。
企業が海外志向を強めていることが背景にある。かつての日本の製造業は日本で車や家電を作り、海外に輸出するのがモデルだった。だが現地のニーズに合わせ、生産効率を重視するために現地生産を増やした。家電では韓国や中国の台頭で、日本製品の競争力が弱まった面もある。
海外への直接投資の残高は9月末時点で185兆円。北米やアジアを中心にこの10年間で3倍近くに増えた。工場建設やM&A(合併・買収)に加え、小売りなど非製造業の拠点も増えている。ここ数年は海外景気も好調で、稼ぎも右肩上がりで上がってきた。
海外証券投資の残高も9月末時点で473兆円と増加が続く。

韓国の場合どうでしょうか?
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44509730Y9A500C1EAF000/

韓国の1~3月の経常収支、7年ぶり低水準 2019/5/8 10:15
ソウル=鈴木壮太郎】韓国銀行(中央銀行)が8日発表した1~3月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引を表す経常収支は112億5000万ドル(1兆2400億円)の黒字だった。黒字は前年同期より3%減った。半導体の不振や中国景気の減速で輸出が振るわず、2012年4~6月期(109億4000万ドル)以来、ほぼ7年ぶりの低水準となった。
貿易収支は196億1000万ドルの黒字。黒字は同13%減った。輸出は1375億ドルで同8%の減少。半導体や石油化学など、主力製品の輸出が振るわなかった。輸入は同8%減の1178億9000万ドルだった。
3月の経常収支は48億2000万ドルの黒字だった。83カ月連続の黒字だが、前年同月比では6%減った。貿易収支は84億7000万ドルの黒字で、前年同月比10%減った。

上記によると韓国の1〜3月の貿易収支黒字が13%減り、経常収支黒字も3%減りました。
3月だけで見ると貿易収支黒字が10%減っているが、経常収支黒字も6%減っている
・・貿易黒字が減った分の穴埋めに国外収益が増えていないこと・現地生産増による貿易収支黒字減少でないことが分かります。
日本のように生産工場の海外展開による健全な!貿易収支黒字減ではないのかな?
産業構造の発展形態を見ると、①国産技術+海外技術導入→②国産化成功→③輸入減→④輸出産業化→⑤国外現地生産→⑥本国への技術指導料や知財や所得、利益(配当収入)等の形式での資金還流となるパターンが考えられます。
韓国中国は、民族資本育成のために生産品の100%あるいは何割以上を輸出する条件付きで外国企業の工場を丸ごと導入して現地進出を認めるなどして上記②を飛ばし一足飛びに輸出産業として貿易黒字化を進めました。
中韓にとっては外資系工場が黒字で外貨を稼いでくれるし国内インフラ資金に使える他、外資が工場用地等の取得資金等の資本が大量に入るメリットがあり、他方で外資企業で働く国民が身につけた技術等が国内民族企業レベルアップに良い影響を与えるだろうという目論見です。
日本企業が中国進出したサービス業等で現地人に店舗マナー等を教え込むとマナーを身につけたが中国人がすぐに中国系企業に引き抜かれる現象が常識化していました。
工場の生産技術も同じです。
これをメデイアは日本企業は現地人に権限を与えないからだという批判していましたが、相手は技術を盗む目的ですから問題のすり替えでした。
上記⑤の現地生産が軌道にのるまでは、内需を賄う資源等の輸入代金を賄うための輸出用国内生産が残りますが、⑤段階で成功してその成功益の還流で賄えるようになれば、輸出目的の国内生産をする必要がなくなる論理です。
いわば内需率100%内外が、原理的理想形です。
先進国で内需率が重視される所以です。
もちろん海外現地生産の場合、国内にないカントリーリスクがあるので、(11年に中国でいきなり反日暴動〜工場店舗等の焼き討ち〜不買運動が燃え熾りました)収支トントンではいざという時のリスクが大きいので、国内工場の国際競争力維持のために一定率輸出できる程度の実力維持・・貿易黒字が必要でしょう。
日本は2000年に入った頃からリーマンショック頃まで海外収益等の資金還流が年間約10兆円弱で推移して、貿易黒字も約10兆円内外合計約20兆円弱)で推移して来ました。
(この辺は、失われた20年論に対する批判として何回も書きその都度?データを紹介してきました・・ここで20年分以上のデータを引用すると大きくなりすぎるので気になる方は財務省統計に入ってみて下さい)
リーマンショック後貿易黒字が減少してきて最近では貿易収支トントンまたは赤字の年度も出てきていますが、これを輸出力低下=国力衰退と考えるレベルに対しては、いかにも日本の国力衰退イメージ拡散に役立つので単月でも赤字になる都度マスメデイアは大々的報道してきました。
今回のシリーズで引用してきた小塩氏の論説は従来型の貿易収支だけを見て韓国の対日依存度低下論もその軌道上にあるようです。

海外進出と現地化(本国生産縮小)

世界企業の国際進出競争は当面新興国の人件費の安さに注目して完成品の輸出基地としての利用目的でしたし、(日本の場合欧米による貿易黒字対する圧力回避目的に合致しました)中国等も原則輸出基地として(全量輸出)のみ特区を作って進出を許可していました。
国内販売を認めなければ国内企業が先進国企業によって淘汰されないで済み、外貨を稼げるほかに進出した企業で働くことによる一部国民の所得向上や技術移転が見込める1石3鳥の政策でした。
実際そのように進行していて中国に限らず東南アジア諸国の国民所得が上がる一方で、他方で地場産業が興隆していて、今や日本企業(サンヨーの白物家電部門は中国のハイアールだったかに買収されています)を脅かしていますから、この政策は成功を収めています。
輸出基地である限り完成品(現地組み立て)を欧米に輸出する競争だけで、部品には関係がないかのように見えていましたが、輸出基地としての工場進出によって現地人の所得が上がり、現地人が顧客に成長して行くのは時間の問題です。
低賃金利用による輸出代替基地から現地消費目的生産に代わって来ると現地人の嗜好にあったものをつくるしかないので、部品競争でも似たような競争となります。
部品自体にエンドユーザーーは関心がないのですが、ニーズにあったものを早く作るには部品メーカーが近くにないと困ります。
現地ニーズに如何に早く対応して製品を早く開発して市場に出すかの競争になると、納品の迅速さ・部品擦り合わせ作業などの競争があって、品質差が余程大きくないと遠くから輸出・納品する方が擦り合わせや即時納品競争に不便なので不利になります。
元々輪島塗であれ何であれ、特定産業の周辺にその関連産業が集積しているのが普通ですし、トヨタの周辺に部品工場が集積していた原理の国際版ですから当たり前です。
トヨタ・ホンダなどが海外進出すると部品会社もついて出て行くしかなくなるのは、この原理によります。
昨日書いたように貿易の活性化は物品や技術の偏在を調整が完了するまでの過渡的なものに過ぎないのですが、産業革命以降数百年かかっていたので貿易の活発化が恒久的・無限であるかのように誤解していたに過ぎません。
最近では通信技術発展の加速化によって、グローバル化のスピードが早いので今後20〜30年もすればこの過渡期が終わり、結果的に工業製品貿易量が急激に縮小して行くことになります。
当面は研究開発拠点が現地そのものではなく、地域統括本社みたいなものがある場所・・シンガポールみたいな地域が幅を利かすでしょうが、将来的にはそれぞれの国・消費地での研究開発が主流になって行く筈です。
「高度部品を日本は作っているから・・研究開発部門が残るからいつまでも貿易赤字にならない」と言う希望にすがりついているのは危険です。
(高度部品や基礎研究等は残るにしても、今の人口を養うに足る燃料や食料品等輸入を賄えるほど稼げるようにはならないでしょう)
この結果FTAやTPP等が進み関税等の障壁縮小がどんなに進んでも、・・進めば進むほどグローバル化の加速が貿易量の増加を招くよりは、逆に縮小方向になって行くだろうと言うのが私の意見です。
将来の現地生産時代到来・・物品貿易量が減少して行き、貿易黒字を少ししか稼げなくなると資源輸入代金の獲得源も縮小します。
グローバル化=現地生産化とは工業製品限定のことであって、食糧や資源類は古代からの原則どおり交易によるしかありません。
グローバル化が完成し、工業製品の世界平準化=自給自足化が進めば、工業品の輸出によって食糧自給能力以上に人口を増やして養っていた国ではその咎めが出てきます。
自給能力が人口の上限を決めていた時代には農業=領土の広さに人口が比例していましたが、工業品輸出代金で食糧等の資源を輸入できるようになると、この制約が取り払われて、輸出能力向上に応じた人口増が可能でした。
企業で言えば製品の売れ行きに応じて生産増→従業員増になっていたのと軌を一にしています。
この結果日本では幕末の3〜4000万程度の人口が今の一億数千万人までふくれあがって、なお豊かな生活が出来ているのです。

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